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00. セバスチャン、飛んだ!
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ガラリ。
扉を開けると、ざわめいていた級友たちが困り果てた表情を一斉に向けた。
学級日誌を片手に、春継は異様な雰囲気に気づき、窓際の座席に目を移す。
そこでは教室に転がっていたカメレオンカラーのPTA来客スリッパを片手に、少女が叫んでいた。
「セバスチャン飛んだ!」
ひゃぁ! こっち行ったぞ、いやあっちだ! などという声があがる。
その声を元に、春継が視線をずらす、と。
丸々太った大きなチャバネゴキブリが器用に足を上下させて走っていた。
なんだ……ゴキブリじゃん。そう思った春継だったが。
「違うっ、彼の名前はセバスチャン。ゴキブリなんて名称で彼を貶めてはいけないのだ」
と、スリッパ片手にクラスメイトが毅然とした表情で彼を睨みつける。
彼女の名前は油井彰子、肩まで伸ばしっぱなしの黒髪がセーラー服に似合う清純派……確かに彼女は例の生物をゴキブリと叫ぶよりセバスチャンと叫んだ方がお似合いかもしれない。が。
「どう見たってゴキブリだろこれ」
すたこらさっさと黒板の下へ向かうゴキブリ、いや、セバスチャンを追いかける彰子。
「覚悟しろセバスチャン!」
物の名前を改めて付け替えるのが彰子の癖である。だからこのように級友たちを驚かすのは日常茶飯事の範疇に入る。が、なぜゴキブリがセバスチャンなのか誰も理解できずにいる。当然、春継もわからない。
「うわ。逃げた畜生。そこの君、ちょっとそれかして!」
「え、これ?」
思わず春継は手にしていた学級日誌を手渡してしまう。彰子は手にしていたスリッパを放り投げ、学級日誌を両手にゴキブリの前に立つ。
「往生際が悪いぞセバスチャン! これでも食らえ!」
バキッ、かさかさ、ベキッ、くちゃっ、ぷちっ……やがて、不愉快な音が途切れる。
「……それ学級日誌」
結局、セバスチャンは学級日誌で叩かれて、天に召されたのである。
学級日誌が悲惨な目に合ったのは言うまでもない。
扉を開けると、ざわめいていた級友たちが困り果てた表情を一斉に向けた。
学級日誌を片手に、春継は異様な雰囲気に気づき、窓際の座席に目を移す。
そこでは教室に転がっていたカメレオンカラーのPTA来客スリッパを片手に、少女が叫んでいた。
「セバスチャン飛んだ!」
ひゃぁ! こっち行ったぞ、いやあっちだ! などという声があがる。
その声を元に、春継が視線をずらす、と。
丸々太った大きなチャバネゴキブリが器用に足を上下させて走っていた。
なんだ……ゴキブリじゃん。そう思った春継だったが。
「違うっ、彼の名前はセバスチャン。ゴキブリなんて名称で彼を貶めてはいけないのだ」
と、スリッパ片手にクラスメイトが毅然とした表情で彼を睨みつける。
彼女の名前は油井彰子、肩まで伸ばしっぱなしの黒髪がセーラー服に似合う清純派……確かに彼女は例の生物をゴキブリと叫ぶよりセバスチャンと叫んだ方がお似合いかもしれない。が。
「どう見たってゴキブリだろこれ」
すたこらさっさと黒板の下へ向かうゴキブリ、いや、セバスチャンを追いかける彰子。
「覚悟しろセバスチャン!」
物の名前を改めて付け替えるのが彰子の癖である。だからこのように級友たちを驚かすのは日常茶飯事の範疇に入る。が、なぜゴキブリがセバスチャンなのか誰も理解できずにいる。当然、春継もわからない。
「うわ。逃げた畜生。そこの君、ちょっとそれかして!」
「え、これ?」
思わず春継は手にしていた学級日誌を手渡してしまう。彰子は手にしていたスリッパを放り投げ、学級日誌を両手にゴキブリの前に立つ。
「往生際が悪いぞセバスチャン! これでも食らえ!」
バキッ、かさかさ、ベキッ、くちゃっ、ぷちっ……やがて、不愉快な音が途切れる。
「……それ学級日誌」
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学級日誌が悲惨な目に合ったのは言うまでもない。
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