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ああ、つまらない。
俺はそんな事を思いながら学校に登校していた。
時間はかなりギリギリで寄り道をすれば遅刻してしまうぐらいだ。
そのため、周りには人は見渡らない。
俺はこの人がいない時間を狙って登校している。
人が居るとほぼ必ずと言っていいほど話し声が聞こえてくる。
まだ車ならいいが、さすがに会話が聞こえてくるのは鬱陶しい。
ああ、隕石でも降ってこないだろうか。
つまらない。
学校にはちゃんと行っている。
が、勉強は生まれつき出来た。
そのため、あまり努力をする必要も無かった。
普通はもっと上を目指すために頑張るのだろうが、生憎そうしようと思う気持ちも、必要性も見いだせなかった。
俺には別に将来に成りたい職業もない。
ならば、給料が多い仕事に就こうってなるのかもしれないが、生憎お金が欲しい訳でも無いし趣味も無い。
あ、趣味ならあるかもしれない。
俺は物語が好きだ。
それも、Bad Endになる話が。
例えば人魚姫だ。
失恋して最後には泡になる。
俺は別に失恋したわけではないがなんだか共感出来てしまう。
俺も似たようなものだ。
勝手に期待してそれを裏切られたと勝手に思った。
俺の性格は決していいとは言えないだろう。
俺は客観的に考えるようにした。
そうすれば悲しみも怒りもあまり湧いてこなくなるからだ。
だから、相手が悲しんでいてもあんまり考えることはない。
世間ではサイコパスと言われるのかもしれないが、少し違う気がする。
俺は相手の心を理解できるが、それをしないようにしている。
罪悪感も感じないようにしている。
けれども、そうしていると、何事もつまらなく感じてしまう。
それと、俺は自分の死を望んでいる。
死ぬと全ては終わりだ。
だから、いくらつまらなくても自殺はしなかった。
どうせ、いつかは死ぬ。
死んだら何も思うことはないのだろうが、なんだか勿体ない気がしたし、死のうと思っても死ねるなんていう自信がなかった。
と、俺の人物像はこんな感じだろう。
少し急ぎ目に歩いていると、いきなり足下に魔法陣が現れた。
幻覚だろうかと思って目を擦ってもう一度見てみると、周りは光でいっぱいで何も見えなくなっていた。
俺は何も分からず意識を手放した。
目が覚めると、周りには甲冑姿の人がいた。
何が嬉しいのかわからないが、歓声を挙げている。
少し聞き取りづらかったが、成功だ、と勇者、というのが聞こえた。
これは夢なんだろうか。
だが、俺にはこんな願望は無いし何より違和感がありすぎる。
確か登校中だったはすだ、それに魔法陣があったのを覚えている。
なら、現実の可能性は高いだろう。
ならば、ここは下手に動かず相手の指示に従うのと相手にいい印象を与えておくのがいいだろう。
俺は友達が多くいた。
昔作った友達だが、縁は中々切れることは無かった。
それに、人の観察は楽しかった。
だから、自分から関わりにもいったし、表情を作るのは毎回やっていた。
そのため、表情を作るのは得意だった。
少し待っていると、ドレスを着た気品のある女性が出てきた。
歳は俺といい勝負ってところじゃないだろうか。
「初めまして勇者様。 私はこの国、アルサース王国の第1王女でございます。 いきなりの事で戸惑っていらっしゃることでしょう。どうぞ知りたいことを質問なさってください。」
どうやら質問していいみたいだ。
だが、大体は予想できる。
ここは、目的と勇者としての力を聞いておくべきだろう。
あまり不安では無いが、ここは不安そうな感じの表情で言った方がいいだろう。
「ならば質問させていただきます。 まず、私をここに召喚した理由を教えていただいていいでしょうか?」
「はい。理由は一つです。魔王を倒していただくためです。
魔王は身体能力が極めて高いです。それに魔力量が多く魔法に陣を必要としません。
魔法を使うには魔法陣を描く、または詠唱する必要があり、魔力を使って発動します。
しかし、魔王にはそれが必要無いのです。
そのため、魔王は1人で一騎当千の力を持っています。
勇者もそれと同じで、一騎当千の力を持っています。
大体は魔王と同じです。
勇者はそれに加えて特殊な力を持っていたと書に書かれていました。」
聞きたい事は大体聴けたな。
きっとあらかじめ考えてあったんだろう。
特殊な力・・・か。
どんな力かはわからないんだろうか?
