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バレンタイン・ホワイトディ番外編
バレンタイン・エチュード
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三葉は焦っていた。今年のバレンタイン・ディは木曜日。
約束はしたものの、仕事で忙しい彼とイルミネーションの前で待ち合わせだなんて、ちゃんとできるのだろうか?
薬局の閉店業務を終えて、白衣を脱げば、ふだんより華やかなオフホワイトのニットワンピース。
ナースシューズを焦げ茶のロングブーツに履き替え、ベージュのコートを羽織って店を出れば、新宿の雑踏が襲いかかる。
西口から大ガードを抜ければ東口の駅前広場はもうすぐそこ。自然と駆け足になるも、仕事帰りのひとや学生、イベントになると湧いて出てくるカップルたちに邪魔されて、なかなか目的の場所までたどり着くことが叶わない。
はふ、と白い息を吐きだせば、その横に。
「……いた」
「お疲れ」
「わたしの方が早いと思ったのに」
不貞腐れた顔をすれば、彼――琉がくすりと笑う。
「こうして待ち合わせするの、はじめてだよな」
「……そうだ、ね」
いつもは薬局まで迎えに来てくれる彼が、珍しく人並みに待ち合わせをしてみたいと言ったから。
今日は同じようでふだんとは違う特別な一日を出会いからして演出させる。
三葉は鞄からダークレッドの包装紙に包まれた小箱を取り出す。
「せんせ」
「……おぅ」
さりげなく渡された高級チョコレートの入った小箱を受け取った琉は、嬉しそうに包装紙をその場ではがしだす。まるで子どもみたいに。
「まさか……ここで食べるんですか?」
待ち合わせ場所で包装を破るまでは想定内だが、この場でいきなりもぐもぐ食べ始めるとは思っていなかったから三葉は困惑を隠せない。
とはいえ、寒い夜の外で一粒千円近くする高級チョコレートをもくもくと食べる恋人の姿は、滑稽だけど、愛おしい。
三葉はしょうがないなぁとため息をついて、彼が手にしている小箱のなかの、最後の一粒を奪い取り、雲ひとつない夜の空に掲げる。
「最後の一粒……チョコレート!」
「チョコレート、欲しいの?」
彼の悲痛そうな声を遮って、三葉は告げる。
「じゃあ、ここで『あーん』ってして」
拗ねた表情で誘えば、琉はあっさり陥落する。
「あー」
チョコレートを掴んだ指先を彼の大きくひらいた口許に寄せながら、三葉は悪戯に顔を近づけ、チョコレートを食べる琉の口へ蓋をする。
「んっ……!」
驚きの表情を見せた琉だったが、三葉が必死になってキスしてきたのを悟り、不適に笑う。
人前で、濃厚な口づけをつづけていたら、酸欠状態だ。
「どう? 美味しい……?」
こくこくと頷いたのは、琉ではなくて、なぜか三葉の方で。
思っていたよりも、ずいぶん長い、チョコレート味のキスだった。
「そっか。良かった」
してやったりの表情で、琉は三葉の手をつなぐ。
彼のおおきな手は思っていたよりも冷たかった。もしかしたらずっと前から待ち合わせ場所で待っていたのかもしれない。
三葉は申し訳ない気持ちになりつつ、ご機嫌になった彼とともにいつもと同じ、歌舞伎町の裏路地にある小さなラブホに足を運ぶ。琉はふだんと違う場所でもいいんだよと笑っていたが、明日も仕事があるからと、三葉が望めば、素直に了解と応答する。
「その代わり、ホワイトディは覚悟しとけよ?」
バレンタインの今日はあくまで三葉が琉に気持ちを届ける日だから、やりたいようにして構わないと言いたいらしい。
お互いの気持ちなどとっくにわかりきっているものの、ふだんから彼におされがちな三葉が琉のためにわざわざふだんと異なる場所で違うことをして喜ばせるなどという器用なことは難しい。
けれどそんなことを口にしたら琉に「倦怠期だ~」と拗ねられてしまいそうだから、すこしだけ頑張ることにした。
それが――……
* * *
チョコレートの味のキスはいつまでつづくのだろう。ぜいぜいと息を乱す三葉の身体を丹念に撫でながら接吻をつづける琉は、三葉のふだんとは異なる格好に、猛烈に興奮している。
「三葉くん……俺をこれ以上欲情させてどうするんだい?」
「んぁ……だ、だって……」
――バレンタイン・ディくらい、自分から誘って恋人を悦ばせたいじゃない?
