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参
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しおりを挟む「そう……年明けの鶴岡八幡宮拝賀は華々しいものとなるでしょうね」
鞠子の言葉に、泉次郎はそうですね、と頷き、ぼそりと呟く。
「新たに奥方様を迎えになられますし」
どこか刺を持っているような声音に、鞠子はびくりと肩を震わせる。
「……泉次郎」
「はい?」
「あなたは、どう思っているの? その……」
鎌倉の頂点にいる実朝が、鎌倉を滅ぼすという神託とともに生まれた唯子を側室に迎えるということに。
「おめでたいことです。……ただ、公暁が気の毒で」
そうだ。泉次郎は幼いころから公暁の傍にいた乳母子だ。彼がむかしから唯子だけを見ていることも知っている。そのうえ、公暁が西国へ発ってからは源氏の御家人として将軍、実朝に仕えている。実朝が唯子を見初めたことも、鞠子より詳しいはずだ。
「お兄さま、まだ剃髪していないの?」
「男の方が未練がましいんですよ」
唯子が京都へ行ってしまったというのに、公暁は相変わらず長い髪を垂らしたまま、室に引きこもって生活していた。このままでは身体に黴が生えてしまうのではないかと鞠子は気が気でないが、一足先に泉次郎が京都から戻ってからは少しずつだが身だしなみもましになってきたし、外へも出るようになってきている。実朝と唯子が祝言をあげ事実上の夫婦となれば、諦めもつくだろう、と泉次郎は鞠子に言う。
「ふーん。それならいいんだけど」
「何か、気になることでも?」
「泉次郎も一緒に行動しているならわかっているんじゃない? さいきん、お兄さま頻繁に執権どののところへ通われているじゃない。あれって、なんで?」
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