69 / 84
* simple work to look on in the two who are not saved / Reiko Katohgi
chapter,4 + 10 +
しおりを挟む
「んっ」
小手毬の喘ぐ声だけが無機質な病室に響く。
ここにはオソザキが贈ってくれた花もない。色鮮やかな花たちと過ごした日々の、不健全でありながらなんと健全だったことか。
身体は健全になっても、この場所は不健全だ。真っ白な、小手毬を閉じ込めるための、“器”を覚醒させるための空間。
もうすぐ“審判の日”が訪れるのだという。“女神”が、次の“諸神様”の加護を与えるために“器”に精を注ぎ込む相手を選ぶ儀式の日。
誰が小手毬の相手になっても、快楽に従順でなければいけない。女神さまが選んだ相手に、間違いはないのだから。
小手毬は赤根一族が推している赤根雨龍と身体を繋げることになるのだろうと、漠然と思っている。
けれど雨龍はそのときが来ていないからと小手毬に指一本ふれてくれない。
彼は何を考えているのだろう。
そしてこの滑稽な信仰に巻き込まれた陸奥も、小手毬から逃げ出すことなく、傍にいる。
小手毬が無理難題を押し付けても、必要最低限の答えを導き出して。
処置を行っている際に瀬尾が言葉を発しないのは“諸神様”の加護を受けるに値しない人間だからだと聞いた。
赤根一族のなかでも“諸神信仰”に傾倒している瀬尾は、亜桜家とも深い関係を持っている。けれど彼は雨龍と同じ“春”の人間だ。
もしかしたら雨龍のお目付け役も兼ねているのかもしれない。彼が責務から逃れられないよう、小手毬を躾けて……
敏感な場所へ手袋越しの手がふれる。瀬尾は手術用のグローブで小手毬を愛撫する。ゴムの感触が肌にあたる違和感はやがて薄れ、身体は素直に彼の指を受け入れる。最奥まではいることのない、花園の入り口だけを丹念に、丁寧に耕していく。
ふだんなら、そこで終わるはず、だった。
「お前、何――……っ!」
バタンという大きな音とともに、ガシャンという何かが割れる音、すこしおいてからゴッ……という鈍い音が響く。
瀬尾の誰何を問う声も途中で消え、病室内がしん、と静まり返る。そうかと思えば、こちらに近づいてくる、靴音。
視覚を遮られたことでほかの五感が鋭敏になっていることもあり、小手毬はハッとする。
――侵入者だ!!
「だ、れ」
さんざん啼かされて枯れかけた声で、小手毬は弱々しく呟く。全裸で包帯を巻かれ、拘束された彼女は抵抗できない。おまけに瀬尾に施された媚薬の効果はいまも続いている。“器”としての責務を果たせないまま自分はこんなところで犯されてしまうのだろうか。
「しっ……」
騒がないで、聞き覚えのある声がパニックに陥りかけていた小手毬の内耳に届く。
その声に、小手毬は絶句する。
「ジユウ、おにいちゃん……?」
小手毬の喘ぐ声だけが無機質な病室に響く。
ここにはオソザキが贈ってくれた花もない。色鮮やかな花たちと過ごした日々の、不健全でありながらなんと健全だったことか。
身体は健全になっても、この場所は不健全だ。真っ白な、小手毬を閉じ込めるための、“器”を覚醒させるための空間。
もうすぐ“審判の日”が訪れるのだという。“女神”が、次の“諸神様”の加護を与えるために“器”に精を注ぎ込む相手を選ぶ儀式の日。
誰が小手毬の相手になっても、快楽に従順でなければいけない。女神さまが選んだ相手に、間違いはないのだから。
小手毬は赤根一族が推している赤根雨龍と身体を繋げることになるのだろうと、漠然と思っている。
けれど雨龍はそのときが来ていないからと小手毬に指一本ふれてくれない。
彼は何を考えているのだろう。
そしてこの滑稽な信仰に巻き込まれた陸奥も、小手毬から逃げ出すことなく、傍にいる。
小手毬が無理難題を押し付けても、必要最低限の答えを導き出して。
処置を行っている際に瀬尾が言葉を発しないのは“諸神様”の加護を受けるに値しない人間だからだと聞いた。
赤根一族のなかでも“諸神信仰”に傾倒している瀬尾は、亜桜家とも深い関係を持っている。けれど彼は雨龍と同じ“春”の人間だ。
もしかしたら雨龍のお目付け役も兼ねているのかもしれない。彼が責務から逃れられないよう、小手毬を躾けて……
敏感な場所へ手袋越しの手がふれる。瀬尾は手術用のグローブで小手毬を愛撫する。ゴムの感触が肌にあたる違和感はやがて薄れ、身体は素直に彼の指を受け入れる。最奥まではいることのない、花園の入り口だけを丹念に、丁寧に耕していく。
ふだんなら、そこで終わるはず、だった。
「お前、何――……っ!」
バタンという大きな音とともに、ガシャンという何かが割れる音、すこしおいてからゴッ……という鈍い音が響く。
瀬尾の誰何を問う声も途中で消え、病室内がしん、と静まり返る。そうかと思えば、こちらに近づいてくる、靴音。
視覚を遮られたことでほかの五感が鋭敏になっていることもあり、小手毬はハッとする。
――侵入者だ!!
「だ、れ」
さんざん啼かされて枯れかけた声で、小手毬は弱々しく呟く。全裸で包帯を巻かれ、拘束された彼女は抵抗できない。おまけに瀬尾に施された媚薬の効果はいまも続いている。“器”としての責務を果たせないまま自分はこんなところで犯されてしまうのだろうか。
「しっ……」
騒がないで、聞き覚えのある声がパニックに陥りかけていた小手毬の内耳に届く。
その声に、小手毬は絶句する。
「ジユウ、おにいちゃん……?」
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。
——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない)
※完結直後のものです。
【R-18】私を乱す彼の指~お隣のイケメンマッサージ師くんに溺愛されています~【完結】
衣草 薫
恋愛
朋美が酔った勢いで注文した吸うタイプのアダルトグッズが、お隣の爽やかイケメン蓮の部屋に誤配されて大ピンチ。
でも蓮はそれを肩こり用のマッサージ器だと誤解して、マッサージ器を落として壊してしまったお詫びに朋美の肩をマッサージしたいと申し出る。
実は蓮は幼少期に朋美に恋して彼女を忘れられず、大人になって朋美を探し出してお隣に引っ越してきたのだった。
マッサージ師である蓮は大好きな朋美の体を施術と称して愛撫し、過去のトラウマから男性恐怖症であった朋美も蓮を相手に恐怖症を克服していくが……。
セックスシーンには※、
ハレンチなシーンには☆をつけています。
AV嬢★OLユリカシリーズ
道化の桃
恋愛
彼氏にふられた勢いで、スカウトされるままにAVデビューしてしまったOLユリカ。
AVのお仕事をこなしつつ、徐々に恋に落ちていくが、登場人物たちの思惑と秘められた過去が交錯して……。
「OLユリカのAVシリーズ」という趣向で、基本的に一話でAV企画1本読み切りです。ただしあまり長いときは二〜三話に分けています。
off〜はユリカのオフの日ということで、AVの撮影がない回です。
どのお話もR18表現を含みます。性描写は過激めかなと思います。ご了承ください。
(アイコンイラストは作者が描いています)
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる