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Tier21 顔合わせ
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綺麗な女の人に軽く手を振って見送った男の人は僕に向き直って言った。
「初めまして、伊瀬祐介君。『警視庁公安部第六課 突発性脳死現象対策室』課長の手塚 浩三です」
「初めまして、伊瀬祐介です。よろしくお願いします」
僕はペコリと頭を下げた。
「うん、こちらこそよろしく頼むね。あぁ、手塚といっても漫画は描けないんだけどね」
そう言って、手塚課長はアハハと笑った。
「そ、そうなんですか」
正直、僕は反応に困った。
初対面の相手にこうも親父ギャグをしてくる人は本当にすごいと思う。
僕だったら死んでも出来ない。
「あの~さっきの人はどうして白衣を着ていたんですか?」
この状況にいたたまれなくなった僕は話題を変えるように質問した。
「あ~そうですね、警察署内で白衣を着ていると目立ちますからね。彼女は科学捜査研究所で突発性脳死現象を専門に研究する職員なんです。つまり、六課専属の『科捜研の女』って感じですかね」
そう言って、手塚課長はまたアハハと笑った。
「……」
「う~ん、最近の子はテレビを見ないから分かんないですよね」
僕が手塚課長の親父ギャグに反応しきれずにいると、申し訳なさそうに言ってきた。
「なんか、すみません。科捜研の人だから白衣を着ているんですね」
「そうですね~科捜研だからといって、こんなところまで白衣を着ているわけではないんですよね。というか、彼女だけですね」
え~
それじゃあ、科捜研の職員という説明は意味なかったんじゃないかと僕は思わずにはいられなかった。
「彼女が白衣を着続けている理由は……自分への戒めでしょかね」
手塚課長は遠い目をして言った。
「あ~そうだ、事件のことは聞きましたよ。配属早々、嫌な事件に当たってしまいましたね」
「え、えぇ……」
数日経った今でも、つい5分前に起きたことかのようにパトカーの中での事は鮮明に記憶として蘇る。
「さっ! 立ち話もなんですから行きましょうか。皆さんの紹介もありますしね」
僕の心情を察してか手塚課長は元気よく言って、僕を六課のところまで案内してくれた。
--------------------------
「警視庁公安部第六課 突発性脳死現象対策室」はかなり入り組んだ複雑な所にあった。
これは僕一人だったら到底たどり着くことは出来なかったと思う。
次から一人で来れるかどうかも怪しいところだと思う。
中に入ると6人の人が自分のデスクでパソコンや書類を見たりと作業をしていた。
「はーい! みんな一旦手を止めてね。新しく六課に入ってくれる子を紹介するよ!」
手塚課長の掛け声で、一斉に作業を止めて6人全員がこちらを向いた。
やっぱり、こういう風に注目されるのは苦手だな。
「俺はもう伊瀬のことは知ってるんで、作業に戻りますね」
この中で唯一知った顔である天野君が言った。
「しょうかい? せっかくだから改めて紹介させてよ」
……
この場にいた全員が手塚課長の親父ギャグをスルーした。
「というか、何なんすか、この量! 終わる気がしないんですけど」
天野君は何事も無かったかのように話を続けた。
「文句言わないの! アナタがサボったのが悪いんでしょ!」
僕と同い年くらいの女子が天野君に対して言った。
「はいはい、分かってるよ」
「はい、は1回!」
「へい」
そう言って、天野君は作業を続けた。
とうとう天野君は「はい」どころか「へい」と言った。
天野君に注意をした女子は「まったく、もう」と呟いて呆れていた。
「うん、じゃあ、そういうことで伊瀬君。自己紹介お願いしますね」
手塚課長が僕に自己紹介をするようにと言ってきた。
手塚課長の目が若干涙目になっているように見えるのは僕だけなのだろうか。
「あ、はい。伊瀬祐介と言います。皆さんのお力になれるかは分かりませんが、これからどうぞよろしくお願いします」
