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序章 魔女になった少年
契約は友情の崩壊と共に
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――――数日前――――
「イヴァン、もしもこの獄中から俺と脱獄出来たらどうする?」
少し戸惑うような発言を何の前触れも無く言ってきたクラリスだったが、獄中から出られるなら悪魔とも契約をするつもりだった。
「もし本当にそんな事が出来るのなら答えはYESですけど、この獄中に逃げ場なんて無いですよ?」
この施設全体を通して外部との接触が無く、しかも通気孔や窓、ドアの前にまで鉄格子がついている。無論、僕にこれを壊す技量も力も無い。
「でも急になんでそんなことを言い出すんですか?」
昨日まで普通に話していて、今日のクラリスは昨日見たクラリスよりも恐怖と苦しい声になっていた。
「いや、何でもない。この事はしばらく忘れてくれ。」
またそれ以来クラリスとの会話は劇的に減り、何度か死んでしまったのかと思うほどだった。
――――数日後―――――
今日は、予想よりも冷え込み、寒さで凍え死んでしまいそうだったが。
幸い、藁の布団を効率よく体に巻き付けて耐えていた。
そうやって寒さと格闘をしていると、クラリスの壁の方から言葉が聞こえて来た。
「――――――――――。」
寒さと、外から聞こえる風の音で何も聞こえなかった。
だが妙に気になるので聞いて見ようと試みたが、寒さと凍傷で意識がそこで途絶えてしまった。
目を覚ますと、寒波は去って行ったようで、凍傷等の症状は治っていた。
「おはようございます、クラリス。さっきなんて言われていた――――。」
最後まで言わずに、予想もしない返答が返って来る。
「単刀直入に言う、俺と契約をしないか?」
静かで真面目なトーンの声だった。
「えっ、?」
「契約ってどういう事ですか?」
戸惑いが隠せない、なぜ契約等の言葉が挙がるのか。そもそも、クラリスは自分の生い立ちやどこで何をして捕まったのかも教えてくれなかった。
「俺には、とあるエルフの女に大事な物を返したいっていう願いがある。お前にもここを脱出したいという願いがある。お互いにとっても損の無い契約だろ。」
本来契約とは、代償を払って悪魔や精霊等と願いを投下交換をする物だが、それを自分の願いが代償の代わりだという、異質な契約内容に驚いていた。
「でも、、、まさか!?」
ここで僕はクラリスの正体を思い出す。
「あぁ、俺は大悪魔クラリスと呼ばれる大罪人さ。」
吹っ切れた様に穏やかな口調で話すクラリスだったが、その言葉を聞くことになるとは考えもしなかった。
大悪魔クラリスは、数十年に渡る戦争をとある人間と強制契約をして、強靭な肉体を持つ兵士を量産していたが、その兵を使い国王に国家転覆を図って、返り討ちに会い、死刑宣告された大悪魔だった。
「そんな、何で、クラリスが、国家転覆を図った大罪人?」
優しい口調と、物穏やかで紳士的な事を、私が一番知っている。
クラリスがそんな事をするとも思っていないし、していないと信じていたい。
「でも何でこんなあっさりと、、、」
驚いて残っている片目から涙を出してしまいそうだったが、なんとか堪えていた。
だが無情にも、耐えることを許さない発言が返って来た。
「―――俺、今日の夜処刑される事が決定したんだ。だから契約して生き延びたいし、自分とイヴァンの願いも叶えたい。だから、、、」
「ふざけないで!」
僕は思わず声に出てしまった。
「僕が急にこんな事を言われてどう思ったか分かる!?信じて、今まですがり付ける友と信じていたのに!それなのにあんまりだよ!」
心の声が全て漏れてしまった。本音だけで言葉を交わした人は初めてだったが、その初めてがこんな風になるとは予想もしていなかった。
