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俺達に起きた出来事を一通り話し終わったあとも八雲はしばらく黙ったままだった。
この反応から見るに、八雲にこの話をするべきではなかったのかもしれない。
これで俺達は晴れて学校一の頭のおかしい奴らに認定されるわけだ。
やったね。
これならもう自己紹介をする必要もないね。
まぁ、誰も近づかなくなって自己紹介する相手すらいなくなるけど……
「それであんたらは私に何をして欲しいのかな? 」
「え? 」
反応的にてっきり今の話を信じていないと思っていたため、予想外の返答に思わず聞き返してしまった。
「話した俺が言うのもなんだが、こんな非現実的な話を信じてくれるのか? 」
「私にとって今の話に信憑性があろうとなかろうとどうでもいい。信じてもいないし、信じていないわけでもない。つまり、その点に関しては興味がない。ただ玉宮香六が言ったように、こんな非現実的な話をここまで真剣に話すあんたに対しては興味が沸いた。中々いないぞ。こうも馬鹿げた話を初めて合った人間に真剣に熱弁してくる奴は。これでこの話が嘘ならば私をからかうためのドッキリか、もしくは玉宮香六がかなりの虚言癖だということぐらいだろう。大本営発表も顔負けだな。
逆に嘘をついていないからといって話が本当だとも限らない。頭がおかしくなって二人そろって入れ替わったと思い込んでいるだけかもしれない。要するに、話が本当か嘘かについて焦点をあてたところで、どちらにしろ状況を変えるためには無意味だということだ」
立花の言った通り八雲は少なくとも興味は持ってくれたようだ。
興味を持ったのは話の内容自体ではなく、馬鹿げた話を真剣に話した俺に対してだが……
「とりあえず八雲がどういったスタンスをとるのかはわかった。たしかに俺達もこの話を信じてもらうことが一番重要な目的ではない。だから八雲がそのスタンスをとるのは全くもって問題ない。俺達の最も重要な目的は元の人格いわば体に戻ることだ。八雲にはその方法を考えて欲しい。素人の頭ではいくら頑張ってもどうにもならない」
「なるほど。入れ替わりという事象を科学的に解明し、人間の手によってコントロールが行えるようにして欲しいというわけか。
……なら題材は科学的観点から考察する入れ替わり現象についてにするか……ちょうど国際学生科学技術フェア(ISEF)で発表する題材について何にするか考えていたところだから、あんたらに協力してもいいだろう。ただし協力する期間は5月3日……いや、ゴールデンウィークが終わるまでだ。あんたらを元に戻せる確証があるわけでもないし、元に戻らなくても期間の延長はないがそれで構わないのなら私は協力しよう」
八雲はぶっきらぼうに答えた。
「あぁ、それで構わない。期間は短めな気がするが身近な人間、ましてや学校があるとなるとさすがに長い期間入れ替わりについて隠し切れないだろう。そもそも無理なお願いをしているんだ。少しでも協力してくれるだけでも十分すぎるくらいだ」
八雲が協力してくれる期間、ゴールデンウィーク明けまでがタイムリミットだということだ。タイムアウトになった場合はしかるべき機関に入れ替わったということを信じてもらえるように確実的な証拠を用意しなければならない。もちろんそれは簡単にできることじゃない。もしかしたらできないかもしれない。それでも何とか入れ替わったことが事実であると信じてもらえなければ、俺達が元に戻れる可能性は限りなく低いだろう。
「なんかすごいね。当事者のあたしだってまだ現実だっていう実感がないのにそれを話だけを聞いただけで科学的に解明しようとするなんてさ。」
姫石が感嘆の声を漏らした。
「先輩なら必ず姫石先輩たちを助けてくれるって思ってました。さっきだって発表する題材はもう決まっているのに決まってないって言ったり、フェアの開催日は3日でそれ以降はもう題材とか関係ないのに期間を延ばしてくれるとことか、そういう優しいとこ私は結構好きですよ」
八雲はぶっきらぼうに言っているように聞こえたが、実際は俺達のことをかなり気遣ってくれていたようだ。
「はぁ~立花後輩、余計な事いってるとコーヒー淹れないぞ」
八雲は呆れたように言ったが、若干恥ずかしがっていたのを俺は見逃さなかった。
「協力してくれるのはありがたいんだが、大丈夫か? どこで開催するのかは知らないが、国際学生科学技術フェア(ISEF)の開催日は3日なんだろう? 題材だって決まってたものをいきなり変えるわけだし準備とか大丈夫なのか? 」
「今年はオンラインでの開催だから大丈夫だ。準備なんて一日あれば十分だ。題材を変えるのだって、こっちの方が面白いと思ったから変更したまでだ。協力するからといって何も支障が生じることはないから気にしなくていい」
「なら良いんだが。一日で準備が十分だなんてさすがと言うべきか何と言うか……」
「私だからできるというわけではない。あくまで私にはたまたまそういった能力があっただけにすぎない。私は運が良かっただけなんだ」
「運か……」
まるで運次第でその人の能力が決まるような物言いだな。
「少しコーヒーでも飲んで休憩しないか? 私は寝覚めにコーヒーを飲まないとどうも落ち着かないんだ」
そう言って八雲はテーブルの上に出しっぱなしにしてあった実験器具に手を伸ばした。
……
