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白鳥とアプリコット・ムーン 本編
ウィルバーと怪盗アプリコット・ムーンとつながるふたり
しおりを挟む神殿跡地で抱かれて以来の交わりに、ローザベルの身体は歓喜に震えていた。時間にしてみれば、ほんの数日しか経っていないというのに。
なぜなら、ローザベルが怪盗アプリコット・ムーンとして“やりなおしの魔法”をつかったことで、自分のことを妻だと思っていない夫に媚薬で責め立てられ、あげく膣内を深く抉られることになるとは思ってもいなかったから……
「ぅん、ふっ……」
「思っていたよりも、キツいな……まるで生娘みたいだ」
「はぅ……あぅ、はぁ、ぁん」
ローザベルの膣壁をウィルバーの楔が擦りたてている。痛いくらいに勃起している彼の分身は、媚薬によって高められた彼女の身体を悦ばせるように、くぃ、くいっとピンポイントでローザベルの感じる場所を責めていく。
「見つけた。ここが、気持ちいい場所なんだね……あぁ、きゅんと締まった。俺のことを嫌がっていないみたいで、良かったよ」
媚薬を利用して快楽漬けにして自白させるつもりでいたウィルバーは、嫌われてもおかしくない状況で、思わず本音をこぼしてしまう。
そんな彼の表情を見て、陶然としていたローザベルがくすりと笑う。
「こんな状況で……嫌いだなんて、言うわけない……」
じゃらり、と擦れる手首の枷と鎖が邪魔で、彼を上手に抱き締めてあげられないのが辛いけれど、ローザベルは自分のことを忘れた彼に今もなお想われつづけていたのだと悟り、ぽつりと返してしまう。
きゅぅん、と子宮の奥が反応している。身体はもう、だいすきな彼の太くて硬い楔に貫かれて、忘れようと思っていたかつての情事を思い出してしまった。
結婚初夜につかわれた香油と同じ香りの媚薬を口移しで飲まされて、初めて肌を重ねたときのような、不器用だけど“愛”を確かめあった記憶が、蘇っていく。
――彼方を護れるのなら、わたしは消えてもいいと思っていた。
だけど記憶を消しても、彼方はまだ、わたしを探してくれているの?
「え」
「だけど、正体は教えられないの……わたしはただの怪盗アプリコット・ムーン。ほんとうの名前など知らなくても、男と女は関係を持てるものでしょう?」
あえて突き放すように言えば、ウィルバーがムッとして噛みつくようなキスをしてくる。下肢はまだつながったまま、彼の分身はおおきく怒張したまま、ローザベルの膣内を堪能している。もしかしたら彼の身体も覚えているのかもしれない。結婚したときからずっと、妻の身体しか貪ってこなかった彼の分身は……懐かしいと、ローザベルの胎内で蠢いているようだった。
「そうだな……君が何者でも構わないと、そう思ってしまった……ここで抱くつもりは、なかったのに」
口づけられて、舌を絡めて唾液を混ぜ合わせて、はなれた途端に銀の糸がつぅっとローザベルの胸に落ちる。
寝台の床には飛び散った花瓶の色硝子の破片がキラキラと煌いている。
散り散りになった薔薇の花は、結婚初夜の寝台を彷彿させる。
まるで追体験しているみたいだなと反芻しながら、ローザベルは鼻で嗤う。
「矛盾してるわ」
「それでも、愛してしまった……これは、理由にならない?」
「――ならないわよ、莫迦」
ふん、と可愛らしく顔を背ける怪盗の緑柱石のような潤んだ瞳を優しく見つめていたウィルバーは、何も言わずに顔を彼女の胸元に近づけ、乳首を舐めしゃぶりながら、器用に腰を動かしはじめる。
「……っく!」
「ずっと追いかけていた君を……こうして、この手で、俺の舌で追い詰めている……なんだか不思議だな」
