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四話

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 「シュウ様には昨日挨拶させていただいたな。  これから勇者様方に魔法を教えさせていただくトムだ。  ハヤト殿よろしく頼む」

 「こちらこそよろしくお願いします。  それでいくつか質問したいのですが、いいですか?」

 「いいのだが、何が聞きたいのだ?」

 「えーっと、まず俺の質問にちゃんと答えてもらえますか?  嘘とか何も答えないとか無しで」

 「もちろんだ。  私が嘘を言う理由がない」

 「言いましたね先生?  では、まず歳は幾つですか?」

 「好きな食べ物か。  特に嫌いなものとかは無いが」

 「いえ、別に嫌いなものとか聞いてないです。  好きな食べ物はなんですか?」

 「す、すまない。  好きな食べ物は駆使焼き肉だ」

 「へぇ。  なんか微妙ですね。  そこはお母さんの作ったご飯とか言うと思ったのに」

 「ちょ、ちょっと失礼ではないか?」 

 何を言っているんだこの人は。  先生の質問に失礼なんえないだろうに。

 「ぼ、僕もどうかと思うよ?」

 「え?  周は先生に質問することに失礼だって言うの?」

 「違うよ!  質問はいいかもしれないけど、その感想がダメだって言ってるんだよ」

 「あー、なるほど。  確かに思ったことは口に出しちゃダメだもんな。  ごめんな先生。  つい思ったこと言っちゃって。  本音だからついうっかり出ちゃったんだよ。  悪意ではなく本音を言わないようにするのは大変だよね?」

 「あぁ」

 「ああ!  トムさん!  隼人絶対悪意あるよね!?  何回も本音本音言って!  トムさんが可哀想だよ!」

 周がそう叫んだ。  そして俺はトム先生を見ると、ぐったりとして疲れたようだった。

 「大丈夫?  あーあ、周やらかした。  俺もっと普通の質問したかったのに」

 「うん、確かに普通のことしか・・・・・・普通のこと意外って何聞く気!?」

 「まぁ普通のことだよ。  それでトム先生や。  今までの交際経験は?」

 「・・・だよ」

 トム先生はボソボソと言った。  全く聞こえない。   多分伝える気がないんだろう。

 「トム先生?  ダメだよ。  ちゃんと聞こえる声で言わないと言ったことにならないと思うよ?  俺は先生がそんな屁理屈野郎だなんて思ってないから、ほら、もう一度大きな声で言ってみよう。  俺もゼロだから」

 「あれ?  さっき非童貞だって叫んでなかった?  それに、今聞こえない振りした?」

 「俺もゼロだ!  今までろくに話したこともないし、付き合ったことはおろか触れたこともほとんどない!」

 「うわぁ、それは大変だね。  俺がマリヤって女性紹介してあげるよ。  性格はちょっときついかもだけど、とっても美人だから」

 「やめて!  二人ともやめよう!  あっちの三人が何してんだって顔でこっち見てるから!」

 ほんとに周はギャーギャーうるさいことこの上ない。  元気だね。  俺は元気な子は・・・・・・普通だな。

 「それで次の質問です。  先生は魔法使いですか?」

 なんかこっちを疑わしそうに見てくる。  なんだよ。  さっきから普通の質問だろうに。

 「ああ、そうだが?」

 「えー、では、魔法使いは前の人に危ない戦闘を任せて、後ろから支援したり魔法を撃ったりして、もし前の人が負けたら逃げ出すような職業ですか?」

 「・・・・・・」

 なんか無言だ。  俺は魔法使いがいかに楽な職業なのか聞きたいだけなのに。  もし楽なら俺が楽できる。  ま、ちょっとイタズラもあるけどね。

 「先生こた」

 「そんなことないよ!」

 「この世界に召喚されたばかりの周に何がわかるんですか?  あなたはたった三日ですよね?  それなのに俺の質問に勝手に答えて間違った知識でも植え付けようとしてるんですか?  ねぇ、そこんところはどうなんですかねぇ?」

 「うぅ、それは」

 「周様、いいんだ。  もう」

 「トムさん・・・・・・」

 トム先生は周の肩に手を置いて力なく首を振った。  それを周は悲しそうな表情で見ている。  うんうん、熱いねぇ。  友情からの恋愛なんてやめてくれよ?

 「そうだ。  ハヤト殿言う通り魔法使いはずるくてせこくて楽な仕事だ。  魔力が無くなれば荷物になるが、逆に魔力が無くなるからという理由であまり戦ったりしないで済むからな」

 「いいですね先生!  魔法使い最高じゃないっすか!  俺に魔法を使えるようにしてください!」

 「・・・・・・」

 「隼人くん、もうやめようよ。  トムさんが膝をついて魂抜けたみたいに、あっ!  今なんか煙見えなかった?  なんかめっちゃショック受けてるよ!」

 「はぁ、先生早く正気に戻ってください。  そして俺に後ろで楽できるように魔法を教えてください」

 「あーあ、しゃあねぇな。  じゃ、まずは魔力ってのを感じとこうかな?」

 俺はそう言うとトム先生の方を揺すっている周から少し離れる。  多分指輪を外せば魔力が出るんだろう。  抑えたってことは溢れていたってことだ。  多分、周と同じやつが言語を理解するための指輪。  だから、それとは違うのだな。

 俺は指輪を外す。  すると、体の内から魔力が溢れ出した。

 「ぐっ、なんだこれ!  量がおかしいだろ!」

 地面はヒビ割れ、石は粉々になっていく。  俺はまるで濁流のように流れ出す魔力を抑えようとなんとか堪える。  しかし、それは治まる気がしない。  まるで空気や地面を喰らうようにして増えて行く。

 「どうすれば!」

 俺は膝をついて丸まった。  少しの間魔力と格闘していると、だんだんと動かせるようになり、体の内側に引っ張ることが出来るようになった。  だが魔力は増えて行く。

 「この増えるのをどうにかしないと!  だが、どうすれば・・・・・・」

 そういえばこの魔力はなんだろうか?  そもそもなんて言っていた?  これはそういう体質なんだと言っていた。  ならば切り離せばどうなる?  今までに俺と同じ体質のやつは居たのだろう?  なら、きっと方法はある。

 死んだ子供の魔力は持ち主にも帰っていった。  それは分かる。  この魔力のタチの悪いところはこの帰ってくるところだ。  それによって体が耐えきれなくなり、少しずつ壊れていく。  今の俺の体からもブチブチと気味の悪い音が聞こえている。  断言出来る。  これはやばい音だって。

 だけど、死んだ人間の魔力はどうなった?  多分だが、魔力はそのまま放出か取り残されたんだろう。  
 だが、そしたらこの世界の魔力は全て喰らう魔力によって喰らわれているはずだ。  だけど、そうなっていない。  ってことは、それはその性質が無くなったってことだ。

 では何故魔力の性質は消えた?  簡単だ。  本体が死んだから。  ならば、本体が死ぬ以外は?  それは、多分だが切り離せばいい。  俺と魔力を切り離せば、それはもう俺の魔力じゃない。  俺のだった魔力だ。

 よし、そうと分かればやるだけだ。  俺は魔力を切り離すよう操作する。  だが、吸っては増えてを繰り返す魔力を切り離すのはとても難しい。  なんか魔力はそこら中に溢れているようで、無くなる気がしない。

 「大丈夫かい!  隼人くん!」

 なんか少し増えたと思ったら俺の近くには周が居た。  辺りを見回すと、他の人達は誰も居ない。  どうやら避難したようだ。

 「周は大丈夫なのか?」

 「身体強化魔法を使っているからね。  それに結界魔法も使ってもらったし、魔力をゴリゴリと削られてるけど、僕は勇者だからね。  普通の人よりもかなり多いんだよ」

 「何が多いだよ。  やめろよ。  お前のせいで体に入ってくる魔力増えただろうが」

 俺はそう言いつつも、口元を緩める。  これだからイケメン野郎は嫌なんだ。  馬鹿みたいなことをしているのに、それを否定しきれない。  なんだか俺も馬鹿になってしまったみたいだ。

 「で、どうして身体強化魔法なんて使えんだよ?  さっき使えないって言ってただろ?」

 「あぁ、さっきはね。  使えなかったと言うより、使ったことがなかったと言った方が良かったかな?  一様僕はあの三人とも一緒に魔法の訓練をしていたんだよ?  詠唱ぐらい知っているさ」

 「さすが勇者様。  チートだねぇ。  それで、何しに来たんだ?  まさか、俺を茶化しにか?  それとも応援・・・・・・の方が嫌だなぁ。  なんか気持ち悪い」

 男子にわざわざ体を張って応援してもらっても、ねぇ?

 「違うよ!  いや、応援しにも来たけど!  えっと、詠唱を教えに来たんだよ。  結界魔法の。  それを使えばどうにかなるかもって言われて」

 「結界魔法?  ああ、それで遮断出来るかもか。  よし、無理だ。  俺にはお前とは違ってチーターじゃないんだよ。  魔法なんて使えねぇ」

 「え?  隼人の方がチーターだと思うけど?  僕これでも努力したんだよ?  それなのに・・・・・・でもなんか直ぐに自爆して死んじゃいそうだね」

 「うるせぇ!  それ以上言うと、召喚されたメンバー1人1人にお前の好きな人を適当に教えてやるぞ!」

 「なんて悪質な!  それよりも今から詠唱するからちゃんと聞いてね」

 そう言って周はなんか呪文を言った。  顔が赤いのを見るに、きっと恥ずかしいんだろう。

 「うわぁ、無理だよ。  俺指輪嵌めてさっさと諦めるわ。  俺にはそんな恥ずかしいこと無理だぞ」

 「僕だって恥ずかしいの我慢して言ったんだから、隼人もちゃんと言ってよ」

 「くそぅ!」

 俺は仕方なくさっき周が言っていた魔法を唱える。  そして、コーティングするように魔力を操作し、イメージし、叫ぶ。

 《封魔結界》

 すると、魔法はイメージ通りに成功した。  封魔結界の外にある魔力はそのまま空気中に溶けて消えた。

 「よっしゃ!」

 だが、すぐにコーティングの内側から魔法が打ち消されかけているのに気づいた。

 「はぁ!?  くそっ!  封魔結界なんてカッコイイ名前ついてんのになにやられてんだ!  ちゃんと仕事しやがれ!」

 俺は魔力を抑え込む。  それでも溢れた魔力は封魔結界の脆くなった部分を治すようにし、ひたすら結界を壊さないようにしばらくうずくまる。

 しばらくすると、魔力を完璧に抑えられるようになった。

 「なぁ、俺やっぱ一生指輪付けてようかな?」

 「きっと隼人なら出来るよ。  結界魔法だって上手くいったんだし」

 「まぁ、魔力は抑えられるようになったしな。  あ、でも気を抜くとまた結界喰われた」

 魔力を抑えながら他のことを考えるのはしばらく無理そうだ。  俺はいつでも指輪を嵌めれるようにしながら自分の部屋まで歩いていった。
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