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三章 迫る恐怖
8 神話と伝説
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昼過ぎに市立図書館へ訪れた蒼空は、歴史と神話を調べ始めた。同時に過去の事件から加賀見茜、御堂六郎の存在を探れたらと考え。
躍起になり歴史資料を読み進めるも、流し見するだけで時間経過が早いと気づき、妙な焦りを覚えた。
「蒼空君」
小声で声をかけられて向くと明香がいた。
「え、どうして?」
「夏美ちゃんの家に行こうとしたんだけど、橙也君を怖がらせたら情報が何も入らないと思ったから。だからちょっと気になってた双木三柱市の歴史を。特に神話をね。前に音奏君の宿題ついでに調べたから、その続き」
机の上には蒼空の持ってきた歴史書とは別の、さらに昔の歴史書が置かれた。
「やっぱり前園さんも都市伝説の一と二が?」
「お兄ちゃんも部屋に双木三柱市の神話が書かれた歴史書置いてたから多分調べてたんだと思う」
「お兄さん、いつぐらいから調べてたの?」
「私の知る限りだと、九月入ったぐらいだったんじゃないかなぁ。都市伝説調査っていうか論文用みたいな……」調べようとした歴史書のページを開いた。「それで、私もちょっと読んでみたら、都市伝説の一番と二番は双木三柱市が出来た神話に関連してるかもって。あと、小さい時の記憶なんだけど、それが気になったから」
協力者が増えて蒼空は期待が高まった。その最中、明香のスマートフォンが振動した。夏美からである。
「涼城さんから?」
「うん。なんか、私とお兄ちゃんが映ってる写真が欲しいみたい」
「あるの?」
「一応……スマホにデータあるから」
操作して送るとすぐにお礼の返信があり、スマートフォンをポケットにしまった。
「蒼空君は? どんな歴史を?」
「うん。前園さんと結構被ってるかな。双木三柱市の名前の由来って知ってるよね」
神話に登場する双子の神の証となる二本の楠である。しかし大昔に破壊されており、それが自然災害が原因とされている。
「御神木が破壊した時代背景と都市伝説誕生とが何か関係してないかなぁって。都市伝説の一と二が、どうして双木三柱市の名前に掛かっているかが気になって」
かつてこの地は自然災害が多く、まともに人間が住めない地とされていた。そうなったのは、多くの死霊が集まった為とされ、この悪辣極まる環境を改善しようと双子の神が降臨した。しかし双子の神の力を持っても広大な土地の浄化には至らなかった。
双子の神はこの地で長く残る三本の大樹に力を与え、三柱の神を創った。朝の神、昼の神、夜の神である。
三柱の神へ死霊の勢力を向けている間に双子の神は自らを楠に宿し浄化の礎とした。三柱の神も御神木から流れる神の力を遺憾なく使用し、死霊を成仏させた。やがて、三柱の神々も双子の御神木を護る様に自分たちも三本の杉の木へと姿を変え、この地を護っている。
これが双木三柱市に纏わる神話である。尚、町名にする際、夜という暗い印象を改善するため、夕、もしくは夕日を起用したとある。
双子の御神木が破壊されたのは江戸時代中期、落雷が有力視されている。
歴史書に記されているのを蒼空は見つけた。メモ帳に、『江戸時代中期、落雷が有力視』と記す。
一方、明香は気になっていた三柱の神についての記実を見つけた。
御神木倒壊後、相次ぐ災害、特に際立って大きな災害は双木三柱市全土を襲った大火災。『御神木倒壊の天罰』と称された火災が起こるも、無害であった三柱の神として崇めた木々に被害は無かった。以降、三柱の神をこの地の守り神と崇め、御神木の代わりとなり得る石碑が建立されると、五柱の神々を讃えるに至った。
「蒼空君見て」
若干の興奮具合から何かを発見したと思われる。
