水の都で月下美人は

ささゆき細雪

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Ⅸ 月下美人は商人の花嫁

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 ルクリエンテ公家の手記には呪いにも似たものとして綴られていた、白銀の姫君に関する記述。
 けれどもそれをすべて呪いという言葉で片付けるのはおかしいとダヴィデはエーヴァに告げる。

「男の子だろうが女の子だろうが、俺とエーヴァの子どもなら大丈夫だ」
「……だいじょうぶ」
「そう、何があっても起こっても。俺がエーヴァを手放さないと、月下美人エピフィリウムの花が開いたあの夜に誓ったように」
「――うん」

 ダヴィデから捧げられる口づけは、だんだんと深く、長いものへと変化していく。
 踊り子の装束は乱され、すでに夜の空気を肌で感じて尖りはじめたふたつぶの野苺が、彼の指の腹でぷつんと弾かれて赤く色づいている。
 エーヴァの吐息すら味わうように、ダヴィデは長いキスをして、彼女の胸元をやさしく愛撫していく。
 もどかしいくらい丁寧な彼の愛撫に、エーヴァはあっさり屈し、寝台の上でくたりと身体を沈ませる。
 しゃらん、しゃららんとリリにつけられた耳飾りが揺れていた。

「エーヴァ」
「……あぁ、ダヴィデ」

 唇がはなれ、銀糸のような涎が互いから伝い落ち、敷布を濡らす。
 潤んだ銀色の瞳と、アドリア海の碧い双眸が、交錯する。
 エーヴァの秘密を隠していた下半身もすでにはだけられ、魚の尾びれのような脚衣の飾りは床に散っている。それはまるで、人魚姫が人間に変化して愛を契るかのような、非現実的な光景だ。
 寝台のうえのちいさな世界で、敷布の海に泳ぐふたりは、互いに生まれたままの姿で身体を重ねあい、泡になって消えることのない愛を何度も誓い合う。

 甘い蜜で潤った蜜口を抉る熱い楔を膣奥の深海へ受け入れて。
 息をするのももどかしいくらいの抽挿を繰り返して。
 絶頂に喘ぐエーヴァを更に激しく啼かせたダヴィデは、逃れられないようがっしりと細い腰を掴み、余すところなく子種を注ぎ込む。蜜壁を擦りたて、蜜洞を汚し、なおも溢れる白濁はしとどに濡れたエーヴァの下腿まで滴り、やがて敷布の海へ吸い込まれていく。
 あぁ、ああとエーヴァの甘い啜り泣くような声音が終始鳴りつづけた耳飾りの鈴の音と被さり、寄せては返す波音のように、いつまでもダヴィデの耳底で反響する。
 陸に打ち上げられた魚のようにひくひく痙攣していたエーヴァは、すべてがおわってからも、ダヴィデの首に手をまわしたままだった。
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