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Ⅸ 月下美人は商人の花嫁
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口移しで飲まされた媚薬は苦味を伴うとろりとしたものだった。けれどもダヴィデが舌先でエーヴァの口腔を撫でていくにつれて、蜂蜜のような甘さが湧きあがってくる。歯列をなぞりながら着衣を乱し、まろびでてきた乳房を両手でこねくりまわしながら、身体を火照らせていくエーヴァへダヴィデが囁く。
「もう蕩けそうな顔をしているのか。いやらしい子だ、観客がいるのに」
「――んっ、言わないで……」
媚薬の効果を確認したいからとイデアとリリが恋人たちの遊戯を遠くから見つめている。
宿の寝台の上を舞台に、ダヴィデとエーヴァは熱い夜を迎えていた。
見られている状況に興奮しているのか、それとも媚薬の効果によるものなのか、すでに素裸に剥かれたエーヴァの身体はほんのり赤く色づき、ダヴィデの裸の背も汗ばんでいる。
イデアたちに見せつけるかのように、ダヴィデはエーヴァの身体を組み敷き、時間をかけて丁寧に愛撫を捧げていく。
口づけは額、頬、髪へと滑り落ち、首筋に真っ赤なベゴニアの花のような接吻の痕を刻んだ後、胸元へとつづく。
乳首の先端は触れられてもいないのに物欲しそうに尖っており、ダヴィデは勝ち誇った表情でそこへしゃぶりつく。
「ひゃああぁんっ……!」
下品で淫らな水音を奏でながら、ダヴィデは乳首を舐められ吸われただけで達しそうな表情を浮かべたエーヴァへ、追い討ちをかけるように手淫を加える。
さざめくようなダヴィデの手がエーヴァの身体に更なる快感を芽吹かせていく。いつしか下腹部を通過し下腿まで伸びた彼の手は、すでに敷布を濡らしている愛液の存在を満足そうに掬い、勃ちあがった淫芽へとまぶしていく。
敏感な場所に与えられた新たな刺激はあっさりエーヴァを陥落させ、ぴしゃん、と海の匂いに似た体液を分泌させた。
朦朧とした表情のエーヴァはそれでも物足りなさそうにダヴィデの方へ潤んだ瞳を向け、もっと気持ちよくなりたいと催促する。
媚薬によって高められた官能は一度潮を吹いただけでは終わらない。
「もっと、もっとぉお!」
自ら求めるエーヴァの獣じみた声を前に、ダヴィデの分身もはち切れんばかりに膨れあがる。ふだんはなかなかねだらない彼女の要求に、ダヴィデもいてもたってもいられないとばかりに襲いかかり、みしりと寝台が鳴動する。
身体を重ねあったふたりはすでに他人の目など気にならない状態になっていた。ダヴィデは腰を振り続けるエーヴァとともに身体を揺らし、汗なのか体液なのかわからない透明な液体を散らしつづける。
子宮の奥で果てるまで蠕動を繰り返しても、膣奥に食らいつかれた灼熱の楔は未だ解放されず、子種と愛蜜によって潤ったなかで繋がった状態のまま、二回戦、三回戦へと突入していく。
すでに恋人たちの甘い声はなく、響くのはミシミシと唸る寝台の上で腰を振るい互いの性器をぶつけ合うパンパンという音だけだ。
――こんなのが、愛を確かめ合う行為なの!?
イデアとリリは圧倒的な性交を前に絶句し、ダヴィデが三度目に達したのを見届けた後、黙って姿を消したのであった。
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