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Ⅹ センサにて
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しおりを挟む蕩けるような接吻を仕掛けられ、エーヴァはすがるようにダヴィデの肩にしがみつく。ダヴィデはそのまま石壁にエーヴァの身体を預け、貪るように舌を使って巧みなキスをつづけた。結われていた髪がほどけ、肩に散る。
思えばふたりきりでゆっくりできるのは久しぶりだ。ダヴィデもずいぶん我慢していたのだろう。服越しの抱擁では物足りないと手早くドレスを脱がし、冷えきったエーヴァの素肌を撫でさする。
「ふっ……」
「やっぱり冷えてるよ。俺が温めてあげる」
「で、でも」
「イデアも言っていただろ? ゆっくりで構わない、って」
ちゅ、とエーヴァの耳たぶや首筋に口づけを落としながら、ダヴィデはドレスから零れたふたつの胸の膨らみを揉みはじめる。身体を押さえつけられた状態で与えられる刺激に、エーヴァは甘い声を漏らしながら、熾火のように身体を熱く、火照らせてゆく。
すとん、と床の上にドレスと下着を落とされ、青白い裸体が小部屋の窓に浮かび上がり、エーヴァがきゃっ、と悲鳴をあげる。薄暗い室内で目立つその窓は、雪を反射したひかりを受けて、エーヴァたちの恥態を鏡のように照らしていた。
「かわいいよ、エーヴァ。ムラトが欲情しなくてほんとうによかった……」
「ダヴィデ」
「ずっと俺だけのものだから。エーヴァ、雪明かりに照らされたきみの姿も美しいよ。亜麻色の髪が、黄金色の月みたいだ」
黄金の月――それはエーヴァが大切にしているディアーナを彷彿させる言葉。ダヴィデに言われてはじめて、エーヴァは彼女と離れてからもずっと傍にお嬢様を感じていたのだと、自覚する。
「お嬢様の色を、わたしも纏っていたのですね」
「気づいていなかったのか? エーヴァは空に浮かぶ夜の星のような銀の瞳だけじゃない、光の加減で月にも太陽にも似た輝きを見せるその亜麻色の髪だって、とても綺麗だ」
「んっ……」
口づけは胸元に落ちて、先端をちろりと舐めあげる。彼の舌先は熱くて、まるで蝋燭に炎をともしたかのよう。
エーヴァの艶めいた声が濡れた音とともに小部屋に響く。
「……っダヴィデ」
「グーリーたちの事情もあるし、ヴェネツィアに戻るには、しばらく時間がかかりそうだな……だけど、俺はエーヴァと一緒にいられるのならここがヴェネツィアだろうがメテオラだろうが、どこだろうが構わない」
「はぁあんっ!」
立った状態で愛撫され、下肢をひくひくと震わせているエーヴァに、ダヴィデはなおも甘く囁く。
「――ただ、結婚式は別だ。エーヴァ、そうだろう?」
絶頂に追い詰められたエーヴァは媚声をあげながら、素直に頷く。
水の都に戻ったら、なんらかの方法で元首の祝福を受けて、ディアーナお嬢様の前で、ダヴィデと結婚式を挙げるのだ。
その、なんらかの方法、というものが何か、エーヴァも見当がついている。
ただ、一年に一度のその機会が訪れるのは、まだまだ先の話だから――……
いまは考えるのを諦めて、ダヴィデが与えてくれる愛に、溺れる。
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