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二章 狂禍に触れる未来
Ⅳ 一年半後の未来
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カレリナの呼ぶ声が聞こえてサラは目を開けた。
「……あ、れ? ここは……」
大精霊の森ではない。全く別の、旅の最中によく通った山道。木々は少なく岩石地帯の印象である。
(サラ、聞こえますわよね)
大精霊の念話に反応した。その間、周囲にカレリナがいないことに気づく。
「はい。え、っとぉ……今、どういう状況ですか?」
(これが時渡りよ。今のサラはサラの形をした魔力体。それほど長く滞在はできませんの。因みに本体はこちらにありましてよ。守護神も一緒にね)
(サラ、大丈夫?)
カレリナの声を聞いて安堵する。そして大精霊の言うことが本当ということにも。
「大精霊様、私何をしたらいいの?」
(規模は不明ですけど、あなたの居る場所は時の狂渦が起きる前か後、きっかけがすぐ傍にいる状況よ)
周辺を見回すが誰もいない。とりあえず下山することにした。幸い、麓は近く、町らしき所も見える。
「なんか平和って感じですけど……何が起きるのでしょうか?」
(それは起きてみてからのお楽しみよ。そろそろ声も聞こえなくなるから、がん――)
大精霊の念話が途絶え、カレリナを呼んでも応答はなかった。
時の狂渦という単語から恐ろしい魔獣を想定していたサラは、下山してからも木々の後ろから化け物に襲われると思い警戒し続ける。
突如林の中から草を踏みしめる音が聞こえ、サラは反応する。
ジッと林を見つめ、後退り、逃げる構えでいた。
「ん?」
現われたのは細身の女性。大きめの布袋を背負っている。
「あ、え……」
戸惑うサラを女性はジッと見つめた。
「あんた、変わった娘だな。人じゃない」
警戒しているのか、女性の両手に魔力が籠もるのを見る。
「あ、違います違います! 私、ちょっと事情があってこんな状態なだけで」
それでも女性はいつでも戦えるとばかりに魔力を解かないでいる。
「だったら先に素性を明かしてくれる?」
「あ、っと……サラって言います。ガーディアン……ですけど」
女性は何かに気づいた様子を示すと、「あんたがサラ?」と呟いて警戒を解いた。
「え? 私のこと知ってるんですか?」
「その台詞はこっちのものだけどさ」
サラの表情から何も知らないと分かる。
「まあいいさ、忘れてくれ。……ジェイクのお仲間さんか?」
知った名を聞いてサラは安心して質問する。
「ジェイクさんを知ってるんですか?! 今何処に!」
「私が一昨日来たから、どう足掻いてもまだバルブラインだろうね。詳しい所は知らない」
「あの、ここって何処ですか?」
「ガニシェッドの北西、って言ったら分かる?」
世界地図を知らないので詳細は分からず、「なんとなく」と返す。
“未来限定よ”
大精霊の言葉を思い出した。ここは今までいた時間と違うなら、いつなのだろうかと。
「あの、今っていつですか?」
「なんだい唐突に」
「ジェイクさんを知ってるって事は、ガーディアン召喚も知ってますよね。あれからどれくらいですか?」
「懐かしいねぇ」と呟いて日付を換算した。
女が告げるには、一年と半年が経過していると分かる。だとすればまだ冬で寒い筈なのに、女性の服装は寒さ対策がされていない。その点をサラは質問した。
「ああ、今は異常事態だからさ。ちょいと季節が早く進んでいるのかもしれない。けどそのおかげで雪も溶けたからちょいと食料調達」布袋を見せる。
「何があったんですか?」
「あんた知らないのかい? 世界規模で色んな事起きたのに」
「ごめんなさい。色々あって、ガーディアン召喚から約一ヶ月しか情報がなくって」
女性は何かを考えるも、考察する意味が無いと判断し、「いいか」と言葉を漏らした。
「ついてきなよ。話は町に着いてからでも出来るしさ」
「あ、はい」ついていこうとして、女性の名を聞いていないことに気づく。「あ、えーっと……」
