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11. だから君はハルゲルツ c
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彰子がやってきたのは午後四時半。桂輔とは入れ違いになったようだ。
病室の扉をノックもせずに開けて、数学教師の小言を真似しながらどかっと春継のベッドサイドに腰掛けた。
「お待たせ。なんだ、首にコルセットじゃないんだね」
「だからそう言ってるだろ」
両足骨折だから入院になったの、と春継は彰子に説明する。車とぶつかったと聞いた彰子は、今更ながら顔を青くして、春継の上半身に抱きつく。
「わっ、なんだよいきなり」
「ハルゲルツが生きてることに感謝してるの」
「……ハルゲルツねぇ」
「マリアンヌがいいの?」
「それだけはやめてください」
咄嗟に遮って、彰子の唇に、自分のそれをくっつける。春継の突然の攻撃に、彰子はたじろぐ。
「心の準備できてないよ」
「いいの、これ消毒だから」
桂輔にされた分を取り戻すように、春継が彰子の額にくちづける。
「?」
「ほらアキコ、こっち向け」
……自分の名前を呼びかけられて、彰子は頬を朱に染める。それはまるで緋寒桜が蕾を膨らませるかのよう。
小鳥がついばむように、春継は彰子の唇を貪る。彰子も春継に恋われて、嬉しそうに瞳を閉じる。何度も何度も、何度も何度も。
雪解けのような温かい気持ちを甘受しながら、二人は慈しみあう。
二人の間に芽吹いた信頼は、一足早く訪れた春のようだと、彰子は春継の耳元で囁いた。
大好き、の言葉と共に。
“ I love Harugerutsu! ”―――Fin.
病室の扉をノックもせずに開けて、数学教師の小言を真似しながらどかっと春継のベッドサイドに腰掛けた。
「お待たせ。なんだ、首にコルセットじゃないんだね」
「だからそう言ってるだろ」
両足骨折だから入院になったの、と春継は彰子に説明する。車とぶつかったと聞いた彰子は、今更ながら顔を青くして、春継の上半身に抱きつく。
「わっ、なんだよいきなり」
「ハルゲルツが生きてることに感謝してるの」
「……ハルゲルツねぇ」
「マリアンヌがいいの?」
「それだけはやめてください」
咄嗟に遮って、彰子の唇に、自分のそれをくっつける。春継の突然の攻撃に、彰子はたじろぐ。
「心の準備できてないよ」
「いいの、これ消毒だから」
桂輔にされた分を取り戻すように、春継が彰子の額にくちづける。
「?」
「ほらアキコ、こっち向け」
……自分の名前を呼びかけられて、彰子は頬を朱に染める。それはまるで緋寒桜が蕾を膨らませるかのよう。
小鳥がついばむように、春継は彰子の唇を貪る。彰子も春継に恋われて、嬉しそうに瞳を閉じる。何度も何度も、何度も何度も。
雪解けのような温かい気持ちを甘受しながら、二人は慈しみあう。
二人の間に芽吹いた信頼は、一足早く訪れた春のようだと、彰子は春継の耳元で囁いた。
大好き、の言葉と共に。
“ I love Harugerutsu! ”―――Fin.
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