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chapter,5 Australia
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「カナト?」
カナトはキスをつづけながらマツリカを下着だけの状態にしてしまう。お酒を飲んでいい雰囲気になったわけでもないのに、彼はマツリカをベッドのうえに組み敷いて、獣のように漆黒の瞳を煌めかせながら、下着の紐をしゅるりとほどいていく。カナトに一方的に身動きを封じられて、あっという間に服を剥ぎ取られてしまった。怖いのに、なぜか焦っている彼の表情から目がはなせない。彼はマイルに嫉妬しているのだろうか。義理の弟でしかないのに。そのうえ「先に見初めた」って……?
「記憶を思い出してもらうまで黙っていようと思ったけど、もう限界だ……クソッ」
「ああっ!」
ブラジャーをずらされ、敏感なふたつの淡いピンク色の頂を指で摘ままれて、嬌声があがる。そのまま顔を近づけられ、れろりと乳暈を舐められる。舌先ではだかの胸元を刺激され、マツリカの身体がひくりと震える。
同時にもう片方の手がショーツを取り除き、すでに甘い蜜を垂らしているそこへ指先を押し込んでいく。感じたことのない異物感と得体の知れない感触に、マツリカはいやいやと首を振る。
「やだ。こわい……こわいよカナト」
「このあいだはここを俺がたくさんキスしてあげたじゃないか。蕩けた表情で気持ち良さそうに達していたのに、指だと怖いの?」
だって、指はマツリカですら知らない場所を探るように花園を探っている。なかを弄られたことがなかった彼女はこの先で彼の欲望を受け入れなくてはいけない現実を前に悲鳴をあげていた。
こわいよ、と涙ながらに頷くマツリカを見て、カナトはハッと我に却る。そして慌てて彼女を抱きしめる。無防備な彼女を憤りだけで壊しそうになっていた自分自身を律しながら、慈愛に満ちた声音で。
「――ごめん」
「カナト?」
嵐のような彼の行為が中断されて、マツリカがきょとんとした表情を見せる。さきほどまで怖いと泣いていたのに、カナトが素直にやめてくれたことに安心したのか、おそるおそる自分から両腕を彼の背中にまわす。ぎゅっと抱きしめて、マツリカが彼の名を呼べば、彼もマツリカの名前を唇に乗せる。
「マツリカ、マリカー、マツリーカ……はじめて貴女に逢ったとき、俺は十歳だった。貴女の父親が、マリカーと呼んでいたからてっきりマリカという名前なんだと思っていたんだ」
「十五年前?」
「そうだよ。夏のおわり、シンガポールで」
この船はシンガポールに向かっているわけではない。
けれど、南太平洋クルーズはシンガポールに近い気候を持つ観光都市を巡りつづけていた。もしかしたらこの先の観光を通してマツリカが自分との出逢いを思い出すきっかけになるかもしれない。
すでにオーストラリアのシドニーまで到達していたハゴロモはタスマン海のクルージングを経てタスマニアを抜けている。明日にはオーストラリア第二の都市メルボルンに寄港する予定だが、その後はインド洋クルージングとなり、クリスマス直前のインドネシアまでノンストップだ。
クリスマスはバリ島で過ごすことになるだろう。できることならそれまでに、カナトはマツリカを自分のものにしてしまいたい。彼女の義弟がマツリカを囲いこむその前に。
「夏の終わり、シンガポールで……」
十五年前の記憶を思い出してもらいたくて言葉を重ねるカナトの真摯な眼差しをもっと見ていたかったマツリカだったが、さきほどまで気を張っていたからか、そのままぷつりと糸が切れたように意識を飛ばしてしまったのだった。
カナトはキスをつづけながらマツリカを下着だけの状態にしてしまう。お酒を飲んでいい雰囲気になったわけでもないのに、彼はマツリカをベッドのうえに組み敷いて、獣のように漆黒の瞳を煌めかせながら、下着の紐をしゅるりとほどいていく。カナトに一方的に身動きを封じられて、あっという間に服を剥ぎ取られてしまった。怖いのに、なぜか焦っている彼の表情から目がはなせない。彼はマイルに嫉妬しているのだろうか。義理の弟でしかないのに。そのうえ「先に見初めた」って……?
「記憶を思い出してもらうまで黙っていようと思ったけど、もう限界だ……クソッ」
「ああっ!」
ブラジャーをずらされ、敏感なふたつの淡いピンク色の頂を指で摘ままれて、嬌声があがる。そのまま顔を近づけられ、れろりと乳暈を舐められる。舌先ではだかの胸元を刺激され、マツリカの身体がひくりと震える。
同時にもう片方の手がショーツを取り除き、すでに甘い蜜を垂らしているそこへ指先を押し込んでいく。感じたことのない異物感と得体の知れない感触に、マツリカはいやいやと首を振る。
「やだ。こわい……こわいよカナト」
「このあいだはここを俺がたくさんキスしてあげたじゃないか。蕩けた表情で気持ち良さそうに達していたのに、指だと怖いの?」
だって、指はマツリカですら知らない場所を探るように花園を探っている。なかを弄られたことがなかった彼女はこの先で彼の欲望を受け入れなくてはいけない現実を前に悲鳴をあげていた。
こわいよ、と涙ながらに頷くマツリカを見て、カナトはハッと我に却る。そして慌てて彼女を抱きしめる。無防備な彼女を憤りだけで壊しそうになっていた自分自身を律しながら、慈愛に満ちた声音で。
「――ごめん」
「カナト?」
嵐のような彼の行為が中断されて、マツリカがきょとんとした表情を見せる。さきほどまで怖いと泣いていたのに、カナトが素直にやめてくれたことに安心したのか、おそるおそる自分から両腕を彼の背中にまわす。ぎゅっと抱きしめて、マツリカが彼の名を呼べば、彼もマツリカの名前を唇に乗せる。
「マツリカ、マリカー、マツリーカ……はじめて貴女に逢ったとき、俺は十歳だった。貴女の父親が、マリカーと呼んでいたからてっきりマリカという名前なんだと思っていたんだ」
「十五年前?」
「そうだよ。夏のおわり、シンガポールで」
この船はシンガポールに向かっているわけではない。
けれど、南太平洋クルーズはシンガポールに近い気候を持つ観光都市を巡りつづけていた。もしかしたらこの先の観光を通してマツリカが自分との出逢いを思い出すきっかけになるかもしれない。
すでにオーストラリアのシドニーまで到達していたハゴロモはタスマン海のクルージングを経てタスマニアを抜けている。明日にはオーストラリア第二の都市メルボルンに寄港する予定だが、その後はインド洋クルージングとなり、クリスマス直前のインドネシアまでノンストップだ。
クリスマスはバリ島で過ごすことになるだろう。できることならそれまでに、カナトはマツリカを自分のものにしてしまいたい。彼女の義弟がマツリカを囲いこむその前に。
「夏の終わり、シンガポールで……」
十五年前の記憶を思い出してもらいたくて言葉を重ねるカナトの真摯な眼差しをもっと見ていたかったマツリカだったが、さきほどまで気を張っていたからか、そのままぷつりと糸が切れたように意識を飛ばしてしまったのだった。
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