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chapter,7 Naha → Tokyo
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しおりを挟む年が明けて――……
幸せすぎる年越しを過ごしたマツリカはハゴロモが終着地である東京、晴海ふ頭に船が帰着したのを受けて大慌てで荷造りをしていた。
豪華客船ハゴロモが約三か月間のクルーズから戻って来るとあって、客船ターミナルには出迎えの人だかりができている。
東京港周辺で国内外の豪華客船が接岸するのはこの晴海ふ頭だけで、歴史のある日の出ふ頭や品川ふ頭などは貨物やコンテナ船を扱っていることで知られている。世界一周旅行クラスの豪華客船は横浜港や神戸港を発着地にすることが多いが、『飛翔Ⅱ』よりも総重量が軽く乗客乗組員数が少ないハゴロモは東京港が開港して五十周年を記念して誕生した晴海ふ頭を海の玄関にしているのだ。
「俺は一般客が降りてから、最後にこっそり下船するから……あとで連絡する」
「ん」
今日のマツリカは船上コンシェルジュとしての制服を身にまとったBPWの社員として、カナトの傍にいた。これはハゴロモを日乃から買い取った鳥海の若き海運王が乗船しているとの情報が日本のマスコミに漏れたためだ。お忍びといいながら彼はハワイで上大岡と接触しているし、同じ船には台湾の王氏もいた。ほかにも彼の正体に気づいている人間がいてもおかしくなかったと仕方なさそうに彼は笑っている。
「ほんとうは一緒に下船してマツリカを俺の花嫁だって見せびらかしたいんだけど……まずはお互いの親を説得してからだ」
「気をつけてね」
「俺は大丈夫だよ。それよりマツリカ、貴女の方が心配だ。仕事をしている間はマイルの邪魔も入らないと思うが、くれぐれも」
「大丈夫よ。あたしはハゴロモでコンシェルジュの仕事に戻ってカナトが来るまで待ってるだけだもの。関係者じゃないマイくんが入ってくることはありえないわ。それに、瀬尾さんがついていてくれるんでしょう?」
カナトの護衛として傍に置かれている瀬尾と尾田の二人組だが、カナトとマツリカが別行動をするためカナトは自分のもとに伊瀬と尾田を残して口の堅い瀬尾をマツリカの護衛として残すことにしてくれた。このことは餘江支配人を含むハゴロモの乗組員たちも了承済みだ。
「――そう、だな」
それでもなお名残惜しそうな表情を浮かべて、カナトはマツリカの身体を抱き寄せて口づけをする。
心配しないで、と瞳を潤ませながら、彼女はやさしく微笑んだ。
「待ってる」
* * *
久々にレセプションデスクに戻ったマツリカを迎えてくれたのはミユキをはじめ好奇心旺盛なコンシェルジュたちだった。
「若き海運王との南太平洋クルーズ、お疲れ様。思った通り最後まで手放してくれなかったわね」
「お疲れ様ですミユキ先輩……事情は上司におはなししたとおりなので」
しどろもどろになるマツリカを「かわいい」と茶化しながらミユキは彼女をスタッフルームへ連れていく。
「大変だったわね。荷物はこのままここに置いておいていいわよ。乗客の下船はもう終わってるから、わたしたちの仕事もあとは忘れ物がないかの確認くらいかしらね。一階のセントラルパークとショッピングモール周辺を……」
「あ、あたし行きます!」
先輩の言葉を遮りスタッフルームから飛び出していったマツリカを前に、ミユキは苦笑する。
「……はなしは最後までききなさいよ。あ、瀬尾さんでしたっけ。ちゃんと彼女見ててくださいね。鳥海の若き海運王に見初められた幸運なコンシェルジュを妬む敵は、ハゴロモにもいるんですから」
「む」
マツリカを追いかけようとしたところでミユキに声をかけられた瀬尾は、わかっていると無表情で頷き、大柄な身体を揺らしながら彼女を追いかけていく。
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