3 / 126
Layer3 初対面
しおりを挟む
人間というものは案外、反応が鈍い存在なのかもしれない。
漫画やアニメのように主人公がラッキースケベを起こしたときに、やられた女性キャラ達は即座に反応ならぬ反撃をしていたが、現実ではそうはいかないらしい。
見知らぬ男子にいきなり抱き着かれたその女子生徒は呆然としていた。
目をぱちくりとした後ようやく事態に気付いたのか、
「な、な、何ですか!? いきなり!? どうして私の名前を知ってるんですか!? 」
と反応した。
「何言ってるのよ! 歩乃架ちゃん! あたしたち親友でしょ! 名前なんか知ってるに決まってるじゃない! 先輩後輩の関係だけど、そんなこと気にしないくらい仲いいじゃん! あたしたち! 」
その行動は、傍から見れば男子生徒が女子生徒に抱き着きながら訳のわからないことを叫んでるヤバいやつにしか見えない。
その男子生徒は俺なんだが……
こんなところを誰かに見られてでもしたら大変まずいことになる。
社会的に抹殺されること間違いなしだ。
現状を全く理解していない姫石は、そんなことはお構いなしに抱き着いたままだ。
本当にやめて欲しい。
このままではあまりにも危険なため、俺は急いで姫石を引き離した。
「姫石、一旦少し落ち着け! お前の体は今は男なんだ! そんな状態で女子に抱き着くのは大問題でしかない! というか俺が各方面で死ぬからやめてくれ! 」
「あ~!! あたしの体! ちょっと早く返しなさいよ! 勝手にあたしの体使わないでよ! 」
「それはこっちのセリフだ! お前の体は俺のなんだよ! ほれ! 見てみろ! 」
そう言って俺は姫石にスマホのインカメラを使って、姫石の顔を映し出した。
「なんで……玉宮が映ってるの? 」
「俺と姫石が入れ替わっているからだ! 」
「え!? もしかして、あたしの体を勝手に使ってるのは玉宮なの? 」
「今さら気付いたのか!? 他に誰がいるんだよ。あと、俺だって好きに使ってるわけじゃない」
混乱している姫石とこなんなことをやりあっていると、とうとう我慢できなくなったのか、ほったらかしにされていた女子生徒が割って入ってきた。
「あの! さっきから姫石先輩も、そ、そこのあなたも何を言ってるんですか? 」
俺を見て姫石先輩と言うということは、やはりこの子は姫石とは面識があるようだ。
ただ、本当の姫石である方にはだいぶ警戒しているみたいだ。
当たり前のことではあるが。
「歩乃架ちゃん、どうしてあたしのことをそんな怖い顔で見るの? そんな顔しないでよ。こないだだって歩乃架ちゃんの大切な秘密を共有した仲じゃない! 」
「姫石! 話がややこしくなるから少し静かにしててくれ。頼むからこれ以上俺の体で変なことを喋らないでくれ」
「あたし別に変なことなんて言ってないの……」
「喋らない! 」
「……はい」
どうしてこう姫石は次から次へと、いろいろとアウトな発言をするのだろう。
まさか、本当はわざとやってるんじゃないだろうな。
それはないとは思うけど。
「とりあえず、二人とも俺の話を聞いてくれ」
俺は今起きている状況について、先ほど立てた仮説を二人に説明した。
正直、こんな突拍子もない仮説を当事者である姫石に言うならまだしも、第三者に言うのはそれなりにリスクがある。
最悪、頭のおかしい人扱いされて俺と姫石は精神異常者として病院に連れていかれてもおかしくない。
だが、このままだと俺は社会的に死ぬはめになる。
どうせここで死ぬなら、いっそのこと病院に連れていかれるリスクをとる方がよっぽどマシだ。
--------------------------
「えっと……つまりは階段から落ちてぶつかった衝撃のせいで入れ替わったってしまったってことですか? 本当にそんなことあるんですか? 」
俺の説明を聞いて、歩乃架と呼ばれていた女子生徒が開口一番に口を開いた。
「そう思う気持ちはわかるが、そうとしか考えられない状況が現に起きている。……悪い、ちょっと先に自己紹介をしてくれないかな? 初対面のままこんな話を続けるのはどうもやりづらい」
「あ、すみません。それもそうですよね。はじめまして、私は立花 歩乃架といいます。1年2組です。姫石先輩とは部活と美化委員で一緒になったのがきっかけで仲良くなったんです。私にとって姫石先輩は頼れるお姉ちゃんみたいな存在です」
「姫石が頼れるかどうかは置いといて、俺の名前は玉宮 香六。2年3組で、姫石と同じクラスだ。こいつとは中学からの腐れ縁みたいな関係だ」
「どうしてそんな大事な部分を置いとくのよ! 」
俺が軽く自己紹介を済ませると、なぜか姫石が、俺の自己紹介を気に入らなかったのか抗議してきた。
いくらなんでも、これで事故紹介だなんて言われる筋合いはない。
いったいどのあたりが大事な部分なのだろう?
