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Tier46 生徒会室
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「それにしても、あの写真は一体誰が撮ったんだろう?」
清水さんから見せてもらった写真に写っていたのはマンションのエントランス前にいた僕とマノ君だった。
つまり、この写真を撮ることが出来るのは僕達が同じマンションに住んでいることを知っている人物だ。
「そんなの一人しかいないだろ」
付近に誰かいないか気を配りながらマノ君がさも当然のことのように言う。
とは言え、僕も一人心当たりのある人物が脳内に浮かんでいる。
「那須先輩のこと?」
「それしか、いないだろうな」
「やっぱり、そうだよね」
「あたり前だ。この時間なら、あんな素晴らしい写真を撮ってくれた張本人様はあそこにいるはずだ。どういうことなのか、キッチリ説明してもらわないとな」
温和の笑みを浮かべているマノ君だったけれど、かなり怒っていることが分かる。
怒っていると言うよりも、ブチギレていると言った方がふさわしいくらいだ。
「那須先輩がどこにいるか分かるの? だって、もう放課後だよ。那須先輩のクラスに行っても、既に帰っている可能性だってあるんじゃないかな?」
「大丈夫だ。おら、さっさと行くぞ」
「行くってどこに?」
「生徒会室だ!」
--------------------------
僕達は2階にある生徒会室の前に来ていた。
放課後ということもあり生徒会室の前の廊下を通る生徒の数はまばらだ。
コンコンコン
マノ君がノックをする。
「どうぞー」
中から声がした。
たぶん、那須先輩の声だ。
「失礼します」
マノ君が扉をガラガラと開けて中に入り、僕も釣られるようにして中に入る。
「ごめんね、今、会長と副会長は不在なの。二人のどちらかに用事があるなら、一時間後くらいに改めて来て貰えれば会長達も戻って来ているから」
僕達が生徒会室に入ったのと同時に那須先輩が矢継ぎ早に声を掛けてきた。
生徒会室には那須先輩と二人の女子生徒がいて、なにやら慌ただしく作業をしていた。
「いえ、用事があるのは那須先輩なんです」
「え!? 私?」
驚いた声を出して、作業の手を止めて顔を上げた那須先輩はやっと僕達の存在に気付いた。
「マノ、コホン……私に用事ってどんなことかな?」
那須先輩はマノ君と言いかけたことを咳払いをしてごまかした。
「はい、一階渡り廊下の掲示物について少しご相談があるのですが」
マノ君が流れるようにデマカセを言う。
「あ~……あそこのことね。わかった。ごめん、ちょっと待ってね」
那須先輩もマノ君のデマカセに話を合わせた。
「夢林さんと大久保さん、ごめんね、キリが良い所になったら終わらせて先に帰ってもらってもいい?」
「え、良いんですか? まだ、全然終わってませんけど?」
女子生徒の一人が少し戸惑ったような顔をする。
「大丈夫、後は私がやっとくから。二人ともここまで手伝ってくれて本当にありがとう!」
「でも、本当に大丈夫ですか?」
もう一人の女子生徒が申し訳なさそうに言う。
「大丈夫、大丈夫。学生にとって放課後は貴重な時間なんだから早く帰っちゃいな!」
那須先輩は笑顔だったけれど、若干わざとらしい笑顔だった。
「じゃあ、そういうことなら……」
二人の女子生徒は顔を見合わせた後、ありがとうございますと言って生徒会室から出て行った。
そして、生徒会室には僕とマノ君と那須先輩の三人だけになった。
「ふぅ~。あ、伊瀬君。そこの扉の鍵閉めちゃっといて」
「良いんですか?」
「一応ね。急に誰か来ないとも限らないからね」
確かにそうだなと思いながら、僕はカチャリと扉の鍵を閉めた。
「ところで、どうして那須先輩が生徒会室にいるんですか?」
生徒会室にいるってことはそういうことなんだろうけれど、どうも納得が出来ない。
「それは那須先輩が生徒会の広報だからだ」
「それって本当なの?」
「あぁ。こんな奴が生徒会役員だなんて、この学校も……いや、世も末だろ?」
「そうだね」
「ちょっと、二人とも!? 先輩に対して失礼じゃない!?」
自分に対しての酷い言われように那須先輩が突っ込んできた。
「すみません。冗談です」
「……」
僕は少しやり過ぎたなと思い謝ったけれど、マノ君は何も言わなかった。
マノ君からの冗談だったという言葉が返ってくるのを諦めた那須先輩は話を切り替えた。
「それで、二人してどうしたの? 学校でマノ君が私に会いに来るなんて滅多にないよね。何かあったの? 六課からの緊急の連絡とかは来ていないと思うんだけど」
那須先輩は真剣な顔をしている。
どうやら、とぼけているわけじゃなさそうだ。
そうなると、あの写真を撮ったのは那須先輩じゃない?
