37 / 84
* night of before a firstlove / Makoto Michinoku *
chapter,2 + 23 +
しおりを挟む* * *
「医療チームの外部派遣?」
「茜里第二病院に当院の麻酔科医陸奥、整形外科医加藤木のふたりを派遣する」
それは上からの突然の辞令だった。
理事長室に呼び出された陸奥と加藤木は互いに顔を見合わせ、どういうことだと首を傾げる。
地域医療センターの理事長、白井はふたりの反応を気にすることなく話をつづける。
「入院中の亜桜小手毬の治療についてだが、精神科領域の専門家が少ない当院では限界がある」
「……転院、ですか」
ダークオークの書棚に囲まれた理事長室で、机の向かいで悠々と座る白髪の老人を前に陸奥は渋々口を開く。
小手毬の病態変化とともに転院の可能性については考えていた。けれど、陸奥は彼女をほかの医師に任せる未来が想像できないまま、今日まで来てしまった。
白井は陸奥の無表情を一瞥し、そうだ、と応える。
「先方も快く患者を受け入れてくれるという。ただ、当院から彼女の治療に関わっている医師を派遣するよう要請が来た」
「それで、わたしと陸奥先生なのですね」
ふむふむ、と興味深そうに頷く加藤木を訝しげに見つめる陸奥。
面白いことになりましたねぇ、と好奇心旺盛な双眸が陸奥を射る。
それでも陸奥の表情は変わらない。
「亜桜氏からの了承も得ている。君たちふたりの当院での業務だが、しばらくは茜里の医師が引き継ぐ形になる。陸奥には引き続き亜桜小手毬の専属主治医としてペインクリニックを中心とした治療に専念してもらう」
「では、わたしは? リハビリテーションだけなら茜里にもスタッフがいらっしゃると思うのですが」
「こう言ってはなんだが陸奥の監視役だ。万が一のことがないよう患者と親しい女医も一名欲しいと言われてね……君たちは同期だし、うまくやっていくだろうと判断したわけだ」
「そうですかー」
加藤木は納得のいかない表情を浮かべているが、それは陸奥とて同じである。
――万が一のこと、って何だ? 万が一って? 俺が患者に手を出すとでも?
不本意ながら既に小手毬にキスしてしまった手前、反論もできないまま陸奥は心のなかでもじもじと葛藤している。
そんな陸奥の様子に気づかぬまま、加藤木は頷く。
「かしこまりました。それで、転院はいつごろ……?」
「明日だ」
「え」
きっぱりと告げる白井に、陸奥と加藤木はふたたび顔を見合わせる。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ミックスド★バス~湯けむりマッサージは至福のとき
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
温子の疲れを癒そうと、水川が温泉旅行を提案。温泉地での水川からのマッサージに、温子は身も心も蕩けて……❤︎
ミックスド★バスの第4弾です。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる