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「ライラ様、ご夕食の支度が整いました。」
「分かりましたわ。」
ローズお姉様からの素敵なプレゼントを頂いた後、私は自室のソファにて読書をしておりました。
けれど夕食の用意ができた様なので食堂へと向かうことにしましょう。
どうやら毒の副作用もダンスレッスンの時がピークだった様で、今は落ち着いています。
嗚呼、でもこれからまた毒を摂るのでしたね。
お昼と同じように食堂へと向かうと、そこには既にダニエルお兄様とテオの姿がありました。
「やぁ、ライラ。」
「ダニエルお兄様もテオも、ごきげんよう。」
私はカーテシーをすると、上座からは離れた席に座ります。
食事時の席も序列によって決まる為、上座に近い席にはライランお兄様とダニエルお兄様がお座りになります。つまり私の隣にはライランお兄様の席があり、向かいにはテオとダニエルお兄様が並んで座っているのです。
テオは先程から静かですが、やはりダニエルお兄様の隣だと緊張するのでしょうか?
そう考えると何だか顔色が悪いようにも感じますわね。…まぁきっと私の勘違いでしょう。
暫く待っていると、仕事からお帰りになったお父様とライアンお兄様が後に続いてやってきました。
「待たせたな。」
お父様が席に着くと、傍にいた使用人が全員のグラスにワインを注ぎます。私のには毒も入っているのかしら。
時折隣に座るライアンお兄様から睨まれるような視線を感じますが、まぁいつものことですわね。
「乾杯を。」
お父様のその声によって夕食が始まりました。
運ばれてきたコース料理をゆっくりと味わいます。
どうやら毒の入れ方が変わったのか、全ての料理に
満遍なく少量の毒が入れられています。
きっと私のメイドが何か手を回したのでしょう。
こちらの方が食べやすいので、後でお礼を言わなければなりませんね。
「何だかライラはご機嫌そうだね。」
「あら、分かりますの?」
ダニエルお兄様の言葉に、私は口元に浮かべていた笑みをいっそう濃くしました。
やはり嬉しいことは自然と笑みが出てしまうものなのですね。
家の中だから良かったものの、外では気をつけないといけませんわ。
「実は今日、ローズお姉様からとっても素敵なプレゼントを頂きましたの。」
これを機に、皆様からお返しは何が良いかアドバイスを頂くのもいいかもしれませんね。
「ただあまりにも酷い臭いだったので捨ててしまったのですけれど、是非皆様にもお見せしたかったですわ。」
「酷い臭い?腐っていたのかい?」
皆食事を運ぶ手を止めて、興味深そうに私の次の言葉を待っております。
嗚呼、皆はどんな反応をするのでしょう。
でもきっと大したことないと落胆されるでしょうね。私にとっては良いことでしたのに。
「ええ、ええ。それはもう蛆も湧いておりましたわ。プレゼントの中身は薄汚れた鼠でしたのだけれど、皆様お返しは何が良いと思います?」
私の喜びに満ちた声と表情とは裏腹に、皆の表情は一変しました。
テオはあからさまに顔を歪め、額に青筋を立てております。ダニエルお兄様はその華やかなお顔に浮かべた笑みを一瞬、嫌悪に満ちた表情へと変化されました。ライアンお兄様はあまり表情が変わらなかったものの、一瞬だけ眉が動いておりましたわ。
三者三様の反応をする中、お父様だけが平然と食事を続けていたのは流石としか言い様がありません。
