萩原朔太郎

小池竜太

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萩原の名詩について

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 萩原朔太郎は日本の名詩人です。そもそも僕が詩を始めた切っ掛け、萩原朔太郎とランボーの詩に触れてからなのです。萩原の特に初期の名詩は素晴らしく、日本の近現代史に残る傑作です。特に顕著なのが、彼の詩に現れるリズムです。特に竹のうちの一つは筆舌に尽くしがたい傑作です。


光る地面に竹が生え、
青竹が生え、
地下には竹の根が生え、
根がしだいにほそらみ、
根の先より繊毛が生え、
かすかにけぶる繊毛が生え、
かすかにふるえ。

かたき地面に竹が生え、
地上にするどく竹が生え、
まつしぐらに竹が生え、
凍れる節節りんりんと、
青空のもとに竹が生え、
竹、竹、竹が生え。

この詩の特に「根の先より繊毛が生え」よりリズムが最高調に盛り上がってきて絶頂を迎えます。

他にも

地面の底に顔があらはれ、
さみしい病人の顔があらはれ。

地面の底のくらやみに、
うらうら草の茎が萌えそめ、
鼠の巣が萌えそめ、
巣にこんがらかつてゐる、
かずしれぬ髪の毛がふるえ出し、
冬至のころの、
さびしい病気の地面から、
ほそい青竹の根が生えそめ、
生えそめ、
それがじつにあはれふかくみえ、
けぶれるごとくに視え、
じつに、じつに、あはれふかげに視え。

地面の底のくらやみに、
さみしい病人の顔があらはれ。

「ほそい青竹の根が生えそめ、
生えそめ、
それがじつにあはれふかくみえ、
けぶれるごとくに視え、
じつに、じつに、あはれふかげに視え。」
がリズムが盛り上がる所です。

萩原の詩は繊細さや病的さや鋭さが同居していて、寂しい心に訴えかける看護師のような詩です。僕もさみしい時によく読んでました。ただ読んで癒されるというより、寂しさが改めて実感でき、共感できると言ったたぐいの詩です。

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