怪物街道

ちゃぴ

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怪物街道 倉の話

恐怖の夢

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 かごめかごめは、今もなお響き続けている。後半部分は意味がわからないが、今僕がいる夢の中の雰囲気と相まって気味が悪い。
 と、夢の目覚め方をもう一つ思い出した。
 僕自身が死んでしまうことである。
 何者かに追いかけられる夢などで、僕が最終的に殺されてしまった時は凄い汗とともに目が覚めるものだ。
 ただ、これもまた直感ではあるのだが、僕はこの夢の中で死なない方が良い気がする。
 夢だということはわかっている。
 だが、夢に入り込み過ぎている。
 言葉として表現することがとても難しいのだが、夢の中にいる僕が死ねば、現実にいる僕も恐らく目覚めないのだと思う。精神体がしっかりと此処ここに存在しているのだ。
 此処で死ねば、現実の僕の肉体に損傷は無くとも、精神がきっと戻らない。
 今度は何が来るのか、と身構えていたところ、突然右腕を鳥居の方向に引っ張られた。
 鳥居からは目を離していない。
 鳥居からは何も出てきてはいない。
 だが、鳥居の方向に引っ張られている。
 鳥居から視線を外し、右腕を見ると、強く圧迫されている部分が見えた。
 それは、子どもの手程の大きさだった。
 しかし、引っ張る力は明らかに子どものそれではない。
 そうして視線を右腕に集中し始めた時、微かに見えた足下の異変に気付いた。
 僕の下にあった影の溜まり場から、無表情な白い顔をした何人もの子供達が僕を見ていた。
影は大きいわけではない。伸びてもいない。僕の足下にある崩れた小さな人影に、びっしりと、顔をひしめき合ってこちらを見ようと蠢いていた。
 僕は悲鳴を上げなかった。否、正確には上げられなかった。どうやら、僕は本当に恐怖した時、声を出さないみたいだ。
 足下の恐怖に気付いた瞬間、頭を、首を、肩を、腕を、腰を、足を、謎の黒い手がまとわりついて鳥居のがわに引っ張られた。
 いつの頃からか、かごめかごめは僕の足下の子供達が歌っている。只々ただただ、無表情で、無機質に、淡々と。
 鳥居に目を戻すと、今度は黒い腕が鳥居から伸びているのがわかる。
 鳥居をくぐるための場所は、少し目を離している内に真っ黒な、異界に繋がっていますと言わんばかりの様相ようそうていしている。
 一つ気付けば色々と見えてくるもんさ。でも今回ばかりは情報量が多すぎるな。状況が、しっちゃかめっちゃか二転三転大騒ぎ。
 一体どれから手を付ければいいのやら、だ。
 何とか引っ張られまいと僕は地面にしがみつく。そうすると、地面に落ちている影と必然近くなる。目の前で、五月蝿うるさいくらいに子供達はかごめかごめを歌っている。
 ちょっとは楽しそうにしてくれてたら、可愛げもあるってものだけどな、ちくしょう。
 もう黒い腕は僕の身体をがんじがらめだ。踏ん張ってもしがみついても、少しずつ鳥居に、僕の意思に反して近付いていく。
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