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五章 数奇な巡り会い
Ⅵ ルダへの疑念
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ルダがゾーゴルの幹部。真相は定かではないが、二人が嘘を吐いているようには見えない。
夜、ジェイクとミゼルは部屋で話し合った。ベルメアとラドーリオも浮遊して姿を見せている。
「さて、嫌な方に的中したと見て良いものか……」
ルダは危険人物。そう決めつけるべきかミゼルは悩んだ。
「良いもなにも、ルダって元々ミゼルが警戒してたでしょ? ゾーゴルの幹部って言ってるんだったら、危険じゃないの?」
ラドーリオは背中にしがみついて顔を覗かせて訊く。
どうも釈然としない様子を見てジェイクは思い当たる節を口にした。
「本気が感じられねぇのが気になってんのか?」
質問の意図する所をベルメアが「どういうこと?」と訊く。
「ミゼルの話をまんま信じるとすれば、あの新種のオニを倒したのはルダだ。あのオニはどう見ても雑魚じゃねぇ、それを倒したってんなら、相当な実力者ってことだ。カイネの戦士と組み手した時もあいつの強さは全員が注目してた」
日々鍛錬に明け暮れる強者なら手合わせして相手の力量をある程度は測れる。戦士としての見極めにより、ジェイクも含め全員がルダの底知れぬ強さを理解していた。
「俺の見立てだと、あいつが本気だせば、カイネもヌブルも潰せる。俺等がいたらカムラで負けると踏んでるだろうが、業魔を封印した後ならすぐにでも全滅を実行出来ただろうな」
「じゃあ、なんでしなかったの?」
ラドーリオの質問にミゼルは口を開いた。
「奴なりの作戦がある。と見るのが妥当だろうな」
しかし一呼吸の間を置いて口にする、「だが腑に落ちない」の言葉がジェイクは気になった。
「標の鍵を手に入れた経緯か?」
ジェイクがルダの正体を知ってから気になったのはそれである。
全容は不明だが、ヌブル族と交渉して地下迷宮へ入り、標の鍵を入手して迷宮を出た。運良くジェイクと会った為、一緒に行動する運びとなったが。
「それもある」
返したミゼルは別の点が気になった。
「ルダの立ち回りだ。あのガーディアン、新種のオニ、融合したオニ、業魔。全てが命の危険にさらされる戦場だ。ルダ本人は本気を出さずに立ち回っているが、一歩読み違えれば重傷か死に至る程だ。そして私の目を気にしていた節が見える」
「なんでお前を?」
「恐らくは読まれると思ったのだろう。本領を発揮すれば呪いが使えることや」この情報はムイ達から聞いている。「自らが進めている計画をな。幾度も逃げる隙はあったのだが、どうもニルドを離れようとしなかった様子だった。あくまで仮説だが、ニルドの地に目当ての力があるか、ミングゼイスの石板か」
「それって、ルバート達と遺跡で見たやつ?」
ゲダの遺跡で文字が浮かんだ石板をラドーリオは思い出した。
「ああ。ノドム殿やボダイ殿から聞いている。ニルドの城にはミングゼイスの石板を保管していると」
ミングゼイスの石板の情報をジェイクは曖昧にしか覚えていない。
「その石板、色んな情報があって、出回ってる術とか食料の情報とか書いてるんだったよなぁ。なんでそれを?」
「ニルドにある石板の情報量はもっと深く重要なものだからだ。世界を揺るがす予言や、我々ガーディアンが転生した時期まで記されているとある。公にでもなれば争奪戦は免れず、明確な災害の未来を知れば、悪用して金儲けも考えられる」
それほど重要な石板をニルドが抱えている。
邪推を巡らせるなら、ニルドは必要な情報を元に強力な武器を作る事も、他国を脅す事も出来る。しかしリブリオスは情報の殆どを閉鎖しているとされる国。ニルドがミングゼイスの石板を抱えている情報すら、今だ一部の者しか知らないものだ。
ニルドにも石板の内容を秘密にする事情がある。
「けどよぉ、もし事情ありきなら、業魔の話になる前に抜け出せたんじゃねぇのか?」
