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二章 三国の動き
Ⅵ 仲間に
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ジェイクがラガロへ向かう二十日前。
ゼルドリアスの拠点基地(生物全てが神隠しにでもあったような、損壊の少ない廃村)にてトウマ、ジール、シャール、ラディア、クライブは二階建ての家を利用している。基地到着から五日間、リブリオスが先に調べた遺跡や廃村、廃城などを調べていた。
「ったくよ、残り物ばっか見て回っても、貴重な情報とか回収された後だろ」
ジールが愚痴るも、トウマとクライブも同意見であった。
「仕方ねぇさ。そういうお国柄ってな。もしかしたらおこぼれがあるかもだぜ」
遊び半分といった雰囲気でタダルは告げた。
調査は二手に分かれて行われる。
こちらはジール、トウマ、クライブ、タダル。もう一方はシャール、ラディア、イム、ヒオである。
トウマ達が遺跡や廃村で何かを見つけても、それがどれ程重要なのかがよく分からない。見た目で重要と思えば持ち帰るぐらいの心構えでしかなかった。
遺跡を歩き回って二時間後、一同は円柱に囲まれた広場で昼食をとった。
「なんっか、さぁ。……思ってたより普通すぎじゃねぇか? バースルでもありそうじゃん」
ジールは寝転がって文句を言う。
クライブは食べかけの携帯食を完食した。
「まあそうだよな。この世界のこととかあんまり知らないけど、俺の世界でもよくあるような風景だ。リブリオスとはちょっと違う感じ。だよなぁ?」
話をタダルに振った。
「リブリオスはミジュナの影響で地震が多いせいだろ」
「……ミジュナ?」ジールが返した。
「ああ、そちらさんはゾグマだったな。けど大精霊ってのに仕えてる巫女とかはミジュナって言ってるけどな」
「どう違うんだ?」
「中身は……まあ、殆ど一緒だとか。俺の知る限りじゃ、風習やらの違いで呼び名が変わったとか。祖先の誰かがミルシェビスに行ってミジュナって言葉を広めたとかな」
クライブの守護神リュアとビィトラは暢気に浮遊している。
不意に何か気になったビィトラが訊いた。
「なんでミジュナの影響で地震? ゾグマと一緒だったらそうはならないんじゃないの?」
「そっちじゃ自然の魔力が多くてゾグマが少ないんだろ? リブリオスは逆でな。つー訳で魔獣も凶暴だったり巨大だったりが多いのよ」
オニの容姿を聞いていたので、トウマはミジュナが原因で魔獣もそのように変わると考えた。しかしもう一つ気になることはあった。それはリブリオス側の衣服である。中国、韓国の宮廷ものを題材にしたドラマで登場する庶民の服装に近い。タダルの説明にあった地震が多いからというなら、建築物は耐震構造なのかと思える。
「やっぱりシャールさんいた方が良いんじゃないかな」
トウマの意見はビィトラとトトラスが即答で同意し、ジールとクライブが続く。
分担で遺跡などを調査するほうが効率的と話合いはなされたが、結果は良い方へ傾かなかった。さらにトウマ達が調べている廃村は、まさしく何もないような所だ。
タダルは考える素振りをみせ、何かを思いついた。
「じゃあ、明日はみんなで行きます? 丁度、だだっ広いだけの遺跡地帯があるんっすけど」
今いるメンバーのみで赴いたとて何も役に立たないと三人は思う。しかし断ったところで今日みたいな事を繰り返すだけで時間の無駄だ。
三人は、全員揃ってその遺跡地帯へ向かうと意見した。
翌日。日が出る前からタダル、イム、ヒオに案内され、一同は遺跡地帯へと訪れた。
「……壁?」
呆然と眺めたラディアが口にする。そう思わせるほどの巨大な岩板が聳えていた。地面に突き刺さっているのか、地面から飛び出しているのかはわからない。
広い荒野と思われる大地だが、よく見ると巨大岩板を囲うように、杭の一部が壊れて残った木柵跡や煉瓦の一部が点在している。
シャールが早速岩板を回るように動いた。その間、上も下も眺め、ひび割れも汚れも意味があるものか、単に時間が経ってのものかを考えた。
ジールが石板を撫でるも、なんの変化もない。
「極々ふっつうぅの岩だ。ただデカいってだけで」
ビィトラは石板の天辺まで飛び、板の厚みを確認した。大樹ほどの幅がある以外、何も無かった。
「これに魔力でも流せってことか?」
言いつつクライブが石板に魔力を籠めた手で触れると、湖に石を投げ入れたような波紋が広がった。それは魔力の波紋であった。
「え?!」
咄嗟に手を石板から離した。
「おい! 何があった!?」
シャールが急いで戻ってきた。
「いや、クライブさんが魔力を籠めた手で触れたら魔力の波紋が」
ジールの説明でシャールは考えた。
(もしリブリオスの連中が調べるってなったら、魔力や気功を流して反応を見るのは当然だ。……やりそびれた? いや、前の遺跡も重要なもんは全部回収する程入念な連中だ。しないわけがない。じゃあどうして?)
