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* simple work to look on in the two who are not saved / Reiko Katohgi

chapter,4 + 2 +

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「――血は争えない、ってか」
「そうねえ、亜桜雛菊と桜庭雪之丞も異父姉弟だったみたいだし」
「どこで知った?」
「瀬尾先生が誇らしげに教えてくださったわ。あの宗教家先生は近親婚を賛美してらっしゃるみたいね」
「あの男の妄言に耳を傾けるな。痛い目に合っても知らんぞ」

 瀬尾は赤根一族の四季を統べる“春“の傍系にあたる。“諸神信仰”にも篤く、“女神”を赤根一族の栄華のために留め続ける使命を胸に法律すれすれのことを担っている。次の“器”となる小手毬を処女のまま快楽漬けにしようと画策している不気味な男だ。
 だが、小手毬は彼にされるがままになってはいるが、心は別の場所にあるように感じられる。現に――……

「亜桜小手毬は諸見里自由を求めている。瀬尾や陸奥による医療行為を受け入れてはいるが、彼女がふたりを選ぶことはないだろう」
「医療行為、ね。だから手を出さないの」
「彼女は“器”ではない」
「まだ、でしょう?」
「お前はどう考えている? 彼女は望んでその身をまだ見ぬ男へ捧げようと健気に生きているが、それは彼女の心を殺すことにならないか」
「そりゃあねえ。コデマリちゃんの抱える闇の深さを覗いちゃったら、助けてあげたいとは思うけど、外部の人間が簡単にどうこうできるものでもないでしょう?」
「今ならまだ間に合う。陸奥先生にも協力を仰げないか」
「ミチノク先生に?」
「“器”になる前の彼女を殺してしまえばいい。そうすれば得体のしれない加護を欲しがる奴らから彼女を守れるし、俺たちも“女神”を巡るバカバカしい騒ぎから強制退場することが可能だ」
「殺す……あ」

 さらりと提案された物騒な言葉に、加藤木はいっとき硬直するが、意図を汲んだのか、くすりと笑う。

「そうね。それこそ彼女が望んだこと……か。だけど、ウリュウ先生はそれでいいのかしら」
「俺は生まれつきこの土地にいるが、幼い頃から“諸神信仰”って奴が苦手でね。天のように素直に信じられねぇんだよ。神仏に祈る気持ちもわからなくもないが、それで人間を傷つけるようなら本末転倒じゃないか?」
「同志!」
「はぁ?」
「この閉鎖された不気味な空間にいるにも関わらず、正常な思考を保っていらっしゃるあなたの本心が聞けて安心しました。わたしはコデマリちゃんが幸せになってくれればそれでいいんです」
「いや、俺はただ桜庭蘭子のように彼女を切り捨てる側だぞ」
「偽善者」
「なっ」
「殺すなんて言ってるけど、解放するってことですよね! その最適解を教えてください」
「――それを知ったところで、お前にできることなどほとんどないぞ」
「それでも」

 加藤木は意を決して、雨龍の前で断言する。



「自己満足だと判っていても、目に見えない信仰心が敵だと知っても、わたしは彼女を救いたいのです」
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