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第三部 溺愛狂詩 大正十二年神無月〜 《 未来 》
そして……喜びの初夜 04
しおりを挟むけれどもそこから時を翔た音寧もまた、童貞だった資へ性の手ほどきをしていたのだ。時空の歪みが生み出した不思議な夫婦の情事にふたりは翻弄されながらも、その結果が、いまに繋がっている。
いま――みんなが倖せになれる未来へ。
現在の自分はその彼と、もう一度はじめから、想いを通じ合わせた状態で、肌を重ね合っている――……こんな、しあわせなことがあって、いいのだろうか。
身代わり同士ではない、正真正銘の岩波山五代目有弦を襲名した資と、時を味方につける破魔の異能を双子の姉からその身に返してもらった音寧が、皆に祝福されながら、祝言をあげて、はじまった初夜の床……
音寧は素直に資の愛撫に身体震わせ、そのまま胸だけで達してしまった。与えられた快楽の余韻に浸る彼女を見て、資が嬉しそうに笑う。
「ふふ。初夜はまだはじまったばかりだよ。おとねの身体はいやらしくて可愛いな」
「あ……んっ、いじわる、しないで。資さま……」
「だけど、いじわるされるのもすきなくせに」
「ひゃん」
そのまま、桜色の夜着を足元から丁寧に脱がされ、音寧は一糸まとわぬ姿になる。かつて未来から来た音寧へ悪魔が遺した蝶の刻印があった心臓の部分はまっさらだと思っていたのに、すでに資がさきほどの愛撫でつけた接吻の赤い花が咲き誇っていた。印を付けられていたことに気づいた音寧は、資の手のはやさに呆れながらも、それだけ強く彼に求められているのだと理解して、ほんのり頬を染める。
「ほら、さわってもいないのに、甘い蜜の香りがする。薬酒なんかいらないだろ」
「アアっ……!」
秘芽を指の腹で軽く押されて、音寧は啼く。
車のなかでスカートのなかから執拗に責められた秘芽は、資に与えられた快感を覚えていたのか、指先で突かれるだけで欲望の芽を膨らませていく。もう片方の手は相変わらず胸を捏ねて、唇でなぞられて。
「だけどこっちはまだ、慣れていないから、ほぐしていかないとね」
「っ、資、さまぁっ」
親指で秘芽を弄りながら蜜口にひとさし指を差し入れた資は、濡れた蜜襞をゆるゆると擦りたて、音寧の疼きをたかめていく。
「気持ちいい? こうやって何も知らない貴女の肉体を自分の手でとろとろにすることができるなんて、夢みたいだ」
「……わたし、も。こうして初夜を迎えることができて……夢みたい」
「あのときの有弦は、掟に縛られて貴女の気持ちを無視していた。綾音嬢の身代わりだと思いこんでいた貴女を、傷つけた」
「それは、もういいの」
かつて起きたかもしれなかった未来を憂えたところで、仕方がない。
いま、音寧は資の花嫁として求められている。音寧もまた、資のことをずっと慕いつづけている。それだけで充分だと、音寧は嘯く。
「異母兄上が言っていた意味がわかった気がするな……俺の運命、俺だけの女神」
「大仰です……ンッ……資さまあ」
「それだけ大切な、宝物なんだよ――時を翔るちからでこの世界に舞い降りた、時翔る嫁」
もう、ぜったいに手放さないと資は音寧に愛の言葉を注ぎながら、時折顔や身体に口づけながら、膣奥を指で探っていく。
資に時間をかけてほぐされた蜜口は、彼の指を容易く三本受け入れるまでに拡がり、愛撫で達する都度分泌させた愛蜜で彼の指先をしっとりと濡らしていた。
「はぁ……た、すくさま……」
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