パチパチとまばらな拍手が起こった。
一応、天野君も拍手をしてくれていた。
「うん、そしたら深見君から順に自己紹介をしていって貰おうかな」
手塚課長は30代前半くらいの男の人に話を振った。
「分かりました。『警視庁公安部第六課 突発性脳死現象対策室』の深見 賢治だ。よろしく」
深見さんは神経質そうな目をしており、少し威圧的な生真面目そうな人だった。
「深見君には『理事官』兼『管理官』として働いてもらっているんです。六課は特性上、どうしても人員が極端に少ないですからね。こうやって兼任して貰うことも多いんです。現場での指揮権は実質、深見君にあります。現場に出た時には深見君の指示に従って下さい」
「分かりました」
僕は深見さんによろしくお願いしますと頭を下げた。
「次はオレかな? 佐々木 丈人です。歳的にはオレの方が上だけど、呼び方は丈人で良いよ」
「分かりました。じゃあ、丈人先輩で」
「丈人先輩かぁ~先輩は無くていいんだけど伊瀬君がそう呼びたいなら良いよ! にしても、なるほど。君が手塚課長が推薦したって子か~」
茶髪で眼鏡をかけており、頼りがいがあって優しそうなお兄さんのような男の人が言った。
「そうなんですか?」
僕は驚いて、手塚課長に聞いた。
「うん、まぁね」
手塚課長は微笑みながら言った。
「オレ、大学四年生だから大学について知りたいことあったら教えられると思うよ」
「ま、俺達は大学も高校と同じように決められているけどな」
横から天野君が皮肉を込めて言った。
「お~い! それは言わないでおくとこだろ~! せっかく、オレが頼れる先輩感出してたのに」
丈人先輩はにこやかに言った。
僕は思わず頬が緩むのを感じた。
「その時になったら、ぜひお願いします」
「任せといて!」
僕が言うと、丈人先輩は親指を突き立てて言った。
「この感じだと年上順ぽいから私かな。那須 波瑠見です。私は3年7組だから伊瀬君の一個上って感じかな」
那須先輩はショートカットの明るい人だった。
「よろしくお願いします」
「ほぉ~これが噂になっていた『いせまの』なのね。後で、カメラに収めとかないと」
僕と天野君を交互に見ながら独り言のように言った那須先輩は不敵に笑った。
普通の明るい人ではなさそうだ。
「いせまの」とか「カメラに収める」とか聞こえたけど深くは聞いてはいけない気がした。
「ここからは同い年だし、クラス順でいいかな? 2年1組の如月 美結です。美結って呼んでね!」
この人は天野君にさっき注意をしていた人だった。
ポニーテールがよく似合っており、気が強いヒロインとしてゲームや漫画に出てきそうな感じだった。
「伊瀬っちとはクラスも隣だから、アレが何かやらかしたらいつでも相談しに来てね!」
僕は早速、「伊瀬っち」とあだ名を付けられてしまった。
別に嫌なわけじゃない。
こういう人は交友関係も広いんだろうなと感心してしまう。
「あ、あんまり相談することはないと思いますけど、ありがとうございます。えっと……美結……さん
」
僕は女子に対して呼び捨てで名前を呼ぶのは恥ずかしくて、とてもじゃないが出来なかった。
「おい、アレとは何だ」
自分のことを「アレ」と呼ばれた天野君がツッコんだ。
「アナタだって、アタシのこと「おい」とか「お前」とか「如月」とかでしか呼ばないじゃない! 前はちゃんと「美結」って呼んでくれたのに」
「悪かったな、如月」
天野君はわざとらしく言った。
「本当に! もう、こんなんだけどよろしくね伊瀬っち」
僕は苦笑いを返すことしか出来なかった。
クラスにいる時の伊瀬君は随分と猫をかぶっていたようだ。
「順番的に次はアレだけど、アレは飛ばしていいわね。伊瀬っちもアレとは初対面ってわけじゃないしね。じゃあ、最後は日菜っちだね!」
美結さんが話を振った相手は緩めにカールが掛かった長めの髪をした温和な感じの可愛らしい人だった。
「そうだね。市川 日菜と言います。クラスは2年5組だから学校ではあまり接点がないかもしれないけど、よろしくね」
市川さんは優しく僕に挨拶をしてくれた。