「那須先輩に一つ、説明して欲しいことがありましてね。ある界隈で出回っている、とある写真について」
「え!?」
これでもかというほど那須先輩は動揺した。
やっぱり、あの写真を撮ったのは那須先輩のようだ。
「な、なんのことかな~? 二人の写真なんて撮ってないよ」
「その反応で撮ってませんは無理があるだろ。あんまり無駄な足掻きをするようなら那須先輩がよく盗撮していることを手塚課長あたりにバラすからな」
「え、那須先輩って盗撮しているんですか!?」
「してないよ! ただ、ちょ~っと活動風景を撮らせて貰っているだけだから!」
「盗撮じゃないですか!」
「だから、してないって!」
初めて会った時から変わっている人だったとは思っていたけれど、まさか法に触れているような人だったなんて……
「那須先輩……自主してください」
「だから、してないから! それに、盗撮罪っていう罪はないんだよ!」
なぜか変なトリビアを教えてもらった。
「今は盗撮しているかどうかなんて、どうでもいい。あの写真は那須先輩が撮りましたよね?」
「そ、それは……」
「撮ったよな!?」
「……はい、私が撮りました」
マノ君と那須先輩の構図は、犯人に自白させる刑事と折れて自白した犯人の構図そのものだった。
清水さんから見せてもらった写真に写っていたのはマンションのエントランス前にいた僕とマノ君だった。
つまり、この写真を撮ることが出来るのは僕達が同じマンションに住んでいることを知っている人物だ。
「そんなの一人しかいないだろ」
付近に誰かいないか気を配りながらマノ君がさも当然のことのように言う。
とは言え、僕も一人心当たりのある人物が脳内に浮かんでいる。
「那須先輩のこと?」
「それしか、いないだろうな」
「やっぱり、そうだよね」
「あたり前だ。この時間なら、あんな素晴らしい写真を撮ってくれた張本人様はあそこにいるはずだ。どういうことなのか、キッチリ説明してもらわないとな」
温和の笑みを浮かべているマノ君だったけれど、かなり怒っていることが分かる。
怒っていると言うよりも、ブチギレていると言った方がふさわしいくらいだ。
「那須先輩がどこにいるか分かるの? だって、もう放課後だよ。那須先輩のクラスに行っても、既に帰っている可能性だってあるんじゃないかな?」
「大丈夫だ。おら、さっさと行くぞ」
「行くってどこに?」
「生徒会室だ!」
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僕達は2階にある生徒会室の前に来ていた。
放課後ということもあり生徒会室の前の廊下を通る生徒の数はまばらだ。
コンコンコン
マノ君がノックをする。
「どうぞー」
中から声がした。
たぶん、那須先輩の声だ。
「失礼します」
マノ君が扉をガラガラと開けて中に入り、僕も釣られるようにして中に入る。
「ごめんね、今、会長と副会長は不在なの。二人のどちらかに用事があるなら、一時間後くらいに改めて来て貰えれば会長達も戻って来ているから」
僕達が生徒会室に入ったのと同時に那須先輩が矢継ぎ早に声を掛けてきた。
生徒会室には那須先輩と二人の女子生徒がいて、なにやら慌ただしく作業をしていた。
「いえ、用事があるのは那須先輩なんです」
「え!? 私?」
驚いた声を出して、作業の手を止めて顔を上げた那須先輩はやっと僕達の存在に気付いた。
「マノ、コホン……私に用事ってどんなことかな?」
那須先輩はマノ君と言いかけたことを咳払いをしてごまかした。
「はい、一階渡り廊下の掲示物について少しご相談があるのですが」
