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第一部 新婚夜想 大正十三年神無月〜大正十四年如月《秋〜初春》
すれ違いの蜜夜 03
しおりを挟む――だというのに、俺が有弦を継ぎそっくりな双子の妹を花嫁に迎えたと知って、彼らは裏で蔑んだ。しょせん軍人あがりのお前が、生まれながらの商売人として死んだ異母兄の真似をするのか、と。
口直しを求めるように洋食にも合うという日本酒を水のように飲み、男たちの不愉快な会話から逃れ、甘味を嗜む余裕もないまま店を出て。
西ヶ原の邸に戻れば、主寝室で夫の帰りを素直に待ついじらしい妻。連日の相手で疲れているだろうに、彼女は有弦が戻るまで寝ようとしない。
薄紅色の夜着をまとった音寧は不安そうな顔をしていたが、有弦が求めれば今宵も身体を差し出した。有弦が苛立つほどに。
「……ゆ、有弦、さまぁ」
「貴女はどこもかしこも美味しいね、食後の甘味にぴったりだよ」
「んっ……はぁ、ぁん……っ」
寝台の上へ蝶の標本のようにはりつけて、夜着のリボンをほどけば薄紅色の布が左右にはだけて音寧のふたつの膨らみから臍、下肢の付け根に至るまでまっさらな肌が一気に有弦の視界に現れる。
そのまま胸元へ接吻し、頂を口に含めば瞬く間に彼女の身体は淫らな反応を起こしていく。
れろれろと左右の乳首を舐めまわし、首筋や臍の穴にも舌を這わせば困惑しつつも甘く啼く彼女の声が有弦を悦ばす。
「こちらも美味しそうな蜜が泉のようにあふれているな……」
「きゃっ、有弦さま、そこはダメですっ……!」
顔を下肢の付け根まで動かした有弦は、音寧の言葉を無視して秘芽にむしゃぶりつく。声にならない媚鳴をあげて有弦のあたまに両腕を持っていく彼女に辟易して、彼は一度、顔をあげて呟く。
「――姫。優しくしてあげようと思ったけど、抵抗するならおしおきするよ」
結婚してから、毎晩のように優しく彼女を抱いてきた有弦である。けれど最近は彼女があまりにも素直で、初夜のときのような興奮もほとんどない。
ましてや深酒でふだんより気が立っているいまの状況で、彼女にふれていると、おかしくなってしまう。あのときを思い出して、嗤いたくなる。いま、目の前にいるのは、彼女ではないのに――……
「姫って誰ですか……ゆうげん、さま?」
彼のまとう空気が変わったことに気づいた音寧は、思わず禁句を口にしていた。
結婚した当初から、心のなかで比較していた、もうひとりの時宮の姫君。やっぱり彼は、綾音を――?
瞳を潤ませて、音寧は弱々しく叫ぶ。いつまでも姫扱いなんかされたくない、わたしは……「わたしが」有弦の妻なのだからと。
「やさしくしないで! ゆうげんさままで、わたしを、時宮の姫君なんて呼ばないで……!」
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