2 / 17
1巻
1-2
しおりを挟む
まさか、竜生がメイの名前や所属部署を知っているとは思わなかった。
阿藤フード本社には、社員が数百人もいる。役職もついていないOLのメイが重役と接する機会など、皆無と言ってもいい。それなのに、竜生はなぜメイのことを知っているのか。
(……もしかして、あの時のコト、専務も覚えていてくれたの?)
メイがドキドキしながら見つめると、彼の顔にあの雨の日と同じ笑みが浮かんだ。
「久しぶりだね。一年前はどうも」
そう言って顔を近づけてくる竜生に、メイは頬を赤らめる。
(ち、近いですってば、専務)
慌てるメイを見て、竜生は優しくほほ笑んだ。
竜生はあの時のことを覚えていたのだ。
メイの心臓はますます高鳴り、嬉しさに頬が緩みそうになる。だが同時に、戸惑いも感じていた。
あの時、メイは名乗らなかった。けれど彼がメイの名前を知っているということは――
(もしかして私のこと、探してくれたの?)
少し考える時間がほしくて、メイは顔を背けようとする。しかし、許さないとばかりに、竜生はメイの顎に手を添えて上を向かせた。
まるでキスをする時のような至近距離に、メイの目は泳いでしまう。
そんな彼女の慌てぶりを楽しむように、竜生は口の端を上げた。
「さぁて。君に聞きたいことがあるのだが」
「……はい。でも、あの、その前に起き上がってもいいでしょうか?」
そう言ってメイは起き上がろうとするが、竜生はそれを許してくれない。
メイが目を見開いていると、竜生の目がキラリと光った。
「だめだね。まだ、君の疑いは晴れていない」
「疑いだなんて! 私、何もしてません!」
彼の言葉に、メイは声を荒らげた。
眉間にしわを寄せるメイに、竜生はそっけなく言う。
「じゃあ聞くけど、どうしてこんな時間に、あの場所にいたんだい? 一体、何をしてたの?」
「それは……!」
メイは理由を話そうと口を開いたが、竜生はそれを遮った。
「今、社内には社長である兄と君の先輩の冬川さん、そして俺の三人だけしかいないはずなんだけど?」
「ちゃんと守衛さんの許可は得ています! もし信じられないと言うのなら、守衛さんに聞いてみてください!」
「……」
メイは必死にそう言い募る。だが、竜生は無表情のままだ。
「とにかくですね、家の鍵をデスクに置き忘れてしまったんです。今日は家に誰もいないので、鍵がないと家に入れなくて困るんです。だから、会社に戻ってきたんですけど……」
そう言ったあと、メイは言葉を濁した。
社長と冬川の激しい情事を思い出して、メイは恥ずかしさのあまり、それ以上何も言うことができなかった。
(うぅ……どうしよう。なんて言えばいいの?)
メイは、恥ずかしくて顔が熱くなるのを感じた。
「ふーん、なるほど。鍵を取りに戻ってきたら、兄と冬川さんのセックス現場だった、と」
「……っ! そ、そうです」
コクコクとうなずくメイを見て、竜生はニヤリと笑う。
その笑みはまるで時代劇に登場する悪代官のようで、あの雨の日に見た優しいほほ笑みとはかけ離れたものだった。
メイの顔が強張る。
「へぇ、それにしては、じっくり見ていたよね。君に人の情事を覗き見る趣味があったとは、いやはや」
「ち、違います! そんな趣味ありません! び、び、びっくりして動けなくなっちゃっただけで」
竜生にとんでもないことを言われ、耳までカァッと赤くなる。
(どうしよう。どうしたら信じてくれるの?)
メイは、パニック寸前だ。
メイの視界が、にじみ始めた。グッと唇をきつく噛み、涙がこぼれ落ちないようにたえる。
竜生はメイの目元に指を這わせ、浮かんだ涙をぬぐった。
「女の涙、か。鬱陶しいと思っていたけど、君の涙はいいな……キレイだ。あの日のままだね」
「は!? ……んっ!」
メイは竜生の言葉の意味がわからず口を開こうとしたが、唇をふさがれ言葉はすべて呑み込まれてしまった。
「ん……ぁは……んんっ!」
竜生は、角度を変えて何度もメイに口づける。
息苦しくなってメイが口を開くと、待ってましたとばかりに、ヌルリと生温かい舌が滑り込んできた。
クチュクチュと淫らな音が聞こえてきて、メイは恥ずかしさのあまり、耳をふさぎたくなった。
竜生はメイの歯列を舌でゆっくりなぞったあと、舌を絡ませて吸い上げる。
「あ……ふぅ……っ」
声を出さないよう我慢していたのに、メイの口からはついに甘い声がこぼれた。
口内を竜生の舌で犯され、気がつくと甘い痺れでソファーから立ち上がることができなくなってしまった。
だらんと力なく寝そべるメイから、竜生はやっと唇を離す。
二人の口の間にツーッと銀色の糸が引き、プツンと切れた。
ハァハァというメイの荒い息遣いが静かな室内に響く。
あれだけ濃厚で情熱的なキスをしたというのに、竜生は呼吸ひとつ乱していない。
それどころか、無表情でメイをジッと見つめてくる。
そんな彼を、メイはただぼんやりと眺めることしかできなかった。
静かなオフィスビルの一室――それも専務室で、憧れの彼とこんなキスをするだなんて。
現状を把握すればするほど、メイは戸惑い、また恥ずかしくなった。
肩で息をするメイを見て、竜生は片眉を上げて意地悪そうに笑った。だが、瞳にはどこか哀愁が漂っている。
それはなんとも不思議な表情で、とても艶っぽく、竜生をより魅力的に見せていた。
「君には好きな男がいるよね?」
「え……?」
竜生の低く響く声に、メイの胸はドクンと大きく跳ねた。
無理やりキスをしたあとに、そんなことを聞くなんて。
どういう意図があるのだろうかと、メイは目を白黒させた。
(もしかして、専務は私の気持ちを知っているというの?)
誰にも言わず、こっそりと温めていた恋心なのに。
メイは驚きを隠せず、竜生を見つめた。
鼓動がどんどん速くなる。顔も、ありえないぐらいに熱い。
竜生の次の言葉が早く欲しい。でも、欲しくない。彼の意図を知るのが怖い。
メイが黙り込んでいると、彼はさらに続けた。
「君が好きな男は、この会社にいるんだろう?」
「……っ!」
やはり、竜生はメイの気持ちを知っている。
どうして、なぜ? そんな言葉ばかりが頭の中をグルグルと回る。
顔を背けてしまいたいのに、竜生はそれを許さないとばかりにメイの頬を両手で包み込む。
ひどく驚いているメイの顔を見て、竜生は一瞬、苦しそうに顔を歪めた。
そして、彼は自嘲気味にクスリと笑う。
「その男に……君の上司である加藤には、今日のことを知られたくないよね」
「え?」
竜生の口から出てきた名前に、メイはパチパチと瞬きをした。
加藤とは、商品開発課の課長である。面倒見がよく、確かにメイも彼を慕っている。
だが、どうして加藤の名前がここで出てくるのか。
メイの好きな人。それは目の前にいる竜生だというのに―――
二人の視線が絡んだ瞬間、竜生は困ったような表情を浮かべた。
「加藤に俺とのキスのことをばらされたくなければ、さっき見たことは忘れること」
「そんな……そんなこと言われなくたって、誰にも言いません! 言えるわけないじゃないですか!」
「そうであってほしいと、願っているよ」
「だから、言いませんってば!」
ムキになるメイに、竜生は少し落ち着いた表情になった。
これで彼の用事は終わりなのだろうか。メイはそっと息を吐き出し、起き上がるために竜生の胸を押しのけようとした。
しかし、話はまだ終わっていなかった。
竜生は、クスクスと楽しそうに笑い出す。
「まぁ、ばらされたら困るよね?」
「え?」
彼は、片手でメイの手をキュッと握る。
「もし今夜見たことを誰かに話したら……、君の趣味もばらすからね」
「趣味って?」
「だから、人の情事を覗き見するという趣味」
「そんな趣味ありませんっ!」
失敬な、とメイが怒りを露わにすると、竜生は笑いをこらえるように肩を震わせた。
「フフッ。わかっているよ。ただ、人の噂って怖いからね。嘘でも、人は信じてしまうことがあるから」
「……」
要するに、メイがあらぬ趣味を持っているという嘘を会社中に広めてしまうぞ、と竜生は脅しているのだ。
まったくもって、いい迷惑だ。メイが眉間にしわを寄せて睨みつけると、竜生はウィンクをしてメイの頭をそっと撫でた。
態度や言葉とは裏腹に、彼の大きな手は優しくて温かい。
そのギャップに戸惑うメイに、竜生は真剣な眼差しで呟いた。
「とにかく、誰にも言わないでね?」
「だから、わかってますってば!」
そもそも、冬川はメイにとって大切な先輩である。
このことは、墓場まで持っていくつもりだ。
「私は冬川さんのことが大好きです。だから、冬川さんが困るようなこと、言いふらしたりしません。ご心配なく!」
メイは頭にきて、怒鳴るように言い放った。
ツンとそっぽを向いたあと、どいてください、と目の前にいる竜生の胸を押す。先ほどとは違い、竜生はすぐに身体をどけたので、メイはやっと起き上がることができた。
こんなところからはすぐさま退散だ、と腰を上げようとした。しかし、足に力が入らない。
(ちょっと待って。一体、これはどういうこと?)
先ほどされた竜生からのキスで、メイの身体はまだ甘く痺れたままだったのだ。
困った様子のメイに、竜生はプッと噴き出す。
楽しげに笑う竜生を、メイはキッと睨みつけた。
だが、それさえも楽しいと言うように、竜生は意地悪く口角を上げる。
「クククッ。そんなに俺のキスがよかった?」
「違います! これは、なんていうか……」
「光栄だな」
「だから、違いますってば!」
メイは、ガクガクしている膝になんとか力を入れて立ち上がる。
その様子を腕組みしながら見つめていた竜生は、「もうひとつ、追加しようかな」と意味深なことを呟き、ほほ笑んだ。
その瞬間、メイの全身がゾクリと粟立った。
「君への口封じ」
「へ?」
竜生はメイに近寄り、彼女の唇をツンツンと指先でつついた。
メイはなんのことだかわからず、首をかしげる。だが、もう一度同じ動作をする竜生を見てその意味を察し、顔を真っ赤にした。
「毎日、君のその可愛い唇にキスをしよう」
「なっ!」
「今回のことを君が絶対に他人に話さないだろうと、俺が判断するまでね。そうだな、交換条件ってやつだよ」
メイは口をパクパクさせるだけで、何も言えない。
竜生は、そんなメイの唇に指を這わせて反応を楽しんでいる。
まるで、新しいおもちゃを見つけたとでも言うように。
まったく、いい性格をしている。メイは、地団太を踏んだ。
ムキになるメイを見て、竜生はますます笑う。
どうやら、彼にからかわれているようだ。メイは急に、ドッと疲れを感じた。
(ああ、もう。なんか泣きたい……)
メイは再び目頭が熱くなったが、目の前の竜生にそれを悟られたくなくて、唇を強く噛む。
何が悲しくて、好きな人からこんなことを言われなければならないのだろうか。
その上、メイは加藤が好きなのだと勘違いをされているようだ。
誤解を解く気力もない。とにかく、今日はもう帰ろう。
「では、失礼します」
メイがそそくさと頭を下げて専務室を後にしようとしたその時――
(え……?)
先ほどと同じように竜生の肩に担がれたメイは、何度か瞬きをしたあと、状況を把握した。
「ちょ、ちょっと! 降ろしてください!」
ジタバタと暴れ、キャンキャン叫ぶメイ。だが、竜生はそんなメイにはお構いなしで歩き出す。
「車で送ってあげるよ。ああ、その前に商品開発課に行かなくちゃね。そろそろ二人も帰っただろうし。鍵を取りに行こうか」
「遠慮いたします。自分一人で行けます」
「ダーメ。そんな色っぽい顔して電車に乗る気? ナンパの餌食になっちゃうよ?」
「え、餌食って……」
「ってことで、人の好意には甘えなさい。メイちゃん」
慌てふためくメイを見て、竜生は楽しそうだ。
何度抗議をしても、竜生は笑っているだけで話を聞いてくれない。
メイはなかば諦めながら、竜生の様子をこっそりとうかがった。
態度や口調には、先ほどまでの意地悪な感じはまったくない。
優しい雰囲気が伝わってきて、こんな状況下だが少しだけ安心した。
意地悪で、どこか冷たい竜生。
人当たりがよくて、優しい竜生。
一体、どちらが本当の竜生なのだろうか。
わからないことばかりだ。
竜生は、メイを担いだまま商品開発課のある二十二階のフロアに足を踏み入れた。
しかし、そこでもまだメイを降ろしてくれない。
「逃げませんから、もう降ろしてくださいってば」
「そんなの、わからないからね。用心って必要だと思わない?」
そんなやり取りをしていると、いつの間にか商品開発課の前まで来ていた。中に入ると、すでに冬川と社長はいなくなっていた。メイは、心底ホッとする。
「メイちゃんのデスクはどこ?」
「……」
「早く言わないと、兄貴たちの二の舞になるけど。いいの?」
「……っ! そ、そこのデスクです。家の鍵は二段目の引き出しの中です」
メイが慌てて言うと、竜生は鼻歌まじりでうなずいた。
引き出しから鍵を取り出した竜生は、「これ、メイちゃんに似ているね」と呟く。
なんのことだろうと首をかしげたメイだったが、それが家の鍵に付けたキーホルダーのことだと気がついて、顔をしかめた。毛糸で編んで作ったタヌキのキーホルダーだ。
「私の顔、タヌキみたいってことですか?」
「愛嬌があって、可愛らしい顔をしているって言ったんだよ」
「……」
「鍵もあったし。さぁ、帰ろうか」
竜生はメイを担いでエレベーターに乗り、裏口を目指す。
メイは、社内に誰も残っていなくてよかったと安堵した。
もし誰かにこの状況を見られてしまったら――想像するだけで恐ろしい。
しかし、よくよく考えてみれば、社員はいなくとも守衛はいる。
案の定、守衛はメイを担いだまま裏口を通る竜生を見て、呆気に取られた顔をした。
居たたまれなくなったメイは、身体を小さく丸めた。
そんなメイの気持ちなどお構いなしに、竜生はカツカツと靴音を響かせて颯爽と歩いていく。
竜生の車は、重役専用の駐車場に停められていた。
彼はメイを肩から降ろすと、助手席のドアを開けて座るようにうながす。
このまま逃げてしまいたかったが、竜生の鋭い眼差しに負け、メイはしぶしぶ助手席に乗り込んだ。
「さぁて。メイちゃんのお家はどこかな?」
「……」
運転席に乗り込んだ竜生は、助手席に座っているメイに自宅の場所を聞く。しかし、メイは黙り込んだままだ。
(こうなったら、黙秘だ)
メイがツンとそっぽを向くと、竜生は運転席から身を乗り出し、突然、親指をメイの唇にあてた。
メイは驚いて竜生の顔を見る。
すると思ったよりも顔が近くにあって、メイの心臓は再び高鳴った。
竜生は、親指でメイの唇をゆっくりとなぞりながら言う。
「こちらが聞いているのに黙っている悪い口は、これ?」
「せ、専務!?」
「そんな悪い口を開かせるためには、またキスしなくちゃいけないのかな?」
メイは、慌てて答えた。
「は、は、春ヶ山駅です」
「んー? メイちゃんは駅に住んでいるんじゃないだろう?」
「……」
「メイちゃんの住んでいる家の住所を聞いているんだけど?」
このまま住所を言わなければ、また強引にキスをされるかもしれない。
メイは大きなため息をひとつ漏らすと、小さく呟いた。
「春ヶ山駅近辺にある、春蘭学園のすぐ側です」
「ラジャー」
竜生は車のエンジンをかけ、ゆっくりと車を発進させる。
乗り心地のよいシートに身を任せながら、メイはドキドキする胸のあたりをギュッと掴んだ。
(本当にキスされるかと思った)
竜生と顔を合わせないように、メイは窓の外に目を向ける。だけど、どうしても気になって、運転している竜生の横顔をチラリと盗み見た。
先ほどとは打って変わり、真剣な顔で運転している竜生を見て、メイはこっそりと思う。
(専務って……こんなに強引な人だったんだ)
喫茶店の軒先で虹を見た日には、そんなふうには感じられなかった。
なんだか今夜はいろんなことが起こりすぎて、すでにメイはいっぱいいっぱいだ。
それに、竜生からされたキスで、まだ身体が甘く痺れている。
あのキスは、威力がありすぎた。
降ろして、と抵抗はしたが、竜生に担がれていなければ、まともに歩くことができなかったかもしれない。
もしかして、竜生はそれに気がついていたから、無理やりメイを担いだのだろうか。
優しいのか、意地悪なのか。阿藤竜生という人物がわからない。
メイはそっと自分の唇に指をあてた。
キスが初めてだったわけじゃない。
(だけど……)
何も考えられなくなるような、あんなキスはしたことがない。メイの頬がうっすらと赤く染まった。
渋滞もなく順調に春蘭学園まで来ると、竜生は車を路肩に停めてハザードをつけた。
「メイちゃん。お家はここからすぐなんだよね?」
「あ、はい。すぐそこの……青いポストがある家です」
メイが自宅を指差して教えると、竜生は少しだけ心配そうにメイの顔を覗き込んだ。
「メイちゃん。今日はお家の人はいないんだろう?」
「あ、はい」
「ちゃんと戸締まりして、気をつけるようにね」
「……ありがとうございます。気をつけます」
メイはペコリと頭を下げたあと、竜生から一刻も早く離れるため車から降りようとした。
だが、それはできなかった。
運転席から伸びてきた腕に抱きしめられたからだ。
「せ、専務」
上ずったメイの声を聞いて、竜生は満足そうに笑う。
「さっきの『交換条件』のこと。忘れないでね? メイちゃん」
メイの耳元で囁く彼の声は、腰が砕けてしまいそうなほどセクシーだった。
竜生は、チュッとリップ音を立てて、メイの頬にキスをしてくる。
「う、うわぁっ!!」
メイが慌てて離れようとすると、竜生はすぐに腕を緩めてメイを解放した。
専務室ではあんなにしつこかったのに、呆気ないぐらいにさっぱりとしている。なんだか拍子抜けだ。
(本当に調子が狂う。専務……阿藤竜生という男は読めないわ)
とにかく早くこの場から逃げようと、メイは車の外に出て扉を閉める。
すると、助手席側のウィンドウが開いた。
「早くお家に入りなさい」
竜生はそれだけ言うと、車を発進させた。
「本当に……一体なんなのよぉ」
真面目な顔をして脅してきたと思ったら、ヘラヘラ笑って冗談みたいなこともする。
どう対応すればいいのか、困惑するばかりだ。
メイは先ほど竜生にキスされた頬を押さえながら、いつまでも車のテールランプを見つめていた。
阿藤フード本社には、社員が数百人もいる。役職もついていないOLのメイが重役と接する機会など、皆無と言ってもいい。それなのに、竜生はなぜメイのことを知っているのか。
(……もしかして、あの時のコト、専務も覚えていてくれたの?)
メイがドキドキしながら見つめると、彼の顔にあの雨の日と同じ笑みが浮かんだ。
「久しぶりだね。一年前はどうも」
そう言って顔を近づけてくる竜生に、メイは頬を赤らめる。
(ち、近いですってば、専務)
慌てるメイを見て、竜生は優しくほほ笑んだ。
竜生はあの時のことを覚えていたのだ。
メイの心臓はますます高鳴り、嬉しさに頬が緩みそうになる。だが同時に、戸惑いも感じていた。
あの時、メイは名乗らなかった。けれど彼がメイの名前を知っているということは――
(もしかして私のこと、探してくれたの?)
少し考える時間がほしくて、メイは顔を背けようとする。しかし、許さないとばかりに、竜生はメイの顎に手を添えて上を向かせた。
まるでキスをする時のような至近距離に、メイの目は泳いでしまう。
そんな彼女の慌てぶりを楽しむように、竜生は口の端を上げた。
「さぁて。君に聞きたいことがあるのだが」
「……はい。でも、あの、その前に起き上がってもいいでしょうか?」
そう言ってメイは起き上がろうとするが、竜生はそれを許してくれない。
メイが目を見開いていると、竜生の目がキラリと光った。
「だめだね。まだ、君の疑いは晴れていない」
「疑いだなんて! 私、何もしてません!」
彼の言葉に、メイは声を荒らげた。
眉間にしわを寄せるメイに、竜生はそっけなく言う。
「じゃあ聞くけど、どうしてこんな時間に、あの場所にいたんだい? 一体、何をしてたの?」
「それは……!」
メイは理由を話そうと口を開いたが、竜生はそれを遮った。
「今、社内には社長である兄と君の先輩の冬川さん、そして俺の三人だけしかいないはずなんだけど?」
「ちゃんと守衛さんの許可は得ています! もし信じられないと言うのなら、守衛さんに聞いてみてください!」
「……」
メイは必死にそう言い募る。だが、竜生は無表情のままだ。
「とにかくですね、家の鍵をデスクに置き忘れてしまったんです。今日は家に誰もいないので、鍵がないと家に入れなくて困るんです。だから、会社に戻ってきたんですけど……」
そう言ったあと、メイは言葉を濁した。
社長と冬川の激しい情事を思い出して、メイは恥ずかしさのあまり、それ以上何も言うことができなかった。
(うぅ……どうしよう。なんて言えばいいの?)
メイは、恥ずかしくて顔が熱くなるのを感じた。
「ふーん、なるほど。鍵を取りに戻ってきたら、兄と冬川さんのセックス現場だった、と」
「……っ! そ、そうです」
コクコクとうなずくメイを見て、竜生はニヤリと笑う。
その笑みはまるで時代劇に登場する悪代官のようで、あの雨の日に見た優しいほほ笑みとはかけ離れたものだった。
メイの顔が強張る。
「へぇ、それにしては、じっくり見ていたよね。君に人の情事を覗き見る趣味があったとは、いやはや」
「ち、違います! そんな趣味ありません! び、び、びっくりして動けなくなっちゃっただけで」
竜生にとんでもないことを言われ、耳までカァッと赤くなる。
(どうしよう。どうしたら信じてくれるの?)
メイは、パニック寸前だ。
メイの視界が、にじみ始めた。グッと唇をきつく噛み、涙がこぼれ落ちないようにたえる。
竜生はメイの目元に指を這わせ、浮かんだ涙をぬぐった。
「女の涙、か。鬱陶しいと思っていたけど、君の涙はいいな……キレイだ。あの日のままだね」
「は!? ……んっ!」
メイは竜生の言葉の意味がわからず口を開こうとしたが、唇をふさがれ言葉はすべて呑み込まれてしまった。
「ん……ぁは……んんっ!」
竜生は、角度を変えて何度もメイに口づける。
息苦しくなってメイが口を開くと、待ってましたとばかりに、ヌルリと生温かい舌が滑り込んできた。
クチュクチュと淫らな音が聞こえてきて、メイは恥ずかしさのあまり、耳をふさぎたくなった。
竜生はメイの歯列を舌でゆっくりなぞったあと、舌を絡ませて吸い上げる。
「あ……ふぅ……っ」
声を出さないよう我慢していたのに、メイの口からはついに甘い声がこぼれた。
口内を竜生の舌で犯され、気がつくと甘い痺れでソファーから立ち上がることができなくなってしまった。
だらんと力なく寝そべるメイから、竜生はやっと唇を離す。
二人の口の間にツーッと銀色の糸が引き、プツンと切れた。
ハァハァというメイの荒い息遣いが静かな室内に響く。
あれだけ濃厚で情熱的なキスをしたというのに、竜生は呼吸ひとつ乱していない。
それどころか、無表情でメイをジッと見つめてくる。
そんな彼を、メイはただぼんやりと眺めることしかできなかった。
静かなオフィスビルの一室――それも専務室で、憧れの彼とこんなキスをするだなんて。
現状を把握すればするほど、メイは戸惑い、また恥ずかしくなった。
肩で息をするメイを見て、竜生は片眉を上げて意地悪そうに笑った。だが、瞳にはどこか哀愁が漂っている。
それはなんとも不思議な表情で、とても艶っぽく、竜生をより魅力的に見せていた。
「君には好きな男がいるよね?」
「え……?」
竜生の低く響く声に、メイの胸はドクンと大きく跳ねた。
無理やりキスをしたあとに、そんなことを聞くなんて。
どういう意図があるのだろうかと、メイは目を白黒させた。
(もしかして、専務は私の気持ちを知っているというの?)
誰にも言わず、こっそりと温めていた恋心なのに。
メイは驚きを隠せず、竜生を見つめた。
鼓動がどんどん速くなる。顔も、ありえないぐらいに熱い。
竜生の次の言葉が早く欲しい。でも、欲しくない。彼の意図を知るのが怖い。
メイが黙り込んでいると、彼はさらに続けた。
「君が好きな男は、この会社にいるんだろう?」
「……っ!」
やはり、竜生はメイの気持ちを知っている。
どうして、なぜ? そんな言葉ばかりが頭の中をグルグルと回る。
顔を背けてしまいたいのに、竜生はそれを許さないとばかりにメイの頬を両手で包み込む。
ひどく驚いているメイの顔を見て、竜生は一瞬、苦しそうに顔を歪めた。
そして、彼は自嘲気味にクスリと笑う。
「その男に……君の上司である加藤には、今日のことを知られたくないよね」
「え?」
竜生の口から出てきた名前に、メイはパチパチと瞬きをした。
加藤とは、商品開発課の課長である。面倒見がよく、確かにメイも彼を慕っている。
だが、どうして加藤の名前がここで出てくるのか。
メイの好きな人。それは目の前にいる竜生だというのに―――
二人の視線が絡んだ瞬間、竜生は困ったような表情を浮かべた。
「加藤に俺とのキスのことをばらされたくなければ、さっき見たことは忘れること」
「そんな……そんなこと言われなくたって、誰にも言いません! 言えるわけないじゃないですか!」
「そうであってほしいと、願っているよ」
「だから、言いませんってば!」
ムキになるメイに、竜生は少し落ち着いた表情になった。
これで彼の用事は終わりなのだろうか。メイはそっと息を吐き出し、起き上がるために竜生の胸を押しのけようとした。
しかし、話はまだ終わっていなかった。
竜生は、クスクスと楽しそうに笑い出す。
「まぁ、ばらされたら困るよね?」
「え?」
彼は、片手でメイの手をキュッと握る。
「もし今夜見たことを誰かに話したら……、君の趣味もばらすからね」
「趣味って?」
「だから、人の情事を覗き見するという趣味」
「そんな趣味ありませんっ!」
失敬な、とメイが怒りを露わにすると、竜生は笑いをこらえるように肩を震わせた。
「フフッ。わかっているよ。ただ、人の噂って怖いからね。嘘でも、人は信じてしまうことがあるから」
「……」
要するに、メイがあらぬ趣味を持っているという嘘を会社中に広めてしまうぞ、と竜生は脅しているのだ。
まったくもって、いい迷惑だ。メイが眉間にしわを寄せて睨みつけると、竜生はウィンクをしてメイの頭をそっと撫でた。
態度や言葉とは裏腹に、彼の大きな手は優しくて温かい。
そのギャップに戸惑うメイに、竜生は真剣な眼差しで呟いた。
「とにかく、誰にも言わないでね?」
「だから、わかってますってば!」
そもそも、冬川はメイにとって大切な先輩である。
このことは、墓場まで持っていくつもりだ。
「私は冬川さんのことが大好きです。だから、冬川さんが困るようなこと、言いふらしたりしません。ご心配なく!」
メイは頭にきて、怒鳴るように言い放った。
ツンとそっぽを向いたあと、どいてください、と目の前にいる竜生の胸を押す。先ほどとは違い、竜生はすぐに身体をどけたので、メイはやっと起き上がることができた。
こんなところからはすぐさま退散だ、と腰を上げようとした。しかし、足に力が入らない。
(ちょっと待って。一体、これはどういうこと?)
先ほどされた竜生からのキスで、メイの身体はまだ甘く痺れたままだったのだ。
困った様子のメイに、竜生はプッと噴き出す。
楽しげに笑う竜生を、メイはキッと睨みつけた。
だが、それさえも楽しいと言うように、竜生は意地悪く口角を上げる。
「クククッ。そんなに俺のキスがよかった?」
「違います! これは、なんていうか……」
「光栄だな」
「だから、違いますってば!」
メイは、ガクガクしている膝になんとか力を入れて立ち上がる。
その様子を腕組みしながら見つめていた竜生は、「もうひとつ、追加しようかな」と意味深なことを呟き、ほほ笑んだ。
その瞬間、メイの全身がゾクリと粟立った。
「君への口封じ」
「へ?」
竜生はメイに近寄り、彼女の唇をツンツンと指先でつついた。
メイはなんのことだかわからず、首をかしげる。だが、もう一度同じ動作をする竜生を見てその意味を察し、顔を真っ赤にした。
「毎日、君のその可愛い唇にキスをしよう」
「なっ!」
「今回のことを君が絶対に他人に話さないだろうと、俺が判断するまでね。そうだな、交換条件ってやつだよ」
メイは口をパクパクさせるだけで、何も言えない。
竜生は、そんなメイの唇に指を這わせて反応を楽しんでいる。
まるで、新しいおもちゃを見つけたとでも言うように。
まったく、いい性格をしている。メイは、地団太を踏んだ。
ムキになるメイを見て、竜生はますます笑う。
どうやら、彼にからかわれているようだ。メイは急に、ドッと疲れを感じた。
(ああ、もう。なんか泣きたい……)
メイは再び目頭が熱くなったが、目の前の竜生にそれを悟られたくなくて、唇を強く噛む。
何が悲しくて、好きな人からこんなことを言われなければならないのだろうか。
その上、メイは加藤が好きなのだと勘違いをされているようだ。
誤解を解く気力もない。とにかく、今日はもう帰ろう。
「では、失礼します」
メイがそそくさと頭を下げて専務室を後にしようとしたその時――
(え……?)
先ほどと同じように竜生の肩に担がれたメイは、何度か瞬きをしたあと、状況を把握した。
「ちょ、ちょっと! 降ろしてください!」
ジタバタと暴れ、キャンキャン叫ぶメイ。だが、竜生はそんなメイにはお構いなしで歩き出す。
「車で送ってあげるよ。ああ、その前に商品開発課に行かなくちゃね。そろそろ二人も帰っただろうし。鍵を取りに行こうか」
「遠慮いたします。自分一人で行けます」
「ダーメ。そんな色っぽい顔して電車に乗る気? ナンパの餌食になっちゃうよ?」
「え、餌食って……」
「ってことで、人の好意には甘えなさい。メイちゃん」
慌てふためくメイを見て、竜生は楽しそうだ。
何度抗議をしても、竜生は笑っているだけで話を聞いてくれない。
メイはなかば諦めながら、竜生の様子をこっそりとうかがった。
態度や口調には、先ほどまでの意地悪な感じはまったくない。
優しい雰囲気が伝わってきて、こんな状況下だが少しだけ安心した。
意地悪で、どこか冷たい竜生。
人当たりがよくて、優しい竜生。
一体、どちらが本当の竜生なのだろうか。
わからないことばかりだ。
竜生は、メイを担いだまま商品開発課のある二十二階のフロアに足を踏み入れた。
しかし、そこでもまだメイを降ろしてくれない。
「逃げませんから、もう降ろしてくださいってば」
「そんなの、わからないからね。用心って必要だと思わない?」
そんなやり取りをしていると、いつの間にか商品開発課の前まで来ていた。中に入ると、すでに冬川と社長はいなくなっていた。メイは、心底ホッとする。
「メイちゃんのデスクはどこ?」
「……」
「早く言わないと、兄貴たちの二の舞になるけど。いいの?」
「……っ! そ、そこのデスクです。家の鍵は二段目の引き出しの中です」
メイが慌てて言うと、竜生は鼻歌まじりでうなずいた。
引き出しから鍵を取り出した竜生は、「これ、メイちゃんに似ているね」と呟く。
なんのことだろうと首をかしげたメイだったが、それが家の鍵に付けたキーホルダーのことだと気がついて、顔をしかめた。毛糸で編んで作ったタヌキのキーホルダーだ。
「私の顔、タヌキみたいってことですか?」
「愛嬌があって、可愛らしい顔をしているって言ったんだよ」
「……」
「鍵もあったし。さぁ、帰ろうか」
竜生はメイを担いでエレベーターに乗り、裏口を目指す。
メイは、社内に誰も残っていなくてよかったと安堵した。
もし誰かにこの状況を見られてしまったら――想像するだけで恐ろしい。
しかし、よくよく考えてみれば、社員はいなくとも守衛はいる。
案の定、守衛はメイを担いだまま裏口を通る竜生を見て、呆気に取られた顔をした。
居たたまれなくなったメイは、身体を小さく丸めた。
そんなメイの気持ちなどお構いなしに、竜生はカツカツと靴音を響かせて颯爽と歩いていく。
竜生の車は、重役専用の駐車場に停められていた。
彼はメイを肩から降ろすと、助手席のドアを開けて座るようにうながす。
このまま逃げてしまいたかったが、竜生の鋭い眼差しに負け、メイはしぶしぶ助手席に乗り込んだ。
「さぁて。メイちゃんのお家はどこかな?」
「……」
運転席に乗り込んだ竜生は、助手席に座っているメイに自宅の場所を聞く。しかし、メイは黙り込んだままだ。
(こうなったら、黙秘だ)
メイがツンとそっぽを向くと、竜生は運転席から身を乗り出し、突然、親指をメイの唇にあてた。
メイは驚いて竜生の顔を見る。
すると思ったよりも顔が近くにあって、メイの心臓は再び高鳴った。
竜生は、親指でメイの唇をゆっくりとなぞりながら言う。
「こちらが聞いているのに黙っている悪い口は、これ?」
「せ、専務!?」
「そんな悪い口を開かせるためには、またキスしなくちゃいけないのかな?」
メイは、慌てて答えた。
「は、は、春ヶ山駅です」
「んー? メイちゃんは駅に住んでいるんじゃないだろう?」
「……」
「メイちゃんの住んでいる家の住所を聞いているんだけど?」
このまま住所を言わなければ、また強引にキスをされるかもしれない。
メイは大きなため息をひとつ漏らすと、小さく呟いた。
「春ヶ山駅近辺にある、春蘭学園のすぐ側です」
「ラジャー」
竜生は車のエンジンをかけ、ゆっくりと車を発進させる。
乗り心地のよいシートに身を任せながら、メイはドキドキする胸のあたりをギュッと掴んだ。
(本当にキスされるかと思った)
竜生と顔を合わせないように、メイは窓の外に目を向ける。だけど、どうしても気になって、運転している竜生の横顔をチラリと盗み見た。
先ほどとは打って変わり、真剣な顔で運転している竜生を見て、メイはこっそりと思う。
(専務って……こんなに強引な人だったんだ)
喫茶店の軒先で虹を見た日には、そんなふうには感じられなかった。
なんだか今夜はいろんなことが起こりすぎて、すでにメイはいっぱいいっぱいだ。
それに、竜生からされたキスで、まだ身体が甘く痺れている。
あのキスは、威力がありすぎた。
降ろして、と抵抗はしたが、竜生に担がれていなければ、まともに歩くことができなかったかもしれない。
もしかして、竜生はそれに気がついていたから、無理やりメイを担いだのだろうか。
優しいのか、意地悪なのか。阿藤竜生という人物がわからない。
メイはそっと自分の唇に指をあてた。
キスが初めてだったわけじゃない。
(だけど……)
何も考えられなくなるような、あんなキスはしたことがない。メイの頬がうっすらと赤く染まった。
渋滞もなく順調に春蘭学園まで来ると、竜生は車を路肩に停めてハザードをつけた。
「メイちゃん。お家はここからすぐなんだよね?」
「あ、はい。すぐそこの……青いポストがある家です」
メイが自宅を指差して教えると、竜生は少しだけ心配そうにメイの顔を覗き込んだ。
「メイちゃん。今日はお家の人はいないんだろう?」
「あ、はい」
「ちゃんと戸締まりして、気をつけるようにね」
「……ありがとうございます。気をつけます」
メイはペコリと頭を下げたあと、竜生から一刻も早く離れるため車から降りようとした。
だが、それはできなかった。
運転席から伸びてきた腕に抱きしめられたからだ。
「せ、専務」
上ずったメイの声を聞いて、竜生は満足そうに笑う。
「さっきの『交換条件』のこと。忘れないでね? メイちゃん」
メイの耳元で囁く彼の声は、腰が砕けてしまいそうなほどセクシーだった。
竜生は、チュッとリップ音を立てて、メイの頬にキスをしてくる。
「う、うわぁっ!!」
メイが慌てて離れようとすると、竜生はすぐに腕を緩めてメイを解放した。
専務室ではあんなにしつこかったのに、呆気ないぐらいにさっぱりとしている。なんだか拍子抜けだ。
(本当に調子が狂う。専務……阿藤竜生という男は読めないわ)
とにかく早くこの場から逃げようと、メイは車の外に出て扉を閉める。
すると、助手席側のウィンドウが開いた。
「早くお家に入りなさい」
竜生はそれだけ言うと、車を発進させた。
「本当に……一体なんなのよぉ」
真面目な顔をして脅してきたと思ったら、ヘラヘラ笑って冗談みたいなこともする。
どう対応すればいいのか、困惑するばかりだ。
メイは先ほど竜生にキスされた頬を押さえながら、いつまでも車のテールランプを見つめていた。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】


過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。