劇薬博士の溺愛処方

ささゆき細雪

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劇薬博士の溺愛処方 本編

* 3 * 勃たぬなら、勃たせてみせよ、薬剤師

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 大倉琉が日下部三葉を見初めたのは彼女が病院の調剤室に配属されたときだ。
 ヒールを履いているわけでもないのに高い身長とすらっとした手足。
 清潔感漂うショートカット。涼しげな一重のまぶたに野イチゴのような口唇。
 しわひとつない白衣を着こなす凛とした姿は、女医に間違われてもおかしくないくらい似合っていた。
 大学を出たばかりで必死になって仕事をこなしていた彼女を振り向かせたくて、一目惚れだと騒ぎながらアプローチしてようやく恋人の座を手に入れた。
 けれど彼女からしたら、琉のような強引な男性は迷惑でしかなかったのかもしれない。一緒にいれば笑ってくれたし、セックスの相性も最高だった。仕事で忙しいからそれ以外の時間は傍にいたいと思うのは自然なことだと考えるほどに夢中になった。
 前の彼女もショートカットの薬剤師で美人だったが、ブランド狂で、琉よりも琉の財布を当てにしていたしょうもない女だった。これ以上お金は出せないと言ったら、あっさり別の男に走っていって、泥沼の不倫関係に陥っているとかいないとか……どっちにせよ、琉には関係のない話だ。
 だから同じ薬剤師でも初々しい三葉は愛らしくて、誰にも渡したくなかった。けれどその見えない拘束が、彼女を苦しめていたのかもしれない。
 まさか転職までして距離をおこうとしていたとは、考えもしなかったのだ。

 ――でも、まだ望みはある。携帯の番号は変えてないし、メールをすればそっけなくても返事をくれる。別れようとまでは言われていないのだ。

 三葉が琉の前から姿を消して以来、アッチの方もご無沙汰だ。風俗で抜くことも考えたが、彼女じゃないとヤる気になれない。彼女の姿を思い浮かべてマスターベーションしようにも勃たなくなってしまった。なぜだ。俺はこんなにも彼女を抱きたい気持ちで溢れているのに!

 そんなときだ、生気のない琉を見かねて古くから病院にいる薬剤師が「日下部さんなら東京の叔父夫婦の薬局で働くって言ってましたよ」とこっそり教えてくれたのは。


   * * *


「職場で嫌がらせを受けてた、ってどうして教えてくれなかったんだ」
「だって……琉先生に、迷惑かけたくな……あっ」
「そのうえ転職先で男たちに精力剤を売りつけてるなんて……見つけた瞬間、頭に血が上ってしまったよ」

 そう言いながら琉はベッドの上で三葉を裸に剥き、彼女の腕を背中に回して自分のネクタイで両手首を拘束する。

「あれは……商売だから」
「そ、それでも君が『ピコンピコン精泉液』とか『マムシホルモンオット精』とかいかがわしい言葉を口にしているのを見たら……そそるだろうがっ!」
「そそるって……ひぃ……ぁんっ!」
「奉仕してもらう前に黙って姿を消した罰を与えてやる。いやらしい姿を俺だけに見せるんだ。俺にイジメられて俺なしじゃいられないと思い知るんだ」
「ふぁあんっ……」

 両手を封じられたまま、琉の愛撫を受けてカラダは敏感に反応する。二か月ぶりの行為を待ちわびていたのか、閉店前に口移しで飲まされた精力剤のせいか、まだ触れられてもいないのに蜜壺から愛液が溢れてきているのがわかり、三葉は身悶える。

 ――距離をおこうと思ったのに、追いかけられて、求められて、応じてしまう淫らなカラダ。

 それともこうなることを望んでいたのだろうか。突然姿を消した三葉を求めて必死になって探しに来てくれることを。もう離さないとカラダに刻み付けられることを。

 全身に降り注ぐキスの雨。
 器用な指先は両乳首をつつき、ひねり、つぶし、翻弄させる。
 やがて彼の口づけは下腹部を通過し、淡い茂みの奥の秘芽に到達する。

「りゅ……せんせ……も、もうだめぇ……イくううっ!」

 精力剤なんかなくても絶倫な彼が、自分がいなくなったことで勃たなくなってしまったのならば、奉仕でもなんでもして勃たせなくては。自分ばかりが気持ちよくなることに罪悪感さえ覚えてしまう。

「ああ……琉、せんせ……ほしいの。もっと、太くて、カタい……先生の」
「じゃあ、口で咥えてごらん」

 にやりと笑う琉を見て、快楽の淵に沈んでいた三葉は潤んでいた目を丸くする。
 ズボンを下した彼の男根は、そそり立つまではいっていないが、確かに、反応を見せている。

「……ん」

 素直ではしたない本能に負けて、拘束を解かれた三葉は琉の陰茎をそっと咥え、舌を這わせながら、腰をふるりと震わせた。
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