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第3章 クラーケンの魔女
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しおりを挟む「お前……セレーナの娘だね」
懐かしむような眼差しに、セレニティはギクリとした。
「その顔……そっくりだ。あの子の髪はもう少し薄い金髪だったが、お前は見事な金だね。父親に似たのだろうか」
「クラーケン、何か知っているのか?」
フレディは、セレニティの傍まで泳いで来た。クラーケンは、愉快そうに目を細める。
「この子の父親は、まさかと思うがアスティル王国のオスカー王子かい?」
「……!父をご存知で……?」
王子ではなく、王だが……オスカーという名前は、アスティル王家には父しかいない。
「知っているとも。会った事はないがね」
クラーケンは長い手足を動かして、自分の顔と同じ高さにある岩場に、セレニティとフレディを座らせた。
「まさかセレーナが本当に、人間の男と子を成すとは……」
感心したように呟き、目の前の困惑した四つの眼差しに気付いて、クラーケンは息を吐いた。
「まったく、何にも知らないんだねぇ。父親から何も聞いていないのかい?」
「父は何も……。ただ、私を海から遠ざけようとはしていましたが……」
「……そうかい。お前を、海に奪われたくなかったのだろう」
セレニティは、わけがわからなかった。顔も知らない母親の名前は、確かに“セレーナ”で合っている。だが、母親が人魚だっただなんて、そんなまさか……。
「コイツの母親が人魚なのは確かなのか?コイツは、人間だったんだぞ」
「間違いないさ。セレーナと瓜二つの顔。人魚族の王族特有の虹色のウロコ。この子は、正真正銘、人魚族の王女であったセレーナの血を引いているよ」
「人魚族の王族だと……」
フレディは目を見開いた。あまり関わりのない人魚族の王族とは、会ったことがないため、セレニティの虹色のウロコが王族特有のものだなんて、知らなかった。海で人魚とばったり会っても、大抵嫌な顔をして逃げられるため、話した事もほとんどないのだ。
「教えて下さい、母の事……」
セレニティは、震える言葉をどうにか口にした。あまりに衝撃的過ぎて、頭がパンクしそうだ。まさか、自分が人間と人魚のハーフで、両方の王族の血を引いているとは、思いもしなかった。
「いいだろう。教えてやるさ」
クラーケンは、ゆっくりと語りだした。
「あれは、何年前の話だったか……。カリハリアス帝国の端にある我が家に、無謀にも、人魚の小娘が潜り込んで来たのさ……驚いたよ。その小娘が虹色のウロコを持つ王女様だったんだからねぇ」
目を閉じれば、今でも鮮明に思い出せるセレーナの顔。可憐な美しい顔立ちに、淡い金髪を漂わせて、丸く青い瞳を輝かせながら自分に話しかけてきた。彼女は、クラーケンの魔女を前にして、恐れることなく堂々と自己紹介を始めたのだ。
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コメントありがとうございます(^^)
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前回の小説から引き続き、読んで下さりありがとうございます(^^)
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