「こちらこそよろしくお願いします」
これでようやく僕は六課の人、全員に挨拶をすることが出来た。
「初めまして、伊瀬祐介君。『警視庁公安部第六課 突発性脳死現象対策室』課長の手塚 浩三です」
「初めまして、伊瀬祐介です。よろしくお願いします」
僕はペコリと頭を下げた。
「うん、こちらこそよろしく頼むね。あぁ、手塚といっても漫画は描けないんだけどね」
そう言って、手塚課長はアハハと笑った。
「そ、そうなんですか」
正直、僕は反応に困った。
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僕だったら死んでも出来ない。
「あの~さっきの人はどうして白衣を着ていたんですか?」
この状況にいたたまれなくなった僕は話題を変えるように質問した。
「あ~そうですね、警察署内で白衣を着ていると目立ちますからね。彼女は科学捜査研究所で突発性脳死現象を専門に研究する職員なんです。つまり、六課専属の『科捜研の女』って感じですかね」
そう言って、手塚課長はまたアハハと笑った。
「……」
「う~ん、最近の子はテレビを見ないから分かんないですよね」
僕が手塚課長の親父ギャグに反応しきれずにいると、申し訳なさそうに言ってきた。
「なんか、すみません。科捜研の人だから白衣を着ているんですね」
「そうですね~科捜研だからといって、こんなところまで白衣を着ているわけではないんですよね。というか、彼女だけですね」
え~
それじゃあ、科捜研の職員という説明は意味なかったんじゃないかと僕は思わずにはいられなかった。
「彼女が白衣を着続けている理由は……自分への戒めでしょかね」
手塚課長は遠い目をして言った。
「あ~そうだ、事件のことは聞きましたよ。配属早々、嫌な事件に当たってしまいましたね」
「え、えぇ……」
数日経った今でも、つい5分前に起きたことかのようにパトカーの中での事は鮮明に記憶として蘇る。
「さっ! 立ち話もなんですから行きましょうか。皆さんの紹介もありますしね」
僕の心情を察してか手塚課長は元気よく言って、僕を六課のところまで案内してくれた。
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「警視庁公安部第六課 突発性脳死現象対策室」はかなり入り組んだ複雑な所にあった。
これは僕一人だったら到底たどり着くことは出来なかったと思う。
次から一人で来れるかどうかも怪しいところだと思う。
中に入ると6人の人が自分のデスクでパソコンや書類を見たりと作業をしていた。
「はーい! みんな一旦手を止めてね。新しく六課に入ってくれる子を紹介するよ!」
手塚課長の掛け声で、一斉に作業を止めて6人全員がこちらを向いた。
やっぱり、こういう風に注目されるのは苦手だな。
「俺はもう伊瀬のことは知ってるんで、作業に戻りますね」
この中で唯一知った顔である天野君が言った。
「しょうかい? せっかくだから改めて紹介させてよ」
……
この場にいた全員が手塚課長の親父ギャグをスルーした。
「というか、何なんすか、この量! 終わる気がしないんですけど」
天野君は何事も無かったかのように話を続けた。
「文句言わないの! アナタがサボったのが悪いんでしょ!」
僕と同い年くらいの女子が天野君に対して言った。
「はいはい、分かってるよ」
「はい、は1回!」
「へい」
そう言って、天野君は作業を続けた。
とうとう天野君は「はい」どころか「へい」と言った。
天野君に注意をした女子は「まったく、もう」と呟いて呆れていた。
「うん、じゃあ、そういうことで伊瀬君。自己紹介お願いしますね」
手塚課長が僕に自己紹介をするようにと言ってきた。
手塚課長の目が若干涙目になっているように見えるのは僕だけなのだろうか。
「あ、はい。伊瀬祐介と言います。皆さんのお力になれるかは分かりませんが、これからどうぞよろしくお願いします」
パチパチとまばらな拍手が起こった。
一応、天野君も拍手をしてくれていた。
「うん、そしたら深見君から順に自己紹介をしていって貰おうかな」