「…家への贈り物は身内からだろうが中身が検査される。それなのに何故ライラねぇにそんな荷物が届くんだよ…。おかしいだろ…なぁ?」
テオの怒りを含んだ声に、その場にいた使用人達はびくりと肩を震わせます。
どんどん部屋の空気が下がっていきますわ。
けれど今回、彼等に落ち度はありません。だってローズお姉様からの指示でしょうから。
彼女専属の使用人が直接手渡すから中身の確認は必要ない、と。
「テオ、彼らは悪くありませんわ。だって持ってきたのはローズお姉様の専属メイドですから。きっとお姉様の粋な計らいですわ。」
私の言葉に、テオは放っていた殺気を段々とおさめます。
やはり素直なのは良いことですわね。
「チッ!あの売女が。」
ボソリと呟いたテオの言葉を聞き逃す者はここにはおりません。
というかやはりローズお姉様は酷い嫌われようですわね。
やはりあの勝ち気な性格が、男性には受けが宜しくないのでしょうか。今度どこかの社交場にでも潜入する時は、もっとしおらしく従順な女性を演じてみるのも一興かもしれませんわ。
「ライラはあの女へのプレゼントのお返しに悩んでいるのかい?」
「ええ、そうなのです。」
ダニエルお兄様は決してローズお姉様の名前を呼びません。本当なら顔も見たくないほど嫌っています。
理由はとてもシンプルなもので、お父様と同衾することで味をしめたローズお姉様が、容姿も華やかで美しいダニエルお兄様の寝室に夜這いをしたからなのですけれど。
あの時は凄かったですわ。
普段は温厚なダニエルお兄様がローズお姉様を滅多打ちにしたと聞いておりましたので、興味本位でローズお姉様のお部屋に伺ったのですけれど…。その顔も体も傷だらけになっておりまして、とてもじゃないですけれど目の当てられる状態ではありませんでした。
もしローズお姉様がご自身のお部屋に居なければ、私は彼女が誰なのか認識することすら出来なかったでしょう。
それ以降ダニエルお兄様はローズお姉様を居ないものとして扱っております。
まぁ当然の仕打ちですわね。ダニエルお兄様のトラウマを再起させるようなことをしでかしたのですから。
ローズお姉様はまだダニエルお兄様に未練があるようですけれど、まぁその気持ちが成就することは無いでしょう。
たとえどれだけの暴行をされようと、それを帳消しにしてしまう程ダニエルお兄様の容姿は華やかで美しいのですわ。…まぁローズお姉様のある種の強さも尊敬いたしますけれど。
「分かりましたわ。」
ローズお姉様からの素敵なプレゼントを頂いた後、私は自室のソファにて読書をしておりました。
けれど夕食の用意ができた様なので食堂へと向かうことにしましょう。
どうやら毒の副作用もダンスレッスンの時がピークだった様で、今は落ち着いています。
嗚呼、でもこれからまた毒を摂るのでしたね。
お昼と同じように食堂へと向かうと、そこには既にダニエルお兄様とテオの姿がありました。
「やぁ、ライラ。」
「ダニエルお兄様もテオも、ごきげんよう。」
私はカーテシーをすると、上座からは離れた席に座ります。
食事時の席も序列によって決まる為、上座に近い席にはライランお兄様とダニエルお兄様がお座りになります。つまり私の隣にはライランお兄様の席があり、向かいにはテオとダニエルお兄様が並んで座っているのです。
テオは先程から静かですが、やはりダニエルお兄様の隣だと緊張するのでしょうか?
そう考えると何だか顔色が悪いようにも感じますわね。…まぁきっと私の勘違いでしょう。
暫く待っていると、仕事からお帰りになったお父様とライアンお兄様が後に続いてやってきました。
「待たせたな。」
お父様が席に着くと、傍にいた使用人が全員のグラスにワインを注ぎます。私のには毒も入っているのかしら。
時折隣に座るライアンお兄様から睨まれるような視線を感じますが、まぁいつものことですわね。
「乾杯を。」
お父様のその声によって夕食が始まりました。
運ばれてきたコース料理をゆっくりと味わいます。
どうやら毒の入れ方が変わったのか、全ての料理に
満遍なく少量の毒が入れられています。
きっと私のメイドが何か手を回したのでしょう。
こちらの方が食べやすいので、後でお礼を言わなければなりませんね。
「何だかライラはご機嫌そうだね。」
「あら、分かりますの?」
ダニエルお兄様の言葉に、私は口元に浮かべていた笑みをいっそう濃くしました。
やはり嬉しいことは自然と笑みが出てしまうものなのですね。
家の中だから良かったものの、外では気をつけないといけませんわ。
「実は今日、ローズお姉様からとっても素敵なプレゼントを頂きましたの。」
これを機に、皆様からお返しは何が良いかアドバイスを頂くのもいいかもしれませんね。
「ただあまりにも酷い臭いだったので捨ててしまったのですけれど、是非皆様にもお見せしたかったですわ。」
「酷い臭い?腐っていたのかい?」
皆食事を運ぶ手を止めて、興味深そうに私の次の言葉を待っております。
嗚呼、皆はどんな反応をするのでしょう。
でもきっと大したことないと落胆されるでしょうね。私にとっては良いことでしたのに。
「ええ、ええ。それはもう蛆も湧いておりましたわ。プレゼントの中身は薄汚れた鼠でしたのだけれど、皆様お返しは何が良いと思います?」
私の喜びに満ちた声と表情とは裏腹に、皆の表情は一変しました。
テオはあからさまに顔を歪め、額に青筋を立てております。ダニエルお兄様はその華やかなお顔に浮かべた笑みを一瞬、嫌悪に満ちた表情へと変化されました。ライアンお兄様はあまり表情が変わらなかったものの、一瞬だけ眉が動いておりましたわ。
三者三様の反応をする中、お父様だけが平然と食事を続けていたのは流石としか言い様がありません。
「…家への贈り物は身内からだろうが中身が検査される。それなのに何故ライラねぇにそんな荷物が届くんだよ…。おかしいだろ…なぁ?」
テオの怒りを含んだ声に、その場にいた使用人達はびくりと肩を震わせます。
どんどん部屋の空気が下がっていきますわ。
けれど今回、彼等に落ち度はありません。だってローズお姉様からの指示でしょうから。
彼女専属の使用人が直接手渡すから中身の確認は必要ない、と。
「テオ、彼らは悪くありませんわ。だって持ってきたのはローズお姉様の専属メイドですから。きっとお姉様の粋な計らいですわ。」
私の言葉に、テオは放っていた殺気を段々とおさめます。
やはり素直なのは良いことですわね。
「チッ!あの売女が。」
ボソリと呟いたテオの言葉を聞き逃す者はここにはおりません。
というかやはりローズお姉様は酷い嫌われようですわね。
やはりあの勝ち気な性格が、男性には受けが宜しくないのでしょうか。今度どこかの社交場にでも潜入する時は、もっとしおらしく従順な女性を演じてみるのも一興かもしれませんわ。
「ライラはあの女へのプレゼントのお返しに悩んでいるのかい?」
「ええ、そうなのです。」
ダニエルお兄様は決してローズお姉様の名前を呼びません。本当なら顔も見たくないほど嫌っています。
理由はとてもシンプルなもので、お父様と同衾することで味をしめたローズお姉様が、容姿も華やかで美しいダニエルお兄様の寝室に夜這いをしたからなのですけれど。
あの時は凄かったですわ。
普段は温厚なダニエルお兄様がローズお姉様を滅多打ちにしたと聞いておりましたので、興味本位でローズお姉様のお部屋に伺ったのですけれど…。その顔も体も傷だらけになっておりまして、とてもじゃないですけれど目の当てられる状態ではありませんでした。
もしローズお姉様がご自身のお部屋に居なければ、私は彼女が誰なのか認識することすら出来なかったでしょう。
それ以降ダニエルお兄様はローズお姉様を居ないものとして扱っております。
まぁ当然の仕打ちですわね。ダニエルお兄様のトラウマを再起させるようなことをしでかしたのですから。
ローズお姉様はまだダニエルお兄様に未練があるようですけれど、まぁその気持ちが成就することは無いでしょう。
たとえどれだけの暴行をされようと、それを帳消しにしてしまう程ダニエルお兄様の容姿は華やかで美しいのですわ。…まぁローズお姉様のある種の強さも尊敬いたしますけれど。
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