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第二部 初恋輪舞 大正十二年文月~長月《夏》

二度目の禊は媚薬とともに 04

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 互いの肌が密着し、湯船に漣が生まれる。
 きつく抱き寄せられ、資の胸板に自分の胸がぶつかることで新たな快感が目覚めていく。

「資さま……のぼせてしまいます」
「俺は貴女にのぼせているよ。だけどそろそろ限界かな……こっちも」
「!」

 音寧の太ももに擦りつけるように、資の屹立が存在を主張していた。何度も有弦の陰茎に膣内を貫かれた記憶を思い出し、頬を朱に染める彼女を切なそうに見つめていた資は、何を思ったのか浴槽から音寧を抱き上げ、すたすたと浴室から外に向かう。

「た、資さま?」
「また、のぼせて倒れてしまっては元も子もない。つづきは寝台で……よろしいか? 姫」

 有無を言わさぬ口調で、資が熱の籠った視線を向ける。気がかりだった淫魔の気配が消えたという資の言葉に嘘は見当たらない。それでいて、彼は今もなお、この先の淫らな行為を望んでいる。もう薬酒の効果は切れてしまっただろうに、資のいきり勃った陰茎の亀頭の先が、抱き上げられた音寧の桃尻にぴたっとくっついている。
 濡れた身体をざっと拭かれ、裸のまま寝台に転がされる。応えない音寧にしびれを切らしたのか、資もまた、素っ裸で彼女の身体にのしかかり、啄むような口づけを仕掛けていく。唇を避けるように、額と瞼、頬と首筋、乳房とお臍、太ももと足の指……口づけられた場所が、発火するように熱を帯びはじめ、戸惑うように音寧が声をあげる。このまま彼と身体を繋げて、精液を身体に蓄積すればいいと、あたまのなかでは理解しているものの、まだ未来の有弦と紐づける決定的な何かが足りなくて、心の準備が追いつかない。けれども身体は与えられる快楽に溺れたそうに、彼の愛撫に反応している。なかに彼を受け入れたいからか、内側からとろりとしたものが溢れ、敷布をあかく・・・濡らす。

「あぁ……はぁ……」
「これを、貴女のなかに突き立てたい……俺を受け入れ……だめだっ!」

 資がおもむろに勃起した分身を手に取り、音寧の蜜口を貫こうとしたそのとき。
 彼の豹変に、音寧は首を傾げる。

「…………え?」

 そして、自分の身体の異変に気づく。
 愛液だと思っていたとろりとした液体から、鉄のような匂いがする。
 敷布があかく染まっている。透明な蜜ではない、これは、経血だ。

「あ……こんな、ときに」
「月の障りがはじまってしまったようだな。着替えを用意するよ。敷布も新しいものにしよう」
「資さま」
「さすがに血まみれになってまでつづけはしないよ……貴女を抱くのはお預けだ。それにしばらくは裸にして愛撫の練習を行うのも無理だな。残念だが仕方ない……」

 これ以上無理をさせてはいけないものな、と資は渋々音寧の身体から離れ、衣装部屋へと消えていく。残された音寧は羞恥で消えたい気持ちになりながら、寝台の傍に据えられていた文机に置かれている懐紙を手に取り、秘処へ当てる。じわりと赤い血が、音寧を正気に戻す。

 ――こちらの世界でも、月のものは来るのですね。有弦さまとの間に、お子はできていなかった……

 精力を高め破魔のちからを綾音から返してもらうまで、懐妊することは無理だと改めて突きつけられて、音寧はため息をつく。
 その姿を遠くから資が見つめていたことに、気づくことなく。
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