この返答にクラリスは黙りを決め込んだ。
「、、、すまない。」
静かなトーンで聞こえて来る謝罪はこの場で何の役にも立たず、僕は気持ちを裏切ったクラリスに憎悪を抱きそうだった。
「契約なんて僕はしない。何で今まで相談してくれなかったんだ。僕は君を信じていたのに。」
そのまま、会話が進展する事も無く、夕方を迎えた。
「なぁ、こんな事を言って、面目がないが、俺が殺されたら前に言ったみたいに心臓を食べてくれないか。」
「――――――」
僕は何を言われようと、黙りを決め込もうとした。
そんな事するもんか、お骨だって拾ってやらないと心に決めていた。
そんな中、少し早めに騎士が訪れ、クラリスを連行して行った。
内心、いい気みだとも思っている。
連れて行かれる前にクラリスは一言だけ話した。
「じゃあさよならイヴァン。」
悲しい表情と共に聞こえる悲痛の声だが、僕には関係の無い事だった。
だが、なぜか悲しい気持ちにもなった。
彼を見送ってあげなくて良いのかと後悔しない選択を取りたかった。
部屋を見ると、クラリス側の壁の穴に書き置きのようなものが置かれていた。
―――すまないイヴァン、俺には勇気がないし根性も何もかも無い、それでもさっきみたいな俺の自分勝手な意見を急に言われると、悲しいのは分かる。俺も悲しい、本当にすまなかった、ごめん。悲しませるよりも喜んで過ごして欲しい、笑って生きていて欲しいと何度でも思う事があった。この子は悲しい顔よりも、笑った顔をを見て欲しい、そう思っている。君を理解していたつもりだったが実際、理解されていたのは俺の方だった。いつか必ず、君が魔女として堂々生きられる世界になる事をねがっているよ。
血の文字でかかれたその文章を見ていると、少し後悔する気持ちになってしまった。彼を助けたい。一緒に笑って過ごしたいと思った。
そう思い、必ず返事を聞いてやろうと誓った。
「―――――クラリスを助けに行こう。―――――」
「イヴァン、もしもこの獄中から俺と脱獄出来たらどうする?」
少し戸惑うような発言を何の前触れも無く言ってきたクラリスだったが、獄中から出られるなら悪魔とも契約をするつもりだった。
「もし本当にそんな事が出来るのなら答えはYESですけど、この獄中に逃げ場なんて無いですよ?」
この施設全体を通して外部との接触が無く、しかも通気孔や窓、ドアの前にまで鉄格子がついている。無論、僕にこれを壊す技量も力も無い。
「でも急になんでそんなことを言い出すんですか?」
昨日まで普通に話していて、今日のクラリスは昨日見たクラリスよりも恐怖と苦しい声になっていた。
「いや、何でもない。この事はしばらく忘れてくれ。」
またそれ以来クラリスとの会話は劇的に減り、何度か死んでしまったのかと思うほどだった。
――――数日後―――――
今日は、予想よりも冷え込み、寒さで凍え死んでしまいそうだったが。
幸い、藁の布団を効率よく体に巻き付けて耐えていた。
そうやって寒さと格闘をしていると、クラリスの壁の方から言葉が聞こえて来た。
「――――――――――。」
寒さと、外から聞こえる風の音で何も聞こえなかった。
だが妙に気になるので聞いて見ようと試みたが、寒さと凍傷で意識がそこで途絶えてしまった。
目を覚ますと、寒波は去って行ったようで、凍傷等の症状は治っていた。
「おはようございます、クラリス。さっきなんて言われていた――――。」
最後まで言わずに、予想もしない返答が返って来る。
「単刀直入に言う、俺と契約をしないか?」
静かで真面目なトーンの声だった。
「えっ、?」
「契約ってどういう事ですか?」
戸惑いが隠せない、なぜ契約等の言葉が挙がるのか。そもそも、クラリスは自分の生い立ちやどこで何をして捕まったのかも教えてくれなかった。