いつからコーヒーを淹れる時は実験器具を使うようになったのだろう。
この反応から見るに、八雲にこの話をするべきではなかったのかもしれない。
これで俺達は晴れて学校一の頭のおかしい奴らに認定されるわけだ。
やったね。
これならもう自己紹介をする必要もないね。
まぁ、誰も近づかなくなって自己紹介する相手すらいなくなるけど……
「それであんたらは私に何をして欲しいのかな? 」
「え? 」
反応的にてっきり今の話を信じていないと思っていたため、予想外の返答に思わず聞き返してしまった。
「話した俺が言うのもなんだが、こんな非現実的な話を信じてくれるのか? 」
「私にとって今の話に信憑性があろうとなかろうとどうでもいい。信じてもいないし、信じていないわけでもない。つまり、その点に関しては興味がない。ただ玉宮香六が言ったように、こんな非現実的な話をここまで真剣に話すあんたに対しては興味が沸いた。中々いないぞ。こうも馬鹿げた話を初めて合った人間に真剣に熱弁してくる奴は。これでこの話が嘘ならば私をからかうためのドッキリか、もしくは玉宮香六がかなりの虚言癖だということぐらいだろう。大本営発表も顔負けだな。
逆に嘘をついていないからといって話が本当だとも限らない。頭がおかしくなって二人そろって入れ替わったと思い込んでいるだけかもしれない。要するに、話が本当か嘘かについて焦点をあてたところで、どちらにしろ状況を変えるためには無意味だということだ」
立花の言った通り八雲は少なくとも興味は持ってくれたようだ。
興味を持ったのは話の内容自体ではなく、馬鹿げた話を真剣に話した俺に対してだが……
「とりあえず八雲がどういったスタンスをとるのかはわかった。たしかに俺達もこの話を信じてもらうことが一番重要な目的ではない。だから八雲がそのスタンスをとるのは全くもって問題ない。俺達の最も重要な目的は元の人格いわば体に戻ることだ。八雲にはその方法を考えて欲しい。素人の頭ではいくら頑張ってもどうにもならない」
「なるほど。入れ替わりという事象を科学的に解明し、人間の手によってコントロールが行えるようにして欲しいというわけか。
……なら題材は科学的観点から考察する入れ替わり現象についてにするか……ちょうど国際学生科学技術フェア(ISEF)で発表する題材について何にするか考えていたところだから、あんたらに協力してもいいだろう。ただし協力する期間は5月3日……いや、ゴールデンウィークが終わるまでだ。あんたらを元に戻せる確証があるわけでもないし、元に戻らなくても期間の延長はないがそれで構わないのなら私は協力しよう」
八雲はぶっきらぼうに答えた。
「あぁ、それで構わない。期間は短めな気がするが身近な人間、ましてや学校があるとなるとさすがに長い期間入れ替わりについて隠し切れないだろう。そもそも無理なお願いをしているんだ。少しでも協力してくれるだけでも十分すぎるくらいだ」
八雲が協力してくれる期間、ゴールデンウィーク明けまでがタイムリミットだということだ。タイムアウトになった場合はしかるべき機関に入れ替わったということを信じてもらえるように確実的な証拠を用意しなければならない。もちろんそれは簡単にできることじゃない。もしかしたらできないかもしれない。それでも何とか入れ替わったことが事実であると信じてもらえなければ、俺達が元に戻れる可能性は限りなく低いだろう。
「なんかすごいね。当事者のあたしだってまだ現実だっていう実感がないのにそれを話だけを聞いただけで科学的に解明しようとするなんてさ。」
姫石が感嘆の声を漏らした。
「先輩なら必ず姫石先輩たちを助けてくれるって思ってました。さっきだって発表する題材はもう決まっているのに決まってないって言ったり、フェアの開催日は3日でそれ以降はもう題材とか関係ないのに期間を延ばしてくれるとことか、そういう優しいとこ私は結構好きですよ」
八雲はぶっきらぼうに言っているように聞こえたが、実際は俺達のことをかなり気遣ってくれていたようだ。
「はぁ~立花後輩、余計な事いってるとコーヒー淹れないぞ」
八雲は呆れたように言ったが、若干恥ずかしがっていたのを俺は見逃さなかった。
「協力してくれるのはありがたいんだが、大丈夫か? どこで開催するのかは知らないが、国際学生科学技術フェア(ISEF)の開催日は3日なんだろう? 題材だって決まってたものをいきなり変えるわけだし準備とか大丈夫なのか? 」
「今年はオンラインでの開催だから大丈夫だ。準備なんて一日あれば十分だ。題材を変えるのだって、こっちの方が面白いと思ったから変更したまでだ。協力するからといって何も支障が生じることはないから気にしなくていい」
「なら良いんだが。一日で準備が十分だなんてさすがと言うべきか何と言うか……」
「私だからできるというわけではない。あくまで私にはたまたまそういった能力があっただけにすぎない。私は運が良かっただけなんだ」
「運か……」
まるで運次第でその人の能力が決まるような物言いだな。
「少しコーヒーでも飲んで休憩しないか? 私は寝覚めにコーヒーを飲まないとどうも落ち着かないんだ」
そう言って八雲はテーブルの上に出しっぱなしにしてあった実験器具に手を伸ばした。
……
いつからコーヒーを淹れる時は実験器具を使うようになったのだろう。
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