劇薬博士の溺愛処方

ささゆき細雪

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後日譚編

誰が為の自慰 + 8 +

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 繰り返されるキスを受けながら、着衣を乱していた三葉は、琉の言葉を反芻して、ふ、と我に却る。


「……自慰を、見せ合いっこする!?」
「うん」


 顔色を変えた三葉を見て、琉はキスをやめて困った表情になる。


「あれ、飛鷹から聞いていない?」
「……そういえば」

 けれどもあれはお酒の席で酔っぱらったが故の冗談だと一蹴していた三葉は、琉に言われるまですっかり忘れていたのである。

「冗談じゃ、ないんですか」
「パートナー同士が自慰を見せ合いっこする相互観賞って実際にあるんだよ。行動療法、早漏対策の一環としててっきり飛鷹が説明したんだと思ったけど」
「だから実地演習は行ってませんってば!」
「知ってるけど思い出したら腹が立ってきた」
「ひゃんっ!」

 コートを剥ぎ取られ、すぽんっ、とセーターも脱がされ、あっという間にブラジャーとタイトスカートという格好にさせられてしまった三葉は、ぷう、と頬を膨らませながら琉の着衣を乱していく。
 上半身下着姿の三葉と、下半身下着姿の琉は、互いに破廉恥な格好を見て、くすくす笑う。
 鏡に映る滑稽な恋人たちは、道化のように、ベッドの上でキスを繰り返す。

「……ね、一緒に自慰しよう?」

 やがて待ちきれないと言いたげに、琉が大人のオモチャを手に持ち、三葉を誘う。
 頬を赤らめながら三葉もしょうがないですね、と俯いて、ピンクローターのスイッチをぽち、っと押す。
 
「ぅわ!」

 手のなかでぶいぶいいん、と勢いよく音を響かせるローターに驚く三葉を見て、琉は優しく声をかける。

「そのまま、ブラジャーしたままで構わないから、ローターを胸の上に持っていってごらん」
「……こ、こう、ですか? ひゃっ……っ!」

 生きのいい魚のようにぶるぶる動くローターの先端部分を胸元に乗せた三葉は、琉の指先での刺激とは異なる機械的な振動を前に、カァっと身体を火照らせる。
 ブラジャーのレース越しでも伝わるローターの小刻みな動きで、眠っていた両方の乳首が目覚め、むくりと存在を誇示しだす。

「どうだい? 機械に犯される感覚は?」
「ぁ……痛い……けど、気持ち……いい」
「可愛い顔してる。鏡に映る三葉たちもみんな淫らな格好で気持ち良さそうにしているよ」
「せんせ……こそ、見てないで、自慰、してくださいよ……ん」
「ふふ、三葉がこんな風によがる姿を見ているだけで、ギンギンだよ」

 三葉がローターでピンポイントに性感を刺激できるよう、琉が手早くブラホックを外す。ぽろり、とまろびでてきた乳房の上にローターがあたり、いっそう甘い声をあげた三葉は、彼が自分の分身を片手にオナホを使い始めるのを確認してうふっ、と色っぽく笑う。


「一緒にけるかな……っ?」


 胸元だけでの愛撫だけでは達するのが困難だと悟った三葉はローターを持つ手を止めて、スカートのなかへ腕を伸ばす。下着をずらせば既に潤っている茂みに触れてハァと息をつく。

 ふわり、と青臭い匂いが鼻孔をくすぐる。
 その馴染みのある香りに「え」、と真顔に戻る三葉だったが……

「――こらそこ、手をとめないっ」
「きゃあっ!」

 ローターを止めた三葉を責めるように、いつの間にか背後に潜んでいた琉が抱きつき、両手で胸を弄りだす。乳房を揺さぶられながら三葉は自分の指先で己の秘処を探っていく。

「……んっ、はぁっ」
「三葉くんはいま、自分の指でドコを触っているのかな?」
「――っ」
「恥ずかしがらないで、正直に教えて……君がいつも気持ちよくなれる場所」
「く、くりっ……ふぁ、ああぁ、いやぁあぁんっ!」

 耳元で甘く囁く琉に促されるがまま、うっとりと言葉を紡ごうとした三葉は、ベッドの上に放り出したピンクローターを彼が手に取りふたたびスイッチを入れていたことに気づいていなかった。
 両乳房を揉みしだいていた彼の両手はいつしか片方だけになっており、空いた右手は背後からお尻を伝って彼女の秘芽へ、動かしだしたローターの先端部分を三葉の指先ごと当てたのだ。

 びくびくっと身体を痙攣させ、三葉が甲高い声をあげる。感じたことのない快感の波に一気に浚われた恋人を背後で抱き締めたまま、琉は嬉しそうにローターを持つ手を更に三葉の一番感じる淫核へと押し付けた。

「そ、それいやぁああああっ!」
「いやじゃないだろう? すごく気持ちよさそうだよ」
「だ、だって、変になっちゃ、うっ……あああん!」
「鏡の向こうに映る三葉もとっても気持ち良さそうに悶えているよ。可愛いなぁ……俺もまた・・勃ってきたよ」

 ヴイィイイイイン、という音と共に執拗に三葉の感じる部分を刺激しつづけていた琉だったが、何を思ったのかおもむろに手を放し、彼女の愛液に濡れたローターを目の前で見せびらかす。

 突然迫り来る快楽が遠退いた三葉は呆然としていたが、ハッと我に却り、琉の前で頬を紅潮させる。

 
「せん、せ……?」
「――きたかったよね、ごめん……」


 嘲るような彼の表情に、三葉も察し、諦めの表情を浮かべる。
 やはり彼は既に、達してしまったようだ。
 ベッドに投げ捨てられた使用済みのオナホを横目に、琉は苦笑する。

「だけどほら、俺の分身はまだ……懲りずに勃っているんだ。早漏をいますぐ克服するのは無理だけど……」

 ローターで気持ち良さそうに身体をひくつかせる三葉を見て、琉はやっぱり自分で彼女を組み敷いて、絶頂を極めさせたいと痛感したのだ。


「自慰だけじゃ物足りない。俺が傍にいるときの三葉には、機械じゃなくて、やっぱり俺ので達って欲しいんだ……ダメ?」


 しょんぼりした表情を浮かべながら懇願する琉に、三葉の顔がくしゃりと歪む。
 泣きそうになるのを堪えて、三葉は辛うじて小声で応えていた。


「だ、だめじゃ、ないです……だってわたしも、琉先生に、触れたい……っ!」


 半泣きの表情の恋人に、琉はああもう、と彼女の顎を掬いとって荒々しく口づける。
 舌先を絡めながら、肩を包み、背中を撫で、乳房を辿り、下腹部を通過した琉の両手は、先ほどまで機械に犯されていた秘処へと到達していた。キスだけでとろとろに潤っているその場所を触れられ、三葉が瞑っていた瞳をひらけば、なおも唇を貪っている琉が目を見開いた状態でいたことに気づき、驚きと恥ずかしさで硬直してしまう。


「!」
「準備はできているね……じゃあ今度は、俺がじっくり君を愛する番だよ」
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