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第一部 新婚夜想 大正十三年神無月〜大正十四年如月《秋〜初春》
呪詛と渇望 02
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有弦の楔に貫かれ胎内に精を注がれる都度、音寧は罪悪感に駆られながら悦楽に溺れる。
馴れない身体を開かされ、昼夜問わず繋がりを強要される日々は、音寧の思考を濁らせていく。
「――っああああ!」
主寝室のおおきな寝台で初夜を捧げたのはつい最近のことだと思っていたのに、すでにあの夜から三ヶ月近くが経過していた。
服を着ている時間よりも裸で過ごしている方が多いくらい、音寧は未だ大人の女性になりきれていない未成熟な身体を夫である有弦に晒しつづけている。
昨年の秋に祝言を行ってから、月の障りが訪れていない日を除けば、ほぼ毎日のように西ヶ原の洋館で身体を重ねていた。彼が仕事で邸にいないときは彼が取り寄せてくれた本を読んだり手芸に勤しんだりすることもあったが、たいていは抱き潰されて疲れ切っているため寝台の上で眠って過ごしている方が多い。茶農家にいた頃と比べればずいぶん自堕落な生活である。
年が明け、大正十四年がはじまってからも、音寧は彼に華奢な腰を鷲掴みにされ、がつがつと背後から穿たれていた。正月休みの間は有弦も寝室から一歩も外に出ず、ずっと音寧の傍で、華奢な彼女の身体を愛でつづけていたのだ。
「それにしてもずいぶん色気がついたな」
吐精を終えた有弦ははぁはぁと息を乱す音寧を見下ろし、困惑した表情を浮かべていた。
「……わ、わたしをこんな風にしたのは、有弦さまではありませんか……」
途方に暮れった表情で言い返す音寧を掻き抱き、有弦は自嘲する。
「悪い……君を見ていると、止められないんだ。俺もやっぱり卑劣な岩波の男でしかない……」
「ゆう、げんさま」
初夜が明けたときに、有弦が音寧に話したことを蒸し返す彼を前に、息をのむ。
岩波有弦の名を継いだ者たちを襲う呪詛――渇きにも似た貪欲な性欲と彼に番うことになる女性への執着。
その話を聞いたときは冗談だと思っていた音寧だったが、実際に抱かれると、冗談ではなかったのだと思わずにいられない。
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