そのためにすこしだけ頑張ったのだ。
ふだんの下着ではない、光沢感のあるワインレッドのベビードールを、素肌の上に忍ばせて。
「こんなにいやらしい下着をあの服の下に着ていたのか……さっきまで白衣を着て仕事をしていたきみからは想像できないよ」
「ふっ……んっ……く」
舌先を絡めて蕩けるような接吻を繰り返しながら、ベッドに押し倒して深紅のレースに縁取られた胸元を布越しに愛撫する琉に、三葉はされるがままになっていた。
すぐに脱がされて裸で身体を重ねると思っていただけに、彼はふだん以上に念入りな着衣越しの愛撫を施して、三葉を翻弄させる。
「脱がせるのが勿体無いなぁ」
「ゃん……せんせ、布越しじゃ、イヤ」
「ん? こんないやらしい服を着て、布越しじゃイヤだなんて」
胸元にはおおきなサテンリボンが蝶々のように結ばれているが、標本に磔にされてしまったかのように、琉の手によって潰されている。このリボンをほどけば、すぐさま三葉の乳房が外気に晒され、おおきな琉の手のなかへすっぽりおさまるであろうというのに、彼はまだ、ツルツルした布越しに指を滑らせ、三葉の隠れた乳首を勃たせて喜んでいる。
「この――淫乱」
「んぁっ……!」
そうかと思えば、かぷりと布越しに勃ちあがった乳首に噛みついて、焦らされていた三葉に強烈な刺激を与える。
布越しに乳首を噛みつかれ、そのまま左右に引っ張られ、舌先で布を湿らされ、じわじわと彼の唾液をまぶされる。
もどかしそうに身体をくねらせる様を見下ろして、琉はようやくリボンをほどく。
蝶々のようなリボンが左右に別れ、抑え込まれていた三葉の両乳房が吸いつくように彼の手のひらにまろびでる。
「乳首が真っ赤に勃っているよ。かーわいい」
「言わないで……っくん!」
「バレンタインのとっておきの甘いデザート、こんなところにも隠していたんだね」
「隠してなんか……ぁん」
ふにふにと恋人の胸の感触を確かめていた琉は、おもむろに顔を近づけてぺろぺろと舌先で乳輪を舐めた後、勃ちあがったままの頂を唇で擦りたてる。
「ほかの場所にも隠してるよね。知ってるよ、三葉がこうされると、下のお口から甘い甘い蜜を垂らしてくれること」
「ふぁあんっ……そこ……まだ」
「そうだね、まだいやらしいベビードールが隠している……おや、こんなところにスリットが入っているね」
「んへ?」
ワインレッドのベビードールは胸元をはだけられただけで、辛うじて下半身を覆い隠している。
けれど、腰元のスリットから、三葉が履いているティーバッグの紐がちらりとのぞく。
琉はにやりと笑みを浮かべ、スリットにてを入れ、ティーバックの上から彼女の敏感な部分を刺激する。
「――あ、ぁ、やぁあっ!」
「下着がべちゃべちゃだね。布越しからでもわかるくらい……今夜はこのまま襲っちゃうからね」
「う、ん……――えっ!? んぁ、あぁ――っ!」
口づけられながら、ティーバックの紐を一息に引っ張られ、太もものあわいが外気にふれる。中途半端なベビードールは脱がさずに、琉はスキンを装着し、そのまま自分の分身を三葉の潤みきった蜜壺へと押し込んでいく。
くちゅん、と淫らな音を立てて、膣奥が待ちわびていたかのように受け入れる。
勢いよく侵入してきた琉の屹立は、蜜壁を穿ちながら、三葉を官能の世界へ引きずり込む。
彼の早急な行為は今までなら物足りないと感じてしまう拙いものだ。それなのに、ふだんより気持ちいいと感じてしまうのは、ベビードールを着たままの状態で身体を重ねているからだろうか。
「っあ……せんせ……はげし、の、いい……っ!」
「いいよ……イって!」
「ふぁぁ……あっあ――っ……!」
擦れる布地の刺激も加わり、三葉は彼にされるがまま、快楽の虜になる。
琉も彼女が達するのを見て、ピストンする速度をあげ、更なる絶頂へ送り込む。
「せ、んせ、めっ、らめっ、まだっ……イっ……ぁあんっ!」
「イってるんだろ? イきつづけてごらん。綺麗だよ、綺麗だ……三葉――……!」
ガクガクとあたまのてっぺんから爪先まで互いに身体を震わせて、ふたりはきつく抱き合い、交ぐ合い、そのまま。
* * *
「あー良かった……! まさかあんなにイけるとは思わなかったよ」
翌朝。
相変わらずの早漏気質はあったものの、何度も達することができた琉はご機嫌だ。
対する三葉は久々に何度も責められて身体中に痛みがはしっている。
とっくにベビードールは脱ぎ捨て、いまはシーツに身体を巻き付けた状態だ。
「……せんせ、腰が痛いんですけど」
「俺が処方してやろうか? ラテックス」
「琉せんせ、わざと間違えて口にしてるでしょう……湿布薬はパテックスですよ」
これ以上ラテックスを用意されたら身体がもちません、と返せば、ごめんごめんと琉が苦笑する。
「久々にがっつきすぎちゃったな……三葉のセクシーランジェリー攻撃は大成功だよ」
「べ、別に攻撃なんかしてませんっ」
「だけど、バレンタインだから頑張ったんだよな?」
「……う、それは、そうですけど」
「ありがとな。嬉しい」
「……知ってます」
ちゅっ、と額に口づけられて、三葉は頬を真っ赤にする。恋人になってもう、十ヶ月は経過するのに、三葉は相変わらず彼からの不意打ちのキスに弱い。
さぁて、仕事だ仕事だと手早く出勤準備をはじめる琉を前に、今日の店番は午後からだからとベッドでシーツにくるまったまま微睡む三葉。
そんな彼女の耳元へ唇寄せて、琉は甘く囁く。
「――ホワイトディも、覚悟しとけよ?」
「う、ん……」
とろんとした表情で応えれば、わかってないだろ、と琉が呆れたように微笑する。ホテルの室代とご飯代に使って、と一万円札を三枚ほどベッドテーブルに無造作に置いてから、シーツにくるまったままの恋人の髪を一撫でして、名残惜しそうに声をかける。
「じゃあ、行ってくるからな」
「ん……行ってらっしゃい」
昨夜はバレンタインだからと当直のシフトをずらしたのだと悪戯っぽく教えてくれた恋人のことを想い、三葉は夢見心地で彼を見送る。
パタン、と扉が閉まる音とともに、ふたたび睡魔に襲われた三葉は、去り際の彼の物騒な言葉のことを、すっかり忘れてしまうのであった……
――ホワイトディ「も」覚悟しとけよ?
《to be continued……?》
約束はしたものの、仕事で忙しい彼とイルミネーションの前で待ち合わせだなんて、ちゃんとできるのだろうか?
薬局の閉店業務を終えて、白衣を脱げば、ふだんより華やかなオフホワイトのニットワンピース。
ナースシューズを焦げ茶のロングブーツに履き替え、ベージュのコートを羽織って店を出れば、新宿の雑踏が襲いかかる。
西口から大ガードを抜ければ東口の駅前広場はもうすぐそこ。自然と駆け足になるも、仕事帰りのひとや学生、イベントになると湧いて出てくるカップルたちに邪魔されて、なかなか目的の場所までたどり着くことが叶わない。
はふ、と白い息を吐きだせば、その横に。
「……いた」
「お疲れ」
「わたしの方が早いと思ったのに」
不貞腐れた顔をすれば、彼――琉がくすりと笑う。
「こうして待ち合わせするの、はじめてだよな」
「……そうだ、ね」
いつもは薬局まで迎えに来てくれる彼が、珍しく人並みに待ち合わせをしてみたいと言ったから。
今日は同じようでふだんとは違う特別な一日を出会いからして演出させる。
三葉は鞄からダークレッドの包装紙に包まれた小箱を取り出す。
「せんせ」
「……おぅ」
さりげなく渡された高級チョコレートの入った小箱を受け取った琉は、嬉しそうに包装紙をその場ではがしだす。まるで子どもみたいに。
「まさか……ここで食べるんですか?」
待ち合わせ場所で包装を破るまでは想定内だが、この場でいきなりもぐもぐ食べ始めるとは思っていなかったから三葉は困惑を隠せない。
とはいえ、寒い夜の外で一粒千円近くする高級チョコレートをもくもくと食べる恋人の姿は、滑稽だけど、愛おしい。
三葉はしょうがないなぁとため息をついて、彼が手にしている小箱のなかの、最後の一粒を奪い取り、雲ひとつない夜の空に掲げる。
「最後の一粒……チョコレート!」
「チョコレート、欲しいの?」
彼の悲痛そうな声を遮って、三葉は告げる。
「じゃあ、ここで『あーん』ってして」
拗ねた表情で誘えば、琉はあっさり陥落する。
「あー」
チョコレートを掴んだ指先を彼の大きくひらいた口許に寄せながら、三葉は悪戯に顔を近づけ、チョコレートを食べる琉の口へ蓋をする。
「んっ……!」
驚きの表情を見せた琉だったが、三葉が必死になってキスしてきたのを悟り、不適に笑う。
人前で、濃厚な口づけをつづけていたら、酸欠状態だ。
「どう? 美味しい……?」
こくこくと頷いたのは、琉ではなくて、なぜか三葉の方で。
思っていたよりも、ずいぶん長い、チョコレート味のキスだった。
「そっか。良かった」
してやったりの表情で、琉は三葉の手をつなぐ。
彼のおおきな手は思っていたよりも冷たかった。もしかしたらずっと前から待ち合わせ場所で待っていたのかもしれない。
三葉は申し訳ない気持ちになりつつ、ご機嫌になった彼とともにいつもと同じ、歌舞伎町の裏路地にある小さなラブホに足を運ぶ。琉はふだんと違う場所でもいいんだよと笑っていたが、明日も仕事があるからと、三葉が望めば、素直に了解と応答する。
「その代わり、ホワイトディは覚悟しとけよ?」
バレンタインの今日はあくまで三葉が琉に気持ちを届ける日だから、やりたいようにして構わないと言いたいらしい。
お互いの気持ちなどとっくにわかりきっているものの、ふだんから彼におされがちな三葉が琉のためにわざわざふだんと異なる場所で違うことをして喜ばせるなどという器用なことは難しい。
けれどそんなことを口にしたら琉に「倦怠期だ~」と拗ねられてしまいそうだから、すこしだけ頑張ることにした。
それが――……
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チョコレートの味のキスはいつまでつづくのだろう。ぜいぜいと息を乱す三葉の身体を丹念に撫でながら接吻をつづける琉は、三葉のふだんとは異なる格好に、猛烈に興奮している。
「三葉くん……俺をこれ以上欲情させてどうするんだい?」
「んぁ……だ、だって……」
――バレンタイン・ディくらい、自分から誘って恋人を悦ばせたいじゃない?
そのためにすこしだけ頑張ったのだ。
ふだんの下着ではない、光沢感のあるワインレッドのベビードールを、素肌の上に忍ばせて。
「こんなにいやらしい下着をあの服の下に着ていたのか……さっきまで白衣を着て仕事をしていたきみからは想像できないよ」
「ふっ……んっ……く」
舌先を絡めて蕩けるような接吻を繰り返しながら、ベッドに押し倒して深紅のレースに縁取られた胸元を布越しに愛撫する琉に、三葉はされるがままになっていた。
すぐに脱がされて裸で身体を重ねると思っていただけに、彼はふだん以上に念入りな着衣越しの愛撫を施して、三葉を翻弄させる。
「脱がせるのが勿体無いなぁ」
「ゃん……せんせ、布越しじゃ、イヤ」
「ん? こんないやらしい服を着て、布越しじゃイヤだなんて」
胸元にはおおきなサテンリボンが蝶々のように結ばれているが、標本に磔にされてしまったかのように、琉の手によって潰されている。このリボンをほどけば、すぐさま三葉の乳房が外気に晒され、おおきな琉の手のなかへすっぽりおさまるであろうというのに、彼はまだ、ツルツルした布越しに指を滑らせ、三葉の隠れた乳首を勃たせて喜んでいる。
「この――淫乱」
「んぁっ……!」
そうかと思えば、かぷりと布越しに勃ちあがった乳首に噛みついて、焦らされていた三葉に強烈な刺激を与える。
布越しに乳首を噛みつかれ、そのまま左右に引っ張られ、舌先で布を湿らされ、じわじわと彼の唾液をまぶされる。
もどかしそうに身体をくねらせる様を見下ろして、琉はようやくリボンをほどく。
蝶々のようなリボンが左右に別れ、抑え込まれていた三葉の両乳房が吸いつくように彼の手のひらにまろびでる。
「乳首が真っ赤に勃っているよ。かーわいい」
「言わないで……っくん!」
「バレンタインのとっておきの甘いデザート、こんなところにも隠していたんだね」
「隠してなんか……ぁん」
ふにふにと恋人の胸の感触を確かめていた琉は、おもむろに顔を近づけてぺろぺろと舌先で乳輪を舐めた後、勃ちあがったままの頂を唇で擦りたてる。