まあ、もう一つ知りたい事を聞いてそれ以外は後程分かるだろう。
「勇者として召喚される条件と帰る事はできるんですか?」
「はい。勇者としての条件は素質と生まれつき正義感が強い人です。
あと・・・帰れるかなんですが、無理です。申し訳ありません。」
ふむ、正義感が強い・・・ね。
ならば、暫くは正義感が強いように見せておくか。
俺の場合生まれつき正義感は強いだろう。
が、それは客観的に考えることで理性で抑え込んでいる。
そう、押さえ込んでいるだけで、正義感は強い。
だからその条件に当てはまってしまったんだろう。
だが、正義感が強くても、絶望すればみんな正義感なんて押さえ込んでしまうんだろう。
いや、普通はなくなってしまうんだろう。
きっと俺はまだ絶望していないんだろう。
いや、今はよそう。
まずは微笑みを浮かべて言うべきかな。
「いえ、謝る必要はないでしょう?確かに私はいきなり召喚された被害者です。
しかし、貴方は自分のためだけではないでしょう?」
そう、人は自分のためではなく、人のためならどんなことでも出来る。
正しいと思えばなんでも出来るのだ。
「ありがとうございます。
えーっと、あと父と謁見していただきます。
ですので着いてきてください。」
王女は俺の言葉に涙目を浮かべてから言った。
これで、この人達には良い印象を与えられただろう。
「はい。分かりました。」
俺は笑顔で頷いた。
俺は王女について行ってある小部屋に通された。
すると、高そうな服を着た人と30代前後辺りの女性がいた。
「お父様、勇者を連れてきました。」
「ふむ、席に着くといい」
こうゆうのはどうするべきだろう?あまり王様の対応とか知らない。
とりあえず不敬をかわないように謙虚に行こう。
ということで王女に目を向けると頷いてくれた。
完璧だろう。
「初めましてだな勇者よ。
我の名はアルサース・ヴァン・ハルサス。
して、お主の名はなんと言う?」
俺の名前か。
普通に答えてもいいのだが、俺の名を勇者として語り継がれるのは嫌だ。
ここで、新しく作ろう。
俺の望みは死ぬこと。
ならば、破滅からとってルーアンなんていいんじゃないだろうか。
この世界の人々は王様の名前からしてこんな感じだろう。
「私の名前はルーアンと申します。」
「そうか、勇者よ。
お主は戦ったことがあるか?」
戦ったこと・・・か。
ないに決まっている。
いや、この世界の人からしたらもしかしたら当たり前の事なんだろう。
全く良いか悪いか分からないな。
確かに死にたいが、苦労して死にたい訳じゃない。
「いえ、一度も無いです。」
「そうか。
ならば、明日から騎士として訓練してもらいたい。
だが、いきなり出生もわからぬ者を優遇すれば不審に思われる。
よって、明日からは町に行き訓練してもらう。
心配しなくても、勇者として旗頭になるだけでも兵の指揮は上がる。
お主は魔王と一騎打ちをすれば良い。
勝たなくても相手を弱らせばよい。」
どうゆう事だ?勝てるかの心配をしていると思われたのか?
何故?勇者だから?これはまるで捨て駒として扱われてないか?
いや、勇者なんてそんなものか。
強くて正義感が強いだけの人間。
相手の認識はそんなものだろう。
それに、俺がもし魔王に勝った場合はただの危険分子だ。
使う場所もありはしない。
これでは先に待っているのは死しかない。
幸い勇者がいることを知っているのは1部の人間だけ。
発表する前にトンズラするべきだろう。
ならば、ここはバレずに正義感が強いだけの人間を演じようではないか。
「それなら良かった。 誠心誠意頑張らせていただきます。」
「ならばよい。 部屋は使用人に案内させる。 今日は休むがいい。」
俺はそのまま退室して使用人に案内されて部屋に入った。
休もうと思ったが中々眠れない。
いや、それには語弊があるか。
全く眠気を感じない。
それどころか疲れすらも感じない。
これもきっと勇者の力なんだろう。
眠ることすら出来ないとは思わなかったが。
腹が減ったら使用人に言うように言われているが、減る様子もない。
俺は使用人に出ていってもらうことにして鍛えることにした。
暇でやることがない。
本ならあるだろうが、文字が読めるとも限らないし、そんな気分でもない。
暫く腕立てと腹筋をしているが、疲れる感じがしない。
体が軽くなったように感じた。
だが、やはり暇で使用人を呼んで本を持ってきてもらうことにした。
そして、予想通り文字は読めなかった。
俺はそのまま文字を教えてもらい朝まで勉強していた。
だが、やはり朝になっても体は疲れていないし精神も疲労しているように感じない。
俺は本を読んでいるとドアが空いて誰かが入ってきた。
シャツを着たムキムキ男の人だった。
「よう、お前が勇者だな?今から飯を食って俺についてこい。」
そうは言われても腹は減っていない。
「いえ、食事はもう既に済ましました。準備も無いのでこのまま行きましょう。」
「そうか、じゃあ行こうか。」
俺は男の人について行った。
城を出ると走って向かった。
男の方を見ると余裕そうだ。
きっと俺に合わせているんだろう。
しかし、俺は疲れないどころか全然走っているように感じなかった。
「すいません。もっと速度上げていいですよ。俺勇者なんで結構速度出せると思いますよ」
「そうか。よし、ならもっと速度上げるぞ。」
男はそう言って笑った。
しばらく走っていると屋敷に着いた。
どうやらここの屋敷のようだ。
「よし、まずはもう1人も呼んでくるか。少しそこで待っといてくれ。」
暫く待っていると、ローブを着た女性がやって着た。
女性ほこちらを向くとニコッと笑った。
「初めまして。
私は今日からあなたに魔法の使い方を教えるようにと言われているの。
それと私の名前はアメリア。
よろしくね。」
「はい。よろしくお願いします。」
俺は笑顔でそう言って握手した。
「次は俺だな。俺は剣の指導を任されている。アドルノって呼んでくれ。これでも騎士団の副団長だ。」
ムキムキの男性はアドルノと言うみたいだ。
「はい。あとは俺の名前ですね。俺の名前はルーアンと言います。こちらこそ頑張るのでよろしくお願いします。」
俺はそのあと、剣術と魔力のやり方を学んだ。
それから順調に進んでいると思っていたが、違和感があった。
疲労を感じない。
魔法は無詠唱で使うことができ、剣術も順調だった。
しかし、いくら魔法を使ってもいくら剣を振ろうと疲労を感じない。
模擬戦で何度か攻撃を受けたが、怪我をしなかった。
いや、したかもしれないが、剣が離れたあとには傷は無かった。
だが、痛みを感じなかった為、頑丈なんだろうと思って気にしないことにした。
あとは食事が必要なかった事だ。
仕方なく食べていたが、食事前にお腹が減る事は無かった。
これは能力によるものだったが、この時の俺は思いもしなかった。
まさかこの能力によって俺の望みが叶わなくなるなんて。
俺はそんな事を思いながら学校に登校していた。
時間はかなりギリギリで寄り道をすれば遅刻してしまうぐらいだ。
そのため、周りには人は見渡らない。
俺はこの人がいない時間を狙って登校している。
人が居るとほぼ必ずと言っていいほど話し声が聞こえてくる。
まだ車ならいいが、さすがに会話が聞こえてくるのは鬱陶しい。
ああ、隕石でも降ってこないだろうか。
つまらない。
学校にはちゃんと行っている。
が、勉強は生まれつき出来た。
そのため、あまり努力をする必要も無かった。
普通はもっと上を目指すために頑張るのだろうが、生憎そうしようと思う気持ちも、必要性も見いだせなかった。
俺には別に将来に成りたい職業もない。
ならば、給料が多い仕事に就こうってなるのかもしれないが、生憎お金が欲しい訳でも無いし趣味も無い。
あ、趣味ならあるかもしれない。
俺は物語が好きだ。
それも、Bad Endになる話が。
例えば人魚姫だ。
失恋して最後には泡になる。
俺は別に失恋したわけではないがなんだか共感出来てしまう。
俺も似たようなものだ。
勝手に期待してそれを裏切られたと勝手に思った。
俺の性格は決していいとは言えないだろう。
俺は客観的に考えるようにした。
そうすれば悲しみも怒りもあまり湧いてこなくなるからだ。
だから、相手が悲しんでいてもあんまり考えることはない。
世間ではサイコパスと言われるのかもしれないが、少し違う気がする。
俺は相手の心を理解できるが、それをしないようにしている。
罪悪感も感じないようにしている。
けれども、そうしていると、何事もつまらなく感じてしまう。
それと、俺は自分の死を望んでいる。
死ぬと全ては終わりだ。
だから、いくらつまらなくても自殺はしなかった。
どうせ、いつかは死ぬ。
死んだら何も思うことはないのだろうが、なんだか勿体ない気がしたし、死のうと思っても死ねるなんていう自信がなかった。
と、俺の人物像はこんな感じだろう。
少し急ぎ目に歩いていると、いきなり足下に魔法陣が現れた。
幻覚だろうかと思って目を擦ってもう一度見てみると、周りは光でいっぱいで何も見えなくなっていた。
俺は何も分からず意識を手放した。
目が覚めると、周りには甲冑姿の人がいた。
何が嬉しいのかわからないが、歓声を挙げている。
少し聞き取りづらかったが、成功だ、と勇者、というのが聞こえた。
これは夢なんだろうか。
だが、俺にはこんな願望は無いし何より違和感がありすぎる。
確か登校中だったはすだ、それに魔法陣があったのを覚えている。
なら、現実の可能性は高いだろう。
