18 / 34
十八.
盛金稲荷縁起 3 そして島田氏からの連絡
しおりを挟む
ところが当初は、盛金稲荷という名称ではなかった。来兵衛が伏見稲荷大社からの帰り道で、犬に姿を変えた稲荷大神の遣いからお告げを受けたことにちなみ、「犬山稲荷」(いぬやまいなり)と名付けられていた。
「犬山稲荷」の名称は、明治時代になるまで使われ、その間に、御利益のエピソードはたくさんあったので、了二はそのうちから6つを選んでマンガを描いた。
さて次は、なぜ「盛金稲荷」という名称になったか、だ。
江戸時代には半農半漁の平凡な村だったこのあたりだが、明治に入り、やる気のある個人にも事業や商売を始めるための資金を貸してくれる「資産金貸付所」がこの地にできた。
「犬山稲荷」を信仰していたこの地の人々は、商売に関心が高く、農業漁業以外の仕事を始める人達が現れてきた。
これまでは、漁をして生魚を売るだけだった漁師が、ちりめんや干海老の加工所を作ったり、
椎茸栽培をして干し椎茸を売る人が現れたり、楮(こうぞ)を育てて紙をすき、独特の意匠の紙製品を作って売り、地域の特産品になったりした。
このように、産業が盛んになると、そこで働く人達が増え、その産業に関わって、必要な品物を納める人達が増え、それぞれの人にお金が払われ、そのお金でまた物が買われ、と、お金の好循環が始まる。そして産業が続く限り、お金が生み出されてゆくのだから、他の地域の人々から見ると「あの村には、お金が盛るようにあるようだ」と噂されるようになった。
この噂の言葉をとって、明治時代に「犬山稲荷」
から「盛金稲荷」と名称が変えられた。
その後、現代までにも、たくさんの御利益話があるのだが、了二はいったん「盛金稲荷」と呼ばれることになったところで連載を終わり、近現代のことは、また改めて書くことにした。
15日には、月末までに書いた記事の数×15,000円が(株)アンノウンから了二の銀行口座に振り込まれ、当面の生活費を確保できた了二は、心から安堵した。
(このお金ができたのも、猫のおかげだね。ありがとう。)
(いやいや、了二さんの努力だニャン。これからもよろしくだニャン。)
そう猫と言い合った時、了二のスマホが鳴った。見ると、島田氏からのLINEで「朝倉様、いつもすばらしい記事を描いていただき、ありがとうございます。ところで、そろそろ直接会ってお話ししませんか?」と書いてあった。
了二は、いよいよ、来るべき時が来た。と思った。
「犬山稲荷」の名称は、明治時代になるまで使われ、その間に、御利益のエピソードはたくさんあったので、了二はそのうちから6つを選んでマンガを描いた。
さて次は、なぜ「盛金稲荷」という名称になったか、だ。
江戸時代には半農半漁の平凡な村だったこのあたりだが、明治に入り、やる気のある個人にも事業や商売を始めるための資金を貸してくれる「資産金貸付所」がこの地にできた。
「犬山稲荷」を信仰していたこの地の人々は、商売に関心が高く、農業漁業以外の仕事を始める人達が現れてきた。
これまでは、漁をして生魚を売るだけだった漁師が、ちりめんや干海老の加工所を作ったり、
椎茸栽培をして干し椎茸を売る人が現れたり、楮(こうぞ)を育てて紙をすき、独特の意匠の紙製品を作って売り、地域の特産品になったりした。
このように、産業が盛んになると、そこで働く人達が増え、その産業に関わって、必要な品物を納める人達が増え、それぞれの人にお金が払われ、そのお金でまた物が買われ、と、お金の好循環が始まる。そして産業が続く限り、お金が生み出されてゆくのだから、他の地域の人々から見ると「あの村には、お金が盛るようにあるようだ」と噂されるようになった。
この噂の言葉をとって、明治時代に「犬山稲荷」
から「盛金稲荷」と名称が変えられた。
その後、現代までにも、たくさんの御利益話があるのだが、了二はいったん「盛金稲荷」と呼ばれることになったところで連載を終わり、近現代のことは、また改めて書くことにした。
15日には、月末までに書いた記事の数×15,000円が(株)アンノウンから了二の銀行口座に振り込まれ、当面の生活費を確保できた了二は、心から安堵した。
(このお金ができたのも、猫のおかげだね。ありがとう。)
(いやいや、了二さんの努力だニャン。これからもよろしくだニャン。)
そう猫と言い合った時、了二のスマホが鳴った。見ると、島田氏からのLINEで「朝倉様、いつもすばらしい記事を描いていただき、ありがとうございます。ところで、そろそろ直接会ってお話ししませんか?」と書いてあった。
了二は、いよいよ、来るべき時が来た。と思った。
6
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
No One's Glory -もうひとりの物語-
はっくまん2XL
SF
異世界転生も転移もしない異世界物語……(. . `)
よろしくお願い申し上げます
男は過眠症で日々の生活に空白を持っていた。
医師の診断では、睡眠無呼吸から来る睡眠障害とのことであったが、男には疑いがあった。
男は常に、同じ世界、同じ人物の夢を見ていたのだ。それも、非常に生々しく……
手触り感すらあるその世界で、男は別人格として、「採掘師」という仕事を生業としていた。
採掘師とは、遺跡に眠るストレージから、マップや暗号鍵、設計図などの有用な情報を発掘し、マーケットに流す仕事である。
各地に点在する遺跡を巡り、時折マーケットのある都市、集落に訪れる生活の中で、時折感じる自身の中の他者の魂が幻でないと気づいた時、彼らの旅は混迷を増した……
申し訳ございませんm(_ _)m
不定期投稿になります。
本業多忙のため、しばらく連載休止します。
赤き翼の万能屋―万能少女と出来損ない死霊術師の共同生活―
文海マヤ
ファンタジー
「代わりのない物なんてない。この世は代替品と上位互換に溢れてる」
万能屋。
猫探しから家の掃除や店番、果ては護衛や汚れ仕事まで、あらゆるものの代わりとなることを生業とするもの。
そして、その中でも最強と名高い一人――万能屋【赤翼】リタ・ランプシェード。
生家を焼かれた死霊術師、ジェイ・スペクターは、そんな彼女の下を訪ね、こう依頼する。
「今月いっぱい――陸の月が終わるまででいいんだ。僕のことを、守ってはくれないだろうか」
そうして始まる、二人の奇妙な共同生活。
出来損ないの死霊術師と最強の万能屋が繰り広げる、本格ファンタジー。
なろうに先行投稿中。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ととのい賢者の王国最強戦記
けんゆう
ファンタジー
異世界に転移したサウナ好きの俺は、剣と魔法の王国にサウナ文化が存在しないことに絶望する。疲れ切った人々を見て、「サウナを広めなきゃ!」と決意し、手作りのサウナを完成。しかし、理解されず異端者扱いされて追放される……
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる