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四章 狂いの真相
4 因果とタイムパラドックス
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見晴らし台の頂上へ到達すると、一瞬にして自分が違う世界にいると蒼空は感じた。
まだ日の入り時刻を迎えていないのに太陽が沈み始めていて空が茜色に染まっている。夏日なのに気温が秋真っ盛りと勘違いしてしまいそうなほどに冷ややか。見晴らし台もこの時間はまだ人がいる筈なのに無人。
”異変”が惜しげもなく堂々と形作っているような奇妙な空間。明らかに御堂六郎が何かをしていると感じる。他の要因もあるだろうが、直感でそう結びつけた。
「ここが推理を披露する場でいいんだな?」
背後で御堂六郎の声がした。振り向くと腕を組んで時計の柱に凭れている御堂六郎と、近くの丸い石のオブジェに腰掛けている加賀見茜を見つけた。
「この場所を選んだということは、見つけなければならない謎も答えも掴んだのかしら?」
いつも通りの柔和な表情で訊いてくる。
二人の様子はいつも通りだが、この空間だけ、季節違いと思わせる異質な冷たい奇妙な帳が張られているように思わせる。
和やかな空間だが若干の危機感を抱かせる。
「苦労しましたよ。この答えに至ったのもついさっきですし。そのおかげで、この場所が謎解きの場所だと思い込んでましたから」
「あら、ここが謎解きの場所ではないのかしら?」
試しているように笑顔で訊いてくる。
「期日が来たらそっちから勝手に会いに来ますよね。でないと、挑戦者は双木の丘に来なければいいだけになるから。まあ、どのみち俺から会いにこないとみんなが死ぬから、結果オーライですけど」
「ふふふ、素晴らしい謎解きが聞けそうね。楽しみ」
「必死に考えましたけど、正直、”都市伝説の狂い”だけで許してほしいですよ」
「単純な四則計算ならそれでもいいけど、難解な方程式は答えに至るまでの公式が重要よ。しっかりと全ての謎を明かさなければ意味がないわね」
まるで先生に注意されている気になってしまう。
これが今まで誰も解けなかった理由だ。挑戦権を得て以降、次々に増えていく謎の数々。それを解かなければならない理不尽な謎解き。
身内も犠牲になったのか、時代から知識や情報が足りないか。一方的に不利な状況に陥り頭を痛め、次々に敗北者が増えていった難問。
御堂六郎が蒼空に告げた。
「聞こうか楸蒼空。お前が掴んだ答えを」
一陣の風が吹き、蒼空は昂ぶった緊張を静かに深呼吸する事で鎮めた。
「狂いの正体の前に、俺等の周りで起きた謎から先に説明します。このややこしい問題を解くには、『前園さんの予言の矛盾』と『日和の失踪』を解明しないといけませんでしたから」
「あら、私の予言は確かなものよ。どこに矛盾なんてあったのかしら?」
優しく返されるが緊張が高まる。ペースを崩されまいと蒼空は手を胸の高さまで上げて提案する。
「話す順番、俺で決めていいですか? あれもこれも気になる事を優先してたらグチャグチャになってしまいます。推理ドラマみたいに出来たらいいんですけど、俺、探偵じゃないから」
加賀見茜へ訊いたが、答えたのは御堂六郎であった。
「構わん。これはお前の見せ場だ。お前の語りたいように語れ」
「では」と言って、加賀見茜を見る。
「加賀見さんの『八月十四日に前園さんが死ぬ』予言には二つの気になるところがあります」
「あら、何処かしら? 言葉通りの意味だし、どうして死ぬか、どうやって死ぬかを私は言えない立場にあるのよ」
「確かに加賀見さんはそこまで深くは言えません。そういう法則の都市伝説だからです。決定している未来を見て告げる。それも重要なターニングポイントを通過しないといけない」
「なら、どこが気になるのかしら?」
「一つ目は、”前園さんの死の予言”なのに告げた相手が涼城さんであること。もう一つが、涼城さんに告げた時点で“前園さんが死ぬ”と決まっている点です」
加賀見茜は温和な表情を変えず黙っている。
「涼城さんと俺達は前園さんの死を阻止しようと都市伝説を調べていました。なら阻止できる未来もあるはずです。それに、“阻止しなければ涼城さんも死ぬ”というのは、言い換えれば『涼城さんが生きたいなら前園さんを助けろ』ってことですよね。けど予言は確定した言葉。”危険がある”とか、”かもしれない”といった匂わせるものではありません。前園さんは確実な死を迎え、涼城さんも確実な死の未来を迎える逃れられない予言になります」
「まさにその通りね、私の白の予言の法則では」
「でもこれっておかしいですよね。未来が確定しているのに、加賀見さんは涼城さんに前園さんの死を止めるように言っている。まだ生き残れる余地があるように、俺達にも助言をしてくれた」
「確かに矛盾してるわね。決まった死を迎える人に、生きる希望があると言うのは。けど蒼空君、私は私の役目を全うしているだけよ。それに、法則で縛られるなら、無駄な助言なんて出来ないわ」
「都市伝説に関する法則の縛りは強いからな」
二人がかりで返されると間違っているのかと挫けそうになる。
一呼吸吐いて、やや昂ぶる気持ちを落ち着けて続けた。
頭にある推理を一気に話したくなるも、脈絡が成り立たなければ迷走した推理が出来上がる。落ち着く事すら必死であった。
「……ええ。加賀見さんは予言に関しては嘘をつけない。だから言うべき事を言ったにすぎない。じゃあなぜ加賀見さんは、涼城さんに前園さんの死を止めるように言ったか、どうして前園さんは死が確定しているか。この矛盾の真相を明らかにするには、涼城さん前園さん、両方の関係者、そして日和が絡んでいる問題を明らかにしないといけない」
「面白そうな推理が聞けそうね探偵さん。私の予言のおかしな点をどう解決して下さるのかしら?」
「ここからは少し複雑になるので、一度予言の話は置いておきます」
加賀見茜は「あら、残念」と呟いた。
「それともう一つ、ここから先の話では日和が大きく関係してきます。けどその理由を話すと説明が変になりそうなので、ここからは『日和のある事』とさせてもらいます。後で話しますので」
許可を二人から得ると、蒼空は御堂六郎の方を向いた。
「御堂さんは俺に言いましたよね。”都市伝説の狂いを見つければ願いが叶う。そして出来なければ罰が与えられる。挑戦する事も逃げ出すことも可能”と。ですよね?」
「ああ。その通りだ」
「この罰というのが、挑戦者が都市伝説に組み込まれて新しい都市伝説が一つ出来上がる、です」
御堂六郎は余裕ある表情を崩さず、「驚いたか?」と訊いた。
「ええ。それに危ない所でした。前園さんのお兄さんが零した情報が無かったら分からないままでしたし、その情報を知ってもすぐにはその答えが出ませんでした。”前園さんお兄さんが四十二番目に食われた”とか考えてましたし。けど、新しい都市伝説として組み込まれると考えたらあらゆる辻褄が合いました。お兄さんが四十一番目に印を付けたのは、その時まではそこまでしかなかったからだって。それと日和のある事にも行き着きました。悩んだ末に辿り着いたギリギリの状態です。それに、この挑戦者への罰があったから涼城さんは都市伝説に深く関わることになったとも」
横から加賀見茜が口を挟んだ。
「あら、突拍子もない所へ飛んだわね。夏美ちゃんが都市伝説に深入りしたのは私の予言じゃないの?」
「いいえ。加賀見さんと涼城さんの出会いだけを見たらそうかもしれませんが、涼城さんは都市伝説に関わる運命にあったんです。しかも産まれる前から」
「随分大胆ね。夏美ちゃんの前世とか、かしら?」
「いえ。原因は涼城さんのお爺さんです」
静かに吹く冷ややかな風が蒼空を少し落ち着かせる。まるで説明させやすくするかのように。
「涼城さんのお爺さんは御堂さんと加賀見さんに会っている。それは涼城さんの夢と俺の夢に出てきて、御堂さんに対抗していた様子からも明らかです。加賀見さんに至っては似顔絵も残されてるくらいですから」
「あら、光栄ね」