「あふんっ……そんなところで喋ら、ないでっ!」
「乳首噛みちぎらないから、おとなしくイってろ……俺ので、ナカでも気持ちよくなってくれ」
「ぁああ……あんっ、はぅん、ひぃや……」
腰を動かすちからが徐々に勢いを増していき、ローザベルの子宮の奥に、彼の亀頭がこつこつ当たる。このまま子種を吐かれたら、妊娠してしまうかもしれない……その可能性に気づいても、もはやローザベルは抵抗できなかった。
「な、なにか……きちゃう……いやぁっ!」
「イって。今日の取り調べはもう無理だ。俺もあたまがまわらない……いまはただ、可愛くて美味しい君を食べていたい……」
「あぁああぁっ……そんなにガツガツ突かれたらおかしくなっちゃうぅー……!」
目の前がチカチカしている。明滅するひかりの向こうは、霞んでいるけれど。“不確定な未来”が思わず顔を出しそうで、ローザベルは達する前に絶叫する。
「構わないよ。俺の前でだけ、おかしくなればいい」
乳首をれろりと舐められて、甘く囁かれて。
その瞬間、全身を震わせる絶頂が生まれ。膣奥に熱い飛沫の衝撃が交わる。
「ぬぅあぁっ!」
「ひぃや……あぁん、ぁああああんっ!」
ウィルバーの射精と同時に、ローザベルは膣内で蜜を湧き水のように吹き出していた。
はぁはぁと肩で息をするローザベルの身体を抱き上げ、ウィルバーは嬉しそうにキスをする。
拘束具であった手枷を外されて、ローザベルは驚きを隠せない。
「――なんで」
「もう、魔法の枷なんかなくても、君は俺の前から逃げられない――そうだろう? それに、手枷があると、他の体位で君を抱けないじゃないか」
「……ぇ?」
不敵に笑うウィルバーによって、その後、ローザベルはさまざまな体位で彼に抱かれ、数えるのが億劫になるほどの絶頂を教え込まれてしまった。
はじめのうちは着たままだったガウンも最終的には脱ぎ捨てられ、互いに裸で抱き合うことになる。
「ぁぁん……も、もぅ、無理ですウィルバーさまぁー」
「あぁ。蕩けた表情がたまらないよ。薬の効果なのかな、何度達してもぜんぜん萎えないや」
「そんなぁ」
「ほら、君のアソコはまだまだ美味しそうに俺のを咥えこんでいるよ? やっぱり淫乱なんだ」
「ちが……いますっ……て、きゃあぁん」
ローザベルがもうやめてと半泣きになりながら訴えても彼は涼しく笑うだけ。窓の向こうが朝なのか昼なのか夜なのかわからなくなるほど身体を重ね、ときどき水分やスープを彼から口移しであたえられ、すこし休憩しようとうつらうつらしてもすぐに求められ、彼女は喘ぎながら応えることしかかなわない。
彼が嫉妬していた彼自身がローザベルに刻んだキスマークは既に薄れていたけれど、ウィルバーは上書きするかのように何度も何度も乳房と首筋にキスの花を咲かせ、独占欲を露にした。
「だってこれは俺や国民をからかって喜んでいた罰だよ? 怪盗アプリコット・ムーン、君を快楽の刑に処して、俺なしではいられない身体にする……なんてな」
満足そうに対面座位でローザベルを抱き締めたまま、ウィルバーは彼女の耳元で甘く囁く。耳たぶから舐めあげられて、過剰に反応するローザベルを見て、彼は更に腰を上下に振って、彼女の子宮口へ自分の分身をぐりぐりと押し当てる。
「ぁぁん……またイッちゃうのぉー」
「いいよ……俺も、出るから!」
腰を振り上げて乳房を揺らし、甲高い声で達するローザベルの肩をぎゅっと掴んで、ウィルバーも獣のような声をあげて、子種を放つ。
何度目かなんて、もはやどちらもわからない。
ただ、結婚してからこんなにも夢中になって互いを求めあったことなどなかったローザベルは、ウィルバーが果てるのを見つめることなく、今度こそぷつりと意識を飛ばしていた。