シャールは自分も魔力を籠めた手で石板に触れた。しかし反応は無く、次に気功を実行するも、やはり反応はない。
岩板を調べる五人から離れた所で、タダルはヒオとイムに目で合図した。すると五人に見えないように手で印を結びだした。
「そうか、ガーディアン!」
シャールはガーディアンの神力に反応したと解釈した。
クライブは神力を籠めてないと意見するが、それは元から潜めている神力に反応したのだろうと仮説が立った。
今度はトウマ、クライブ、ラディアの三人が並んで魔力を籠めた手で触れた。すると、三カ所から波紋が広がる。
この変化はクライブ一人の時とは違い、石板の端まで広がった波紋は折り返して来る。
次第に石板に文字が現われた。
「……すっげぇ」
「なんだこれ?」
ジールとクライブは声を出して驚いた。
シャールは冷静に現われた文章を追った。その最中、石板を囲むように白い魔力の壁が発生し、それが結界だと気づいた時には五人と石板は囲まれてしまった。
「いやぁ、すいませんねぇ皆さん」
その口ぶり、様子から、結界を張った人物がタダルと判明するが、後ろの二人に驚きはなく、”三人の結界”と意見が改められた。
敵意は感じないが、何かをされると直感し、シャール以外の四人は各々武器に手をかけた。
「みんな落ち着け」
シャールが制止する。
「シャール、これって危険じゃないの?」ビィトラが、「警戒したほうが良いだろ」トトラスが、シャールの傍らで告げた。
「こいつらの目当ては俺等をどうこうしようってんじゃねぇ。そうだろ、タダル」
「ははは。さすが考古学の賢師様だ。異国の方だが冷静で助かりますよ。でなけりゃ、交渉どころじゃなくなるからさぁ」
言いつつシャール以外の四人へ目を向けた。
タダルの前に立ち、イムが口を開いた。
「その様子では、手紙に気づいてくれましたか?」
それは昨晩、イムからシャール宛てに送られた手紙。
『明日向かう遺跡で結界が発生しても落ち着いてください』と綴られ、最後に『気づかれないよう、秘密で』と加えられていた。
「なんでこんな事すんだよ」ジールが訊いた。
「それは、この石板の変化を悟られない為です」
まだ意味が分からない四人へ、シャールが説明した。
「この石板の変化を他のリブリオス連中に気づかせない為の結界」
続きを言おうとしたが、咄嗟に言葉を止めた。これより先の事を見抜いて。
腑に落ちないラディアが訊いた。
「無理があるんじゃないか? 石板の変化は偶然あたし達が触れたから起きたものだろ? それに、他のリブリオス連中が誰一人この手段に気づかないなんてあるか?」
「それをこいつらは理解してたんだろ。ガーディアンなら変化が起きるって」
言葉を絞る。必要以上に情報を口にしない為に、大した事のない情報を考え。
「リブリオスは呪術が定番みたいな国だろ? 俺も詳しくは知らねぇが、その呪術を使って他の連中の気を逸らせたんだろうさ」
ヒオとイムは息を吐いて驚く。
タダルは手を叩いて笑顔になる。
「ははは。バルブラインからの使者にあんたが居て助かったよ。これなら話が早い。察しの通り、この石板はガーディアンの力に反応するって仮説はあった。そんで、他の連中には気が逸れる呪術をちょこちょこっとね」
「悪戯なら勘弁してほしいか、そっちの二人の性格じゃそういうのはしないと見てる。訳ありだろうな」
「俺が悪戯しそうってのは心外だけど」
(いや、するだろ)
(お前ならやるぞ)
ヒオとイムの内心の言葉は口に出さず終わる。
「そこまで察してるなら有り難い」
タダルもシャールが先を読んでいると気づく。その上でこの質問を投げかけた。
「あんさんらには俺達の仲間になってほしいのさ」
「断ればここで殺すってか?」
イムが再び発言権を得る。
「そちらの力量を侮ってはおりません。どちらか一方が、勝ったとしても治るか分からない重傷を得るだけです」
その言動から、五対三でも対応出来る実力を備えていると判断出来る。
「この場ですぐに決めてほしいのです。でなければこのような機会は二度と巡ってこないから」
間にラディアが立った。
「まさか、ミングゼイスの石板ってやつ絡みか?」
「ミングゼイスの石板?」トウマが訊いた。
「リブリオスにはミングゼイスの石板っていう預言書みたいなのがあるんだ。それをめっぽう強い人間組織が管理してて、カミツキ側が敵対してて石板を狙ってるとか」
「どんな形であれ盗みに加担は御免だぜ。手ぇ貸して良いことなんてあった試しがないからな」クライブは生前の事を思い出す。
「少々誤解があります。人間側、カミツキ側、などという大雑把な種族間争いではないのです。それに我々の目的はミングゼイスの石板ではなく、災害の阻止です」
話が見えない。災害を阻止するだけならイム達の組織で避難行動や備えをすればいいものを。
「とりあえず、詳しい話を聞いて、それからにしませんか?」
トウマが皆に提案すると、タダルが「ゆっくり出来ねぇんだな」と口を挟む。
「早い話が、この結界張った時点でもうすぐしたら連中に気づかれる怖れがあってな。悠長にしてらんねぇのよ。癪だろうけど、あんたらには今すぐ決めて貰いたい。嫌ならここでお別れ、次会う時は敵同士だろうけどな」
情報量が少ない中の嫌な選択。
数秒考えたシャールが口を開いた。
ゼルドリアスの拠点基地(生物全てが神隠しにでもあったような、損壊の少ない廃村)にてトウマ、ジール、シャール、ラディア、クライブは二階建ての家を利用している。基地到着から五日間、リブリオスが先に調べた遺跡や廃村、廃城などを調べていた。
「ったくよ、残り物ばっか見て回っても、貴重な情報とか回収された後だろ」
ジールが愚痴るも、トウマとクライブも同意見であった。
「仕方ねぇさ。そういうお国柄ってな。もしかしたらおこぼれがあるかもだぜ」
遊び半分といった雰囲気でタダルは告げた。
調査は二手に分かれて行われる。
こちらはジール、トウマ、クライブ、タダル。もう一方はシャール、ラディア、イム、ヒオである。
トウマ達が遺跡や廃村で何かを見つけても、それがどれ程重要なのかがよく分からない。見た目で重要と思えば持ち帰るぐらいの心構えでしかなかった。
遺跡を歩き回って二時間後、一同は円柱に囲まれた広場で昼食をとった。
「なんっか、さぁ。……思ってたより普通すぎじゃねぇか? バースルでもありそうじゃん」
ジールは寝転がって文句を言う。
クライブは食べかけの携帯食を完食した。
「まあそうだよな。この世界のこととかあんまり知らないけど、俺の世界でもよくあるような風景だ。リブリオスとはちょっと違う感じ。だよなぁ?」
話をタダルに振った。
「リブリオスはミジュナの影響で地震が多いせいだろ」
「……ミジュナ?」ジールが返した。
「ああ、そちらさんはゾグマだったな。けど大精霊ってのに仕えてる巫女とかはミジュナって言ってるけどな」
「どう違うんだ?」
「中身は……まあ、殆ど一緒だとか。俺の知る限りじゃ、風習やらの違いで呼び名が変わったとか。祖先の誰かがミルシェビスに行ってミジュナって言葉を広めたとかな」
クライブの守護神リュアとビィトラは暢気に浮遊している。
不意に何か気になったビィトラが訊いた。
「なんでミジュナの影響で地震? ゾグマと一緒だったらそうはならないんじゃないの?」
「そっちじゃ自然の魔力が多くてゾグマが少ないんだろ? リブリオスは逆でな。つー訳で魔獣も凶暴だったり巨大だったりが多いのよ」
オニの容姿を聞いていたので、トウマはミジュナが原因で魔獣もそのように変わると考えた。しかしもう一つ気になることはあった。それはリブリオス側の衣服である。中国、韓国の宮廷ものを題材にしたドラマで登場する庶民の服装に近い。タダルの説明にあった地震が多いからというなら、建築物は耐震構造なのかと思える。
「やっぱりシャールさんいた方が良いんじゃないかな」
トウマの意見はビィトラとトトラスが即答で同意し、ジールとクライブが続く。
分担で遺跡などを調査するほうが効率的と話合いはなされたが、結果は良い方へ傾かなかった。さらにトウマ達が調べている廃村は、まさしく何もないような所だ。
タダルは考える素振りをみせ、何かを思いついた。
「じゃあ、明日はみんなで行きます? 丁度、だだっ広いだけの遺跡地帯があるんっすけど」
今いるメンバーのみで赴いたとて何も役に立たないと三人は思う。しかし断ったところで今日みたいな事を繰り返すだけで時間の無駄だ。
三人は、全員揃ってその遺跡地帯へ向かうと意見した。
翌日。日が出る前からタダル、イム、ヒオに案内され、一同は遺跡地帯へと訪れた。
「……壁?」
呆然と眺めたラディアが口にする。そう思わせるほどの巨大な岩板が聳えていた。地面に突き刺さっているのか、地面から飛び出しているのかはわからない。
広い荒野と思われる大地だが、よく見ると巨大岩板を囲うように、杭の一部が壊れて残った木柵跡や煉瓦の一部が点在している。
シャールが早速岩板を回るように動いた。その間、上も下も眺め、ひび割れも汚れも意味があるものか、単に時間が経ってのものかを考えた。
ジールが石板を撫でるも、なんの変化もない。
「極々ふっつうぅの岩だ。ただデカいってだけで」
ビィトラは石板の天辺まで飛び、板の厚みを確認した。大樹ほどの幅がある以外、何も無かった。
「これに魔力でも流せってことか?」
言いつつクライブが石板に魔力を籠めた手で触れると、湖に石を投げ入れたような波紋が広がった。それは魔力の波紋であった。
「え?!」
咄嗟に手を石板から離した。
「おい! 何があった!?」
シャールが急いで戻ってきた。
「いや、クライブさんが魔力を籠めた手で触れたら魔力の波紋が」
ジールの説明でシャールは考えた。
(もしリブリオスの連中が調べるってなったら、魔力や気功を流して反応を見るのは当然だ。……やりそびれた? いや、前の遺跡も重要なもんは全部回収する程入念な連中だ。しないわけがない。じゃあどうして?)