三柱の神には個々に特別な力を有していた。
朝の神は願望を形にする力を。
昼の神には試練を与える力を。
夜の神には黄泉の世界へ干渉出来る力が。
三柱の神の力に肖り、朝日ノ町神社では願望成就が、真昼ノ町では自分に見合った苦労と成果が、夕日ノ町では厄除けや先祖への感謝が届くなど、御利益や効果がある。
「やっぱりそうだった。昔ね、お父さんから朝の神は願い事が叶うって言われたからもしかしてって思って。可能性だけど、御堂六郎さんって朝の神なんじゃない?」
確かに一理ある。しかし腑に落ちない点も浮かぶ。
蒼空はメモ帳に『三柱の神と御堂六郎は関係あり』と記入し、明香は疑問を抱いた。
「三柱の神と? 朝の神じゃなくて?」
「ちょっと気になって。もし朝の神が御堂さんを指してるなら、願望成就だけでいいはずだ。だけど問題解決を条件にしてるし、失敗すると罰が与えられるってあった。これが昼の神、夜の神の力も使ってるとしたら、朝の神限定ってのは違う気が……」
「確かに」と明香は呟いて納得した。
「けど無関係じゃない。やっぱりこの神話。双子の神と三柱の神は四十二の都市伝説と関係してるのが有力だと思うよ」
明香は大学ノートを鞄から出した。「ちょっと整理するね」と言い、いくつかの要点を書き出した。
”夏美ちゃんの祖父が昔、加賀見茜と御堂六郎に会っている。時代から戦時中か戦後。また、夏美ちゃんは夢で若い日の祖父と会っている。
加賀見茜さんが“加賀見茜”を名乗るなら御堂六郎さんは“御堂六郎”を名乗った。
駿平君は自分達の前では失踪状態。他の人達の間では死亡扱い。また、先入観を植え付けたくないと言って単独行動。『全体的に間違っていた』と蒼空君へ伝える。
三枝さんと兄は数字を強調するメモを残す。
都市伝説の一と二は双子の神と三柱の神が関係している可能性大。また、御堂六郎さんも三柱の神の可能性大”
「とりあえず、今日分かったのも足して書いてみた。他にもあるだろうけど」
「さっきの三柱の神の話に戻るけど、もし御堂六郎さんが神に属する何かだとしたら、加賀見さんはなんだ? 加賀見さんと御堂六郎さんの名前の繋がりがあるから……」
解決の糸口が加賀見茜の存在により否定されてしまう。考えれば考えるほどに混乱してしまう。
「……よく考えたら変よね」ふと明香が声を漏らした。
「変って?」
「だって、まだ憶測だけど。三枝さん、お兄ちゃん、駿平君が巻き込まれていなくなった。加賀見さんと御堂六郎さん両方と会ったのは、蒼空君と夏美ちゃん」
「日和もだったし、一応、涼城さんのお爺さんと」
加えられ、明香の説明が続く。
「こんな奇妙な出来事に遭遇してるのは私達数名だけだよ。もっと会っていたらニュースにでもなってそうだし、他にもいるならオロオロして都市伝説についてネットとか利用して調べてるだろうけど、そういったコメントとか無かったし」
「前園さん、ネットで調べたの?」
「一応……命掛かってるし」
気まずくなって会話が途切れた。淡々と語るが、それほど必死になって調べている。自分の命が掛かり、解決したら身内と友達が戻ってくる希望があるのだから尚更必死だ。
「なんだ? 俺達にだけ都市伝説側からぐいぐい接してくる理由って」
それぞれのきっかけを考える。
蒼空と音奏は日和から。
夏美は加賀見茜から明香の予言を聞いたから。
明香は御堂六郎に翔真を見つける事を望みとして関わっていった。
駿平は結果的には夏美の誘いに乗っている。
翔真の理由は不明。恐らく御堂六郎には会っている。
「混乱するかも、だけどついでにいい?」
別ページを開き、蒼空の許可無しで説明し始めた。
「前から数字が関係してるって言ってたでしょ。私なりに調べたら、双木三柱市で重要なのは素数だと思うの」
ノートには素数の数字に関する内容が書かれている。
「そういや、日和もノートに素数の都市伝説に○印付けてたな」
「二本の御神木、三柱の神。これは素数の二と三。それ以外にも三町の至るところで五、十一、十七の数字を使った橋や道。もっと細かい所を調べたら、二十三の槍とか、三十一の漁り火とか。神話の始めはこの地が荒れていたから、色んな厄災を鎮める儀式で素数が重要だったんだよ、きっと」
だとすれば、四十二の都市伝説も素数が大きく関係している。しかし実際に身の回りで起きているのは偶数が殆ど。もっと言えば各素数の次の数字。
「前園さん、提案してもいい?」
「なに?」
「俺ちょっと調べたい場所があるんだ。だから、神話と数字に関係するものを調べてもらってもいい? 前園さんのほうが詳しく調べられそうだし」
「それは良いけど、蒼空君は何処に行くの?」
調べる為に置いてあった双木三柱市の歴史書を開き、目当ての場所を指さした。
三町を見渡せる見晴らし台。双子の神が宿った御神木があった場所である。現在では見晴らし台の中央に大きな石柱が二本立てられている。
「ここに何が?」
「ここまで神話が関係してるなら、まだ行ってないここも見てみたいから。そうなったら多分みんなで集まれないから、明日全員で集合して情報を集めよう」
明香は頷いた。
「気をつけてね、何が起こるか分からないから」
立ち上がって歩こうとしたとき、突然ある事を思い出した。
「そういえば、今思い出したんだけど」
何? と言いたげな顔を明香は向けた。
「俺と前園さんが都市伝説調査で協力する前、涼城さんと図書館前で会ったでしょ。あれ、加賀見さんの予言時刻が大幅にズレたんだ。あの時、前園さんって御堂六郎さんに時間指定とかあったの?」
「違うよ」と言って明香はその時のことを思い出す。「確かぁ……、嫌な予感がしたから早く行った。筈よ」
「嫌な予感?」
「殆ど直感よ。早く行かなきゃっていう感じ」
思った以上にどうでもない答え。しかし加賀見茜の予言時刻をずらしたのだから、何か理由はあるだろう。
蒼空はノートに『予言時刻のズレは、嫌な予感』と記し、明香へ持ってきた本を戻してもらうように頼み、図書館を出た。
躍起になり歴史資料を読み進めるも、流し見するだけで時間経過が早いと気づき、妙な焦りを覚えた。
「蒼空君」
小声で声をかけられて向くと明香がいた。
「え、どうして?」
「夏美ちゃんの家に行こうとしたんだけど、橙也君を怖がらせたら情報が何も入らないと思ったから。だからちょっと気になってた双木三柱市の歴史を。特に神話をね。前に音奏君の宿題ついでに調べたから、その続き」
机の上には蒼空の持ってきた歴史書とは別の、さらに昔の歴史書が置かれた。
「やっぱり前園さんも都市伝説の一と二が?」
「お兄ちゃんも部屋に双木三柱市の神話が書かれた歴史書置いてたから多分調べてたんだと思う」
「お兄さん、いつぐらいから調べてたの?」
「私の知る限りだと、九月入ったぐらいだったんじゃないかなぁ。都市伝説調査っていうか論文用みたいな……」調べようとした歴史書のページを開いた。「それで、私もちょっと読んでみたら、都市伝説の一番と二番は双木三柱市が出来た神話に関連してるかもって。あと、小さい時の記憶なんだけど、それが気になったから」
協力者が増えて蒼空は期待が高まった。その最中、明香のスマートフォンが振動した。夏美からである。
「涼城さんから?」
「うん。なんか、私とお兄ちゃんが映ってる写真が欲しいみたい」
「あるの?」
「一応……スマホにデータあるから」
操作して送るとすぐにお礼の返信があり、スマートフォンをポケットにしまった。
「蒼空君は? どんな歴史を?」
「うん。前園さんと結構被ってるかな。双木三柱市の名前の由来って知ってるよね」
神話に登場する双子の神の証となる二本の楠である。しかし大昔に破壊されており、それが自然災害が原因とされている。
「御神木が破壊した時代背景と都市伝説誕生とが何か関係してないかなぁって。都市伝説の一と二が、どうして双木三柱市の名前に掛かっているかが気になって」
かつてこの地は自然災害が多く、まともに人間が住めない地とされていた。そうなったのは、多くの死霊が集まった為とされ、この悪辣極まる環境を改善しようと双子の神が降臨した。しかし双子の神の力を持っても広大な土地の浄化には至らなかった。
双子の神はこの地で長く残る三本の大樹に力を与え、三柱の神を創った。朝の神、昼の神、夜の神である。
三柱の神へ死霊の勢力を向けている間に双子の神は自らを楠に宿し浄化の礎とした。三柱の神も御神木から流れる神の力を遺憾なく使用し、死霊を成仏させた。やがて、三柱の神々も双子の御神木を護る様に自分たちも三本の杉の木へと姿を変え、この地を護っている。
これが双木三柱市に纏わる神話である。尚、町名にする際、夜という暗い印象を改善するため、夕、もしくは夕日を起用したとある。
双子の御神木が破壊されたのは江戸時代中期、落雷が有力視されている。
歴史書に記されているのを蒼空は見つけた。メモ帳に、『江戸時代中期、落雷が有力視』と記す。
一方、明香は気になっていた三柱の神についての記実を見つけた。
御神木倒壊後、相次ぐ災害、特に際立って大きな災害は双木三柱市全土を襲った大火災。『御神木倒壊の天罰』と称された火災が起こるも、無害であった三柱の神として崇めた木々に被害は無かった。以降、三柱の神をこの地の守り神と崇め、御神木の代わりとなり得る石碑が建立されると、五柱の神々を讃えるに至った。
「蒼空君見て」
若干の興奮具合から何かを発見したと思われる。
三柱の神には個々に特別な力を有していた。
朝の神は願望を形にする力を。
昼の神には試練を与える力を。
夜の神には黄泉の世界へ干渉出来る力が。
三柱の神の力に肖り、朝日ノ町神社では願望成就が、真昼ノ町では自分に見合った苦労と成果が、夕日ノ町では厄除けや先祖への感謝が届くなど、御利益や効果がある。
「やっぱりそうだった。昔ね、お父さんから朝の神は願い事が叶うって言われたからもしかしてって思って。可能性だけど、御堂六郎さんって朝の神なんじゃない?」
確かに一理ある。しかし腑に落ちない点も浮かぶ。
蒼空はメモ帳に『三柱の神と御堂六郎は関係あり』と記入し、明香は疑問を抱いた。
「三柱の神と? 朝の神じゃなくて?」
「ちょっと気になって。もし朝の神が御堂さんを指してるなら、願望成就だけでいいはずだ。だけど問題解決を条件にしてるし、失敗すると罰が与えられるってあった。これが昼の神、夜の神の力も使ってるとしたら、朝の神限定ってのは違う気が……」
「確かに」と明香は呟いて納得した。
「けど無関係じゃない。やっぱりこの神話。双子の神と三柱の神は四十二の都市伝説と関係してるのが有力だと思うよ」
明香は大学ノートを鞄から出した。「ちょっと整理するね」と言い、いくつかの要点を書き出した。
”夏美ちゃんの祖父が昔、加賀見茜と御堂六郎に会っている。時代から戦時中か戦後。また、夏美ちゃんは夢で若い日の祖父と会っている。
加賀見茜さんが“加賀見茜”を名乗るなら御堂六郎さんは“御堂六郎”を名乗った。
駿平君は自分達の前では失踪状態。他の人達の間では死亡扱い。また、先入観を植え付けたくないと言って単独行動。『全体的に間違っていた』と蒼空君へ伝える。
三枝さんと兄は数字を強調するメモを残す。
都市伝説の一と二は双子の神と三柱の神が関係している可能性大。また、御堂六郎さんも三柱の神の可能性大”
「とりあえず、今日分かったのも足して書いてみた。他にもあるだろうけど」
「さっきの三柱の神の話に戻るけど、もし御堂六郎さんが神に属する何かだとしたら、加賀見さんはなんだ? 加賀見さんと御堂六郎さんの名前の繋がりがあるから……」
解決の糸口が加賀見茜の存在により否定されてしまう。考えれば考えるほどに混乱してしまう。
「……よく考えたら変よね」ふと明香が声を漏らした。
「変って?」
「だって、まだ憶測だけど。三枝さん、お兄ちゃん、駿平君が巻き込まれていなくなった。加賀見さんと御堂六郎さん両方と会ったのは、蒼空君と夏美ちゃん」
「日和もだったし、一応、涼城さんのお爺さんと」
加えられ、明香の説明が続く。
「こんな奇妙な出来事に遭遇してるのは私達数名だけだよ。もっと会っていたらニュースにでもなってそうだし、他にもいるならオロオロして都市伝説についてネットとか利用して調べてるだろうけど、そういったコメントとか無かったし」
「前園さん、ネットで調べたの?」
「一応……命掛かってるし」
気まずくなって会話が途切れた。淡々と語るが、それほど必死になって調べている。自分の命が掛かり、解決したら身内と友達が戻ってくる希望があるのだから尚更必死だ。
「なんだ? 俺達にだけ都市伝説側からぐいぐい接してくる理由って」
それぞれのきっかけを考える。
蒼空と音奏は日和から。
夏美は加賀見茜から明香の予言を聞いたから。
明香は御堂六郎に翔真を見つける事を望みとして関わっていった。
駿平は結果的には夏美の誘いに乗っている。
翔真の理由は不明。恐らく御堂六郎には会っている。
「混乱するかも、だけどついでにいい?」
別ページを開き、蒼空の許可無しで説明し始めた。
「前から数字が関係してるって言ってたでしょ。私なりに調べたら、双木三柱市で重要なのは素数だと思うの」
ノートには素数の数字に関する内容が書かれている。
「そういや、日和もノートに素数の都市伝説に○印付けてたな」
「二本の御神木、三柱の神。これは素数の二と三。それ以外にも三町の至るところで五、十一、十七の数字を使った橋や道。もっと細かい所を調べたら、二十三の槍とか、三十一の漁り火とか。神話の始めはこの地が荒れていたから、色んな厄災を鎮める儀式で素数が重要だったんだよ、きっと」
だとすれば、四十二の都市伝説も素数が大きく関係している。しかし実際に身の回りで起きているのは偶数が殆ど。もっと言えば各素数の次の数字。
「前園さん、提案してもいい?」
「なに?」
「俺ちょっと調べたい場所があるんだ。だから、神話と数字に関係するものを調べてもらってもいい? 前園さんのほうが詳しく調べられそうだし」
「それは良いけど、蒼空君は何処に行くの?」
調べる為に置いてあった双木三柱市の歴史書を開き、目当ての場所を指さした。
三町を見渡せる見晴らし台。双子の神が宿った御神木があった場所である。現在では見晴らし台の中央に大きな石柱が二本立てられている。
「ここに何が?」
「ここまで神話が関係してるなら、まだ行ってないここも見てみたいから。そうなったら多分みんなで集まれないから、明日全員で集合して情報を集めよう」
明香は頷いた。
「気をつけてね、何が起こるか分からないから」
立ち上がって歩こうとしたとき、突然ある事を思い出した。
「そういえば、今思い出したんだけど」
何? と言いたげな顔を明香は向けた。
「俺と前園さんが都市伝説調査で協力する前、涼城さんと図書館前で会ったでしょ。あれ、加賀見さんの予言時刻が大幅にズレたんだ。あの時、前園さんって御堂六郎さんに時間指定とかあったの?」
「違うよ」と言って明香はその時のことを思い出す。「確かぁ……、嫌な予感がしたから早く行った。筈よ」
「嫌な予感?」
「殆ど直感よ。早く行かなきゃっていう感じ」
思った以上にどうでもない答え。しかし加賀見茜の予言時刻をずらしたのだから、何か理由はあるだろう。
蒼空はノートに『予言時刻のズレは、嫌な予感』と記し、明香へ持ってきた本を戻してもらうように頼み、図書館を出た。
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