「そうだったんですね。あの……お二人の最初の様子を見れば嘘をついているようには見えないんですが、正直に言うと今のところ半信半疑です」
そう申し訳なさそうしに言ってきた。
「いや、こんな突拍子もない話を半分も信じてくれているだけで十分ありがたい。だが、疑いはないことに越したことはない。そうだな……えっと立花……さん? 」
「あっ、呼び捨てでいいですよ。玉宮先輩の方が年上ですし。それに姫石先輩の声でさん付けされるのも、ちょっと変な感じなので」」
「そ、そうか? じゃあ、立花が姫石にしかわからないような質問をあっちの俺の体の方にしてみてくれ。それで、もし正しく答えられたなら、今よりもこの話の信憑性は上がるはずだ」
「わかりました。姫石先輩にしか話していないようなことを質問すればいいんですね」
そう言って立花は姫石の方に近づていった。
一瞬、ためらうような仕草を見せたが、すぐに普通になった。
きっと抱き着かれたことを思い出してしまったのだろう。
……
なんか、本当にすみませんでした。
姫石が原因であるにもかかわらず、俺は謝らずにはいられなかった。
漫画やアニメのように主人公がラッキースケベを起こしたときに、やられた女性キャラ達は即座に反応ならぬ反撃をしていたが、現実ではそうはいかないらしい。
見知らぬ男子にいきなり抱き着かれたその女子生徒は呆然としていた。
目をぱちくりとした後ようやく事態に気付いたのか、
「な、な、何ですか!? いきなり!? どうして私の名前を知ってるんですか!? 」
と反応した。
「何言ってるのよ! 歩乃架ちゃん! あたしたち親友でしょ! 名前なんか知ってるに決まってるじゃない! 先輩後輩の関係だけど、そんなこと気にしないくらい仲いいじゃん! あたしたち! 」
その行動は、傍から見れば男子生徒が女子生徒に抱き着きながら訳のわからないことを叫んでるヤバいやつにしか見えない。
その男子生徒は俺なんだが……
こんなところを誰かに見られてでもしたら大変まずいことになる。
社会的に抹殺されること間違いなしだ。
現状を全く理解していない姫石は、そんなことはお構いなしに抱き着いたままだ。
本当にやめて欲しい。
このままではあまりにも危険なため、俺は急いで姫石を引き離した。
「姫石、一旦少し落ち着け! お前の体は今は男なんだ! そんな状態で女子に抱き着くのは大問題でしかない! というか俺が各方面で死ぬからやめてくれ! 」
「あ~!! あたしの体! ちょっと早く返しなさいよ! 勝手にあたしの体使わないでよ! 」
「それはこっちのセリフだ! お前の体は俺のなんだよ! ほれ! 見てみろ! 」
そう言って俺は姫石にスマホのインカメラを使って、姫石の顔を映し出した。
「なんで……玉宮が映ってるの? 」
「俺と姫石が入れ替わっているからだ! 」
「え!? もしかして、あたしの体を勝手に使ってるのは玉宮なの? 」
「今さら気付いたのか!? 他に誰がいるんだよ。あと、俺だって好きに使ってるわけじゃない」
混乱している姫石とこなんなことをやりあっていると、とうとう我慢できなくなったのか、ほったらかしにされていた女子生徒が割って入ってきた。
「あの! さっきから姫石先輩も、そ、そこのあなたも何を言ってるんですか? 」
俺を見て姫石先輩と言うということは、やはりこの子は姫石とは面識があるようだ。
ただ、本当の姫石である方にはだいぶ警戒しているみたいだ。
当たり前のことではあるが。
「歩乃架ちゃん、どうしてあたしのことをそんな怖い顔で見るの? そんな顔しないでよ。こないだだって歩乃架ちゃんの大切な秘密を共有した仲じゃない! 」
「姫石! 話がややこしくなるから少し静かにしててくれ。頼むからこれ以上俺の体で変なことを喋らないでくれ」
「あたし別に変なことなんて言ってないの……」
「喋らない! 」
「……はい」
どうしてこう姫石は次から次へと、いろいろとアウトな発言をするのだろう。
まさか、本当はわざとやってるんじゃないだろうな。
それはないとは思うけど。
「とりあえず、二人とも俺の話を聞いてくれ」
俺は今起きている状況について、先ほど立てた仮説を二人に説明した。
正直、こんな突拍子もない仮説を当事者である姫石に言うならまだしも、第三者に言うのはそれなりにリスクがある。
最悪、頭のおかしい人扱いされて俺と姫石は精神異常者として病院に連れていかれてもおかしくない。
だが、このままだと俺は社会的に死ぬはめになる。
どうせここで死ぬなら、いっそのこと病院に連れていかれるリスクをとる方がよっぽどマシだ。
--------------------------
「えっと……つまりは階段から落ちてぶつかった衝撃のせいで入れ替わったってしまったってことですか? 本当にそんなことあるんですか? 」
俺の説明を聞いて、歩乃架と呼ばれていた女子生徒が開口一番に口を開いた。
「そう思う気持ちはわかるが、そうとしか考えられない状況が現に起きている。……悪い、ちょっと先に自己紹介をしてくれないかな? 初対面のままこんな話を続けるのはどうもやりづらい」
「あ、すみません。それもそうですよね。はじめまして、私は立花 歩乃架といいます。1年2組です。姫石先輩とは部活と美化委員で一緒になったのがきっかけで仲良くなったんです。私にとって姫石先輩は頼れるお姉ちゃんみたいな存在です」
「姫石が頼れるかどうかは置いといて、俺の名前は玉宮 香六。2年3組で、姫石と同じクラスだ。こいつとは中学からの腐れ縁みたいな関係だ」
「どうしてそんな大事な部分を置いとくのよ! 」
俺が軽く自己紹介を済ませると、なぜか姫石が、俺の自己紹介を気に入らなかったのか抗議してきた。
いくらなんでも、これで事故紹介だなんて言われる筋合いはない。
いったいどのあたりが大事な部分なのだろう?
「そうだったんですね。あの……お二人の最初の様子を見れば嘘をついているようには見えないんですが、正直に言うと今のところ半信半疑です」
そう申し訳なさそうしに言ってきた。
「いや、こんな突拍子もない話を半分も信じてくれているだけで十分ありがたい。だが、疑いはないことに越したことはない。そうだな……えっと立花……さん? 」
「あっ、呼び捨てでいいですよ。玉宮先輩の方が年上ですし。それに姫石先輩の声でさん付けされるのも、ちょっと変な感じなので」」
「そ、そうか? じゃあ、立花が姫石にしかわからないような質問をあっちの俺の体の方にしてみてくれ。それで、もし正しく答えられたなら、今よりもこの話の信憑性は上がるはずだ」
「わかりました。姫石先輩にしか話していないようなことを質問すればいいんですね」
そう言って立花は姫石の方に近づていった。
一瞬、ためらうような仕草を見せたが、すぐに普通になった。
きっと抱き着かれたことを思い出してしまったのだろう。
……
なんか、本当にすみませんでした。
姫石が原因であるにもかかわらず、俺は謝らずにはいられなかった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

貞操観念が逆転した世界に転生した俺が全部活の共有マネージャーになるようです
.
恋愛
少子化により男女比が変わって貞操概念が逆転した世界で俺「佐川幸太郎」は通っている高校、東昴女子高等学校で部活共有のマネージャーをする話
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる