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打ち所が悪かったのか、そこから先が途切れている。ところどころ小さな子どもと戯れた記憶が垣間見えたが、それはまだ真新しい、鳴海ではない誰かの記憶みたいだった。
あれが前世の自分の死因? 情けないにもほどがある。
ふかふかの寝台のうえで、ハーマリアは目を覚ます。
はだかのまま、ルイスホレイスに抱きついた状態で眠っていたらしい。
「!」
「気がついた?」
「ルイスホレイス……前世のわたしはたしかにメンヘラでヤンデレで地雷女で露出狂な痴女でした!」
夫の前で申し訳なさそうに告白する妻を見て、ルイスホレイスはくすくす笑う。
前世の記憶を思い出した妻の言動を夫は喜んでいるようだった。
「知ってるよ。っていうかそこまで自分を蔑まなくてもいいんだよ」
「で、でも」
「君がああなってしまったのは君ひとりの責任じゃないんだから。それに、キオは頼られるのが嬉しかったんだ」
「え」
そういえばあれから騎生はどうなったのだろう。自分だけ人生からドロップアウトしたから、そのあとほかの女性と結婚したんじゃないだろうか。いや、結婚したのは自分の方か。自分ではない誰かに迎え入れられて、その姿でぬるま湯のなかで終えた人生……不安そうなハーマリアを見て、種明かしをするようにルイスホレイスが口をひらく。
「結婚を前提におつきあいしたいと、キオは考えていたのに、ナルミが結婚結婚いうからタイミングを逃したんだ。君に老いぼれ婚約者がいて学校を卒業したらすぐに嫁がされるなんて事情、知らなかったんだから。きちんと話してくれれば一緒にどうにかしようって言えたのに、君ときたらとっとと既成事実! の一点張りだし。俺が誠実な男じゃなかったらヤり逃げされてたぞ」
「自分で自分のこと誠実な男って言うんですね」
「誰かさんのせいで生涯独身だったものでね」
「え?」
ルイスホレイスは鳴海が死んだあとの前世のはなしを教えてくれた。ハロウィンの夜に大雨の遊園地で足を滑らせあたまを強打した彼女は救急車で病院へ搬送されるも、意識が戻ることはなく、脳死判定を受けた。両親とともに生前に記載したという臓器提供カードにより、彼女の臓器はすぐさま摘出され、移植を待つ患者のもとへと渡っていった。
播磨鳴海は死んだが、彼女の心臓は移植され、天寿をまっとうしたのだ……
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