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Ⅶ 月下美人と砂漠の薔薇
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しおりを挟むマイヤの復讐に付き合う、というよりはマイヤの行いを糺すために自分を連れ去ったのだと言い出したイデアを前に、エーヴァは頭を抱える。
「……なんか、この尼僧院くせ者ぞろいな気がしてきました」
「だけど貴女も知りたいんじゃない? ルクリエンテのこと」
そうじゃなきゃ、わざわざ水の都からカケオチがてら飛び出して東ローマくんだりまで向かうとは思えないもの。
そう囁かれてエーヴァも渋々頷く。
もしかしたら母親が持ち出した“砂漠の薔薇”の秘密もわかるかもしれない。
ただ、傍にダヴィデがいないだけで……
「マイヤの方はこっちで押さえつけられると思うんだけど、ザイード様がちょっと厄介な方だから」
「その、ザイード様ってどちらさま?」
エーヴァの問いかけと同時に、少女の声が狭い部屋に響く。
「――ちょっとイデア! お客様よ!」
「あら、思ったより早かったじゃない……さすが森の熊さん」
「?」
イデアはきょとんとするエーヴァに微笑み、優しく告げる。
「ダヴィデだっけ、貴女の王子様。さっそく助けに来たみたいよ?」
「うそ」
エーヴァがイデアたちに連れ去られて三日も経っていないというのに、もう場所を特定できたのだろうか。もしかしたらマイヤの動向を危険視していた熊みたいな夫グーリーの活躍が大きいのかもしれない。
ぽかんとするエーヴァを前に、さてどうしましょ、と楽しそうにイデアは部屋を飛び出していく。
「――尼僧院って、男子禁制だった気がするのですが……」
「そうだったよ……」
ぽつりと呟くエーヴァの背後で、尼僧服を着た長身の人影が恥ずかしそうに震えている。
振り向けば、慣れない女装に顔を真っ赤にしながら毒づくエーヴァの想い人がいた。
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