「お爺さんもおそらくは御堂さんに願いを叶える条件を提示された筈です。けど断った。あの様子から、聞く耳を持たなかったのかもしれません。御堂さんへ突っかかってましたし。結果、逃げ切った扱いとなり、お爺さんは挑戦権も得ず、罰を受けずに済みました」
「まさか」
突如、推理の途中で加賀見茜が口を挟み、蒼空に緊張が走る。
「ごめんなさいね。この話の流れだと、血縁関係者だから夏美ちゃんは私に会えたって言おうとしてるのかしら?」
冷や汗が背中を流れる感覚が分かる。こめかみからも流れる汗が頬を伝う。
「儀造君と夏美ちゃんは祖父と孫娘ね。夏美ちゃんの弟君も明香ちゃんのお兄さん、翔真君を見たと言うから、それなりに都市伝説に干渉できる血筋とも捉えられるわ。そうそう、翔真君も都市伝説に巻き込まれて妹の明香ちゃんも関わったわね。血縁者の繋がりで言うなら、日和ちゃんも儀造君の親戚に当たるわ」
補足のように御堂六郎も語る。
「たしかに、一度接触した者の血縁者をターゲットとするのはこちらとしても可能だ。だが確実ではないぞ。それとも、これら全てとの接触が”偶然”の言葉で片付けるか?」
異様な圧迫感がヒシヒシと伝わり、心臓をゆっくりと掴まれていくような緊迫がある。気を抜くと威圧に負けてしまう。
蒼空は静かに鼻で呼吸すると秋を感じさせる涼しい空気が鼻孔を通り抜け、少しだけだが落ち着いた。
気を取り直して向かい合う。
「血縁関係の線は俺も考えました。夢で出会ったのとか、些細な所では血縁者だからという道理が通るかもしれませんが、この謎解きではそれが成立しません。日和に至ってはお爺さんの直系じゃないからこの道理には無理がありすぎる」
「ほう、言い張るに見合う答えを用意していると?」
「はい。涼城さんが産まれる前から都市伝説と関わると決まっていたのは、夢の中で若い時のお爺さんと会ってしまったからです」
「後出しのようで申し訳ないが」
口を挟まれた蒼空は、許可して御堂六郎の発言を許した。
「夢でそういう出会いがあったからと言って、現実での出会いではないなら繋がりとしては曖昧だ。夢は忘れたり記憶が安定しないからな。血縁者だが確実ではないという点から鑑みても、その推理は強引すぎるぞ。産まれる前から干渉する運命とやらは尚のことあり得ん」
「御堂さんがそう言うからそうなんでしょうけど。だけどお爺さんは涼城さんと夢で会った事実を、”ある方法”で現実に定着させたんです。それにより、日和と前園さんも御堂さんが接触しなければならない権利をも与えてしまった。こっちも産まれる前から決まったようなものです」
「どのような方法だ? まさかタイムマシンでも見つけたか?」
「この場合、タイムパラドックスが適してるのかもしれません」
御堂六郎から言い返す言葉がなく、蒼空は儀造が定着させた”ある方法”を口にした。
「絵です」
先ほどのような二人がかりの反論があると思ったが、無かったことに蒼空は安堵する。
「お爺さんは絵画の心得があった。時代的に絵描きとして生きていけなかったから諦めたみたいですけど、趣味で描いていたそうです。そして、夢で会った涼城さんの絵を描いてしまい、涼城さんを御堂さんのターゲットになるよう確定させてしまったんです」
加賀見茜が手を上げた。
「けどそれだと、どうして夏美ちゃんの父親が都市伝説と干渉しないのかしら? お爺さんに孫、間の父親が彼と会っても不思議ではないんじゃない?」
「お爺さんの絵によりターゲットが固定されたんです。だってそうですよね、お爺さんは涼城さんと会って御堂さんから遠ざけようと励んだ。祖父が孫娘を護る構図が出来上がってしまったから」
「一ついいか?」の御堂六郎の一言で、またも緊張が走る。
「俺が接触しているのが前園明香、三枝日和、涼城夏美の三名を重点的に語っているが、他にも大勢の人間とこの時期に接触しているかもしれんぞ。その多くの人間の内、偶然その三人がかかったとも考えられるだろ」
「”都市伝説を調べている人間をターゲットにする法則”なら、そうかもしれません。俺のクラスでも夏休みの自由研究で調べようって奴もいるし、他の学校でもあるでしょうね。この都市伝説って魅力的で有名ですから。可能性の話になりますが、大多数同時接触は出来るかもしれない。けど今回ばかりはそれが不可能なんです」
「言ってくれるな。だが、俺と接触した奴らが臆して逃げた際、記憶を消した可能性も考えられるだろ」
「その法則があるならお爺さんは忘れている筈です」
死の前日まで、儀造は名前を忘れていても御堂六郎と加賀見茜を覚えていたことが確たる証拠であった。
「では、俺が大多数の人間との接触が不可能と言い張る理由はなんだ?」
「お爺さんが会った涼城さんが、色んな柵のある孫娘だからです」
「色んな柵?」加賀見茜が訊いた。
「現実では、”八月十四日に前園さんが死ぬ”、”お兄さんが失踪状態で都市伝説に組み込まれた”、”お爺さんが前園さんのお婆さんを助けていた”、”都市伝説が四十二まで確定し、ある都市伝説の法則が機能している”、”『日和のある事』が関係した状態で失踪している”。他にも細かい条件はあります。”それらが活きている時代の涼城さん”の絵を描いてしまったから、御堂さんはお爺さんの次に涼城さんに接触しなければならなかったんです」
「ほう。だがそれではまだ足りないな。涼城儀造の次に涼城夏美と接触する道理ではあれ、大多数の人間と接触しない縛りにはならないだろ?」
「いえ、不可能です。なぜなら都市伝説は四十四番以降増えず、四十二から四十四番まで組み込まれる生け贄まで揃っているからです。お爺さんの時代から何人かは罰が下っても、この時代、この夏休み。細かく言うなら去年の十一月末からは挑戦者を増やせません」
御堂六郎はどこか嬉しそうな表情を滲ませる。
加賀見茜は微笑んだ。
「大胆な断言ね。詳しく教えてくれる?」
一呼吸置いて、蒼空は次の推理へ繋げる。
「ここまで確定させた原因は『日和のある事』です。こんな方法が本当に正解か悩みましたけど、これしか考えられなかった」
御堂六郎は何か言いたそうに口を少し動かすも、黙った。
「詳細は後回しにしますが、日和は色んな条件を元に”四十四番目の都市伝説”となり失踪。夢で俺と桜木君に会った。この突拍子もない行動のおかげで一つの都市伝説の条件を早めてしまったんです」
メモ帳を取り出し、都市伝説を記したページを開いて見せた。
三十八番目の都市伝説『四並びの崩壊』
「蒼空君、日和ちゃんが早めに都市伝説へ組み込まれたからと言って、どうして夏美ちゃんと明香ちゃんの死が確定するの?」
「日和が四十四番目に組み込まれて”夢に現われる存在”となりました。都市伝説側の法則はよく分かりませんが、幻でも夢でも別の方法でも。とにかく、俺と桜木君に会える存在になります。しかし一つ順番が飛んでいます。理由は、現在挑戦者である人物を生け贄として組み込まなければ成り立たない前提だから。それが前園さんです」
「どうして日和ちゃんはそんなまどろっこしい事をしたのかしら?」
「ある期日までに謎解きを解明させる為です。それは多くの人を助けることに繋がります。ある法則上、都市伝説として動けるのは、あと四十四番目しかなかった。だからそこを狙った。一世一代の大博打に出たんです。その行動が、”前園さんが死ねば『四並びの崩壊』が機能する”条件を作り上げたんです。細かな日数なども関係しているかもしれませんが、四がさらに並ぶ時、この町で甚大な被害を及ぼす大災害が起きます。都市伝説に関係するあらゆるものを崩壊させて消す為の大災害。これが崩壊の全容です。その大災害に涼城さんと家族は巻き込まれて死ぬ未来が確定する」
日和が組み込まれたのは失踪の当日。それ以降に夏美が儀造と会い、絵画として残された。崩壊する未来に関係する孫娘を。
「加賀見さんの予言では”涼城さんと家族が死ぬ”でしたよね。これは引っかけ問題みたいなものです。正解は、『双木三柱市内の多くの人間が死ぬ』が正解なんじゃないですか?」
加賀見茜は軽く拍手して正解だと示した。
一方で御堂六郎は口を挟んだ。
「大した推理だが、色んな要点が抜けすぎだ。なにより、三枝日和が特異となれた詳細は用意してるのか?」