「私はノーマ。術に関することを結構知ってるお姉さんだよ」
”クールビューティー”の言葉が当て嵌まる女性であり、第一印象は『逞しく格好いい』であった。
道中、サラはガーディアン召喚からどういう経緯でここへ訪れたか質問され、事細かに答えた。
「へぇ、大精霊って本当にいたんだ」
「ノーマさんは会ったことないんですか?」
「会いに行くなんてことないからね。しかも会えるのも奇跡みたいなもんだし。私みたいな面倒な奴は向こうも興味ないだろうさ」
返答に困る。それは大精霊が慈愛に満ちた神様と認識されているなら、実物と性格がかけ離れているからである。
「あ、あのぉ……」無理やり話を変えようとする。
「ん、何?」
「ガーディアン召喚後のジェイクさん、どんな感じでした?」
気の利いた質問すらも浮かばない。
「なんだい? あんた、ジェイクの事好きなの?」
「そんなんじゃないです」
慌てふためく様子すら無い淡々とした否定。ノーマは恋心がないのだと悟る。
「ジェイクさんって仲間の為に無茶する人だから、無事かなぁって」
「言ったろ、バルブラインで頑張ってるだろうって。あそこまで強くなったらちょっとやそっとじゃ死にゃしないさ。仲間の為に無茶するっていうのも磨きがかかっってるからねぇ」溜息を吐くように呟いた。「もうちょい無関心でいりゃいいのに」
どこか虚しさを抱いた様子から、何かあったのだとは察するも、気を遣って深くは訊かなかった。
「……喧嘩でも?」
「いんや。あー……、こっちが一方的に距離取ってんの。今は会わないほうが良い状況」
「あの……踏入りすぎて失礼なことになっちゃうんですけど」
ノーマは横目でサラを見た。
「何があっても素直に話したら、ジェイクさん、親身になってくれる筈です。きっと」
返答には間が空いた。ノーマの表情は変わらないが、ただ、空気を静かに大きく吸い、静かに吐いた。大きな溜息。
「……あいつの優しさは知ってるよ」
「え?」
「今はそれがちょいと酷な状況ってだけだよ。私にはどうしてもやらなきゃならないことがあってね」
これ以上、余計なことは言えない。そんな雰囲気であった。
町まで目と鼻の先、というところでノーマは立ち止まった。
「ノーマさん?」
ノーマは布袋を落とし、両手に魔力を籠めた。
「――ああぁ! やぁぁっと見つけたぁぁ!!」
研究員が着るような丈の長い白い服を纏った少女が現われた。
「エレネア」
ノーマが呟くと、今にも駆けだしていきそうな姿勢になる。形相から、敵対している様子が窺える。
「ああ、ちょい待ち!」
エレネアが両手を前に翳してノーマの動きを止めた。二人がエレネアへ視線を向け、完全に無防備となったその一瞬であった。
――ゴギュッ。
鈍い音がした。間もなく生暖かい飛沫がサラの顔に触れる。
「え?」
隣に目を向けると、巨大で黒い、トラやライオンのような胴体にワニのような頭の化け物が、ノーマのすぐ隣に現われて彼女の上半身を食いちぎっていた。正確には右腕を食べ損ねた状態である。
「いやあああああ!!!」
「にゃはははははぁぁ!! やったやったぁぁぁ!! 面倒な奴がようやく死んだ死んだぁぁ!!」
恐怖に腰を抜かしたサラを見た化け物は前足を器用に動かして払った。威力があまりにも強く、サラの身体は近くの木にぶつかった途端に砕け散った。
◇◇◇◇◇
「――わああああ!!!」
飛び起きて目覚めると、大精霊の森、湖の上であった。
「サラ、大丈夫?! しっかりして」
呼吸を乱しながらも落ち着くと、カレリナと大精霊が視界に飛び込むと安堵した。
「……大精霊様、今のは?」
「と言われましても、わたくしには皆目見当もつかない状態ですの。何があったか話して下さいます?」
ノーマとの出会い、日付、どういう惨事に見舞われたかを説明した。
「時の狂渦がどこかで起きた為にそのような事態を招いた。と解釈する方が自然ですわね」
「そうなんですか?」
「ええ、もしも現象として起きていたのでしたら、嫌でも目で見て分かりますし、この場合、登場人物の二名と化け物一体。これらに何かあるとしか」
