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第二部 初恋輪舞 大正十二年文月~長月《夏》
悪魔の愛玩人形と初恋の喪失 01
しおりを挟む「いま飲ませたのは、征比呂に作らせた黄色い粉薬の原型になる濃縮魔薬だ。常人が口にしたらそのまま死に至ることの多い猛毒だが、異能持ちは意識を混濁させる程度だという……ほう、先ほどまでのお転婆ぶりが嘘のようにしおらしくなったナァ」
音寧に無理やり魔薬を飲ませた悪魔はくたりと人形のように動かなくなった彼女を抱き上げ、梯子をのぼる。これ以上この場所で魔薬漬けにしたら、今度こそ死んでしまうからだ。それはいただけない。悪魔はまだ彼女で遊び足りないのだ。薬で濡れて発情した裸体を、あの手この手で虐めて快楽に溺れさせたい。愛する男に大切にされた身体を自分の手で滅茶苦茶にして、正気に戻った彼女を深く絶望させたいのだ……
「こうしてみると人形みたいだな。可愛いジャパニーズドール、いまからたっぷり気持ちいいことしてあげるからね」
「ンっ……」
悪魔の囁きと同時に、土色の床から濃緑が芽吹き、瞬く間に紫色の八重咲きの花が顔を見せる。闇色の花のなかへ雪のように白い音寧の身体を横たえた悪魔は、身じろぎする彼女に歓喜する。生きた女を犯すのは久しぶりだ。今まで悪魔が殺した令嬢は、連れ去って薬漬けにして強姦したら簡単に死んでしまったから。
彼女は違う。あの破魔の娘と縁のある姫君だという。異能のちからは弱いが、唯一の男に深く愛され精を与えられていることから極上の香りを放っていた。咲き誇る可憐な花をむしって踏みつけたい衝動に駆られるのは悪魔の性だ。たくさん可愛がって、あの男の元に返したら、彼女はどんな顔を見せてくれるだろう?
ツンと尖ったままの乳首に唇を寄せて、悪魔は意識のない音寧の身体を舐め始める。ぺろぺろ、ぺろぺろと執拗に舐めれば、薬の効能も相まって乳首が赤黒く変色する。
「ハァ……ア……」
「身体は正直だね。このまま絶頂させてあげる」
「……げん、さま?」
「あの男の名を呼ぶ……んでない?」
意識を混濁させたままうっすらと瞳をひらいた音寧は、潤んだ瞳で第三者の男の名を口にする。資と結ばれていた彼女が、別の男の名を無意識に呼ぶとは、どういうことだろう。
「……まあよい。幻の男に追いすがっていられるのも今のうちだぞ」
「ッ……痛い、で、す……有弦さまぁっ……」
接吻の痕が刻まれた左乳房をきつく握り、心臓に近い場所へ新たな傷をつける。はじめは鮮血だった傷が徐々に花の色と同じ、紫色の蝶の形をした紋様へ変わる。白い雪のような肌に自分の痕跡を刻んだ悪魔は安堵の息をつく。これで、彼女を繋ぎとめられる。
いまだに悪魔を認識していないくせに、ふれられて艶めいた声をあげ、身体をひくつかせる音寧は、自分の身体が作り替えられてしまったことに気づいていない。幻の想い人に媚薬を施されて熱く疼く身体を慰めてもらっていると、うっとりした表情で虚空を見つめている。
「アァ、有弦さま……胸ばかり、イヤ……」
「達してしまうから? じゃあ、もっと虐めてあげよう」
「ァ……ンッ、あつい、あついのっ……やぁあん!」
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