「――ごめん、なさい……ウィルバー、さま……ごめんなさ……」
無意識のなか、不穏な言葉を残して。
* * *
既に陽はとっぷりと暮れていた。
憲兵団の副団長マイケルは、頬を緩ませつやつやの表情で現れた団長の姿を見て、呆れたようにため息をつく。
「丸二日寝室に籠りっきりでしたね。お盛んなことで」
「うるさい。それより俺が留守の間、ゴドウィン兄上の来訪以外、何か変わったことはなかったか?」
「いいえなんにも。国王陛下が通わせている使用人たちも休ませたままですし、城内のことは団員たちでどうにかしております」
茶化すような仕草でウィルバーを見やるマイケルは、怪盗アプリコット・ムーンの素顔を見たことがない。
ただ、憲兵団長の周りを影で支えろという国王陛下の指示で、この数日、花の離宮からはなれることなく見張りをつづけている。
団員たちのなかには料理が得意な人間もいるので、生活する分には問題ない。ただ、神殿跡地という場所柄からか、魔力にあてられて使い物にならない人間も出はじめている。マイケルの祖先はラーウスの人間なので、魔法に鈍感なウィルバーのように居座るというよりは、この土地に溶け込んで、佇んでいる感じだ。いまも風の精霊がウィルバーの栗色の髪の毛をぐしゃぐしゃ乱して遊んでいる姿が見えているが、いちいち気にしてなどいられない。
「それならいい」
「それより団長、取り調べは進んでいるのですか? 自分ばっかりいい思いをしているようにしか見えないのですが」
美人でグラマラスな女怪盗を拷問し、自白を強要させるという彼に課された役割を、ほかの団員たちは羨ましそうに見守っている。
グラマラスというところは誤報だが、ウィルバーはあえてそのままにしている。もし、彼女を公の場で処刑すると国王が血迷った判断を下してしまったら……ウィルバーは彼女を連れて逃げることを、考えはじめていたから。
「そんなことはねぇ……今回は口移しで媚薬を飲ませたから、俺まで舞い上がって薬の効果が切れるまで楽しんだだけだ」
「媚薬……あぁ、自白用のですか。鞄のなかから凄いニオイが漂ってましたよ……なんであなたまで口にするんです……飲み物にでも混ぜて飲ませればいいでしょうに」
「今度からそうする……」
毎日口移しで媚薬を飲ませていたら、抱き潰してしまうのが目に見えている。現にさっきだって、薬のせいとはいえ、勃起しつづけたウィルバーは何度も怪盗アプリコット・ムーンを屈服させ、二日かけて気絶するまで抱いてしまった。こればっかりは、我慢できなかった自分が悪い。
けど。
――ごめんなさい、ウィルバーさま……
まるで別人のようにしおらしくなって素直に抱かれた彼女の寝言が、あたまのなかから離れない。
抱いたときにも感じた違和感。はじめて抱いた女のはずなのに、気持ちのよい場所をすぐに見つけ出せた自分。まるで俺のことを知っているかのように振る舞い、はぐらかす女怪盗。
ただの男と女になって、心を通わせない性交に溺れればいいと、そんな風に装う彼女が、放っておけない。
「まったく。花の離宮の神殿跡地の魔力にあてられて使い物にならない団員も出てきているんですから、すこしは危機感を持って……」
「あ、ああ……」
早く彼女の身元を暴いて、自白させないといけないのに、つい、初心な彼女の身体に夢中になってしまった。これじゃあ周囲から女狐に誑かされていると思われてもおかしくない。
ウィルバーはマイケルの小言を受け流しながら、今度こそ彼女からほんとうの名前と罪を犯した理由を問いただすのだと、浮かれていた気持ちに蓋をして、改めて決意するのであった。
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