72 / 84
* simple work to look on in the two who are not saved / Reiko Katohgi
chapter,4 + 13 +
しおりを挟む自由の熱い楔を突き立てられ、小手毬は意識を飛ばす。自由に抱かれた小手毬は「死んでもいい」と嬉しそうに彼を受け入れた。
けれど、ここで死なせるわけにもいかない。死なれたら計画は頓挫する。
自由が本当に殺したかったのは瀬尾だけだ。彼だけは許せなかった。“諸神信仰”に乗じて無垢な小手毬にあれこれいかがわしいことを教え込んだ変態だけは。
「――俺を警察に突き出しますか」
「諸見里本家には警察官僚がいるだろ。通報したところで医療事故だと誤魔化されて終了だ」
「よくおわかりで。お久しぶりですね、陸奥先生」
シーツにくるまれすやすやと安らかな寝息を立てている小手毬を一瞥し、陸奥は自由の手に握られた注射針を見てため息をつく。
「それで俺も殺すつもりか」
「まさか。小手毬が悲しみます」
「……ずいぶん物騒な物を持っているな」
「母が餞別に持たせてくれました」
敷布には少量の鮮血が散っていた。
小手毬をオンナにした、証だろう。
陸奥は目の前の男がほんとうにあの自由なのかと瞠目する。
地域医療センターにいた頃の彼しか知らなかったから、もしかしたらこちらがもともとの彼の本性なのかもしれない。
猛毒の入った針をつまらなそうにケースに仕舞い、自由は朗らかに笑みを浮かべる。
「加藤木先生から連絡があったときには目を疑いましたよ。まさか彼女が俺の計画を見破るなんて」
「……彼女は別の意味で常識が破綻しているからな」
宗教狂いの瀬尾や生まれつき洗脳された天、そして小手毬と自由と比べれば、加藤木はどこにでもいるような一般人である。
それゆえ陸奥は彼女を好ましく思っていたが、今回の件で考えを改めざるを得ないと痛感した。
突拍子のない行動力と他者を引き付ける吸引力。敵も味方も自分の手のひらのうえに転がして、その結果、思い通りにしてしまう。
ここにいる自由が一途で危険な男なのは理解できるが、加藤木もまた危険な女だ。
「陸奥先生は彼女を止められなかった。だからここにいらっしゃるんですよね」
「救われないふたりを見守るだけの簡単な仕事は自分には合わないそうだ」
はあとため息をつく陸奥に、自由は冷たい声で問う。
「陸奥先生は、小手毬にふれましたか。瀬尾のように“女神”の“器”を覚醒させるためと」
「薬を打たれた彼女を処置したという意味では。それでも彼女はジユウ、お前のことしか想っていなかった」
「知ってます」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる