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二十七.
アンノウンの発展と野々村家の変化
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仕事が流れに乗ると、季節は光のように速く過ぎる。
島田氏は、アンノウンのみんなで集まって、飲み会をしながら、了二を他のスタッフの人達に紹介したかったのだが、いまだ感染症は下火にならず、グループで飲食するのは、感染の恐れがあり、ZOOMでみんなと顔合わせということになった。
その後、2週間に一度は全員参加のZOOM会議があり、各人からの提案や、新たに取材先になっていただけそうな個人や店舗、会社や施設などについての情報交換、他のメディアとは異なるアンノウンらしい取材の掘り下げ方についての議論、広告をだしてくださるところの状況と、より効果的な広告発信のありかたなど、自由な発言の場がもたれていた。
了二が島田氏と初めて面会し、その帰りに橋の上で転んで、野々村さんに助けてもらったあの雪の日から、はやくも次の冬が来た。
「裕子さんのハーブタイム」の連載は続いていた。今では野々村さんにとって、生きがいになっているようで、了二が取材にゆく度に、前にはなかった新しいハーブが買ってあったり、ハーブを使った料理やお菓子の、新しいレシピを考えて作ってくださって、了二は頭が下がる思いだった。
また「アンノウンニュースレター」を欠かさず読んでくださっている洋菓子店「ミケロ・アンジェロ」のパティシエのご夫婦が、野々村さんのレシピに興味をもたれて、ハーブを使ったお菓子を商品化され、「裕子さんのハーブタイム×ミケロ・アンジェロ スイーツの秘密 コラボ商品」が生まれた。また他の記者による飲食店の取材をきっかけに、店主が、地域色のある新しいメニューを考案して店で提供されるようになり、その新メニューの広告を「アンノウンニュースレター」にだしてくださるなど、了二達アンノウンの仕事が地域の活性化に貢献し続けており、アンノウンのスタッフはみんな、やりがいと誇りを感じるようになっていった。
そんなある日のことである。了二のスマホに野々村さんから電話がかかってきたのは。
野々村さんはスケジュールに几帳面な人で、毎回、取材の終わりに次回の取材日を約束し、急な日程変更は、これまでなかったので、了二は(何だろう?よほどの何かが起こったのかな?)と、心配しながら電話に出た。
「朝倉さん?お忙しいところごめんなさいね。今、お話しする時間はあるかしら?」
了二が時間はあります、と応えると、野々村さんは用件をきりだした。
「覚えていらっしゃるかしら?5月に、わたしが朝倉さんに、わたしの死後も、うちの建物を残したいと相談して、朝倉さんが賃貸物件にして娘に相続させる方法があるって教えてくださったこと。あれから娘とわたしで、不動産鑑定士さんに評価をしてもらったり、工務店に、建物を改装する際の見積りを出してもらったりして準備を進めていたのよ。それで、今度、税理士の先生と娘とわたしと、話をすることになったのだけれど、朝倉さんに加わってほしいと思って。こういう話って、客観的に見てくれる、利害関係のない第三者の人がいてくれたほうがいいと思うのよ。」
「えっ。野々村さんがそうおっしゃるなら、出席してもいいですけど、娘さんは僕みたいな他人がいても、構わないと思われるでしょうか?」
「ええ。娘からは承諾を取ってあるわ。お母さんが信用している人ならいいわよ、って。急な話だけれど、来週の月曜の午後に、うちに来ていただくことができるかしら?」
「はい。行けます。」
「では午後2時頃にお願いね。お忙しいのにすまないけれど、よろしくね。」
野々村さんはそう言って、電話を切った。
(ああ、あの時の俺の提案が、現実になるように進めておられたんだな。これは、提案者として見届けねばなるまい…)
了二は決心をして、月曜日を待った。
島田氏は、アンノウンのみんなで集まって、飲み会をしながら、了二を他のスタッフの人達に紹介したかったのだが、いまだ感染症は下火にならず、グループで飲食するのは、感染の恐れがあり、ZOOMでみんなと顔合わせということになった。
その後、2週間に一度は全員参加のZOOM会議があり、各人からの提案や、新たに取材先になっていただけそうな個人や店舗、会社や施設などについての情報交換、他のメディアとは異なるアンノウンらしい取材の掘り下げ方についての議論、広告をだしてくださるところの状況と、より効果的な広告発信のありかたなど、自由な発言の場がもたれていた。
了二が島田氏と初めて面会し、その帰りに橋の上で転んで、野々村さんに助けてもらったあの雪の日から、はやくも次の冬が来た。
「裕子さんのハーブタイム」の連載は続いていた。今では野々村さんにとって、生きがいになっているようで、了二が取材にゆく度に、前にはなかった新しいハーブが買ってあったり、ハーブを使った料理やお菓子の、新しいレシピを考えて作ってくださって、了二は頭が下がる思いだった。
また「アンノウンニュースレター」を欠かさず読んでくださっている洋菓子店「ミケロ・アンジェロ」のパティシエのご夫婦が、野々村さんのレシピに興味をもたれて、ハーブを使ったお菓子を商品化され、「裕子さんのハーブタイム×ミケロ・アンジェロ スイーツの秘密 コラボ商品」が生まれた。また他の記者による飲食店の取材をきっかけに、店主が、地域色のある新しいメニューを考案して店で提供されるようになり、その新メニューの広告を「アンノウンニュースレター」にだしてくださるなど、了二達アンノウンの仕事が地域の活性化に貢献し続けており、アンノウンのスタッフはみんな、やりがいと誇りを感じるようになっていった。
そんなある日のことである。了二のスマホに野々村さんから電話がかかってきたのは。
野々村さんはスケジュールに几帳面な人で、毎回、取材の終わりに次回の取材日を約束し、急な日程変更は、これまでなかったので、了二は(何だろう?よほどの何かが起こったのかな?)と、心配しながら電話に出た。
「朝倉さん?お忙しいところごめんなさいね。今、お話しする時間はあるかしら?」
了二が時間はあります、と応えると、野々村さんは用件をきりだした。
「覚えていらっしゃるかしら?5月に、わたしが朝倉さんに、わたしの死後も、うちの建物を残したいと相談して、朝倉さんが賃貸物件にして娘に相続させる方法があるって教えてくださったこと。あれから娘とわたしで、不動産鑑定士さんに評価をしてもらったり、工務店に、建物を改装する際の見積りを出してもらったりして準備を進めていたのよ。それで、今度、税理士の先生と娘とわたしと、話をすることになったのだけれど、朝倉さんに加わってほしいと思って。こういう話って、客観的に見てくれる、利害関係のない第三者の人がいてくれたほうがいいと思うのよ。」
「えっ。野々村さんがそうおっしゃるなら、出席してもいいですけど、娘さんは僕みたいな他人がいても、構わないと思われるでしょうか?」
「ええ。娘からは承諾を取ってあるわ。お母さんが信用している人ならいいわよ、って。急な話だけれど、来週の月曜の午後に、うちに来ていただくことができるかしら?」
「はい。行けます。」
「では午後2時頃にお願いね。お忙しいのにすまないけれど、よろしくね。」
野々村さんはそう言って、電話を切った。
(ああ、あの時の俺の提案が、現実になるように進めておられたんだな。これは、提案者として見届けねばなるまい…)
了二は決心をして、月曜日を待った。
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