「俺には、とあるエルフの女に大事な物を返したいっていう願いがある。お前にもここを脱出したいという願いがある。お互いにとっても損の無い契約だろ。」
本来契約とは、代償を払って悪魔や精霊等と願いを投下交換をする物だが、それを自分の願いが代償の代わりだという、異質な契約内容に驚いていた。
「でも、、、まさか!?」
ここで僕はクラリスの正体を思い出す。
「あぁ、俺は大悪魔クラリスと呼ばれる大罪人さ。」
吹っ切れた様に穏やかな口調で話すクラリスだったが、その言葉を聞くことになるとは考えもしなかった。
大悪魔クラリスは、数十年に渡る戦争をとある人間と強制契約をして、強靭な肉体を持つ兵士を量産していたが、その兵を使い国王に国家転覆を図って、返り討ちに会い、死刑宣告された大悪魔だった。
「そんな、何で、クラリスが、国家転覆を図った大罪人?」
優しい口調と、物穏やかで紳士的な事を、私が一番知っている。
クラリスがそんな事をするとも思っていないし、していないと信じていたい。
「でも何でこんなあっさりと、、、」
驚いて残っている片目から涙を出してしまいそうだったが、なんとか堪えていた。
だが無情にも、耐えることを許さない発言が返って来た。
「―――俺、今日の夜処刑される事が決定したんだ。だから契約して生き延びたいし、自分とイヴァンの願いも叶えたい。だから、、、」
「ふざけないで!」
僕は思わず声に出てしまった。
「僕が急にこんな事を言われてどう思ったか分かる!?信じて、今まですがり付ける友と信じていたのに!それなのにあんまりだよ!」
心の声が全て漏れてしまった。本音だけで言葉を交わした人は初めてだったが、その初めてがこんな風になるとは予想もしていなかった。
この返答にクラリスは黙りを決め込んだ。
「、、、すまない。」
静かなトーンで聞こえて来る謝罪はこの場で何の役にも立たず、僕は気持ちを裏切ったクラリスに憎悪を抱きそうだった。
「契約なんて僕はしない。何で今まで相談してくれなかったんだ。僕は君を信じていたのに。」
そのまま、会話が進展する事も無く、夕方を迎えた。
「なぁ、こんな事を言って、面目がないが、俺が殺されたら前に言ったみたいに心臓を食べてくれないか。」
「――――――」
僕は何を言われようと、黙りを決め込もうとした。
そんな事するもんか、お骨だって拾ってやらないと心に決めていた。
そんな中、少し早めに騎士が訪れ、クラリスを連行して行った。
内心、いい気みだとも思っている。
連れて行かれる前にクラリスは一言だけ話した。
「じゃあさよならイヴァン。」
悲しい表情と共に聞こえる悲痛の声だが、僕には関係の無い事だった。
だが、なぜか悲しい気持ちにもなった。
彼を見送ってあげなくて良いのかと後悔しない選択を取りたかった。
部屋を見ると、クラリス側の壁の穴に書き置きのようなものが置かれていた。
―――すまないイヴァン、俺には勇気がないし根性も何もかも無い、それでもさっきみたいな俺の自分勝手な意見を急に言われると、悲しいのは分かる。俺も悲しい、本当にすまなかった、ごめん。悲しませるよりも喜んで過ごして欲しい、笑って生きていて欲しいと何度でも思う事があった。この子は悲しい顔よりも、笑った顔をを見て欲しい、そう思っている。君を理解していたつもりだったが実際、理解されていたのは俺の方だった。いつか必ず、君が魔女として堂々生きられる世界になる事をねがっているよ。
血の文字でかかれたその文章を見ていると、少し後悔する気持ちになってしまった。彼を助けたい。一緒に笑って過ごしたいと思った。
そう思い、必ず返事を聞いてやろうと誓った。
「―――――クラリスを助けに行こう。―――――」
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