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一章 ギネドを崩すもの
Ⅸ リブリオスへ
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グルザイアへ向かう船の一室で、バッシュは小窓を開けて湖を眺めていた。
「もう少し高い船を選べば良かったのでは? 窓も大きく快適でしょ」
(贅沢は敵ですよ。それにそういった船は騒がしすぎて肌に合いません。二度目の人生であってもこの体質は変わらなかったようです)
部屋の外で聞かれないために念話を利用している。
やや小さい船であるため、甲板へ出ようものなら作業の邪魔になる。こういった小型船は物資を運ぶのに最適とされ、人を運ぶ際にはやや窮屈を条件に提示される。
(とはいえ、これはこれで良い経験です。この世界では航行する船の種類が豊富です。人か物資、もしくは両方と、その辺は変わりませんが、国の法により在り方を変えていく。それが入港した先でコロコロと変わるのですから見ていて飽きません。それに、船員の中には術師も兼用している人がいます。このような水上では扱いに苦しい術も、あの手この手で手段を変えて活用しているのですから見ていて楽しいではないですか)
「おそらくガーディアンでその意見に賛同して語り合えるのは、ミゼル=ウォードくらいでしょうね」
返答は微笑んで返された。
「それより本当に帰還して良かったのですか? 貴方ならリブリオスの呪いには興味を抱きそうなものを。ゾアも言っていたでしょう、貴方なら謎を解明出来ると」
(場の雰囲気に飲まれて動くような者は本当に得たい情報を得られませんよ。一度距離を置き、俯瞰して物事を見定める。気持ちが昂ぶった時ほど冷静に、と、前世において遙か昔、師から教わりました)
「人間の一生において、遙か昔って言葉は適してますか?」
(心情の表現です。戻りたくはないですしね。ですが今は活きています。リブリオスは入国出来る区間などその辺の田舎町と遜色ないでしょう。本当に必要な所は厳重ですし、ガーディアンとて余所者の私に易々と心開くとは思えません。別の手段でも使わない限りは)
「術で惑わすとか強行突破などですか?」
(それもあるでしょうが違います。ああもお堅い国には綻びがある程度存在します。誰も彼もが決まりを守り通すなどあり得ませんからね。おそらくはリブリオスの大元の法律などに反発する、不届き者扱いされる者達。そういった方々の協力を得られる前提でしたら、少しは考えても良かったかもしれません)
「それこそ冷静に見定めるべきでは? 大国へ喧嘩を売るようなものですよ。いくら貴方が術に長け、カムラも扱え、烙印を駆使できようと、多勢相手はさすがに死にます」
(真っ向から挑む気や戦争する気などありませんよ。そうではなく、そういった輩を相手にするほうが私としては動きやすいというだけです)
規則や行動範囲に制限がかかっているグルザイアを例にあげても、バッシュには規則などが緩い組織の中にいるほうが動きやすそうだとレモーラスは思い、「確かに」と呟いた。
「では、ゼルドリアスへはどうして行かなかったのですか?」
(私の食指が動く未知の環境ではあれ、今まで謎とされた環境が解放されたのです。当然各国か、隣接するバルブラインやリブリオスの方々が黙ってないでしょう。魔力壁が消えた序盤でしたらすぐにでも向かうでしょうが、既に時間が経ちすぎている。恐らくはリブリオス辺りがしきっているかもしれませんね)
「不届き者組織とやらに会える好機では?」
返事は軽く左手を振られた。
(賭け事との相性は最悪です。貧乏くじを引く自信だけは抜群ですが)
再びレモーラスはグルザイアでの事を思い出す。
肩身は狭いかもしれないが、そこそこ必要な知識は得られ、書物を執筆出来る余裕もあり、衣食住に困らない。度々連れ出される遠征でも、興味を抱くミゼルに会え、ガイネスとの相性も良さそうに見える。バッシュが嘆くほどの貧乏くじではなさそうに感じた。
大湖を眺めるバッシュを、レモーラスは遠い目で見た。
「……贅沢が過ぎると罰が当たりますよ」
(何が贅沢なのでしょう?)
気を取り直して話題を変えた。
「これからグルザイアにこもりっきりですか?」
(どうでしょうねぇ。世情は一気に激変すると思いますよ。ああも色々起きてるのですから他国でもそうなるでしょうし。暫し休息の暇ぐらいはあるでしょう)
「無茶だけは控えてください。探究心の赴くままに向かって窮地へ至るなど」
(見極めは慣れてますし、前世での失態は踏みませんよ。信用してください)
昼過ぎ、バッシュを乗せた船は突如として姿を消した。その事態が判明したのは翌日。
到着すると思われた船が一向に姿を見せないので捜索船が数隻出されるも、足取りは掴めなかった。難破、術を扱う連中の襲撃などを想定されたが、航路には魔力の乱れが一つもなかった。
まさに神隠しにでも遭ったような異常事態。しかし、遠景から緑色の霧か靄のようなものを見たと証言はあった。とはいえ消息は掴めないままである。
数日後、バッシュを乗せた船はリブリオスの大海側の沖で発見され、乗船者達は国内へ連行されていった。
◇◇◇◇◇
ゼルドリアスの港でバーレミシアと別れたサラは、町で魔力壁に覆われていた所の情報を集めに動いた。
気がかりなのは、不自然なまでに男手が少なく、子供、女性、老人が目立つ。
情報収集の合間に、売店の老爺に町の不自然を聞いた。
「動ける男連中はリブリオスの奴らに連れてかれたよ」
理由は魔力壁(があった)内部を調べる為である。長期の出張ではあるが報酬が良いので仕方ない。
「ゼルドリアスの中って、リブリオスの兵隊とかがいるってことですか?」
「いるにはいるだろうけど、見張りが目立って中はそうでもないんじゃないか? 考古学の学者や術師の御偉方とかがこの町に来た時に愚痴ってたよ。広すぎるって」
「広すぎ?」
「ああ。未開の地だけど人が居ないからな。大軍で向かっても、だだっ広い無人の大地に向かうようなもんだからだろ。食糧が保たん。少人数で行って調べてるってワシは読んでるぞ」
強気な表情で老爺は語る。今まで集めた情報からでも、その推理が正しいと思われる。
「あの……他の国の人とかって調査に向かってないんですか?」
老爺は言おうかどうか迷い、店の傍に椅子を置いて指さし、座るように黙って合図した。
サラが座ると耳元に顔を近づけた。
「ここだけの話だぞ」
頷いて返すと老爺は続けた。
「バースルって知ってるか? 境界の三国の」
真っ先にバゼルの顔が思い出され、サラは「うん」と返す。
「そこの戦士とバルブラインの連中が調査に向かったけど、なんか面倒な騒動に巻き込まれたとか。途中でリブリオスの連中に何人か連れ去られたって話だ」
どこまで大ごとかは分からないが、老爺は続ける。
「噂では酷い拷問にあってるそうだぞ」
血生臭い内容になってきている。所詮は噂、信じるかどうか迷うもサラは驚いて反応する。
老爺はここぞとばかりに次の情報を語る。
「その中にガーディアンの人もいたって話だ」
それが何処のガーディアンか分からない。
バルブラインとバースル。浮かんだのはジェイクとミゼルとトウマであった。
居ても立っても居られないとサラは調査へ向かおうとするも、老爺に止められる。下手に動けば何をされるか分かったもんじゃないからだ。
「ゼルドリアスは諦めな。それと、リブリオスで不審な動きしてたら何されるか分からねぇって話だ」
打つ手なし。何も出来ないと悟ったサラは諦めて宿を探すことにした。宿を老爺に聞いて向かった。ランディス達と合流して町の復興とリブリオスへ向かう手段を考えようと決めた。
深夜、サラが眠りに落ちる最中、カレリナに呼ばれて目を覚ます。
「まだ……よるぅぅ……」
「気をつけて、誰か外にいる」
小さくノックする音がする。
慎重に扉を警戒し、カレリナとどうするか話し合うと、扉の下から一枚の紙が入れられた。
“ゼルドリアスの件で話があります”
文章を確認すると、外にいる者の魔力を感じる。悪意も敵意も嘘偽りもない静かなものだった。
そっと扉を開くと、ボロい外套を纏う女性がいた。
頭を下げて招き入れると女性はフードを外した。その頭には小さな角が生えていた。
「夜分失礼します。昼間の話を耳にして」
何かされるとサラは警戒する。
「安心してください。今日はただ話を聞いて欲しいだけで」
「話?」
「昼間、老人との話であった連れて行かれた人達のこと、どこでどうしているか話します。だから、私達を手伝ってくれませんか?」
「急に手伝えって言われても。内容によります。それに、貴女はだれですか?」
紹介が遅れ、女性は姿勢を正した。
「私はキュラと言います。リブリオスの、カミツキと呼ばれる種族です。角があるのはその証拠です」
角への反応になれているのだろう。聞かなくても教えてくれる。
「わ、私はサラです」
「ガーディアン様ですよね。その傍らの女性が」
守護神が見えている。理由は分からないが、後に回してカレリナを紹介した。
「返答はすぐでなくても良いです。リブリオスでとんでもない事が起きようとしています。私達はそれを阻止したいから、協力者を増やしてます」
「ちょっと待って。何が起きるの?」
キュラから語られた内容に、サラは言葉を失う。同時に、テンシの姿がよぎった。
サラは返答を翌日に持ち越した。
キュラから語られた内容は、確実にリブリオス内部へ入れるものである。しかも入国困難な三国の一つに。
当初の目的からは大幅な変更となったが、これを逃せばリブリオスへは入れないかもしれない。連行された中にトウマかジェイクがいたら助ける事が出来ない。
翌、昼過ぎ。
町の人気がない建物の影にサラは訪れた。すでにキュラが待っていた。
「一つお願いがあります」
サラはキュラに要求する。事情を聞いたキュラは、「バルブラインか……」と呟いて悩むも、背に腹はかえられないのだろう「大丈夫よ」と返す。
条件を飲んだことで協力関係が結ばれ、サラはキュラの仲間がいる所へと向かった。
前途を示す兆しなのか。空には曇天が漂っていた。
「もう少し高い船を選べば良かったのでは? 窓も大きく快適でしょ」
(贅沢は敵ですよ。それにそういった船は騒がしすぎて肌に合いません。二度目の人生であってもこの体質は変わらなかったようです)
部屋の外で聞かれないために念話を利用している。
やや小さい船であるため、甲板へ出ようものなら作業の邪魔になる。こういった小型船は物資を運ぶのに最適とされ、人を運ぶ際にはやや窮屈を条件に提示される。
(とはいえ、これはこれで良い経験です。この世界では航行する船の種類が豊富です。人か物資、もしくは両方と、その辺は変わりませんが、国の法により在り方を変えていく。それが入港した先でコロコロと変わるのですから見ていて飽きません。それに、船員の中には術師も兼用している人がいます。このような水上では扱いに苦しい術も、あの手この手で手段を変えて活用しているのですから見ていて楽しいではないですか)
「おそらくガーディアンでその意見に賛同して語り合えるのは、ミゼル=ウォードくらいでしょうね」
返答は微笑んで返された。
「それより本当に帰還して良かったのですか? 貴方ならリブリオスの呪いには興味を抱きそうなものを。ゾアも言っていたでしょう、貴方なら謎を解明出来ると」
(場の雰囲気に飲まれて動くような者は本当に得たい情報を得られませんよ。一度距離を置き、俯瞰して物事を見定める。気持ちが昂ぶった時ほど冷静に、と、前世において遙か昔、師から教わりました)
「人間の一生において、遙か昔って言葉は適してますか?」
(心情の表現です。戻りたくはないですしね。ですが今は活きています。リブリオスは入国出来る区間などその辺の田舎町と遜色ないでしょう。本当に必要な所は厳重ですし、ガーディアンとて余所者の私に易々と心開くとは思えません。別の手段でも使わない限りは)
「術で惑わすとか強行突破などですか?」
(それもあるでしょうが違います。ああもお堅い国には綻びがある程度存在します。誰も彼もが決まりを守り通すなどあり得ませんからね。おそらくはリブリオスの大元の法律などに反発する、不届き者扱いされる者達。そういった方々の協力を得られる前提でしたら、少しは考えても良かったかもしれません)
「それこそ冷静に見定めるべきでは? 大国へ喧嘩を売るようなものですよ。いくら貴方が術に長け、カムラも扱え、烙印を駆使できようと、多勢相手はさすがに死にます」
(真っ向から挑む気や戦争する気などありませんよ。そうではなく、そういった輩を相手にするほうが私としては動きやすいというだけです)
規則や行動範囲に制限がかかっているグルザイアを例にあげても、バッシュには規則などが緩い組織の中にいるほうが動きやすそうだとレモーラスは思い、「確かに」と呟いた。
「では、ゼルドリアスへはどうして行かなかったのですか?」
(私の食指が動く未知の環境ではあれ、今まで謎とされた環境が解放されたのです。当然各国か、隣接するバルブラインやリブリオスの方々が黙ってないでしょう。魔力壁が消えた序盤でしたらすぐにでも向かうでしょうが、既に時間が経ちすぎている。恐らくはリブリオス辺りがしきっているかもしれませんね)
「不届き者組織とやらに会える好機では?」
返事は軽く左手を振られた。
(賭け事との相性は最悪です。貧乏くじを引く自信だけは抜群ですが)
再びレモーラスはグルザイアでの事を思い出す。
肩身は狭いかもしれないが、そこそこ必要な知識は得られ、書物を執筆出来る余裕もあり、衣食住に困らない。度々連れ出される遠征でも、興味を抱くミゼルに会え、ガイネスとの相性も良さそうに見える。バッシュが嘆くほどの貧乏くじではなさそうに感じた。
大湖を眺めるバッシュを、レモーラスは遠い目で見た。
「……贅沢が過ぎると罰が当たりますよ」
(何が贅沢なのでしょう?)
気を取り直して話題を変えた。
「これからグルザイアにこもりっきりですか?」
(どうでしょうねぇ。世情は一気に激変すると思いますよ。ああも色々起きてるのですから他国でもそうなるでしょうし。暫し休息の暇ぐらいはあるでしょう)
「無茶だけは控えてください。探究心の赴くままに向かって窮地へ至るなど」
(見極めは慣れてますし、前世での失態は踏みませんよ。信用してください)
昼過ぎ、バッシュを乗せた船は突如として姿を消した。その事態が判明したのは翌日。
到着すると思われた船が一向に姿を見せないので捜索船が数隻出されるも、足取りは掴めなかった。難破、術を扱う連中の襲撃などを想定されたが、航路には魔力の乱れが一つもなかった。
まさに神隠しにでも遭ったような異常事態。しかし、遠景から緑色の霧か靄のようなものを見たと証言はあった。とはいえ消息は掴めないままである。
数日後、バッシュを乗せた船はリブリオスの大海側の沖で発見され、乗船者達は国内へ連行されていった。
◇◇◇◇◇
ゼルドリアスの港でバーレミシアと別れたサラは、町で魔力壁に覆われていた所の情報を集めに動いた。
気がかりなのは、不自然なまでに男手が少なく、子供、女性、老人が目立つ。
情報収集の合間に、売店の老爺に町の不自然を聞いた。
「動ける男連中はリブリオスの奴らに連れてかれたよ」
理由は魔力壁(があった)内部を調べる為である。長期の出張ではあるが報酬が良いので仕方ない。
「ゼルドリアスの中って、リブリオスの兵隊とかがいるってことですか?」
「いるにはいるだろうけど、見張りが目立って中はそうでもないんじゃないか? 考古学の学者や術師の御偉方とかがこの町に来た時に愚痴ってたよ。広すぎるって」
「広すぎ?」
「ああ。未開の地だけど人が居ないからな。大軍で向かっても、だだっ広い無人の大地に向かうようなもんだからだろ。食糧が保たん。少人数で行って調べてるってワシは読んでるぞ」
強気な表情で老爺は語る。今まで集めた情報からでも、その推理が正しいと思われる。
「あの……他の国の人とかって調査に向かってないんですか?」
老爺は言おうかどうか迷い、店の傍に椅子を置いて指さし、座るように黙って合図した。
サラが座ると耳元に顔を近づけた。
「ここだけの話だぞ」
頷いて返すと老爺は続けた。
「バースルって知ってるか? 境界の三国の」
真っ先にバゼルの顔が思い出され、サラは「うん」と返す。
「そこの戦士とバルブラインの連中が調査に向かったけど、なんか面倒な騒動に巻き込まれたとか。途中でリブリオスの連中に何人か連れ去られたって話だ」
どこまで大ごとかは分からないが、老爺は続ける。
「噂では酷い拷問にあってるそうだぞ」
血生臭い内容になってきている。所詮は噂、信じるかどうか迷うもサラは驚いて反応する。
老爺はここぞとばかりに次の情報を語る。
「その中にガーディアンの人もいたって話だ」
それが何処のガーディアンか分からない。
バルブラインとバースル。浮かんだのはジェイクとミゼルとトウマであった。
居ても立っても居られないとサラは調査へ向かおうとするも、老爺に止められる。下手に動けば何をされるか分かったもんじゃないからだ。
「ゼルドリアスは諦めな。それと、リブリオスで不審な動きしてたら何されるか分からねぇって話だ」
打つ手なし。何も出来ないと悟ったサラは諦めて宿を探すことにした。宿を老爺に聞いて向かった。ランディス達と合流して町の復興とリブリオスへ向かう手段を考えようと決めた。
深夜、サラが眠りに落ちる最中、カレリナに呼ばれて目を覚ます。
「まだ……よるぅぅ……」
「気をつけて、誰か外にいる」
小さくノックする音がする。
慎重に扉を警戒し、カレリナとどうするか話し合うと、扉の下から一枚の紙が入れられた。
“ゼルドリアスの件で話があります”
文章を確認すると、外にいる者の魔力を感じる。悪意も敵意も嘘偽りもない静かなものだった。
そっと扉を開くと、ボロい外套を纏う女性がいた。
頭を下げて招き入れると女性はフードを外した。その頭には小さな角が生えていた。
「夜分失礼します。昼間の話を耳にして」
何かされるとサラは警戒する。
「安心してください。今日はただ話を聞いて欲しいだけで」
「話?」
「昼間、老人との話であった連れて行かれた人達のこと、どこでどうしているか話します。だから、私達を手伝ってくれませんか?」
「急に手伝えって言われても。内容によります。それに、貴女はだれですか?」
紹介が遅れ、女性は姿勢を正した。
「私はキュラと言います。リブリオスの、カミツキと呼ばれる種族です。角があるのはその証拠です」
角への反応になれているのだろう。聞かなくても教えてくれる。
「わ、私はサラです」
「ガーディアン様ですよね。その傍らの女性が」
守護神が見えている。理由は分からないが、後に回してカレリナを紹介した。
「返答はすぐでなくても良いです。リブリオスでとんでもない事が起きようとしています。私達はそれを阻止したいから、協力者を増やしてます」
「ちょっと待って。何が起きるの?」
キュラから語られた内容に、サラは言葉を失う。同時に、テンシの姿がよぎった。
サラは返答を翌日に持ち越した。
キュラから語られた内容は、確実にリブリオス内部へ入れるものである。しかも入国困難な三国の一つに。
当初の目的からは大幅な変更となったが、これを逃せばリブリオスへは入れないかもしれない。連行された中にトウマかジェイクがいたら助ける事が出来ない。
翌、昼過ぎ。
町の人気がない建物の影にサラは訪れた。すでにキュラが待っていた。
「一つお願いがあります」
サラはキュラに要求する。事情を聞いたキュラは、「バルブラインか……」と呟いて悩むも、背に腹はかえられないのだろう「大丈夫よ」と返す。
条件を飲んだことで協力関係が結ばれ、サラはキュラの仲間がいる所へと向かった。
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