マノ君が流れるようにデマカセを言う。
「あ~……あそこのことね。わかった。ごめん、ちょっと待ってね」
那須先輩もマノ君のデマカセに話を合わせた。
「夢林さんと大久保さん、ごめんね、キリが良い所になったら終わらせて先に帰ってもらってもいい?」
「え、良いんですか? まだ、全然終わってませんけど?」
女子生徒の一人が少し戸惑ったような顔をする。
「大丈夫、後は私がやっとくから。二人ともここまで手伝ってくれて本当にありがとう!」
「でも、本当に大丈夫ですか?」
もう一人の女子生徒が申し訳なさそうに言う。
「大丈夫、大丈夫。学生にとって放課後は貴重な時間なんだから早く帰っちゃいな!」
那須先輩は笑顔だったけれど、若干わざとらしい笑顔だった。
「じゃあ、そういうことなら……」
二人の女子生徒は顔を見合わせた後、ありがとうございますと言って生徒会室から出て行った。
そして、生徒会室には僕とマノ君と那須先輩の三人だけになった。
「ふぅ~。あ、伊瀬君。そこの扉の鍵閉めちゃっといて」
「良いんですか?」
「一応ね。急に誰か来ないとも限らないからね」
確かにそうだなと思いながら、僕はカチャリと扉の鍵を閉めた。
「ところで、どうして那須先輩が生徒会室にいるんですか?」
生徒会室にいるってことはそういうことなんだろうけれど、どうも納得が出来ない。
「それは那須先輩が生徒会の広報だからだ」
「それって本当なの?」
「あぁ。こんな奴が生徒会役員だなんて、この学校も……いや、世も末だろ?」
「そうだね」
「ちょっと、二人とも!? 先輩に対して失礼じゃない!?」
自分に対しての酷い言われように那須先輩が突っ込んできた。
「すみません。冗談です」
「……」
僕は少しやり過ぎたなと思い謝ったけれど、マノ君は何も言わなかった。
マノ君からの冗談だったという言葉が返ってくるのを諦めた那須先輩は話を切り替えた。
「それで、二人してどうしたの? 学校でマノ君が私に会いに来るなんて滅多にないよね。何かあったの? 六課からの緊急の連絡とかは来ていないと思うんだけど」
那須先輩は真剣な顔をしている。
どうやら、とぼけているわけじゃなさそうだ。
そうなると、あの写真を撮ったのは那須先輩じゃない?
「那須先輩に一つ、説明して欲しいことがありましてね。ある界隈で出回っている、とある写真について」
「え!?」
これでもかというほど那須先輩は動揺した。
やっぱり、あの写真を撮ったのは那須先輩のようだ。
「な、なんのことかな~? 二人の写真なんて撮ってないよ」
「その反応で撮ってませんは無理があるだろ。あんまり無駄な足掻きをするようなら那須先輩がよく盗撮していることを手塚課長あたりにバラすからな」
「え、那須先輩って盗撮しているんですか!?」
「してないよ! ただ、ちょ~っと活動風景を撮らせて貰っているだけだから!」
「盗撮じゃないですか!」
「だから、してないって!」
初めて会った時から変わっている人だったとは思っていたけれど、まさか法に触れているような人だったなんて……
「那須先輩……自主してください」
「だから、してないから! それに、盗撮罪っていう罪はないんだよ!」
なぜか変なトリビアを教えてもらった。
「今は盗撮しているかどうかなんて、どうでもいい。あの写真は那須先輩が撮りましたよね?」
「そ、それは……」
「撮ったよな!?」
「……はい、私が撮りました」
マノ君と那須先輩の構図は、犯人に自白させる刑事と折れて自白した犯人の構図そのものだった。
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