蒼空は都市伝説の数字を記し、日和同様に特別な数字にのみ○印を付けたページを見せた。
「全ての謎を解くキーワードは『素数』です」
まだ日の入り時刻を迎えていないのに太陽が沈み始めていて空が茜色に染まっている。夏日なのに気温が秋真っ盛りと勘違いしてしまいそうなほどに冷ややか。見晴らし台もこの時間はまだ人がいる筈なのに無人。
”異変”が惜しげもなく堂々と形作っているような奇妙な空間。明らかに御堂六郎が何かをしていると感じる。他の要因もあるだろうが、直感でそう結びつけた。
「ここが推理を披露する場でいいんだな?」
背後で御堂六郎の声がした。振り向くと腕を組んで時計の柱に凭れている御堂六郎と、近くの丸い石のオブジェに腰掛けている加賀見茜を見つけた。
「この場所を選んだということは、見つけなければならない謎も答えも掴んだのかしら?」
いつも通りの柔和な表情で訊いてくる。
二人の様子はいつも通りだが、この空間だけ、季節違いと思わせる異質な冷たい奇妙な帳が張られているように思わせる。
和やかな空間だが若干の危機感を抱かせる。
「苦労しましたよ。この答えに至ったのもついさっきですし。そのおかげで、この場所が謎解きの場所だと思い込んでましたから」
「あら、ここが謎解きの場所ではないのかしら?」
試しているように笑顔で訊いてくる。
「期日が来たらそっちから勝手に会いに来ますよね。でないと、挑戦者は双木の丘に来なければいいだけになるから。まあ、どのみち俺から会いにこないとみんなが死ぬから、結果オーライですけど」
「ふふふ、素晴らしい謎解きが聞けそうね。楽しみ」
「必死に考えましたけど、正直、”都市伝説の狂い”だけで許してほしいですよ」
「単純な四則計算ならそれでもいいけど、難解な方程式は答えに至るまでの公式が重要よ。しっかりと全ての謎を明かさなければ意味がないわね」
まるで先生に注意されている気になってしまう。
これが今まで誰も解けなかった理由だ。挑戦権を得て以降、次々に増えていく謎の数々。それを解かなければならない理不尽な謎解き。
身内も犠牲になったのか、時代から知識や情報が足りないか。一方的に不利な状況に陥り頭を痛め、次々に敗北者が増えていった難問。
御堂六郎が蒼空に告げた。
「聞こうか楸蒼空。お前が掴んだ答えを」
一陣の風が吹き、蒼空は昂ぶった緊張を静かに深呼吸する事で鎮めた。
「狂いの正体の前に、俺等の周りで起きた謎から先に説明します。このややこしい問題を解くには、『前園さんの予言の矛盾』と『日和の失踪』を解明しないといけませんでしたから」
「あら、私の予言は確かなものよ。どこに矛盾なんてあったのかしら?」
優しく返されるが緊張が高まる。ペースを崩されまいと蒼空は手を胸の高さまで上げて提案する。
「話す順番、俺で決めていいですか? あれもこれも気になる事を優先してたらグチャグチャになってしまいます。推理ドラマみたいに出来たらいいんですけど、俺、探偵じゃないから」
加賀見茜へ訊いたが、答えたのは御堂六郎であった。
「構わん。これはお前の見せ場だ。お前の語りたいように語れ」
「では」と言って、加賀見茜を見る。
「加賀見さんの『八月十四日に前園さんが死ぬ』予言には二つの気になるところがあります」
「あら、何処かしら? 言葉通りの意味だし、どうして死ぬか、どうやって死ぬかを私は言えない立場にあるのよ」
「確かに加賀見さんはそこまで深くは言えません。そういう法則の都市伝説だからです。決定している未来を見て告げる。それも重要なターニングポイントを通過しないといけない」
「なら、どこが気になるのかしら?」
「一つ目は、”前園さんの死の予言”なのに告げた相手が涼城さんであること。もう一つが、涼城さんに告げた時点で“前園さんが死ぬ”と決まっている点です」
加賀見茜は温和な表情を変えず黙っている。
「涼城さんと俺達は前園さんの死を阻止しようと都市伝説を調べていました。なら阻止できる未来もあるはずです。それに、“阻止しなければ涼城さんも死ぬ”というのは、言い換えれば『涼城さんが生きたいなら前園さんを助けろ』ってことですよね。けど予言は確定した言葉。”危険がある”とか、”かもしれない”といった匂わせるものではありません。前園さんは確実な死を迎え、涼城さんも確実な死の未来を迎える逃れられない予言になります」
「まさにその通りね、私の白の予言の法則では」
「でもこれっておかしいですよね。未来が確定しているのに、加賀見さんは涼城さんに前園さんの死を止めるように言っている。まだ生き残れる余地があるように、俺達にも助言をしてくれた」
「確かに矛盾してるわね。決まった死を迎える人に、生きる希望があると言うのは。けど蒼空君、私は私の役目を全うしているだけよ。それに、法則で縛られるなら、無駄な助言なんて出来ないわ」
「都市伝説に関する法則の縛りは強いからな」
二人がかりで返されると間違っているのかと挫けそうになる。
一呼吸吐いて、やや昂ぶる気持ちを落ち着けて続けた。
頭にある推理を一気に話したくなるも、脈絡が成り立たなければ迷走した推理が出来上がる。落ち着く事すら必死であった。
「……ええ。加賀見さんは予言に関しては嘘をつけない。だから言うべき事を言ったにすぎない。じゃあなぜ加賀見さんは、涼城さんに前園さんの死を止めるように言ったか、どうして前園さんは死が確定しているか。この矛盾の真相を明らかにするには、涼城さん前園さん、両方の関係者、そして日和が絡んでいる問題を明らかにしないといけない」
「面白そうな推理が聞けそうね探偵さん。私の予言のおかしな点をどう解決して下さるのかしら?」
「ここからは少し複雑になるので、一度予言の話は置いておきます」
加賀見茜は「あら、残念」と呟いた。
「それともう一つ、ここから先の話では日和が大きく関係してきます。けどその理由を話すと説明が変になりそうなので、ここからは『日和のある事』とさせてもらいます。後で話しますので」
許可を二人から得ると、蒼空は御堂六郎の方を向いた。
「御堂さんは俺に言いましたよね。”都市伝説の狂いを見つければ願いが叶う。そして出来なければ罰が与えられる。挑戦する事も逃げ出すことも可能”と。ですよね?」
「ああ。その通りだ」
「この罰というのが、挑戦者が都市伝説に組み込まれて新しい都市伝説が一つ出来上がる、です」
御堂六郎は余裕ある表情を崩さず、「驚いたか?」と訊いた。
「ええ。それに危ない所でした。前園さんのお兄さんが零した情報が無かったら分からないままでしたし、その情報を知ってもすぐにはその答えが出ませんでした。”前園さんお兄さんが四十二番目に食われた”とか考えてましたし。けど、新しい都市伝説として組み込まれると考えたらあらゆる辻褄が合いました。お兄さんが四十一番目に印を付けたのは、その時まではそこまでしかなかったからだって。それと日和のある事にも行き着きました。悩んだ末に辿り着いたギリギリの状態です。それに、この挑戦者への罰があったから涼城さんは都市伝説に深く関わることになったとも」
横から加賀見茜が口を挟んだ。
「あら、突拍子もない所へ飛んだわね。夏美ちゃんが都市伝説に深入りしたのは私の予言じゃないの?」
「いいえ。加賀見さんと涼城さんの出会いだけを見たらそうかもしれませんが、涼城さんは都市伝説に関わる運命にあったんです。しかも産まれる前から」
「随分大胆ね。夏美ちゃんの前世とか、かしら?」
「いえ。原因は涼城さんのお爺さんです」
静かに吹く冷ややかな風が蒼空を少し落ち着かせる。まるで説明させやすくするかのように。
「涼城さんのお爺さんは御堂さんと加賀見さんに会っている。それは涼城さんの夢と俺の夢に出てきて、御堂さんに対抗していた様子からも明らかです。加賀見さんに至っては似顔絵も残されてるくらいですから」
「あら、光栄ね」
「お爺さんもおそらくは御堂さんに願いを叶える条件を提示された筈です。けど断った。あの様子から、聞く耳を持たなかったのかもしれません。御堂さんへ突っかかってましたし。結果、逃げ切った扱いとなり、お爺さんは挑戦権も得ず、罰を受けずに済みました」
「まさか」
突如、推理の途中で加賀見茜が口を挟み、蒼空に緊張が走る。
「ごめんなさいね。この話の流れだと、血縁関係者だから夏美ちゃんは私に会えたって言おうとしてるのかしら?」
冷や汗が背中を流れる感覚が分かる。こめかみからも流れる汗が頬を伝う。
「儀造君と夏美ちゃんは祖父と孫娘ね。夏美ちゃんの弟君も明香ちゃんのお兄さん、翔真君を見たと言うから、それなりに都市伝説に干渉できる血筋とも捉えられるわ。そうそう、翔真君も都市伝説に巻き込まれて妹の明香ちゃんも関わったわね。血縁者の繋がりで言うなら、日和ちゃんも儀造君の親戚に当たるわ」
補足のように御堂六郎も語る。
「たしかに、一度接触した者の血縁者をターゲットとするのはこちらとしても可能だ。だが確実ではないぞ。それとも、これら全てとの接触が”偶然”の言葉で片付けるか?」
異様な圧迫感がヒシヒシと伝わり、心臓をゆっくりと掴まれていくような緊迫がある。気を抜くと威圧に負けてしまう。
蒼空は静かに鼻で呼吸すると秋を感じさせる涼しい空気が鼻孔を通り抜け、少しだけだが落ち着いた。
気を取り直して向かい合う。
「血縁関係の線は俺も考えました。夢で出会ったのとか、些細な所では血縁者だからという道理が通るかもしれませんが、この謎解きではそれが成立しません。日和に至ってはお爺さんの直系じゃないからこの道理には無理がありすぎる」
「ほう、言い張るに見合う答えを用意していると?」
「はい。涼城さんが産まれる前から都市伝説と関わると決まっていたのは、夢の中で若い時のお爺さんと会ってしまったからです」
「後出しのようで申し訳ないが」
口を挟まれた蒼空は、許可して御堂六郎の発言を許した。
「夢でそういう出会いがあったからと言って、現実での出会いではないなら繋がりとしては曖昧だ。夢は忘れたり記憶が安定しないからな。血縁者だが確実ではないという点から鑑みても、その推理は強引すぎるぞ。産まれる前から干渉する運命とやらは尚のことあり得ん」
「御堂さんがそう言うからそうなんでしょうけど。だけどお爺さんは涼城さんと夢で会った事実を、”ある方法”で現実に定着させたんです。それにより、日和と前園さんも御堂さんが接触しなければならない権利をも与えてしまった。こっちも産まれる前から決まったようなものです」
「どのような方法だ? まさかタイムマシンでも見つけたか?」
「この場合、タイムパラドックスが適してるのかもしれません」
御堂六郎から言い返す言葉がなく、蒼空は儀造が定着させた”ある方法”を口にした。
「絵です」
先ほどのような二人がかりの反論があると思ったが、無かったことに蒼空は安堵する。
「お爺さんは絵画の心得があった。時代的に絵描きとして生きていけなかったから諦めたみたいですけど、趣味で描いていたそうです。そして、夢で会った涼城さんの絵を描いてしまい、涼城さんを御堂さんのターゲットになるよう確定させてしまったんです」
加賀見茜が手を上げた。
「けどそれだと、どうして夏美ちゃんの父親が都市伝説と干渉しないのかしら? お爺さんに孫、間の父親が彼と会っても不思議ではないんじゃない?」
「お爺さんの絵によりターゲットが固定されたんです。だってそうですよね、お爺さんは涼城さんと会って御堂さんから遠ざけようと励んだ。祖父が孫娘を護る構図が出来上がってしまったから」
「一ついいか?」の御堂六郎の一言で、またも緊張が走る。
「俺が接触しているのが前園明香、三枝日和、涼城夏美の三名を重点的に語っているが、他にも大勢の人間とこの時期に接触しているかもしれんぞ。その多くの人間の内、偶然その三人がかかったとも考えられるだろ」
「”都市伝説を調べている人間をターゲットにする法則”なら、そうかもしれません。俺のクラスでも夏休みの自由研究で調べようって奴もいるし、他の学校でもあるでしょうね。この都市伝説って魅力的で有名ですから。可能性の話になりますが、大多数同時接触は出来るかもしれない。けど今回ばかりはそれが不可能なんです」
「言ってくれるな。だが、俺と接触した奴らが臆して逃げた際、記憶を消した可能性も考えられるだろ」
「その法則があるならお爺さんは忘れている筈です」
死の前日まで、儀造は名前を忘れていても御堂六郎と加賀見茜を覚えていたことが確たる証拠であった。
「では、俺が大多数の人間との接触が不可能と言い張る理由はなんだ?」
「お爺さんが会った涼城さんが、色んな柵のある孫娘だからです」
「色んな柵?」加賀見茜が訊いた。
「現実では、”八月十四日に前園さんが死ぬ”、”お兄さんが失踪状態で都市伝説に組み込まれた”、”お爺さんが前園さんのお婆さんを助けていた”、”都市伝説が四十二まで確定し、ある都市伝説の法則が機能している”、”『日和のある事』が関係した状態で失踪している”。他にも細かい条件はあります。”それらが活きている時代の涼城さん”の絵を描いてしまったから、御堂さんはお爺さんの次に涼城さんに接触しなければならなかったんです」
「ほう。だがそれではまだ足りないな。涼城儀造の次に涼城夏美と接触する道理ではあれ、大多数の人間と接触しない縛りにはならないだろ?」
「いえ、不可能です。なぜなら都市伝説は四十四番以降増えず、四十二から四十四番まで組み込まれる生け贄まで揃っているからです。お爺さんの時代から何人かは罰が下っても、この時代、この夏休み。細かく言うなら去年の十一月末からは挑戦者を増やせません」
御堂六郎はどこか嬉しそうな表情を滲ませる。
加賀見茜は微笑んだ。
「大胆な断言ね。詳しく教えてくれる?」
一呼吸置いて、蒼空は次の推理へ繋げる。
「ここまで確定させた原因は『日和のある事』です。こんな方法が本当に正解か悩みましたけど、これしか考えられなかった」
御堂六郎は何か言いたそうに口を少し動かすも、黙った。
「詳細は後回しにしますが、日和は色んな条件を元に”四十四番目の都市伝説”となり失踪。夢で俺と桜木君に会った。この突拍子もない行動のおかげで一つの都市伝説の条件を早めてしまったんです」
メモ帳を取り出し、都市伝説を記したページを開いて見せた。
三十八番目の都市伝説『四並びの崩壊』
「蒼空君、日和ちゃんが早めに都市伝説へ組み込まれたからと言って、どうして夏美ちゃんと明香ちゃんの死が確定するの?」
「日和が四十四番目に組み込まれて”夢に現われる存在”となりました。都市伝説側の法則はよく分かりませんが、幻でも夢でも別の方法でも。とにかく、俺と桜木君に会える存在になります。しかし一つ順番が飛んでいます。理由は、現在挑戦者である人物を生け贄として組み込まなければ成り立たない前提だから。それが前園さんです」
「どうして日和ちゃんはそんなまどろっこしい事をしたのかしら?」
「ある期日までに謎解きを解明させる為です。それは多くの人を助けることに繋がります。ある法則上、都市伝説として動けるのは、あと四十四番目しかなかった。だからそこを狙った。一世一代の大博打に出たんです。その行動が、”前園さんが死ねば『四並びの崩壊』が機能する”条件を作り上げたんです。細かな日数なども関係しているかもしれませんが、四がさらに並ぶ時、この町で甚大な被害を及ぼす大災害が起きます。都市伝説に関係するあらゆるものを崩壊させて消す為の大災害。これが崩壊の全容です。その大災害に涼城さんと家族は巻き込まれて死ぬ未来が確定する」
日和が組み込まれたのは失踪の当日。それ以降に夏美が儀造と会い、絵画として残された。崩壊する未来に関係する孫娘を。
「加賀見さんの予言では”涼城さんと家族が死ぬ”でしたよね。これは引っかけ問題みたいなものです。正解は、『双木三柱市内の多くの人間が死ぬ』が正解なんじゃないですか?」
加賀見茜は軽く拍手して正解だと示した。
一方で御堂六郎は口を挟んだ。
「大した推理だが、色んな要点が抜けすぎだ。なにより、三枝日和が特異となれた詳細は用意してるのか?」
蒼空は都市伝説の数字を記し、日和同様に特別な数字にのみ○印を付けたページを見せた。
「全ての謎を解くキーワードは『素数』です」
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