シャールは自分も魔力を籠めた手で石板に触れた。しかし反応は無く、次に気功を実行するも、やはり反応はない。
岩板を調べる五人から離れた所で、タダルはヒオとイムに目で合図した。すると五人に見えないように手で印を結びだした。
「そうか、ガーディアン!」
シャールはガーディアンの神力に反応したと解釈した。
クライブは神力を籠めてないと意見するが、それは元から潜めている神力に反応したのだろうと仮説が立った。
今度はトウマ、クライブ、ラディアの三人が並んで魔力を籠めた手で触れた。すると、三カ所から波紋が広がる。
この変化はクライブ一人の時とは違い、石板の端まで広がった波紋は折り返して来る。
次第に石板に文字が現われた。
「……すっげぇ」
「なんだこれ?」
ジールとクライブは声を出して驚いた。
シャールは冷静に現われた文章を追った。その最中、石板を囲むように白い魔力の壁が発生し、それが結界だと気づいた時には五人と石板は囲まれてしまった。
「いやぁ、すいませんねぇ皆さん」
その口ぶり、様子から、結界を張った人物がタダルと判明するが、後ろの二人に驚きはなく、”三人の結界”と意見が改められた。
敵意は感じないが、何かをされると直感し、シャール以外の四人は各々武器に手をかけた。
「みんな落ち着け」
シャールが制止する。
「シャール、これって危険じゃないの?」ビィトラが、「警戒したほうが良いだろ」トトラスが、シャールの傍らで告げた。
「こいつらの目当ては俺等をどうこうしようってんじゃねぇ。そうだろ、タダル」
「ははは。さすが考古学の賢師様だ。異国の方だが冷静で助かりますよ。でなけりゃ、交渉どころじゃなくなるからさぁ」
言いつつシャール以外の四人へ目を向けた。
タダルの前に立ち、イムが口を開いた。
「その様子では、手紙に気づいてくれましたか?」
それは昨晩、イムからシャール宛てに送られた手紙。
『明日向かう遺跡で結界が発生しても落ち着いてください』と綴られ、最後に『気づかれないよう、秘密で』と加えられていた。
「なんでこんな事すんだよ」ジールが訊いた。
「それは、この石板の変化を悟られない為です」
まだ意味が分からない四人へ、シャールが説明した。
「この石板の変化を他のリブリオス連中に気づかせない為の結界」
続きを言おうとしたが、咄嗟に言葉を止めた。これより先の事を見抜いて。
腑に落ちないラディアが訊いた。
「無理があるんじゃないか? 石板の変化は偶然あたし達が触れたから起きたものだろ? それに、他のリブリオス連中が誰一人この手段に気づかないなんてあるか?」
「それをこいつらは理解してたんだろ。ガーディアンなら変化が起きるって」
言葉を絞る。必要以上に情報を口にしない為に、大した事のない情報を考え。
「リブリオスは呪術が定番みたいな国だろ? 俺も詳しくは知らねぇが、その呪術を使って他の連中の気を逸らせたんだろうさ」
ヒオとイムは息を吐いて驚く。
タダルは手を叩いて笑顔になる。
「ははは。バルブラインからの使者にあんたが居て助かったよ。これなら話が早い。察しの通り、この石板はガーディアンの力に反応するって仮説はあった。そんで、他の連中には気が逸れる呪術をちょこちょこっとね」
「悪戯なら勘弁してほしいか、そっちの二人の性格じゃそういうのはしないと見てる。訳ありだろうな」
「俺が悪戯しそうってのは心外だけど」
(いや、するだろ)
(お前ならやるぞ)
ヒオとイムの内心の言葉は口に出さず終わる。
「そこまで察してるなら有り難い」
タダルもシャールが先を読んでいると気づく。その上でこの質問を投げかけた。
「あんさんらには俺達の仲間になってほしいのさ」
「断ればここで殺すってか?」
イムが再び発言権を得る。
「そちらの力量を侮ってはおりません。どちらか一方が、勝ったとしても治るか分からない重傷を得るだけです」
その言動から、五対三でも対応出来る実力を備えていると判断出来る。
「この場ですぐに決めてほしいのです。でなければこのような機会は二度と巡ってこないから」
間にラディアが立った。
「まさか、ミングゼイスの石板ってやつ絡みか?」
「ミングゼイスの石板?」トウマが訊いた。
「リブリオスにはミングゼイスの石板っていう預言書みたいなのがあるんだ。それをめっぽう強い人間組織が管理してて、カミツキ側が敵対してて石板を狙ってるとか」
「どんな形であれ盗みに加担は御免だぜ。手ぇ貸して良いことなんてあった試しがないからな」クライブは生前の事を思い出す。
「少々誤解があります。人間側、カミツキ側、などという大雑把な種族間争いではないのです。それに我々の目的はミングゼイスの石板ではなく、災害の阻止です」
話が見えない。災害を阻止するだけならイム達の組織で避難行動や備えをすればいいものを。
「とりあえず、詳しい話を聞いて、それからにしませんか?」
トウマが皆に提案すると、タダルが「ゆっくり出来ねぇんだな」と口を挟む。
「早い話が、この結界張った時点でもうすぐしたら連中に気づかれる怖れがあってな。悠長にしてらんねぇのよ。癪だろうけど、あんたらには今すぐ決めて貰いたい。嫌ならここでお別れ、次会う時は敵同士だろうけどな」
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数秒考えたシャールが口を開いた。
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