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第二部 初恋輪舞 大正十二年文月~長月《夏》
二度目の禊は媚薬とともに 03
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あれからどのくらいの時間が経過したのだろう。
音寧が意識を取り戻したのは浴槽のなかだった。
「資、さま?」
「――すまない、姫」
音寧と向きった状態で抱っこするかのように資が抱えていた。眼帯はつけたままだったが、ふだん身につけている軍服を脱いで素肌を見せている資の姿に、思わずときめいてしまう。
浴槽にはほんのすこしのお湯と、真っ赤な薔薇の花びらが浮かべられていた。噎せ返るような濃厚な花の香りに混じって、前のときには感じなかった野生的な匂いが鼻孔をくすぐる。軍服を脱いだ彼の汗の匂いだろうか。
「禊は?」
「もう、終わった。いまの貴女の身体は清い状態にある」
「え?」
「払魔の手袋にふれられて達したにも関わらず、姫の身体に潜んでいる淫魔は反応しなかった……もしかしたら既に逃げ出したのかもしれない」
「魔が、逃げる?」
「魔を払える俺が姫と繰り返し接触したことで、これ以上姫が魔物の誘惑に屈しず、それ以前に消されかねないと思い知ったか……だからあのとき強い魔の気配が一時的に現れたのか?」
肌を合わせて向き合った状態で落ち着かない音寧を気にするそぶりも見せず、資はぶつぶつと独り言のような推察を拡げていく。
「まぁ、傑や薬種問屋の倅に淫魔がついていって賑やかな帝都で新たな獲物を探しに行ったのかもしれぬ。あの程度の魔物なら街に放ったところで大した影響はないだろう……俺の手で退治できなかったのは残念だが、なんにせよいまの貴女は清らかだ」
「清らかだなんて、買いかぶりすぎです……だってわたし」
有弦と何度も身体を繋げている自分を清らかだと言い切る資に、音寧は思わず反論しようとする。けれどもその声は、彼の唇に吸い取られてしまった。
「んっ」
「姫……いままでの貴女は淫魔に操られていたのだ。思い返す必要もない。これから俺の手で、いままで以上に可愛がってあげるから」
「あぁ……」
「どうか俺の劣情を、鎮めてほしい」
湯のなかでやわやわと乳房を揉みしだかれ、敏感な乳首が薔薇の花弁に負けないくらい濃い色に変化する。いままでの淫らな姿は魔物に操られたものだからと、資は湯船で恥じらう音寧の耳元で甘く囁きながら、自分の手でもっと感じて欲しいと愛撫を繰り返していく。
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