「私でもそうする。そもそも標の鍵を入手したなら、さっさとお前と離れ、こっそりとニルド内を動き回れたのだよ」
それでもルダが動かず、流れに身を任せて業魔封印までいた理由。
ベルメアは意見した。
「あんた達に目を付けた、とか?」
「なんでだよ。ガーディアンだからか?」
ジェイクは返すも、ミゼルは深く考え込む。
「確かに俺等は変わってるだろうけど、制限ありのカムラ使って大技出すぐらいで、後はその辺の戦士や術師みたいなもんだろ。むしろ、力量でいえばカイネの戦士が上だ。目ぇ付けるならそっちだろ」
「いや、そうじゃないな」
ミゼルの考えは単純な戦力も踏まえ、神力にあると見た。
「我々はカムラを強力な武器、破壊に特化した力と見ている。実際、使用すればそうなるからな」
「他にも使いどころがあるってことか?」
「ああ、何かを破壊するという点で考えても、純粋な力では無い。この世界に既存する力でも無い。神の力、伝説に記される神話の戦士の力。神力。それを利用しようと想定したならどうだろうか」
「可能性は高いわね」ベルメアが答える。「神力で何をしたいかはまだ分からないけど、ルダが二人を利用、もしくは頼ろうとしていたなら、ずっといた理由になるわ。さっきは二人って言ったけど、必要としたのはジェイクかも」
「はあ?! 俺?」
「だって、ミゼルだったら小難しく考えた説明とか、悪巧みしててもしつこく追い回してきそうじゃない」
「ははは、褒められているのやらいないのやら」
「そりゃ、俺の台詞だ。つまり、俺が単純ってことか?」
「いや、頼りやすい、というのがルダの本心かもしれんな」
「どういうこった。ベルの話だと、どう考えても馬鹿が使いやすいって聞こえるぜ」
「ルダがただ目当てのモノを求めているならそうだろう。しかし、お前達との暮らしぶりを見るからに、あの男は有用な者を使い捨てにするとは見えんのだ。気質は魔力にも表われるからな」
ルダについての考察を広げるも、結局は謎が残るばかり。
早くニルドへ戻りたい意思だけが強まり終わる。
明朝、目を覚ましたミゼルは、傍らに置かれている手紙を見つけた。
『ミゼル様、お一人でご覧ください』
その一文を読むと、目を覚ましたジェイクに気づかれないよう、懐へと忍ばせた。
夜、ジェイクとミゼルは部屋で話し合った。ベルメアとラドーリオも浮遊して姿を見せている。
「さて、嫌な方に的中したと見て良いものか……」
ルダは危険人物。そう決めつけるべきかミゼルは悩んだ。
「良いもなにも、ルダって元々ミゼルが警戒してたでしょ? ゾーゴルの幹部って言ってるんだったら、危険じゃないの?」
ラドーリオは背中にしがみついて顔を覗かせて訊く。
どうも釈然としない様子を見てジェイクは思い当たる節を口にした。
「本気が感じられねぇのが気になってんのか?」
質問の意図する所をベルメアが「どういうこと?」と訊く。
「ミゼルの話をまんま信じるとすれば、あの新種のオニを倒したのはルダだ。あのオニはどう見ても雑魚じゃねぇ、それを倒したってんなら、相当な実力者ってことだ。カイネの戦士と組み手した時もあいつの強さは全員が注目してた」
日々鍛錬に明け暮れる強者なら手合わせして相手の力量をある程度は測れる。戦士としての見極めにより、ジェイクも含め全員がルダの底知れぬ強さを理解していた。
「俺の見立てだと、あいつが本気だせば、カイネもヌブルも潰せる。俺等がいたらカムラで負けると踏んでるだろうが、業魔を封印した後ならすぐにでも全滅を実行出来ただろうな」
「じゃあ、なんでしなかったの?」
ラドーリオの質問にミゼルは口を開いた。
「奴なりの作戦がある。と見るのが妥当だろうな」
しかし一呼吸の間を置いて口にする、「だが腑に落ちない」の言葉がジェイクは気になった。
「標の鍵を手に入れた経緯か?」
ジェイクがルダの正体を知ってから気になったのはそれである。
全容は不明だが、ヌブル族と交渉して地下迷宮へ入り、標の鍵を入手して迷宮を出た。運良くジェイクと会った為、一緒に行動する運びとなったが。
「それもある」
返したミゼルは別の点が気になった。
「ルダの立ち回りだ。あのガーディアン、新種のオニ、融合したオニ、業魔。全てが命の危険にさらされる戦場だ。ルダ本人は本気を出さずに立ち回っているが、一歩読み違えれば重傷か死に至る程だ。そして私の目を気にしていた節が見える」
「なんでお前を?」
「恐らくは読まれると思ったのだろう。本領を発揮すれば呪いが使えることや」この情報はムイ達から聞いている。「自らが進めている計画をな。幾度も逃げる隙はあったのだが、どうもニルドを離れようとしなかった様子だった。あくまで仮説だが、ニルドの地に目当ての力があるか、ミングゼイスの石板か」
「それって、ルバート達と遺跡で見たやつ?」
ゲダの遺跡で文字が浮かんだ石板をラドーリオは思い出した。
「ああ。ノドム殿やボダイ殿から聞いている。ニルドの城にはミングゼイスの石板を保管していると」
ミングゼイスの石板の情報をジェイクは曖昧にしか覚えていない。
「その石板、色んな情報があって、出回ってる術とか食料の情報とか書いてるんだったよなぁ。なんでそれを?」
「ニルドにある石板の情報量はもっと深く重要なものだからだ。世界を揺るがす予言や、我々ガーディアンが転生した時期まで記されているとある。公にでもなれば争奪戦は免れず、明確な災害の未来を知れば、悪用して金儲けも考えられる」
それほど重要な石板をニルドが抱えている。
邪推を巡らせるなら、ニルドは必要な情報を元に強力な武器を作る事も、他国を脅す事も出来る。しかしリブリオスは情報の殆どを閉鎖しているとされる国。ニルドがミングゼイスの石板を抱えている情報すら、今だ一部の者しか知らないものだ。
ニルドにも石板の内容を秘密にする事情がある。
「けどよぉ、もし事情ありきなら、業魔の話になる前に抜け出せたんじゃねぇのか?」
「私でもそうする。そもそも標の鍵を入手したなら、さっさとお前と離れ、こっそりとニルド内を動き回れたのだよ」
それでもルダが動かず、流れに身を任せて業魔封印までいた理由。
ベルメアは意見した。
「あんた達に目を付けた、とか?」
「なんでだよ。ガーディアンだからか?」
ジェイクは返すも、ミゼルは深く考え込む。
「確かに俺等は変わってるだろうけど、制限ありのカムラ使って大技出すぐらいで、後はその辺の戦士や術師みたいなもんだろ。むしろ、力量でいえばカイネの戦士が上だ。目ぇ付けるならそっちだろ」
「いや、そうじゃないな」
ミゼルの考えは単純な戦力も踏まえ、神力にあると見た。
「我々はカムラを強力な武器、破壊に特化した力と見ている。実際、使用すればそうなるからな」
「他にも使いどころがあるってことか?」
「ああ、何かを破壊するという点で考えても、純粋な力では無い。この世界に既存する力でも無い。神の力、伝説に記される神話の戦士の力。神力。それを利用しようと想定したならどうだろうか」
「可能性は高いわね」ベルメアが答える。「神力で何をしたいかはまだ分からないけど、ルダが二人を利用、もしくは頼ろうとしていたなら、ずっといた理由になるわ。さっきは二人って言ったけど、必要としたのはジェイクかも」
「はあ?! 俺?」
「だって、ミゼルだったら小難しく考えた説明とか、悪巧みしててもしつこく追い回してきそうじゃない」
「ははは、褒められているのやらいないのやら」
「そりゃ、俺の台詞だ。つまり、俺が単純ってことか?」
「いや、頼りやすい、というのがルダの本心かもしれんな」
「どういうこった。ベルの話だと、どう考えても馬鹿が使いやすいって聞こえるぜ」
「ルダがただ目当てのモノを求めているならそうだろう。しかし、お前達との暮らしぶりを見るからに、あの男は有用な者を使い捨てにするとは見えんのだ。気質は魔力にも表われるからな」
ルダについての考察を広げるも、結局は謎が残るばかり。
早くニルドへ戻りたい意思だけが強まり終わる。
明朝、目を覚ましたミゼルは、傍らに置かれている手紙を見つけた。
『ミゼル様、お一人でご覧ください』
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