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Tier26 脳波
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「だけど、今の検査方法のままだと全然駄目なんだよね」
僕に褒められて嬉しそうに笑っていた姫石さんが少し気を落としたように言った。
「なんでですか? マイグレーターに入れ替わっているかどうかの判別が出来るんですよね? それなのにどうして全然駄目なんですか?」
正確性があまり高くはないのだろうか。
でも、姫石さんは検査した人はマイグレーターに入れ替わっている可能性は無いと言っていた。
それなら、正確性が高くないということはないはずだと思う。
「伊瀬、お前検査にどれくらい時間が掛かった?」
急にマノ君が話に割って入ってきた。
「え? どれくらいって……少なくとも半日以上は掛かったと思うけど」
「そうだ。それだけの時間が掛かるんだ。そんな時間の掛かる検査を日本の国民全員にやらせられるか? 現実的に考えて無理だろ。ましてや即座にマイグレーターに入れ替わっていないか判別したい時だってあるだろう。そういう時はどうするんだ?」
マノ君の言ったことは全く持ってその通りだった。
マイグレーターに入れ替わっているかどうかの判別が出来るだけではいけないんだ。
その判別が時と場合に応じて可能であることも大切だ。
「マノ君は歯に衣着せずに指摘してくれるね。まぁ、確かにその通りなんだけどさ。それに判別が出来るのはあくまでも一般人がマイグレーターに入れ替わっているかどうかの判別だけ。マイグレーター自体の判別は出来ないの」
「どういうことですか?」
マイグレーターに入れ替わっているかどうかの判別が出来るのにマイグレーターがマイグレーターであるという判別が出来ないのはどこか矛盾しているような気がする。
「そうだなぁ……例えば、もし仮に伊瀬君がマイグレーターだったとして脳波の検査をしたらどうなると思う?」
「それはもちろん、脳波に乱れがあるんじゃないんですか?」
「ところが、脳波に乱れはないんだよ。つまり、マイグレーターでない一般人と同じ脳波ってこと」
「え!? どうして……?」
僕は姫石さんにとって予想通りの回答をしてしまったようだ。
「じゃあ、今度はマイグレーターである伊瀬君が私の体に入れ替わった状態で脳波の検査を受けたとしたらどうなると思う?」
姫石さんはヒントを出すように僕に質問した。
「……そっか、その場合だと脳波が乱れるんですね。姫石さんの脳に僕の意識という不純物が入るわけですから脳波が僅かに乱れる。逆に僕の脳に僕の意識がある状態であれば、脳と意識は相性が最も良いわけだからズレは生じない。だから、脳波に乱れがない。いくらマイグレーターだからといっても脳と意識が本人のものであったなら、一般人と脳波は変わらないんですね」
僕はようやく姫石さんが言わんとしていることが分かった。
「……伊瀬君は推察力がすごいね! 全部説明する前に答え言われちゃったよ」
姫石さんは元々丸くて大きな目をさらに見開いて感嘆した。
「伊瀬君ならワトソンにも小林少年にもなれるね!」
僕は名探偵には決してなれないということを暗に言われているようで複雑な気持ちだ。
もちろん、ワトソンや小林少年は名探偵の優秀な補佐役だから言われて嫌なわけじゃない。
ただ、どうせなら名探偵の方を言って欲しかった。
いや、僕にはなれないということは分かっていますよ。
……ここは素直に誉め言葉として受け取っていた方が良さそうだな。
「へぇ~そういうことだったんだ。アタシも知らなかった」
「何でお前も知らないんだよ」
思わず呟いていた美結さんにマノ君が反応した。
「いや、知らなかったわけじゃないんだよ! そうじゃなくて、どういう理由で判別が出来たり出来なかったりするのかを知らなかっただけ!」
きっと美結さんは、計算式の答えは分かっているけれど途中式は分かっていないという感じなのだろう。
マノ君はそんな美結さんを見てやれやれと肩を落としていた。
「なんて浅はかな」
心底呆れたようにマノ君は言った。
「そこまで言わなくたって良いじゃない!」
「とにかく、今の課題は検査の簡略化とマイグレーター自体を判別出来るようにすることかな」
マノ君と美結さんがケンカになりそうになったことを察した姫石さんが二人の間を分かつように割って入った。
「そのためには、これからもマイグレーションの研究を頑張らないとね!」
自分を鼓舞するように言った姫石さんを見て、僕は姫石さんにならそれを実現することが出来る日も近いじゃないかと思った。
僕に褒められて嬉しそうに笑っていた姫石さんが少し気を落としたように言った。
「なんでですか? マイグレーターに入れ替わっているかどうかの判別が出来るんですよね? それなのにどうして全然駄目なんですか?」
正確性があまり高くはないのだろうか。
でも、姫石さんは検査した人はマイグレーターに入れ替わっている可能性は無いと言っていた。
それなら、正確性が高くないということはないはずだと思う。
「伊瀬、お前検査にどれくらい時間が掛かった?」
急にマノ君が話に割って入ってきた。
「え? どれくらいって……少なくとも半日以上は掛かったと思うけど」
「そうだ。それだけの時間が掛かるんだ。そんな時間の掛かる検査を日本の国民全員にやらせられるか? 現実的に考えて無理だろ。ましてや即座にマイグレーターに入れ替わっていないか判別したい時だってあるだろう。そういう時はどうするんだ?」
マノ君の言ったことは全く持ってその通りだった。
マイグレーターに入れ替わっているかどうかの判別が出来るだけではいけないんだ。
その判別が時と場合に応じて可能であることも大切だ。
「マノ君は歯に衣着せずに指摘してくれるね。まぁ、確かにその通りなんだけどさ。それに判別が出来るのはあくまでも一般人がマイグレーターに入れ替わっているかどうかの判別だけ。マイグレーター自体の判別は出来ないの」
「どういうことですか?」
マイグレーターに入れ替わっているかどうかの判別が出来るのにマイグレーターがマイグレーターであるという判別が出来ないのはどこか矛盾しているような気がする。
「そうだなぁ……例えば、もし仮に伊瀬君がマイグレーターだったとして脳波の検査をしたらどうなると思う?」
「それはもちろん、脳波に乱れがあるんじゃないんですか?」
「ところが、脳波に乱れはないんだよ。つまり、マイグレーターでない一般人と同じ脳波ってこと」
「え!? どうして……?」
僕は姫石さんにとって予想通りの回答をしてしまったようだ。
「じゃあ、今度はマイグレーターである伊瀬君が私の体に入れ替わった状態で脳波の検査を受けたとしたらどうなると思う?」
姫石さんはヒントを出すように僕に質問した。
「……そっか、その場合だと脳波が乱れるんですね。姫石さんの脳に僕の意識という不純物が入るわけですから脳波が僅かに乱れる。逆に僕の脳に僕の意識がある状態であれば、脳と意識は相性が最も良いわけだからズレは生じない。だから、脳波に乱れがない。いくらマイグレーターだからといっても脳と意識が本人のものであったなら、一般人と脳波は変わらないんですね」
僕はようやく姫石さんが言わんとしていることが分かった。
「……伊瀬君は推察力がすごいね! 全部説明する前に答え言われちゃったよ」
姫石さんは元々丸くて大きな目をさらに見開いて感嘆した。
「伊瀬君ならワトソンにも小林少年にもなれるね!」
僕は名探偵には決してなれないということを暗に言われているようで複雑な気持ちだ。
もちろん、ワトソンや小林少年は名探偵の優秀な補佐役だから言われて嫌なわけじゃない。
ただ、どうせなら名探偵の方を言って欲しかった。
いや、僕にはなれないということは分かっていますよ。
……ここは素直に誉め言葉として受け取っていた方が良さそうだな。
「へぇ~そういうことだったんだ。アタシも知らなかった」
「何でお前も知らないんだよ」
思わず呟いていた美結さんにマノ君が反応した。
「いや、知らなかったわけじゃないんだよ! そうじゃなくて、どういう理由で判別が出来たり出来なかったりするのかを知らなかっただけ!」
きっと美結さんは、計算式の答えは分かっているけれど途中式は分かっていないという感じなのだろう。
マノ君はそんな美結さんを見てやれやれと肩を落としていた。
「なんて浅はかな」
心底呆れたようにマノ君は言った。
「そこまで言わなくたって良いじゃない!」
「とにかく、今の課題は検査の簡略化とマイグレーター自体を判別出来るようにすることかな」
マノ君と美結さんがケンカになりそうになったことを察した姫石さんが二人の間を分かつように割って入った。
「そのためには、これからもマイグレーションの研究を頑張らないとね!」
自分を鼓舞するように言った姫石さんを見て、僕は姫石さんにならそれを実現することが出来る日も近いじゃないかと思った。
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