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Ⅸ 月下美人は商人の花嫁
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しおりを挟む「ん……」
「舌を出して……そう、上手だ」
蕩けるような舌先を絡めて、淫靡な水音を立てれば、未だ触れられていない胸元の突起がツン、と自己主張を始めだす。
目ざとく見つけたムラトの指が、リリの乳首をひょいと摘まんで上下に擦れば、桜色だった先端も朱鷺色に鮮やかに染まり、ムラトを更に興奮させる。
「はじめての子を抱くのは実ははじめてなんだ……だから、加減できないかもしれないけど」
「――んっ」
声にならない声をあげながら、ふるふると首を振って大丈夫だとムラトに伝えれば、彼もまた甘い口づけで彼女に応える。
「なんて健気なんだ……たまらないな」
亜麻色の髪の白銀の姫君――エーヴァを想うがゆえにダヴィデはリリを利用してムラトの前へ現れたのだという。リリもまた、彼らと協力して、テッサロニキから脱出。自分が銀髪銀眼であることを隠していたのはしかるべきときにオスマン帝国に渡る際の切り札とするためだったからで、後宮生まれの母が死ぬ前に口にしていたそのことをリリはイデアにしか話していなかったのだという。
はじめからイデアはリリを白銀の姫君としてムラトに逢わせるつもりだったのだろう。ただ、話をきちんと聞いてもらえる自信がないからと媚薬を作り、ダヴィデに商談として託した。
結果として自分は指輪と白銀の姫君を手に入れられたし、反逆を企んだザイードの身柄も確保できた。だが、彼らからすると、そこになんの利益がもたらされるのだろうか。
どっちにしろ、エーヴァがアリーズの形見である砂漠の薔薇をもとの持ち主に返したい、というところからはじまったという彼らの目的がひとまず果たされたのは事実のようだ。
イデアたちが後腐れなく帰っていったというオスマン兵の報告を受けたムラトはふん、と鼻を鳴らし、寝台に押し倒した状態のリリに問う。
「兄上……いや――イデアは、他に何か」
「いいえ、なにも」
「そう。とんだお人好しだからな……自分のためよりもザイードや、ダヴィデたちや、リリ……お前のために動き回って大変だっただろうに」
――まあ、おれよりは気楽に生きているんだろうけど。
「!」
「すこしは緊張が解けてきたかな。さっきは蕾の部分ばかり苛めてしまったけど、今度はしっかり膣奥まで可愛がってあげるからね」
「ひゃ……んっ!」
銀色の茂みに指先を潜らせ、秘蜜の入り口を探りだしたムラトは、尖った秘芽を指の腹で押しながら、溢れてきた蜜をまぶし、指先で蜜口を解していく。
感じたことのない甘い疼きにリリの腰が浮遊するように軽やかに揺れる。それを眩しそうに見つめたムラトは自身の人差し指をゆっくりと埋めていく。
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