恋愛麻酔 ーLove Anesthesiaー

ささゆき細雪

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* I know that I must do what’s right / Hiduru Narashino *

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「このままここで研修医として経験を積んだとして、行き着く先は凡庸な医者。私はあえてその道を選んだけどね」
「……それは、ほんとうですか」
「私が憶測で物を言うように見える? ただ、すぐにどうこうするようなことじゃあないわ。コデマリはまだ大人になりきれていないし、雨龍も子どもに欲情するような変態じゃない。キミと違って」
「――莫迦なこと、っ」

 顔を真っ赤にする自由に「あら、図星」と飄々とした顔で天は茶化す。そしてふと、表情を改める。

「キミは亜桜小手毬に固執しすぎたんだ。すでに狸に目をつけられている。ここでおとなしく飼い慣らされてやりすごすのなら、それでもいい。けれどそうしたところでコデマリはキミのモノにならない――コデマリという器にたっぷりの精を注いだ者こそ、次の“諸神”、妻神の夫となるのだから」
「それは知ってる。じゃあどうすればいいんだ」

 低い声でぽつりと言い返す自由に、天はぽつりと返す。

「雪之丞がしたように、キミも禁忌を犯せばいい。諸見里に保護された亜桜の女神を奪った、あの男のような罪人になるのさ。ただ、死にたがりのお姫様が救われるとは思えない。彼女が自傷を繰り返すのは、女神たる重圧だけではないのだから」
「女神たる重圧以外のなにか?」
「そ。悪趣味かもしれないけれど、私はコデマリに拒絶されるジユウが見たいの。いつまで知らんぷりしているの? いいかげん、現実を見なさい」

 けたけた笑いながら、天はピンク色の白衣を翻して去っていく。自由の目を醒まさせるような言葉を残して。
 取り残された自由は天が残した言葉にハッとする。“諸見里に保護された亜桜の女神”、それは自分を産んだ母のことだ。
 そして天は追い討ちをかけるように自由が逃避していた残酷な事実を突きつけた。それはまごうことなき“禁忌”。



「キミたちは異父兄妹……けして結ばれることは許されない関係なの」
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