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Ⅵ 昼夜の空に月星は揺らぐ * 8 *
しおりを挟む「黒幕は、『夜』の斎神になりかわって『星』を自分のものにして、椎斎だけでなくこの大陸、いや、下手をすると世界まで自分のものにしようとしている。月架ちゃんを殺してすぐに『星』を奪いに来なかったところからして、彼らは時を待っていたんだ」
あたまのなかで考えていたことを一気に吐き出した後、景臣は呼吸を整える。
「たぶん、次代の『夜』の登場を。土地神が降臨していない『夜』の斎であるユイちゃんは、たとえ秘神の一族の末裔であっても、神ではない。月架ちゃんを殺せば土地神の加護も奪えると奴らは考えてたみたいだけど、そうならなかったから、『夜』が空位になった絶好の好機に動かなかった。奴らは『星』の斎の身に封印されている鬼姫を狙っているのと同時に、ユイちゃんに斎神が降臨するのを狙っている。だから」
「とっとと『夜』の騎士に忠誠の儀をさせろってことね」
「土地神に愛された月架ちゃんは死してなお、ここにはいない土地神の意志を汲もうとしている。彼女の肉体が朽ちないのは外法使いの呪いじゃない、彼女自身が最期に願ったことなんだ……三種の神器のひとつである宝珠を使って」
そのことを優夜が気づくまで、景臣は待とうと思った。
けれど状況がそれを許さない。
「彼女の意志を継ぐ『夜』の斎を定めたのは皮肉にも『夜』の騎士ではない、『月』の当主だったけど……月架ちゃんからユイちゃんへ継承させることができるのは、彼しかいない」
三種の神器のうちのひとつである宝珠のちからを月架から由為へ継承させる。そうすれば、由為は『夜』の斎神同様のちからを持つことができるようになる。
「早くしないと、土地神のちからを狙って奴らが動く。邪神を生むわけにはいかないよ」
椎斎に眠る亡き神のちからは、それだけ強大なものだ。月架は死体になってからも、神が降臨した証を身に宿している。彼女を安らかに送るため、『夜』の騎士である優夜は妹である彼女を神器のちからで滅ぼさなくてはならない。残酷だが、次代の『夜』の斎と新たな時間を歩むため、それは仕方のないことだ。
「……そのことも含めて、ジークに会ってくるよ。もしかしたらあの外法使いの少女についても何らかの情報があるかもしれないし」
「そうね……」
何かを考え込んでいるようだったが、樹菜は首肯し、態度を改めて景臣に告げる。
「私の方から『夜』にもそれとなく伝えておきます――いってらっしゃいませ」
「いちいち態度変えなくていいよ。オレが何者であろうが、ミキちゃんはオレを信じてくれるんだから」
「だけど、こういうときくらい礼を尽くさないと……あなたがいるから、逆井の家やこの神社は廃れることなく現在につづいているんだもの」
景臣が『月』の影として逆さ斎の家を守護しているもうひとつの理由。それは『月』の影の所以ともいえる、彼のもうひとつの重要な役割にある。
「褒めても何もでないけど……頼んだよ」
黒い翼を拡げながら、あくまで景臣は軽く振舞うが、樹菜は騙されない。
「仰せのとおりに。当主さま」
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