「ほかの場所にも隠してるよね。知ってるよ、三葉がこうされると、下のお口から甘い甘い蜜を垂らしてくれること」
「ふぁあんっ……そこ……まだ」
「そうだね、まだいやらしいベビードールが隠している……おや、こんなところにスリットが入っているね」
「んへ?」
ワインレッドのベビードールは胸元をはだけられただけで、辛うじて下半身を覆い隠している。
けれど、腰元のスリットから、三葉が履いているティーバッグの紐がちらりとのぞく。
琉はにやりと笑みを浮かべ、スリットにてを入れ、ティーバックの上から彼女の敏感な部分を刺激する。
「――あ、ぁ、やぁあっ!」
「下着がべちゃべちゃだね。布越しからでもわかるくらい……今夜はこのまま襲っちゃうからね」
「う、ん……――えっ!? んぁ、あぁ――っ!」
口づけられながら、ティーバックの紐を一息に引っ張られ、太もものあわいが外気にふれる。中途半端なベビードールは脱がさずに、琉はスキンを装着し、そのまま自分の分身を三葉の潤みきった蜜壺へと押し込んでいく。
くちゅん、と淫らな音を立てて、膣奥が待ちわびていたかのように受け入れる。
勢いよく侵入してきた琉の屹立は、蜜壁を穿ちながら、三葉を官能の世界へ引きずり込む。
彼の早急な行為は今までなら物足りないと感じてしまう拙いものだ。それなのに、ふだんより気持ちいいと感じてしまうのは、ベビードールを着たままの状態で身体を重ねているからだろうか。
「っあ……せんせ……はげし、の、いい……っ!」
「いいよ……イって!」
「ふぁぁ……あっあ――っ……!」
擦れる布地の刺激も加わり、三葉は彼にされるがまま、快楽の虜になる。
琉も彼女が達するのを見て、ピストンする速度をあげ、更なる絶頂へ送り込む。
「せ、んせ、めっ、らめっ、まだっ……イっ……ぁあんっ!」
「イってるんだろ? イきつづけてごらん。綺麗だよ、綺麗だ……三葉――……!」
ガクガクとあたまのてっぺんから爪先まで互いに身体を震わせて、ふたりはきつく抱き合い、交ぐ合い、そのまま。
* * *
「あー良かった……! まさかあんなにイけるとは思わなかったよ」
翌朝。
相変わらずの早漏気質はあったものの、何度も達することができた琉はご機嫌だ。
対する三葉は久々に何度も責められて身体中に痛みがはしっている。
とっくにベビードールは脱ぎ捨て、いまはシーツに身体を巻き付けた状態だ。
「……せんせ、腰が痛いんですけど」
「俺が処方してやろうか? ラテックス」
「琉せんせ、わざと間違えて口にしてるでしょう……湿布薬はパテックスですよ」
これ以上ラテックスを用意されたら身体がもちません、と返せば、ごめんごめんと琉が苦笑する。
「久々にがっつきすぎちゃったな……三葉のセクシーランジェリー攻撃は大成功だよ」
「べ、別に攻撃なんかしてませんっ」
「だけど、バレンタインだから頑張ったんだよな?」
「……う、それは、そうですけど」
「ありがとな。嬉しい」
「……知ってます」
ちゅっ、と額に口づけられて、三葉は頬を真っ赤にする。恋人になってもう、十ヶ月は経過するのに、三葉は相変わらず彼からの不意打ちのキスに弱い。
さぁて、仕事だ仕事だと手早く出勤準備をはじめる琉を前に、今日の店番は午後からだからとベッドでシーツにくるまったまま微睡む三葉。
そんな彼女の耳元へ唇寄せて、琉は甘く囁く。
「――ホワイトディも、覚悟しとけよ?」
「う、ん……」
とろんとした表情で応えれば、わかってないだろ、と琉が呆れたように微笑する。ホテルの室代とご飯代に使って、と一万円札を三枚ほどベッドテーブルに無造作に置いてから、シーツにくるまったままの恋人の髪を一撫でして、名残惜しそうに声をかける。
「じゃあ、行ってくるからな」
「ん……行ってらっしゃい」
昨夜はバレンタインだからと当直のシフトをずらしたのだと悪戯っぽく教えてくれた恋人のことを想い、三葉は夢見心地で彼を見送る。
パタン、と扉が閉まる音とともに、ふたたび睡魔に襲われた三葉は、去り際の彼の物騒な言葉のことを、すっかり忘れてしまうのであった……
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