ならば、ここは下手に動かず相手の指示に従うのと相手にいい印象を与えておくのがいいだろう。
俺は友達が多くいた。
昔作った友達だが、縁は中々切れることは無かった。
それに、人の観察は楽しかった。
だから、自分から関わりにもいったし、表情を作るのは毎回やっていた。
そのため、表情を作るのは得意だった。
少し待っていると、ドレスを着た気品のある女性が出てきた。
歳は俺といい勝負ってところじゃないだろうか。
「初めまして勇者様。 私はこの国、アルサース王国の第1王女でございます。 いきなりの事で戸惑っていらっしゃることでしょう。どうぞ知りたいことを質問なさってください。」
どうやら質問していいみたいだ。
だが、大体は予想できる。
ここは、目的と勇者としての力を聞いておくべきだろう。
あまり不安では無いが、ここは不安そうな感じの表情で言った方がいいだろう。
「ならば質問させていただきます。 まず、私をここに召喚した理由を教えていただいていいでしょうか?」
「はい。理由は一つです。魔王を倒していただくためです。
魔王は身体能力が極めて高いです。それに魔力量が多く魔法に陣を必要としません。
魔法を使うには魔法陣を描く、または詠唱する必要があり、魔力を使って発動します。
しかし、魔王にはそれが必要無いのです。
そのため、魔王は1人で一騎当千の力を持っています。
勇者もそれと同じで、一騎当千の力を持っています。
大体は魔王と同じです。
勇者はそれに加えて特殊な力を持っていたと書に書かれていました。」
聞きたい事は大体聴けたな。
きっとあらかじめ考えてあったんだろう。
特殊な力・・・か。
どんな力かはわからないんだろうか?
まあ、もう一つ知りたい事を聞いてそれ以外は後程分かるだろう。
「勇者として召喚される条件と帰る事はできるんですか?」
「はい。勇者としての条件は素質と生まれつき正義感が強い人です。
あと・・・帰れるかなんですが、無理です。申し訳ありません。」
ふむ、正義感が強い・・・ね。
ならば、暫くは正義感が強いように見せておくか。
俺の場合生まれつき正義感は強いだろう。
が、それは客観的に考えることで理性で抑え込んでいる。
そう、押さえ込んでいるだけで、正義感は強い。
だからその条件に当てはまってしまったんだろう。
だが、正義感が強くても、絶望すればみんな正義感なんて押さえ込んでしまうんだろう。
いや、普通はなくなってしまうんだろう。
きっと俺はまだ絶望していないんだろう。
いや、今はよそう。
まずは微笑みを浮かべて言うべきかな。
「いえ、謝る必要はないでしょう?確かに私はいきなり召喚された被害者です。
しかし、貴方は自分のためだけではないでしょう?」
そう、人は自分のためではなく、人のためならどんなことでも出来る。
正しいと思えばなんでも出来るのだ。
「ありがとうございます。
えーっと、あと父と謁見していただきます。
ですので着いてきてください。」
王女は俺の言葉に涙目を浮かべてから言った。
これで、この人達には良い印象を与えられただろう。
「はい。分かりました。」
俺は笑顔で頷いた。
俺は王女について行ってある小部屋に通された。
すると、高そうな服を着た人と30代前後辺りの女性がいた。
「お父様、勇者を連れてきました。」
「ふむ、席に着くといい」
こうゆうのはどうするべきだろう?あまり王様の対応とか知らない。
とりあえず不敬をかわないように謙虚に行こう。
ということで王女に目を向けると頷いてくれた。
完璧だろう。
「初めましてだな勇者よ。
我の名はアルサース・ヴァン・ハルサス。
して、お主の名はなんと言う?」
俺の名前か。
普通に答えてもいいのだが、俺の名を勇者として語り継がれるのは嫌だ。
ここで、新しく作ろう。
俺の望みは死ぬこと。
ならば、破滅からとってルーアンなんていいんじゃないだろうか。
この世界の人々は王様の名前からしてこんな感じだろう。
「私の名前はルーアンと申します。」
「そうか、勇者よ。
お主は戦ったことがあるか?」
戦ったこと・・・か。
ないに決まっている。
いや、この世界の人からしたらもしかしたら当たり前の事なんだろう。
全く良いか悪いか分からないな。
確かに死にたいが、苦労して死にたい訳じゃない。
「いえ、一度も無いです。」
「そうか。
ならば、明日から騎士として訓練してもらいたい。
だが、いきなり出生もわからぬ者を優遇すれば不審に思われる。
よって、明日からは町に行き訓練してもらう。
心配しなくても、勇者として旗頭になるだけでも兵の指揮は上がる。
お主は魔王と一騎打ちをすれば良い。
勝たなくても相手を弱らせばよい。」
どうゆう事だ?勝てるかの心配をしていると思われたのか?
