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オフィスラブは危険がいっぱい!?

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 挑発にも似たお願いをした私を見て、龍臣さんは息を呑んで驚いている様子だ。  
 それもそうだろう。私がこんなふうに彼を直接的な言葉で求めたことなど、一度もなかったからだ。
 そんな彼の腕に触れ、私は意図せずに甘えた声を出していた。

「抱いて……ほしいです」

 彼と私とでは身長差がある。彼を見上げなくては、視線を合わせることはできない。
 だが、私はもっと彼に近づきたくて、背伸びをした。
 いつもより少しだけ彼に近づくことができて、ドキドキする。
 この暗がりでは、これだけ顔を近づけなくては彼の表情を見ることができない。
 ようやく彼の顔が見えた。だが、その瞬間。否応もなしに胸がドクンと高鳴る。
 龍臣さんの瞳に、情欲の炎が灯っていることに気がついたからだ。
 特殊体質の発作が出ているときとはまた違った、雄の顔。
 彼の情欲を煽ったのは自分なのに、怯んでしまうほどの色気と欲望が伝わってきた。
 背伸びをしている私に、彼は腰を曲げて近づいてくる。
 その凶悪なまでの色気を振りまかれ、息が止まるかと思うほどドキッとした。

「悪い子だ」
「え?」

 低くセクシーな声で囁かれる。それも私を咎める言葉を言いながらも、私を試すような口調で続けた。

「君は俺を翻弄し続けるんだから……出会ってから、ずっと」
「え?」

 瞬きを繰り返す私を見て、龍臣さんは妖しくほほ笑む。その淫靡な表情に、空気に……私は囚われた。
  ガバッと勢いよく私を抱きしめてきた龍臣さんは、齧りつくように私の唇を食んでくる。
 
「っ……龍臣さ……んんっ!」

 急に唇を奪われ、最初こそは驚きのあまり彼の胸板を押して逃げようとした。
 だが、次第に彼の唇から伝わってくる熱の虜になっていく。
 はぁ、と息をついた隙に、彼の熱くて凶暴な舌が滑り込んできた。
 私の舌を見つけだすと、そこに絡みついてくる。そのたびにゾクゾクと下腹部が揺れて、彼と肌を重ねた夜を思いだしてしまう。
 導かれるように快感と欲望が湧き上がってきて、龍臣さんとのキスに夢中になる。
 唇と唇の角度を変えて触れ合うたびに、クチュクチュと淫らな唾液の音が響く。
 余すところなく私の口内に触れようとする彼の舌は、とても熱い。
 火傷してしまうんじゃないかと心配になるほど熱くて……情熱的だ。

「もっと……口を開いて?」

 こういうときの彼の言葉に、私は逆らえた試しがない。
 恥ずかしいという気持ちは込みあげてくるのだが、彼にもっと愛してもらいたいという気持ちの方が上回るからだろうか。
 なにより、彼の愛撫が気持ちよすぎて、もっともっとと貪欲に求めたくなってしまう。
 彼の舌が、今度は私の唇の輪郭をなぞるようにゆっくりと舐めてきた。
 ゾクリと快感に震え、彼の腕を掴む手に力がこもる。
 徐々に力が抜けていく唇を、龍臣さんは優しく、時に厭らしく舌と自身の唇を使って愛撫してきた。
 そのたびに違う快感が背を走り、私はここが外だということを忘れて喘いでしまいそうになる。
 視線を回りに向けて、この場には誰もいないことを確認した。

 ――よかった。誰もいないみたい。
 
 そう思ったのは一瞬。だけど、そんなのわからないだろう。
 もしかしたら、向こうの茂みから誰かが見ているかもしれないのだ。
 想像しただけで、言いようもない羞恥心が込みあげてくる。
 誰かに見られているかもしれないという、ある種のスリルがより鼓動を速めていく。
 ドキドキしすぎて息苦しいほど。それなのに、彼はよりキスを深めてくる。
 唇と唇を重ねるだけ。それだけなのに、どうしてこんなに気持ちがいいのだろう。
 彼の唇の柔らかさに夢中になり、私は縋るようにキスをせがんだ。
 呼吸が荒れる一方、それでも彼からのキスがもっとほしい。そんな淫らな考えが脳裏を過り、自身が興奮していることを知った。
 
 ――もっと……。してほしい。

 声に出すのは憚られる。だからこそ、私は彼に目で訴えた。
 私の気持ちが通じたのか。彼は淫らなキスを、絶え間なく仕掛けてくる。
 快感に支配された膝はガクガクと震え、立っていることも辛くなってきた。
 彼の腕を掴む手にキュッと力を込めながら、私は涙目で彼を見上げる。
 もう無理。こんな淫らな快楽を与えられ続けるキスに耐えられる自信はない。
 そんな気持ちを抱きつつも、もっともっと欲しいと希ってしまう。
 快感が欲しい。愛撫をもっとして欲しい。そして――彼がもっと欲しい。
 私を見下ろす彼と視線が絡み合う。
 その吸い込まれてしまいそうな熱を帯びた瞳には、私はどんなふうに映っているのだろうか。
 厭らしい顔をしているかもしれない。そう思うと、羞恥で身体が一気に熱くなる。
 私の気持ちが彼に伝わったのだろうか。熱くなってしまった頬を、彼の冷たい手がひと撫でしてくる。
 クールダウンを促すような冷たさに驚いて瞬きを繰り返していると、龍臣さんは私の顔を覗き込んできた。

「……行こう」

 私の手首を強引に掴んだあと、龍臣さんは足早に茂みの中から飛び出した。
 歩調が緩まることはなく、私は引っ張られる形で公園を抜け出す。
 龍臣さんと私では歩幅が違う。大股で半ば小走りしている彼についていくのは、小柄な私には至難の業。
 少し歩調を……、彼の背中に投げかけたくなったが、口を閉ざす。
 いつも冷静で大人な彼なのに、今は余裕のない空気を感じたからだ。
 先程までは冷たかった彼の手。だが、今、私の手首を掴んでいる手は熱が帯びている。かなり熱い。
 手首から伝わってくる彼の熱が、私の体温と溶け合っていく。
 もっと彼とくっついて熱を共有したい。そんな欲求が高まる。
 どこに行くのか、なんて野暮なことは聞かない。きっと、龍臣さんと気持ちは一緒だ。

 ――早く、二人きりになりたい。

 私を引っ張っていく、余裕のない彼の背中を見つめた。
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