200の❤️がついた面白さ!わらしべ招き猫∼お金に愛される道しるべ(完結)

むめ

文字の大きさ
上 下
9 / 34
九.

神様へ、お願い!

しおりを挟む
翌日。

了二はまた猫と、ブランド品買取り店で受け取った9,220円が入った財布をショルダーに入れ、
当面の食品を買いに出かけた。

派遣社員として働いていた時は、出社の時間は早く、退社の時間は遅いので、アパートや職場の近くのコンビニで買い物するしかなかったが、今は持っているお金で少しでも安く、たくさん買いたい。そこで了二は、アパートから少し遠いけれど、これまで行く機会がなかった「毎日お買い得!スーパーフジムラ」まで歩いて行くことにした。

今日は雨こそ降ってないが、どんよりと重苦しい雲がたれこめている天気だ。歩き始めは寒かったが、1kmほども歩くと、体がぽかぽかしてきた。「スーパーフジムラ」まであと2kmほどだ。

(最近、野菜不足になっているから、キャベツは買おう。米も5kg買っておこう。食パンも買って冷凍しておこう。即席コーンスープも欲しいし、安ければくだものも…)

歩きながら、買いたいものをいろいろ考える。
初めて歩く道の、初めて見る景色のなかを通り過ぎてゆく。

(んっ…?)

了二はふと、その前を通り過ぎてから、何か街なかにあるには似つかわしくないものの前を通ったことに気がついた。

回れ右をして、その前まで戻ってみた。

民家と民家にはさまれて、2メートルほどの間があり、そこに、小さいけれども立派な、朱色の鳥居が立っていた。

(こんなところに神社があったんだ…)

鳥居から10メートルほど奥に、鳥居と同じく朱色の、こじんまりとした社(やしろ)が鎮座している。

了二はせっかくだから神だのみもしようかと思い、猫に、

(この神社で開運のお願いをしていいかな?)
と聞くと、猫は、

(ええよ、ええよ。わしら招き猫と神様は仲がいいニャ。ぜひお願いしときニャ。)
と、猫もすすめてくれる。了二は鳥居をくぐって社の前まで行き、ショルダーから財布を出し、

(今はこれだけしかお賽銭が出せないけど、猫の分と俺の分。)

と思いながら、20円を賽銭箱に入れた。

柏手(かしわで)を打ち、手を合わせて目を閉じ、心の中で祈る。

(この先の仕事運と金運が上がりますように!)

祈りを終え、了二が目を開いた時、少し不思議なことが起こっていた。

重くたれこめていた雲が、社の上あたりから、わずかに割れて、了二の視線の先へ向かって青空がまっすぐな小道のように続いていた。

(これは吉兆かも!)
了二はうれしく感じた。

参拝を終え、道路に出て、また「スーパーフジムラ」へ向かって歩き始めた時、猫が言った。

(了二さん、あの神社、ちょっとおもろい神社ニャン。次の記事のネタになるかもよ。)

(えっ、そうなん?どこが面白いの?)

(それを取材するのが了二さんの仕事ニャン。猫はヒントをあげるだけニャ。)

(そっかあ。まあそうだよね。記事を頼まれているのは俺だからね。でも今回もヒントをありがとう。買物が終わったら、また来ることにするよ。)

猫と話しながら歩いて行くと、遠くに「スーパーフジムラ」の看板が見えてきた。了二にとっては、コンビニ以外の店での買物は久し振りだ。
会社に行かなくなると、それまでとは違う経験をするようになって、これはこれで新しい、ちょっとワクワクする体験だな、と思いながら、店内に入った了二だった。

両手に提げたマイバックがパンパンになるほど食品を買い込み、またあの神社の前を通ってアパートに帰った。

(神様、また来ます。)
と思いながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

No One's Glory -もうひとりの物語-

はっくまん2XL
SF
異世界転生も転移もしない異世界物語……(. . `) よろしくお願い申し上げます 男は過眠症で日々の生活に空白を持っていた。 医師の診断では、睡眠無呼吸から来る睡眠障害とのことであったが、男には疑いがあった。 男は常に、同じ世界、同じ人物の夢を見ていたのだ。それも、非常に生々しく…… 手触り感すらあるその世界で、男は別人格として、「採掘師」という仕事を生業としていた。 採掘師とは、遺跡に眠るストレージから、マップや暗号鍵、設計図などの有用な情報を発掘し、マーケットに流す仕事である。 各地に点在する遺跡を巡り、時折マーケットのある都市、集落に訪れる生活の中で、時折感じる自身の中の他者の魂が幻でないと気づいた時、彼らの旅は混迷を増した…… 申し訳ございませんm(_ _)m 不定期投稿になります。 本業多忙のため、しばらく連載休止します。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

兵站戦のダンジョン

池堂海都
ファンタジー
受付嬢に憧れていた新人ギルド職員のフレイが配属されたのは金融課だった。 追い出し部屋とも噂される金融課での奮闘記

魔王様は退屈過ぎて勇者へと転職する

れのひと
ファンタジー
後先考えず転職をしてしまった元魔王様とそれに付き合わされ魔王となってしまった元側近が、元の職業を取り戻すためにレベル上げの旅をするお話です。はたして二人は魔王城へと帰ることが出来るのでしょうか…

処理中です...