カレリナも質問する。
「サラの話だと、その化け物の方が時の狂渦と考えていいと思いますよ」
「それは一方的よ」大精霊が口を挟む。「ノーマという者が時の狂渦に干渉した為に死んだか、エレネアという者が時の狂渦を利用したからそうなったか。カレリナの仰った通りの可能性も勿論ですが、結論を急ぐのは早計というほかありませんわよ」
カレリナは少し拗ねるも、それよりもサラは気になっている。
「……あの、ノーマさんは救えるんですか?」
「救える。という表現は正しくありませんわね」
「どういうことですか?」
「時の狂渦に絡んだ現象の渦中でしたら、前もって時の狂渦を潰せば万事解決でしてよ。けど、時の狂渦に関係した“何か”、この場合は物体のような個体ね。それによって死んだのでしたら、その死に方は阻止できるでしょうけど、ノーマ自身の運命が死線を進んでいるのでしたら、助けた後も死ぬ可能性は大いにありましてよ」
「あら大精霊、あなた集中したら人間の未来を見えるって言ってませんでした?」
ここぞとばかりにカレリナは口を挟む。
「ええその通りよ。ですがそれを話してしまうと運命の流れを大きく変えてしまいますわよ。だから堪能は出来ますけど話す事は出来ませんの。それに、わたくしも例外なく人間に教えて差し上げる義理もないのですけどね」
言い負かされたようにカレリナは悔しく思いながら引き下がる。
「どう行動するかはサラ次第ね。間違ってもノーマを捜して化け物と遭遇した所へ行かないようにさせる、などと考えない方が宜しくってよ」
「運命が狂うとか、ですか?」
「いいえ。運命は強引に思えるでしょうけど似たような局面へ運びますから。せっかく未来を知れたのに、全く活かせない無駄な行動をして終わりってことよ」
ノーマをあのような死に方はしてほしくない。その一心だけが強くあるも、どう行動するかがまるで浮かばない。
「さて、どうやらあと一回が限界みたいですわね。どうなさいます? 続ける?」
「やります。辛い事が防げる可能性があるなら、試したほうが良いから」
「では、続けましょうか」
再び湖面が光り出した。
「……あ、れ? ここは……」
大精霊の森ではない。全く別の、旅の最中によく通った山道。木々は少なく岩石地帯の印象である。
(サラ、聞こえますわよね)
大精霊の念話に反応した。その間、周囲にカレリナがいないことに気づく。
「はい。え、っとぉ……今、どういう状況ですか?」
(これが時渡りよ。今のサラはサラの形をした魔力体。それほど長く滞在はできませんの。因みに本体はこちらにありましてよ。守護神も一緒にね)
(サラ、大丈夫?)
カレリナの声を聞いて安堵する。そして大精霊の言うことが本当ということにも。
「大精霊様、私何をしたらいいの?」
(規模は不明ですけど、あなたの居る場所は時の狂渦が起きる前か後、きっかけがすぐ傍にいる状況よ)
周辺を見回すが誰もいない。とりあえず下山することにした。幸い、麓は近く、町らしき所も見える。
「なんか平和って感じですけど……何が起きるのでしょうか?」
(それは起きてみてからのお楽しみよ。そろそろ声も聞こえなくなるから、がん――)
大精霊の念話が途絶え、カレリナを呼んでも応答はなかった。
時の狂渦という単語から恐ろしい魔獣を想定していたサラは、下山してからも木々の後ろから化け物に襲われると思い警戒し続ける。
突如林の中から草を踏みしめる音が聞こえ、サラは反応する。
ジッと林を見つめ、後退り、逃げる構えでいた。
「ん?」
現われたのは細身の女性。大きめの布袋を背負っている。
「あ、え……」
戸惑うサラを女性はジッと見つめた。
「あんた、変わった娘だな。人じゃない」
警戒しているのか、女性の両手に魔力が籠もるのを見る。
「あ、違います違います! 私、ちょっと事情があってこんな状態なだけで」
それでも女性はいつでも戦えるとばかりに魔力を解かないでいる。
「だったら先に素性を明かしてくれる?」
「あ、っと……サラって言います。ガーディアン……ですけど」
女性は何かに気づいた様子を示すと、「あんたがサラ?」と呟いて警戒を解いた。
「え? 私のこと知ってるんですか?」
「その台詞はこっちのものだけどさ」
サラの表情から何も知らないと分かる。
「まあいいさ、忘れてくれ。……ジェイクのお仲間さんか?」
知った名を聞いてサラは安心して質問する。
「ジェイクさんを知ってるんですか?! 今何処に!」
「私が一昨日来たから、どう足掻いてもまだバルブラインだろうね。詳しい所は知らない」
「あの、ここって何処ですか?」
「ガニシェッドの北西、って言ったら分かる?」
世界地図を知らないので詳細は分からず、「なんとなく」と返す。
“未来限定よ”
大精霊の言葉を思い出した。ここは今までいた時間と違うなら、いつなのだろうかと。
「あの、今っていつですか?」
「なんだい唐突に」
「ジェイクさんを知ってるって事は、ガーディアン召喚も知ってますよね。あれからどれくらいですか?」
「懐かしいねぇ」と呟いて日付を換算した。
女が告げるには、一年と半年が経過していると分かる。だとすればまだ冬で寒い筈なのに、女性の服装は寒さ対策がされていない。その点をサラは質問した。
「ああ、今は異常事態だからさ。ちょいと季節が早く進んでいるのかもしれない。けどそのおかげで雪も溶けたからちょいと食料調達」布袋を見せる。
「何があったんですか?」
「あんた知らないのかい? 世界規模で色んな事起きたのに」
「ごめんなさい。色々あって、ガーディアン召喚から約一ヶ月しか情報がなくって」
女性は何かを考えるも、考察する意味が無いと判断し、「いいか」と言葉を漏らした。
「ついてきなよ。話は町に着いてからでも出来るしさ」
「あ、はい」ついていこうとして、女性の名を聞いていないことに気づく。「あ、えーっと……」
「私はノーマ。術に関することを結構知ってるお姉さんだよ」
”クールビューティー”の言葉が当て嵌まる女性であり、第一印象は『逞しく格好いい』であった。
道中、サラはガーディアン召喚からどういう経緯でここへ訪れたか質問され、事細かに答えた。
「へぇ、大精霊って本当にいたんだ」
「ノーマさんは会ったことないんですか?」
「会いに行くなんてことないからね。しかも会えるのも奇跡みたいなもんだし。私みたいな面倒な奴は向こうも興味ないだろうさ」
返答に困る。それは大精霊が慈愛に満ちた神様と認識されているなら、実物と性格がかけ離れているからである。
「あ、あのぉ……」無理やり話を変えようとする。
「ん、何?」
「ガーディアン召喚後のジェイクさん、どんな感じでした?」
気の利いた質問すらも浮かばない。
「なんだい? あんた、ジェイクの事好きなの?」
「そんなんじゃないです」
慌てふためく様子すら無い淡々とした否定。ノーマは恋心がないのだと悟る。
「ジェイクさんって仲間の為に無茶する人だから、無事かなぁって」
「言ったろ、バルブラインで頑張ってるだろうって。あそこまで強くなったらちょっとやそっとじゃ死にゃしないさ。仲間の為に無茶するっていうのも磨きがかかっってるからねぇ」溜息を吐くように呟いた。「もうちょい無関心でいりゃいいのに」
どこか虚しさを抱いた様子から、何かあったのだとは察するも、気を遣って深くは訊かなかった。
「……喧嘩でも?」
「いんや。あー……、こっちが一方的に距離取ってんの。今は会わないほうが良い状況」
「あの……踏入りすぎて失礼なことになっちゃうんですけど」
ノーマは横目でサラを見た。
「何があっても素直に話したら、ジェイクさん、親身になってくれる筈です。きっと」
返答には間が空いた。ノーマの表情は変わらないが、ただ、空気を静かに大きく吸い、静かに吐いた。大きな溜息。
「……あいつの優しさは知ってるよ」
「え?」
「今はそれがちょいと酷な状況ってだけだよ。私にはどうしてもやらなきゃならないことがあってね」
これ以上、余計なことは言えない。そんな雰囲気であった。
町まで目と鼻の先、というところでノーマは立ち止まった。
「ノーマさん?」
ノーマは布袋を落とし、両手に魔力を籠めた。
「――ああぁ! やぁぁっと見つけたぁぁ!!」
研究員が着るような丈の長い白い服を纏った少女が現われた。
「エレネア」
ノーマが呟くと、今にも駆けだしていきそうな姿勢になる。形相から、敵対している様子が窺える。
「ああ、ちょい待ち!」
エレネアが両手を前に翳してノーマの動きを止めた。二人がエレネアへ視線を向け、完全に無防備となったその一瞬であった。
――ゴギュッ。
鈍い音がした。間もなく生暖かい飛沫がサラの顔に触れる。
「え?」
隣に目を向けると、巨大で黒い、トラやライオンのような胴体にワニのような頭の化け物が、ノーマのすぐ隣に現われて彼女の上半身を食いちぎっていた。正確には右腕を食べ損ねた状態である。
「いやあああああ!!!」
「にゃはははははぁぁ!! やったやったぁぁぁ!! 面倒な奴がようやく死んだ死んだぁぁ!!」
恐怖に腰を抜かしたサラを見た化け物は前足を器用に動かして払った。威力があまりにも強く、サラの身体は近くの木にぶつかった途端に砕け散った。
◇◇◇◇◇
「――わああああ!!!」
飛び起きて目覚めると、大精霊の森、湖の上であった。
「サラ、大丈夫?! しっかりして」
呼吸を乱しながらも落ち着くと、カレリナと大精霊が視界に飛び込むと安堵した。
「……大精霊様、今のは?」
「と言われましても、わたくしには皆目見当もつかない状態ですの。何があったか話して下さいます?」
ノーマとの出会い、日付、どういう惨事に見舞われたかを説明した。
「時の狂渦がどこかで起きた為にそのような事態を招いた。と解釈する方が自然ですわね」
「そうなんですか?」
「ええ、もしも現象として起きていたのでしたら、嫌でも目で見て分かりますし、この場合、登場人物の二名と化け物一体。これらに何かあるとしか」
カレリナも質問する。
「サラの話だと、その化け物の方が時の狂渦と考えていいと思いますよ」
「それは一方的よ」大精霊が口を挟む。「ノーマという者が時の狂渦に干渉した為に死んだか、エレネアという者が時の狂渦を利用したからそうなったか。カレリナの仰った通りの可能性も勿論ですが、結論を急ぐのは早計というほかありませんわよ」
カレリナは少し拗ねるも、それよりもサラは気になっている。
「……あの、ノーマさんは救えるんですか?」
「救える。という表現は正しくありませんわね」
「どういうことですか?」
「時の狂渦に絡んだ現象の渦中でしたら、前もって時の狂渦を潰せば万事解決でしてよ。けど、時の狂渦に関係した“何か”、この場合は物体のような個体ね。それによって死んだのでしたら、その死に方は阻止できるでしょうけど、ノーマ自身の運命が死線を進んでいるのでしたら、助けた後も死ぬ可能性は大いにありましてよ」
「あら大精霊、あなた集中したら人間の未来を見えるって言ってませんでした?」
ここぞとばかりにカレリナは口を挟む。
「ええその通りよ。ですがそれを話してしまうと運命の流れを大きく変えてしまいますわよ。だから堪能は出来ますけど話す事は出来ませんの。それに、わたくしも例外なく人間に教えて差し上げる義理もないのですけどね」
言い負かされたようにカレリナは悔しく思いながら引き下がる。
「どう行動するかはサラ次第ね。間違ってもノーマを捜して化け物と遭遇した所へ行かないようにさせる、などと考えない方が宜しくってよ」
「運命が狂うとか、ですか?」
「いいえ。運命は強引に思えるでしょうけど似たような局面へ運びますから。せっかく未来を知れたのに、全く活かせない無駄な行動をして終わりってことよ」
ノーマをあのような死に方はしてほしくない。その一心だけが強くあるも、どう行動するかがまるで浮かばない。
「さて、どうやらあと一回が限界みたいですわね。どうなさいます? 続ける?」
「やります。辛い事が防げる可能性があるなら、試したほうが良いから」
「では、続けましょうか」
再び湖面が光り出した。
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