何故?勇者だから?これはまるで捨て駒として扱われてないか?
いや、勇者なんてそんなものか。
強くて正義感が強いだけの人間。
相手の認識はそんなものだろう。
それに、俺がもし魔王に勝った場合はただの危険分子だ。
使う場所もありはしない。
これでは先に待っているのは死しかない。
幸い勇者がいることを知っているのは1部の人間だけ。
発表する前にトンズラするべきだろう。
ならば、ここはバレずに正義感が強いだけの人間を演じようではないか。
「それなら良かった。 誠心誠意頑張らせていただきます。」
「ならばよい。 部屋は使用人に案内させる。 今日は休むがいい。」
俺はそのまま退室して使用人に案内されて部屋に入った。
休もうと思ったが中々眠れない。
いや、それには語弊があるか。
全く眠気を感じない。
それどころか疲れすらも感じない。
これもきっと勇者の力なんだろう。
眠ることすら出来ないとは思わなかったが。
腹が減ったら使用人に言うように言われているが、減る様子もない。
俺は使用人に出ていってもらうことにして鍛えることにした。
暇でやることがない。
本ならあるだろうが、文字が読めるとも限らないし、そんな気分でもない。
暫く腕立てと腹筋をしているが、疲れる感じがしない。
体が軽くなったように感じた。
だが、やはり暇で使用人を呼んで本を持ってきてもらうことにした。
そして、予想通り文字は読めなかった。
俺はそのまま文字を教えてもらい朝まで勉強していた。
だが、やはり朝になっても体は疲れていないし精神も疲労しているように感じない。
俺は本を読んでいるとドアが空いて誰かが入ってきた。
シャツを着たムキムキ男の人だった。
「よう、お前が勇者だな?今から飯を食って俺についてこい。」
そうは言われても腹は減っていない。
「いえ、食事はもう既に済ましました。準備も無いのでこのまま行きましょう。」
「そうか、じゃあ行こうか。」
俺は男の人について行った。
城を出ると走って向かった。
男の方を見ると余裕そうだ。
きっと俺に合わせているんだろう。
しかし、俺は疲れないどころか全然走っているように感じなかった。
「すいません。もっと速度上げていいですよ。俺勇者なんで結構速度出せると思いますよ」
「そうか。よし、ならもっと速度上げるぞ。」
男はそう言って笑った。
しばらく走っていると屋敷に着いた。
どうやらここの屋敷のようだ。
「よし、まずはもう1人も呼んでくるか。少しそこで待っといてくれ。」
暫く待っていると、ローブを着た女性がやって着た。
女性ほこちらを向くとニコッと笑った。
「初めまして。
私は今日からあなたに魔法の使い方を教えるようにと言われているの。
それと私の名前はアメリア。
よろしくね。」
「はい。よろしくお願いします。」
俺は笑顔でそう言って握手した。
「次は俺だな。俺は剣の指導を任されている。アドルノって呼んでくれ。これでも騎士団の副団長だ。」
ムキムキの男性はアドルノと言うみたいだ。
「はい。あとは俺の名前ですね。俺の名前はルーアンと言います。こちらこそ頑張るのでよろしくお願いします。」
俺はそのあと、剣術と魔力のやり方を学んだ。
それから順調に進んでいると思っていたが、違和感があった。
疲労を感じない。
魔法は無詠唱で使うことができ、剣術も順調だった。
しかし、いくら魔法を使ってもいくら剣を振ろうと疲労を感じない。
模擬戦で何度か攻撃を受けたが、怪我をしなかった。
いや、したかもしれないが、剣が離れたあとには傷は無かった。
だが、痛みを感じなかった為、頑丈なんだろうと思って気にしないことにした。
あとは食事が必要なかった事だ。
仕方なく食べていたが、食事前にお腹が減る事は無かった。
これは能力によるものだったが、この時の俺は思いもしなかった。
まさかこの能力によって俺の望みが叶わなくなるなんて。
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