手塚課長は30代前半くらいの男の人に話を振った。
「分かりました。『警視庁公安部第六課 突発性脳死現象対策室』の深見 賢治だ。よろしく」
深見さんは神経質そうな目をしており、少し威圧的な生真面目そうな人だった。
「深見君には『理事官』兼『管理官』として働いてもらっているんです。六課は特性上、どうしても人員が極端に少ないですからね。こうやって兼任して貰うことも多いんです。現場での指揮権は実質、深見君にあります。現場に出た時には深見君の指示に従って下さい」
「分かりました」
僕は深見さんによろしくお願いしますと頭を下げた。
「次はオレかな? 佐々木 丈人です。歳的にはオレの方が上だけど、呼び方は丈人で良いよ」
「分かりました。じゃあ、丈人先輩で」
「丈人先輩かぁ~先輩は無くていいんだけど伊瀬君がそう呼びたいなら良いよ! にしても、なるほど。君が手塚課長が推薦したって子か~」
茶髪で眼鏡をかけており、頼りがいがあって優しそうなお兄さんのような男の人が言った。
「そうなんですか?」
僕は驚いて、手塚課長に聞いた。
「うん、まぁね」
手塚課長は微笑みながら言った。
「オレ、大学四年生だから大学について知りたいことあったら教えられると思うよ」
「ま、俺達は大学も高校と同じように決められているけどな」
横から天野君が皮肉を込めて言った。
「お~い! それは言わないでおくとこだろ~! せっかく、オレが頼れる先輩感出してたのに」
丈人先輩はにこやかに言った。
僕は思わず頬が緩むのを感じた。
「その時になったら、ぜひお願いします」
「任せといて!」
僕が言うと、丈人先輩は親指を突き立てて言った。
「この感じだと年上順ぽいから私かな。那須 波瑠見です。私は3年7組だから伊瀬君の一個上って感じかな」
那須先輩はショートカットの明るい人だった。
「よろしくお願いします」
「ほぉ~これが噂になっていた『いせまの』なのね。後で、カメラに収めとかないと」
僕と天野君を交互に見ながら独り言のように言った那須先輩は不敵に笑った。
普通の明るい人ではなさそうだ。
「いせまの」とか「カメラに収める」とか聞こえたけど深くは聞いてはいけない気がした。
「ここからは同い年だし、クラス順でいいかな? 2年1組の如月 美結です。美結って呼んでね!」
この人は天野君にさっき注意をしていた人だった。
ポニーテールがよく似合っており、気が強いヒロインとしてゲームや漫画に出てきそうな感じだった。
「伊瀬っちとはクラスも隣だから、アレが何かやらかしたらいつでも相談しに来てね!」
僕は早速、「伊瀬っち」とあだ名を付けられてしまった。
別に嫌なわけじゃない。
こういう人は交友関係も広いんだろうなと感心してしまう。
「あ、あんまり相談することはないと思いますけど、ありがとうございます。えっと……美結……さん
」
僕は女子に対して呼び捨てで名前を呼ぶのは恥ずかしくて、とてもじゃないが出来なかった。
「おい、アレとは何だ」
自分のことを「アレ」と呼ばれた天野君がツッコんだ。
「アナタだって、アタシのこと「おい」とか「お前」とか「如月」とかでしか呼ばないじゃない! 前はちゃんと「美結」って呼んでくれたのに」
「悪かったな、如月」
天野君はわざとらしく言った。
「本当に! もう、こんなんだけどよろしくね伊瀬っち」
僕は苦笑いを返すことしか出来なかった。
クラスにいる時の伊瀬君は随分と猫をかぶっていたようだ。
「順番的に次はアレだけど、アレは飛ばしていいわね。伊瀬っちもアレとは初対面ってわけじゃないしね。じゃあ、最後は日菜っちだね!」
美結さんが話を振った相手は緩めにカールが掛かった長めの髪をした温和な感じの可愛らしい人だった。
「そうだね。市川 日菜と言います。クラスは2年5組だから学校ではあまり接点がないかもしれないけど、よろしくね」
市川さんは優しく僕に挨拶をしてくれた。
「こちらこそよろしくお願いします」
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